【QAあり】リアルゲイト、築古リノベ特化の不動産事業を展開 ワークプレイス分散を追い風に、コロナ禍も高稼働率を維持
Our Vision
岩本裕氏(以下、岩本):株式会社リアルゲイト代表取締役の岩本裕です。よろしくお願いします。
当社は、企業理念として「古いものに価値を、不動産にクリエイティブを、働き方に自由を」を掲げ、事業を行っています。
会社概要
岩本:2009年8月に設立し、現在16年目です。社員数は、従業員と役員を合わせて96名となっています。
会社概要 代表プロフィール
岩本:私は建築の学校を出ており、一級建築士の資格を取って、現場監督やマンションの土地の仕入開発などを行い、今に至ります。趣味でウェイトリフティングなども行っています。
会社概要 沿革
岩本:沿革です。2009年8月に設立し、お台場の400区画近くあるスモールオフィス「the SOHO」を第1号施設として、運営の受託事業を始めたことからスタートしています。2023年6月に東証グロース市場に上場しました。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):質問を交えながら進めていきたいと思います。SOHOの受託から始まっていますが、創業のきっかけがありましたら教えてください。
岩本:私は、起業する前はマンションのデベロッパーとして土地の仕入れからマンションの販売まで行っていました。当時の2005年、2006年頃は、東京の湾岸エリアのマンションが非常にたくさん売れていました。
その頃はちょうど、iPhoneが発売されたり、株式会社を1円から作れるようになるための法改正がありました。マンションを売っていると、「セカンド事業を起こして、マンション内にオフィスを登記したい」というお客さまがたくさんいましたが、分譲マンションは法人登記が禁止されているため断っていました。
しかし、そのようなニーズがたくさんあるのであれば、お台場などのマンションがたくさんあるエリアにスモールオフィスの集合体を作るとヒットするのではないか、と考えたのが創業のきっかけです。
ワークプレイスは分散化の時代へ
岩本:現在、ワークプレイスは分散化の時代になっています。私たちはフレキシブルワークプレイス事業と呼んでいますが、まさにコロナ禍によって、オフィス街にある1つのオフィスに固まって働くことから、自宅、郊外、都市のシェアオフィス、リゾート地など、いろいろなところで働くようになりました。
オフィスが減っていると言われていますが、私はそうは思いません。「いろいろな場所に散らばった」というのが正確な表現かと思っています。
坂本:都心に通勤しなくてもいいパターンや、ある意味でスモールオフィスと言いますか、シェアオフィスなどに行ってリモートで働くパターンもありますよね。
岩本:おっしゃるとおりです。マンションの下のシェアオフィスで働いたりですね。
フレキシブルワークプレイス事業では、マンションの下にシェアオフィスを作ったり、ホテルをシェアオフィスに変えたり、リゾート地にシェアオフィスを作るなどの事業を行っています。
社会的課題と解決
岩本:私たちは、不動産業界における社会的課題を解決している会社でもあります。最近の不動産業界における社会的課題としては、コロナ禍による都心部での二次空室問題があります。先日オープンした「麻布台ヒルズ」のような大規模な施設がオープンすると、二次空室が生まれてしまいます。
坂本:他の場所からその施設に移るため、もともとあった場所が空くということですね。
岩本:もちろんコロナ禍で働き方改革が進み、一部の事務所が不要になったことによる空室もあります。また、建築基準法・消防法の改正による影響も意外とあります。大規模災害の度に法律が改正され、古い建物が悪く言われるのですね。
2021年も大阪で診療所が放火された事件がありましたが、そのような事件や災害により、「避難階段が1つのビルは、今後リノベーションする際は2つにしなければいけない」など、法が改正されます。その結果、古いビルの価値がなくなってしまうこともあります。
また、昨今では建築費の大幅な上昇やビルオーナーの環境意識の高まりもあり、競争力を失った築古ビルが増えてしまうといった現状もあります。
一方で、テナント側としては「古いビルを自分なりにリノベーションして、働きやすく使いたい」「自由なお店やスタジオを作りたい」というニーズもあります。フレキシブルワークプレイス事業では、1棟オフィスビルをシェアオフィスに変えるなど、双方のニーズをマッチングするビジネスを行っています。
フレキシブルワークプレイス事業(FWP 事業)〜事例紹介〜
岩本:事例のご紹介です。スライド右上は、「恵比寿ガーデンプレイス」内です。三越などのお店がたくさん入っていたスペースを、撤退後にワークスペースやイベントスペースに変えました。
スライド右下の「THE CASK GOTANDA」は、コロナ禍で閉じてしまったホテルをワークプレイスに変えました。その他にも、マンションなどをワークプレイスに変えたりしています。もともとがオフィスビルでなくても、いろいろなものをフレキシブルなワークプレイスに変えていくという事業です。
坂本:床面積が1,000平米以上と大きいですが、御社は大きいほうが得意なのでしょうか?
岩本:平均500坪ほどで、1,500平米くらいです。事業的な利益や売上を考えると、だいたい300坪以上から大きいもので2,000坪くらいを扱っています。
坂本:営業のパターンは、テナントからお願いされることが多いのか、御社から「このようなことをやりたいのですが」と提案することが多いのか、オーナーからお願いされることが多いのか、どのパターンが多いのでしょうか?
岩本:一番多いのは、やはり物件を持っているビルオーナー、いわば大家さんから相談をいただくパターンです。
ビルオーナーといっても、個人ビルオーナーもいますし、鉄道会社や不動産会社など、さまざまなオーナーがいます。ビルを持っているオーナーから「ビルが古くなって困っていて、建て替えか、それを活かすかを迷っています」という相談を受けて事業が成り立つことが一番多いです。
坂本:シェアオフィスを受託するのか、作って終わりなのか、レベニューにするのかなど、御社の収益源とどのようなかたちで取り組んでいるのかを教えてください。
強み
岩本:事業として私たちは一気通貫で取り組んでいますので、いろいろなところからビジネスの収益があります。まず、私たちが一番重視しているのは運営です。作って終わり、ではフロー型収入で終わってしまいますが、作った物件をきちんと運営することで、継続的な家賃収入や手数料収入が入ります。
運営を重視しているもう1つの理由は、最新のニーズがわかることです。お客さまからのクレームや営業時にヒットする言葉などで、最新のニーズを捉えて物件を作れることが一番の特徴です。
もちろん企画、デザイン、設計・施工でもフロー型収入が入りますし、リーシングでも手数料が入りますので、すべてのフローにおいて収入がきちんと入ることも強みとなっています。
強み
岩本:物件作りの事例です。「THE WORKS」は中目黒駅から徒歩15分ほどの物件で、築45年、エレベーターなし、5階建ての倉庫兼事務所でした。これを聞くと借りる人はいません。
坂本:借りても2階か3階までで、4階、5階は厳しいですね。
岩本:私たちはこのような物件を借りて、スライド右側の図のように小割りにし、スタートアップ企業やクリエイティブな会社に貸しています。スライド左側の写真のとおり、エレベーターをつけたり、屋上を作ったり、用途を変更して店舗に変えるところまで行っています。賃貸物件なのに、です。
坂本:オーナーは、「借りたほうが資金を出すならリノベーションしていいよ」というかたちですか?
岩本:おそらく、「エレベーターをつけてくれるなら、それはそれで価値が上がるからいいですよ」というかたちです。
坂本:そうですね。メンテナンスのコストはありますが、エレベーターをつけるのには非常にお金がかかりますからね。
岩本:一級建築事務所として登録していますので、「このように変更して構造も確認します」ときちんと届け出るまで対応してから、オーナーの了承を取っています。
強み
岩本:私たちは家賃を支払っていますが、このように作り変えることで年間売上高は9,400万円から2億4,400万円まで上がりました。何も変えなければ1坪8,000円や9,000円くらいでしか貸せないビルでしたが、最終的には1坪2万3,000円や2万4,000円で貸すことができています。
坂本:スライドの物件は五反田でしたか?
岩本:「THE WORKS」は池尻大橋寄りの中目黒です。
坂本:それで1坪2万4,000円ですと、普通のビルと変わらない坪単価ですね。
岩本:私たちのビジネスでは、このように古くて価値がなくなってしまったものを安全で便利なものに改装し、新築のような価格に戻しています。
坂本:ただのリノベーションではなく、付加価値がついたリノベーションですね。
強み
岩本:技術的な強みもあります。もちろん耐震補強やエレベーターの新設、用途変更、増築もありますが、検査済証がない物件は違法扱いになってしまいますので、最近は検査済証を再取得することも多いです。
また、古い物件になると「建物は何年保ちますか?」とよく聞かれます。実は、コンクリートはきちんと手入れしていると100年ほど保ちます。
坂本:そのように言われていますし、実際にそのくらいの物件がありますよね。
岩本:しかし、事務所用の鉄筋コンクリート造の法定耐用年数は50年ですから、みなさま心配されます。そのため、耐久性を確認して向上させることも行っています。
エリア展開
岩本:エリア展開についてです。渋谷区、港区、目黒区の都心3区を中心に、事業を展開しています。
坂本:都心3区は千代田区、港区、中央区のイメージですが、渋谷区、港区、目黒区はやはり働く人が多く、御社が得意としているSOHOやスモールオフィスの需要が高いからですか?
岩本:一番の理由は、スモールオフィスの需要が高いことです。私たちのオフィスはだいたい50平米が多く、そのようなオフィスに入居する方は、以前はSOHO可のマンションで働いていた方が多いです。
SOHO可のマンションが多いのは、まさにこのエリアです。ですので、このエリアはそのようなニーズが高いため、高く貸すことができます。それに加え、感度の高い人が多いため、デザイン性が高いものを作って高く貸しやすいエリアでもあります。
このエリアに限定しているもう1つの理由は、やはりビルが多いことです。私たちはお医者さんと同じで、歩けなくなった人がリハビリで歩けるようにするように、古いビルを直して手入れを行っています。古いビルが多いところで事業を行ったほうが相談を多くいただけますので、このエリアに限定しています。
また、エリアを絞ることで、ほとんどの物件を自転車で周ることができます。
坂本:物件を管理する人にとっても便利ですね。
岩本:そのとおりです。運営効率が良いという利点もあります。
今後もこのようなドミナント戦略を続けていきます。都心にはまだビルが多くありますし、新しいビルも、20年後、30年後には築古ビルになりますので、都心を深く掘っていくことに取り組んでいこうと思います。
坂本:近い将来までは、プラスアルファでさらに作っていけるということですね。
岩本:おっしゃるとおりです。自分たちのマーケットやいろいろなマーケットを捉えながら、少しずつ広げていくことを進めています。
入居テナント
岩本:入居テナントの種別です。私たちはオフィス中心で、お客さまに貸しているのは9割ほどがオフィスです。残りの1割はほとんどが店舗です。店舗にするのは、店舗の賃料が高い時になります。
坂本:特に1階など、人が通るところはオフィスにするともったいないですよね。
岩本:店舗を入れたほうが、ビルとして価値がある場合もあります。「1階にカフェがあったほうがランチができる」などの場合は、戦略的にあえて店舗を誘致し、ビル全体の価値を上げています。
スライド左側の棒グラフのとおり、60パーセント以上の商品が50平米未満のオフィスです。
スモールオフィスに特化し、これだけ供給している会社も珍しいかと思います。渋谷区を中心に50平米のオフィスを提供していますので、入居してくれるテナントも、情報サービス業、経営コンサルタント業、デザイン業などが多いです。
稼働率・平均賃料推移
岩本:コロナ禍についてよく聞かれますので、ご説明します。2020年4月以降の3年間がコロナ禍です。
坂本:年度を隠すと、どこがコロナ禍かわからないですね。
岩本:グラフの一番左側が、第1回目の緊急事態宣言があった2020年4月です。そこと比べても、実はコロナ禍で稼働率は落ちていません。
やはり景気が悪い時は、縮小移転などがあります。また、提供していたエリアが渋谷区が中心だったことも良かったと思っています。コロナ禍で一番人気があったエリアは代々木公園や中目黒で、半分住宅で半分商業地域のようなエリアです。
そのエリアにはお店を出店したい方も多く、オフィスも「住宅のそばがいい」ということで人気がありました。
もともとそのようなエリアで展開していましたので、稼働率を高く維持でき、賃料も落ちませんでした。
坂本:坪単価も非常に高いですね。
収益構造
岩本:収益構造です。ストック型収入が中心で、ストック型収入にはマスターリース契約物件のテナントからの賃料収入、運営を受託するプロパティマネジメント契約の手数料収入、再生物件保有のテナントからの賃料収入があります。
フロー型収入は、設計・施工物件の工事収入です。物件売却とは、自己資本比率を注視しながら、購入が多ければ保有物件を売却して収益を得ることです。このような構造がフロー型収入となります。事業面は以上です。
23年9月期 通期 業績ハイライト
岩本:ここからは、2023年9月期通期業績ハイライトについてご説明します。
売上高69億7,200万円、営業利益5億4,800万円、当期純利益2億7,800万円となっています。すべてにおいて前期比で大きく伸びた結果となりました。上場期であるため、必達を求められる厳しい審査もある中で、前期を上回って達成できました。
23年9月期 PL - 損益計算書(累計)
岩本:損益計算書の中身を見ますと、ストック型収入が売上の7割にあたる50億円程度を占め、それにフロー型収入が加わっています。
坂本:両方伸びていますね。
23年9月期 BS -貸借対照表
岩本:こちらは貸借対照表です。
坂本:先ほどの自己資本比率のお話で、比率が下がれば保有物件を売却するとのことでしたが、目安にしている自己資本比率があれば教えてください。
岩本:本来は、目指すべき自己資本比率は30パーセント程度を理想としていますが、今は会社も投資フェーズにあるため、20パーセント程度を維持しながら、自己資本比率が崩れすぎないようにして、ストック型ビジネスを積み上げていこうと考えています。
23年9月期 通期 主要KPI
岩本:私たちの主要KPIは、まずは物件数です。2023年9月期は1年間で11件の物件を獲得し、6物件をオープンしています。
終了プロジェクトは7件で、今期はたまたま多かったと言えます。当社では物件を短期で運用する場合があり、例えばオリンピックまでの期間、コロナ禍の期間、というような物件があります。
この期は東京オリンピックが延期されたため、オリンピックまでの期限付き物件の契約が延びました。コロナ禍の期間中の物件は収束後まで契約が続き、ちょうど2023年9月期に終了した物件が多かったわけです。
坂本:終了物件というのは、プロパティマネジメントが終わったのでしょうか? それとも御社が自社物件を売却したということでしょうか?
岩本:プロパティマネジメントと、マスターリースの契約終了です。古いビルを安く借りてオリンピックまでの契約としていた物件が、ちょうど建て替え時期で契約どおり終了したようなケースが多くありました。
坂本:オリンピックが終わって、建築コストが落ちるのを待っているようなイメージですね。
岩本:2023年9月末時点で、運営中物件は現在58件あります。運営面積が重要なKPIとなりますが、約8万5,000平米のうち貸し面積が約5万7,000平米で、こちらが売上に直結していきます。稼働率は98.3パーセントです。
今、アメリカでは空室率が約20パーセントといわれています。
坂本:落ち込みが続いていますよね。
岩本:その影響で米国WeWorkの運営は難しくなってしまったのですが、日本はまだオフィス自体も、渋谷区などであれば96パーセント、私たちのシェアオフィスも98パーセント稼働しています。
坂本:御社もWeWorkのようなシェアオフィスを展開されていますが、大きな違いは、どちらかといえばフリースペースで貸すというより、先ほどお話しされたように50平米程度までの部屋を貸すという運営方法にあるのでしょうか?
岩本:大きな違いとしては値段です。
WeWorkや大手各社は主に新しいビルを扱っています。例えば、渋谷の真新しいビルを借りてシェアオフィスを作るわけです。そうすると、坪5万円のオフィスを借りてシェアオフィスを作って、家賃は1人10万円くらいになります。
私たちのほうは、先ほどご説明したように1人3万円から4万円です。古い物件を安く借りて改装後に3万円で貸すのと、良い物件をさらにリノベーションして10万円で貸すのとでは、値段が3倍くらい違ってきます。借りる人も、取り扱うビルも違うということです。
そのため、同じ貸しオフィス業ではありますが、中身はかなり違うと考えています。
23年9月期 開業PJ(6物件)
岩本:2023年9月期は6物件がオープンしました。スライド左側にあるワーケーションスペースの他に、右側の「THE N3」というのはコロナ禍で多く見られた、レジデンスの下層階にシェアオフィスを設けた物件です。
マンションの下にシェアオフィスがあるとマンション自体の価値が上がります。シェアオフィスとしての収益も上がるため、そのような企画を行っていました。
坂本:こちらのスペースは以前は店舗だったのでしょうか?
岩本:もともと新築で計画していて、スポーツジムを入れる予定だったのですが、コロナ禍で変更して、事業主からシェアオフィスを提案されたものです。
坂本:何らかのテナント用だったのですね。
23年9月期 開業PJ(6物件)
岩本:「&CALM」は南青山にある物件で、旧島根県民ホテルをシェアオフィスに改装したものです。県民ホテルは東京都内の優良な土地によくありました。
坂本:県民会館などは永田町周辺にかなりありますね。
岩本:そのとおりです。それらがすべて老朽化し、コロナ禍で多くが閉館してしまったものを、シェアオフィスに改装しました。「THE WORKS CROSS」は中目黒にある店舗中心の物件で、築60年ほどのビルを改装しています。
23年9月期 開業PJ(6物件)
岩本:「LOCUL」は、表参道の東急プラザ表参道原宿内にある、以前はアパレルショップだったスペースに開業した店舗です。私たちのシェアオフィスのノウハウを活かし、従来の商業施設を、シェアオフィスと店舗を合わせたような「シェア型リテール」にアップデートしています。そのほか、神山町でも1件オープンしています。
24年9月期 業績予想
岩本:2024年9月期業績予想です。売上高77億円、営業利益6.4億円、当期純利益4億円の計画です。もちろん、プロジェクト数も増えていく計画です。
24年9月期 竣工物件
岩本:現在、これまでに獲得した物件のみを積み上げた第16期の計画が進行中です。今期はまだ始まったばかりですので、今後獲得した物件が加わっていくと、今期の数字もさらに伸ばせると考えています。
坂本:おそらくビルの状態によって変わってくるかと思うのですが、立案から竣工までの期間はどの程度なのでしょうか?
岩本:最短で6ヶ月です。新築や再開発なら、最長で3年ほどかかることもあります。
坂本:やはり規模が大きければ、期間もそれなりにかかりますね。躯体ができるまでは何もできないですからね。
岩本:とは言え、多いのはリノベーションですから平均で8ヶ月ほどですね。
坂本:では、今期に計上される可能性は十分あるということですか?
岩本:おっしゃるとおり、計上される可能性があります。
24年9月期 売上構成
岩本:私たちが重視しているのはストック型売上です。不動産会社というのは売却・購入が多いため、この比率が高いと売上は作りやすいですが、PERは下がってしまう傾向があります。
そこで安定的にストック型売上を作ることで、安定した投資ができますし、成長が描けるということになります。このようなマスターリースを中心としたストック型売上を今期も作っていきます。
中期経営計画
岩本:中期経営計画では、3年後に売上100億円を目指す計画としています。
中期経営計画
岩本:中期経営計画についてですが、来期、再来期、3年後は意外と読みやすいです。ストック型契約では5年後、10年後まで契約を結んでいるため、例えば、今期はすでに95パーセントの成長は見えていますし、来期でも85パーセント程度は見えています。もちろん、これ以上のプラスを目指して、今後も取り組んでいきます。
成長戦略
岩本:中期経営計画を達成するための成長戦略は、スライドに記載の6つです。
成長戦略
岩本:1つ目は、運営物件・運営面積を増やすことです。私たちのビジネスは、送りバントをコツコツ成功させていく「犠打世界一」のようなイメージです。確実なビジネススキームを会社の強みとして、物件・面積ともに増やしていきます。
2つ目は、ストック型収入の中でマスターリース物件と保有物件を増やすことです。保有物件は自己資本比率を見ながら増やしていく必要がありますが、増やしていくことで売上と利益はさらに伸びていくかたちです。
成長戦略
岩本:3つ目は、オフィスのみならず、POPUPショップやイベントスペースのような、オフィスに付随するスペースを運用していく戦略です。
コロナ禍でリアル店舗を閉じてECに切り替えた会社が多いのですが、現在はリアル店舗のニーズがやはり増えており、その中でもPOPUPショップなど「たまに使いたい」ときに使えるスペースの需要が高いです。そのようなスペースも提供していきます。
4つ目に、大型の築浅案件、新築物件なども扱っていきます。
今まで私たちは、古いビルを活かしてシェアオフィスを提供してきたのですが、現在のシェアオフィスのニーズとしては、例えば「大きなオフィスビルの中にシェアオフィスを入れて、ビル全体を活性化したい」「その共用部を大企業にも使ってもらいたい」などがあります。
そのため、従来の古ビルを活かすための隙間産業的なシェアオフィスというものが、オフィスの主役になってきているのではないかと考えています。
成長戦略
岩本:5つ目の環境配慮型ビル再生については、これはSDGsの観点から、ビルを壊さずに活かし、かつランニングに優しいビルを作っていく取り組みを、自社ビルから始めてオーナーに広げていく活動を行っています。
最後に「リアルゲイトの街づくり」とありますが、千駄ヶ谷エリアで、2012年以降9棟の運営を開始しています。このように、一つひとつの建物を活かしていくことを考えているのですが、近隣に個性的な建物が連なってくると、なんとなく街づくりのようになっていきます。
坂本:実は、本日セミナーを配信しているこの場所も千駄ヶ谷です。
岩本:千駄ヶ谷近辺にも当社の扱っている物件があります。
もちろん、森ビルに代表される1つの街を作るようなスケールの大きな開発も素晴らしいのですが、個性的な建物が点在する街づくりというのも、持続可能で非常に良いのではないかと思っています。
坂本:このあたりは昔、アパレル企業が入っていた大きな建物がありますし、ベースもかなり個性的ですよね。そのような部分も活かしながら展開されているのですね。
岩本:このような、リアルゲイトならではの街づくりを今後も続けていきたいと考えています。
リアルゲイトのこれまでとこれから
岩本:創業から15年間の売上を示したグラフです。
坂本:コツコツと成長されていますね。
岩本:しっかりと増収を続けています。リーマン・ショックの際、勤め先の企業が倒産してしまい、ある意味仕方なく起業したのですが、そこがスタートになっています。
起業後、軌道に乗り始めた頃に東日本大震災に見舞われ、古いビルの居住者はすべて退去してしまいました。逆にそれがチャンスとなり、青山や表参道付近でさまざまな物件を安く借りることができました。
坂本:そこで賃料の安い場所を選ばずに、一等地に行かれたのはセンスがありますね。当時はその周囲にトランクルームがたくさんできていたと思います。
岩本:後のコロナ禍でも、当初は解約が非常に多くなりピンチかと思ったのですが、縮小移転を行い、ニーズをうまく捉えて業績を伸ばすことができました。
今後も中長期的に確実な成長を目指していくとともに、株主のみなさまにも応援していただきたいと考えています。
質疑応答:リノベーション工事事業について
坂本:ほとんどの物件でリノベーション工事が入ると思うのですが、工事は自社で行っているのですか? 御社は一級建築士事務所を登録していることから、当然設計は行うと思いますが、工事についてはどのような体制なのか教えてください。
岩本:リノベーション工事自体は自社で行っています。特定建設業許可はおよそ5年前に取得していますね。
以前は工事部門がなかったため他社に依頼していたのですが、やはりリノベーションでは杓子定規にいかなかったり、壊してみなければわからなかったりします。
坂本:「イメージと違う」「追加料金が必要」などと言われることがありますよね。
岩本:自社で行うことで、設計とのやり取りが非常にスピードアップします。
また、マスターリース事業を行っていると、1ヶ月工期が伸びると1ヶ月分の家賃を払わないといけないため、そのような意味ではスピードアップと柔軟な対応が必要ですし、コストも抑制するということで、自社で設計部門だけでなく工事部門を抱えて行っています。
質疑応答:同じ業態の会社について
坂本:おそらく個人投資家によく聞かれるパターンだと思うのですが、同じような業態の会社はあるのか教えてください。
岩本:先ほどご説明したシェアオフィス業としては、ティーケーピー社のリージャス部門を買収した三菱地所社、WeWorkもありますが、ビジネスや売上構成の中身に着目すると、例えばストックを積み上げていく不動産業としてはアズーム社や、テンポイノベーション社などが近いかと思います。
「古ビルを扱います」という不動産業の会社はたくさんありますが、似ている業態としてはそのような会社だと思います。
質疑応答:営業の方法について
増井麻里子氏(以下、増井):御社の営業の方法を教えてください。
岩本:営業の方法は2つありますが、1つ目はビルオーナーを獲得する営業の方法です。先ほどはビルオーナーから直接来ると言いましたが、ビルオーナーリストが3,000くらいあり、ビルを作るたびに「私たちの作った新しいビルを見ませんか?」と、ビルオーナーを招待します。
坂本:それは古ビルを持っているオーナーですか?
岩本:おっしゃるとおりです。ビルオーナーを招待して物件を見ていただいて、「今度またご相談があればぜひお願いします」とお伝えします。
坂本:そこでリードを獲得していくのですね。
増井:実際に見ると気分が上がりそうです。
坂本:「うちもやりたい」と思いますよね。
岩本:年間8棟から10棟くらいのオープンがありますので、そのような機会が年間8回くらいあります。そこにきちんとビルオーナーを招待します。
2つ目は、入居テナントをつける営業です。「ORDERMADE TOKYO(オーダーメイド東京)」という自社サイトを持っていて、そちらに当社の手がける約60物件の空室や、新規オープンの情報をすべて集めています。
そこを見てもらうと「渋谷でオフィスを借りたい」「ルーフトップがあるオフィスを借りたい」という要望に沿って探せるようになっています。そこに顧客を集めてリーシングをしていくことが基本になります。
一般的なオフィスのリーシングは仲介会社に頼むものですが、シェアオフィスの場合は入れ替えが多く、良くも悪くも回転するビジネスなのです。毎回仲介会社に頼んでいると費用も発生しますし、タイムラグもあります。
ホテルのように常に入れ替わることが前提ですので、私たちは自社サイトを作り、そこにお客さまを貯め込むことで、空室期間を短くするという手法をとっています。
坂本:御社の物件に引っ越す人もけっこういらっしゃるでしょうね。
岩本:リアルゲイトの物件を気に入っていただき、引っ越してくださる方もいらっしゃいます。
質疑応答:配当に対しての思いやイメージについて
坂本:個人投資家からいただいた質問には、配当の話も多かったです。
私個人としては「成長企業は配当を出さずにどんどん成長してください」と思いますが、配当に対する思いや、イメージがあれば教えてください。
岩本:配当に対しては、それほど遠くない将来にきちんと開始しなければいけないという考えは持っています。ただ先ほどお伝えしたように、今は投資フェーズにあり、会社の成長により株価を上げていくことが一番求められていると思います。
自己資本比率も余裕があるわけではないため、そのような意味では、ここ数年に関しては投資に回したいという考え方です。
坂本:配当を払うよりビルを買ったほうが、株主としては納得するのではと思いますけどね。
岩本:現状は、業績の伸びにつなげることが一番求められると思っています。
質疑応答:移動型コンシェルジュショップの実証実験について
坂本:「過去に、三井物産、三越伊勢丹と共同で移動型コンシェルジュショップの実証実験が行われていましたが、現状はどのようになっているのでしょうか? そこで貯まったノウハウを含めて教えてください」というご質問です。
岩本:何の実証実験だったかをご説明しますが、まず当社はオフィスを1,200社に貸しています。そうすると1,200人の経営者がいますので、その経営者向けの出張サービスができないかという考えが基です。
例えば、移動型のショップがバスで来て、そこで服をオーダーすることができるなど、そのような実証実験のリクエストを受けて、自社の大きいオフィスの前にそのバスを呼び、経営者の方々に体験していただいた取り組みです。私も実際に体験しました。
三井物産、三越伊勢丹は、コロナ禍においてそのようなニーズを捉えたということです。
坂本:外商のようなイメージでしょうか?
岩本:そうですね。一度実験を行ってある程度のニーズが獲得できて、現在は終了しています。
質疑応答:展開エリアについて
坂本:展開する地域についてです。東京都心の渋谷区・港区・目黒区の3区を掘っていくという話でしたが、今後はどのあたりに展開しようと考えていますか? 関西なのか、それとももっと物件が点在している東京で広げていくのかを含めて教えてください。
岩本:まずエリアとしては、スライド13ページでは3区と示しているのですが、右側のマップを見ていただくと中央区や港区といった地域も含まれています。
坂本:プロットはありますね。
岩本:私としては「一番はどの区」と決めることよりも、マーケットアウトしないことを重視しています。
坂本:常にニーズがあり、高い入居率を誇るような物件ということですね。
岩本:シェアオフィスで赤字になる会社があるとすれば、マーケットを間違えていると考えられます。本来5万円でしか貸せないものを10万円で貸せると思うため、赤字になってしまうのです。
そのような意味ではやはり、自分たちが貸してきたエリア、実績があるエリアで広げていくことが確実だと思います。それも、だんだんと広げていくことを考えています。
質疑応答:採用を強化する職種について
増井:採用についてはどのような職種を強化していますか?
坂本:建築部門なのか、リーシングなのか、ということですね。
岩本:私たちが一番強化しているのは、スライドの中央の図「プロジェクトメンバー」の中の企画営業部という部署です。この部署のプロジェクトリーダーと言われる人は、けっこう能力が必要で、建築・不動産の知識により収支を組み、建築や設計をコントロールしてプロジェクトを進めていきます。
坂本:社長みたいな経歴がないとできないということですか?
岩本:そのような経歴は理想的ですね。会社は15パーセントずつ成長していくとお伝えしましたが、このプロジェクトリーダーをきちんと育てていくことが1つのボトルネックになっています。今もプロジェクトリーダーはいますが、さらに、その候補となるような企画営業の採用は一番強化しています。
他には、一級建築士、1級建築施工管理技士の資格を保有する技術者です。今は技術者不足と言われていますが、幸いなことに、当社には建築の技術者がけっこう入ってきてくれています。
坂本:ビジネスとしてもおもしろいですからね。
岩本:私も現場監督の経験からよくわかるのですが、人から言われたものだけを作る、人から言われたものだけの図面を書くことは、けっこうつまらなかったのです。「不動産としてどのようにすれば一番儲かるのか?」を考えることが楽しく、時にはプランをひっくり返さなければいけないこともありますが、チームで一緒に考えていくことができます。そのような仕事をしたいと言って入ってくる人がけっこういます。
増井:御社はワンストップでサービス提供されているということですが、従業員の方は90人くらいで、1人の方がいくつかの業務を掛け持ちされているのですか?
岩本:1人でだいたい4プロジェクト、5プロジェクトを持っていろいろなことを推進します。立ち上げの時は各部署から集まるなど、そのようなかたちで進めていきます。
私の性格もあるのですが、1つのことだけに取り組んでいると飽きてしまいます。非常に飽きっぽくて、「営業だけやれ」などと言われるのはいやなのです。それで自分で土地を仕入れて、自分で作って、自分で売りたいと思ってこのような会社を作ったため、それを社員にも取り組んでもらっています。
質疑応答:今後想定される収益圧迫要因について
坂本:右肩上がりで収益が伸びていく事業だと思うのですが、「これから想定しうる収益圧迫要因は何ですか? 固定資産税の負担は大きくないですか?」という質問も受けています。固定資産税は基本的に大家持ちですか?
岩本:不動産は持っていないため、そこの固定資産税は掛からないのですが、内装投資にしたものがかかります。また、保有物件も増やしていますので、そこは今重たくなっています。
坂本:賃料とさやでなんとかなるところでしょうか?
岩本:そうですね。また、借り入れもしていますから、金利が上がってくれば当然そこは圧迫してきます。私たちの事業の伸びが止まる時、止まる恐れがある時は、意外と景気が良すぎる時で「空きビルが出ない」などということがあります。
そのようなときは反対に、ほどよく自信があったほうがいいですね。時々そのような向かい風があったほうがよいと思います。旧ビルに対してはみんな不安を持ち、直さなくてはいけないという思いがきちんとあるのです。
坂本:今、リモート勤務が流行っていることはかなり追い風ですよね。
岩本:おっしゃるとおりです。それは追い風ですし、今は普通にオフィスを作って、普通に貸せない時代になってしまったのです。そのため新築でも相談があって、「工夫をしよう」「デザイン性を高めよう」「フレキシブルな働き方を提案しよう」という会社が増えているため、私たちの仕事が増えているということがあります。
坂本:建築資材と言いますか、資材の上昇については落ち着きましたか?
岩本:資材の上昇はまだ続いていますが、これはどちらかというと追い風です。新築を建てるほうが資材の使用比率が高いため、その影響を少なくしようとするとリノベーションのほうが良いのです。
質疑応答:他社との協業や提携の計画について
坂本:先ほども少しお話が出ましたが、「他社との協業や提携の計画について、差し支えない範囲で教えてください」というご質問です。
岩本:今は約70件のプロジェクトが走っていて、オーナーが40社くらいです。1社で5棟ぐらい頼んでいる鉄道会社もありますし、不動産会社もありますし、個人オーナーの方もいます。
その背景から、大手企業とだけ手を組んでしまうと、他の仕事が取れなくなってしまいますので、そのような不動産会社との協業というのはあまり考えていません。一つひとつの収益を上げていく、一つひとつ仕事を取っていくことで、あまり他社に染まらずに取り組んでいこうと思っています。
坂本:金融機関との協業は意外とありなのではないかと思うのですが、お客さまからの紹介のようなものがあったとして、ご興味はあまりないですか?
岩本:金融機関は、紹介を受けられればありがたいです。各社、すでにいろいろな金融機関が行っているため、どこか1社と協業というのは出しにくいですよね。
坂本:複数社と組むようなかたちでもよさそうです。
岩本:一物件ずつ、いろいろな会社から物件を仕入れていくため、それを行うたびにきちんと発表していくことになります。
質疑応答:サイバーエージェントの「ABEMA」とのシナジーについて
増井:「株主であるサイバーエージェントの『ABEMA(旧AbemaTV)』とのシナジーはお考えでしょうか?」というご質問です。
岩本:藤田社長とは年に2回、3回ほどお話ししています。実は当社の株を買ってもらったのは2年前で、比較的最近です。「買う理由は何ですか?」「うちの会社を評価してくれる理由は何ですか?」と聞くと、「一緒に渋谷を盛り上げたい」ということでした。
坂本:御社が渋谷のほうでも展開されていたためですね。
岩本:サイバーエージェントはIT企業ですが、藤田社長は不動産にも少し興味があったということで、当社の株を買っていただいたのです。今のところ大きいシナジーは表せていないのですが、サイバーエージェントがベンチャーキャピタルとして投資している会社はたくさんあり、その会社が当社物件に入居してくれているケースはたくさんあります。
また、サイバーエージェントのバックオフィス、管理部門の面では、決算のスピード化や、藤田社長の中長期の成長を目指すという考え方は、マンツーマンできちんと教わることができていますので、そのようなものが活かされています。
あとは物件での取り組みも今、何件か検討しているものがありますので、情報として出せるようになりましたら、しっかりと出したいと思います。
坂本:非常に有用なお話、ありがとうございました。
増井:ありがとうございました。
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