ポエック Research Memo(3):環境・エネルギー事業、動力・重機等事業、防災・安全事業を展開(1)

配信元:フィスコ
投稿:2023/12/07 13:43
*13:43JST ポエック Research Memo(3):環境・エネルギー事業、動力・重機等事業、防災・安全事業を展開(1) ■事業概要

1. グループ企業と事業内容
同社グループは、ポエック<9264>と子会社5社で構成される。2023年8月期の連結対象子会社は、三和テスコ、東洋精機産業、協立電機工業、マリンリバー、PBSの5社である。連結子会社の株式は、いずれも同社が株式の100%を所有している。環境・エネルギー事業に従事するのは同社(ポエック)、協立電機工業、マリンリバー、PBSと三和テスコになる。動力・重機等事業は三和テスコと東洋精機産業、防災・安全事業が同社と三和テスコが行っている。

2. 環境・エネルギー事業
環境・エネルギー事業は、環境関連機器とエネルギー関連機器に分かれる。環境関連機器には、水処理機器と環境改善機器が含まれる。水処理機器は、ポンプ類及び関連機器、撹拌機等を扱う。環境改善機器は、景観配慮型防潮壁「SEAWALL」、オゾンガス発生装置、オゾン水製造装置、オゾン脱臭装置等を扱う。エネルギー関連機器は、熱交換器が主要製品である。

(1) ポンプ及び関連機器
環境関連機器は主に国内メーカーより仕入れ、同社が販売・メンテナンスなどを行っている。主な製商品は、ポンプ類及び関連機器(水槽、送風機、ブロワ、コンプレッサ、ボイラー等)、撹拌機等である。ポンプ類は一般的に工場及び建物等における水の供給システム、または加熱・冷却等の熱媒として利用される。水処理機器のうち、ポンプ類は国内メーカーとの代理店契約に基づいて仕入れ、販売する。顧客はビル・工場等の各種建物、食品メーカー、化学品メーカー、ゼネコンなどである。修理及びメンテナンス等技術サービスによるストックビジネスも展開している。撹拌機は同社で製造しており、食品、化学、薬品業界や排水処理施設向けに販売している。水中設置という特徴から従来品と比較してエネルギー効率が非常に高く消費電力が少なくて済むという特長があり、環境マネジメントシステムの国際標準規格「ISO14000」取得を推進する企業にも適した製品となっている。

ポンプなどの水処理機器の卸売市場規模は約3,000億円、メンテナンスはその10分の1の約300億円と同社は見ている。同社グループの環境・エネルギー事業の売上高は2023年8月期で3,852百万円である。同業他社は、従業員が4~5人の小規模な家族経営の企業が多く、同社グループの強みが生かせる余地は大きい。市場の地域別割合は、東京を含む関東が約40%、中部が15~20%、関西が15~20%、中国で5%、四国が2~3%、九州が10%程度であると想定している。市場全体は成熟しているものの、同社グループの強みを生かして中国地方以外の市場開拓を加速する。同社は協立電機工業に技術者を派遣して子会社の技術力の向上を図り、また両社の営業員が協働して顧客開拓にあたっている。中長期的に市場シェアの10%、年商300億円の獲得を目指す。ストック型の保守メンテナンスをベースに更新需要を獲得する。

(2) オゾンガス発生装置
オゾンガス発生装置は、同社が仕様を決めOEM供給を受けている。「ヴォルガ」ブランドのオゾン脱臭・洗浄・殺菌システムを取り扱う。納入施設の規模に応じた、大、中、小のラインナップを揃えている。同社が販売し、装置の保守及びメンテナンス等技術サービスを行っている。オゾンガス発生装置は、人体に影響がないとされる0.03ppm以下の低濃度オゾンガスにより空気中の浮遊菌を死滅させ「空気中の臭い」を24時間連続して防ぐことができる。

(3) 熱交換器
エネルギー関連機器として扱う熱交換器は、フィンランドの熱交換器メーカーであるVAHTERUS OYより独占製造販売権を得て輸入したプレートを使い、三和テスコがプレート&シェル熱交換器を製造し、同社が販売・修理メンテナンスを行っている。熱交換器は、主に冷凍機、食品製造・化学薬品製造における冷却・加熱プロセス、蒸気タービンに使用される。プレート&シェル熱交換器は、プレート構造により従来の多管式熱交換器と比べて設置スペースは多管式の約5分の1とコンパクトであり、液やガス漏れがなく、メンテナンスの頻度も少なくて済むという特長がある。

(4) 陸上養殖設備
2021年9月に全株式を取得し子会社化したマリンリバーは、養殖設備製造のニッチ市場においてトップ企業である。主に水産試験場や活魚センターなどで使用される水産設備の設計・製造・施工を行っている。主要製品は、海水用ヒートポンプチラー、チタン熱交換器、シェル&コイル熱交換器、シェル&チューブ熱交換器などである。長年の業歴と独自製品、取得特許や技術力などで業界内の評価は高い。同子会社の2020年9月期の業績は、売上高が198百万円、経常利益が41百万円、売上高経常利益率が20.7%であった。マリンリバーと三和テスコが共同研究を行い、製造及び販売面での相乗効果を発揮して成長機会の獲得を図る。養殖設備に関しては、グループの他の企業が一部製造できるものもある。また、納入先に同社グループの商品であるポンプやブロワなどをクロスセルができる可能性がある。同社は、マリンリバーの売上高を長期的に現在の10倍の規模にするというレベル感を持っている。

日本の漁業は、沿岸から沖合へ、さらに遠洋へと漁場を拡大したが、200海里時代の到来で遠洋漁業から撤退した。日本の漁業・養殖業生産量は、1984年に1,282万トンでピークを打ち、2018年には442万トンと3分の1程度に減少した。生産金額は、1982年の2兆9,772億円から1兆5,579億円へとほぼ半減した。海水温の変化など気候変動問題も漁獲量の減少に影響している。漁業は「獲る」から「育てる」という栽培漁業や養殖漁業の拡大が予想される。栽培漁業は、卵から稚魚になるまでの一番弱い期間を人間が守り育て、外敵から身を守ることができるまでになれば生息するのに適した海に放流し、自然の海で成長したものを漁獲する。養殖漁業では、出荷サイズになるまで水槽や生簀で育て、放流はしない。漁業・養殖業の生産量のうち、養殖業は約4分の1を占める。補助金制度もあり、陸上養殖による水産物の生産を始める企業が増えている。総合商社、建築、電力、鉄道などの異業種から大企業が新規参入している。マリンリバーは事業規模が小さいものの、上場企業にグループ入りしたことで社会的信用力が高まり、大企業からの引き合いが盛んだ。

(5) 景観配慮型防潮壁「SEAWALL」
景観配慮型防潮壁「SEAWALL」は、高い強度を持った防潮壁用の枠付きアクリル製透明窓である。防潮壁に透明窓を設けることで津波や高潮の災害時に防潮壁の向こう側の様子を伝えて安全をより確かなものにし、防潮堤の設置により損なわれる地域住民の生活環境の改善に役立つ。2011年の東日本大震災による津波被害の発生後、防潮堤に求められる必要天端高が見直された。当初港湾向けに採用されたが、近年は河川向け需要が拡大している。豪雨災害は、近年増加傾向にある。気象庁の観測データによると、1日の降水量が200ミリ以上の大雨を観測した日数は、統計を開始した1901年からの30年間と直近の30年間を比べると約1.6倍に増加した。2023年10月に、河川関連で受注金額105百万円の大型案件を獲得するなど、需要が旺盛だ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)

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