【QAあり】さくらさくプラス、創業以来連続増収 今期は「子育て支援住宅 西麻布プロジェクト」等が寄与する見込み
会社概要
西尾義隆氏(以下、西尾):みなさま、こんにちは。さくらさくプラス代表の西尾です。本日はお忙しい中、お時間をいただき誠にありがとうございます。2023年7月期決算のご案内と、現在の我々の立ち位置やこれから目指すべき方向をご説明させていただきます。
まず会社概要です。大きな進捗としては、関連子会社がいくつか増えています。前期の大きなトピックスとして、株式会社保育のデザイン研究所という保育士向けの研修機関の会社を100パーセント子会社化しました。こちらの目的・意図についてはあらためてご案内します。
目指すビジョン
現在は複数の子会社があり「安全と安心を提供し自然で 和やかな笑いに満ちた あたたかい子育て環境を作り出す」を経営理念として事業を推進しています。我々はこれまで保育所施設を作って運営してきましたが、現在保育施設の数はある程度満ちてきており、国としても保育の質に大きくフォーカスしています。
我々としても、保育所だけではなく子どもを育てる環境をしっかりと整え、もっと子どもや子育てに寛容な社会を作り支援していくかたちで事業を組み立てていきたいと考えています。
少しダジャレのようにお捉えになるかもしれませんが、我々は「子育DEGs」という造語を考案しました。少子化が進む日本において、よりポジティブに子育てができる社会環境を作り続けていくという思いをこの言葉に乗せて、事業を拡張させていきたいと考えています。
収益の多角化
事業の中核となるのは、「さくらさくみらい」という保育所です。現在88ヶ所の施設を運営しており、約4,500名の利用者がいます。そして、保育所の運営により得られた情報や学んだ情報をもとに、この2年ほど事業の拡張を進めています。
みらいパレットではICT化を活用し、独自のアプリケーションやシステムの開発を行っています。みんなのみらいは食育サービスの会社として運用しており、保護者の方が気軽にカフェでお茶を飲める環境を整えたり、食育サービスとして子どもたちに安心・安全なものを提供したりしています。
中学受験対策として、「VAMOS」という進学塾も運営しています。現在5ヶ所で約400名ほどの利用者がいます。さくらさくパワーズは宅地建物取引業者で、子ども・子育てに関する不動産を取り扱っていこうと従前より力を入れている会社です。
そして、2023年4月に完全子会社化した保育のデザイン研究所は研修サービスを提供しており、今年以降力を入れていきたいと考えています。現在、320のオンライン研修などがあり、サブスクモデルなどを展開していきながら事業を拡張させていきたい考えです。
さくらさくパワーズ ~不動産の「情報力」「企画力」「開発力」 を活かす~
我々の運営施設について、これからは量ではなく質になっていきます。選ばれる保育所と選ばれない保育所がはっきりしてくる状況の中で、我々は選ばれる保育所を作ってきた自負があります。スライド右側に最寄り駅からの所要時間比率を示しているように、非常に利便性の高い場所に施設を作ってきた点が我々の大きな特徴です。
不動産開発力事例
スライドは不動産開発力の事例です。こちらも我々がノウハウや特徴を活かし良い施設を作ってきたことの表れといえます。
2023年7月期における東京都内保育所と東京・認可比率
保育の運営施設の現況です。全88施設のうちの81ヶ所が東京都内の認可保育所で、東京での認可比率は競合他社と比べて一番高くなっています。すなわち、ニーズのある地域に安定して施設を作ってきた点が我々の大きな特徴だと考えています。
出生率の低下がニュースになっていますが、この地域に関しては安定的にご利用いただいている状況です。
2023年7月期のトピックス
7月期の決算の概要についてご説明します。スライドは前期の取り組みです。まず、保育の研修企画や保育のコンサルティングを行う保育のデザイン研究所の全株式を取得しました。
子育て支援住宅については、以前から西麻布プロジェクトを進めていますが、それに加えて浅草プロジェクトも開始しています。西麻布プロジェクトは「東京都子育て支援住宅認定制度」を使って進めてきましたが、浅草に関しては「東京こどもすくすく住宅認定制度」という新しい制度で、保育所で培ったノウハウを住宅に活かして施設を作る活動を実施しています。
中央区勝どきに保育所を1施設開設しています。また、2023年4月には新富町、品川区の品川シーサイドで施設を新規開発しており、これで88ヶ所になります。株主還元は少しずつ増やしており、2023年7月期は年間配当金を1株当たり12円に増配しました。
さらに、日比谷研修センターを創設し、保育のデザイン研究所の完全子会社化に伴って、リアルでの研修を活発に行う取り組みをしています。報道等で、不適切保育や虐待といった保育の質に関するニュースが飛び交っている状況です。その中で我々としては、保育の質を上げることに全国規模で取り組み、オンラインとリアルの研修に力を入れていきたいと考えています。
2023年7月期決算概要
決算内容についてご説明します。スライド左端から、2022年7月期の実績、2023年7月期の予算、2023年7月期の実績です。
2023年7月期実績としては、売上高は138億4,400万円、営業利益は3億1,400万円、経常利益は5億4,200万円、当期純利益は3億2,500万円です。売上高については前期比15.4パーセント増で、予算比でも増加し計画どおり進みました。
営業利益については、2023年7月期の予算3億3,500万円に対して着地は少し減少しましたが、おおむね予定どおりです。2022年7月期はコロナ禍の影響等で2,100万円と凹みましたが、2023年7月期は大幅に増え、従来の水準を取り戻してきたと考えています。
経常利益については、2022年7月期は開設の補助金などで多くなっていますが、2023年7月期は新規開設が3施設で営業外収益も多くなかったため、スライドのような数字になっています。前期比では落ちていますが、予算比では増えている状況です。
結果として、親会社株主に帰属する当期純利益は3億2,500万円で、予算比15.5パーセント増で着地しています。
業績推移
業績の推移です。売上高については、施設数の増加と利用者の増加、さまざまな事業の展開により顕著に伸びてきている状況です。営業利益は2022年度7月期に大幅に減少しましたが、2023年7月期は復調しつつあり3億2,500万円となりました。
当社グループとしては、本業の指標となる営業利益を着実に積み上げていくため、事業を拡張させていく方針です。
2023年7月期貸借対照表
貸借対照表です。西麻布と浅草で行っている不動産開発に伴う資金調達等が表れているのが大きな特徴です。前期比で自己資本比率などは少し下がっていますが、今期および来期には不動産との兼ね合いで再び上昇していくと認識しています。
2024年7月期 経営トピックス
今後進めていく案件についてご説明します。2024年4月に、パークタワー勝どきに保育所1施設を開設する予定です。このエリアはまだ保育所が足りていない状況で、今回開設に至りました。晴海フラッグなどコロナ禍で開設が延期になったエリアについては、来年には本格的に稼働をスタートさせていけると思っています。
保育所におけるICT活用の強化として、自社での強化と外販を計画しています。我々が得意とする分野と、BIPROGYの「mierun」を全園に導入することにより、情報を連携しながらそれぞれの得意分野を最大活用し、便利なICTシステムを構築しています。
「子育て支援住宅 西麻布プロジェクト」が今期中に完成する予定のため、販売活動を開始します。
また、共同プロジェクトとして月島エリアに進学塾「VAMOS」を開設します。これと併設するかたちで、年明けには子育て支援カフェ「みらいのテーブル」の新店舗をオープンする計画です。中央区にある当社グループの保育所11ヶ所の多くが月島エリアにあるため、このエリアで「VAMOS」進学塾への連携や「みらいのテーブル」での食育サービスの提供をしていきたいと考えています。
株主還元については、3期連続増配を予定しています。2024年4月期は年間配当金を1株あたり16円に増配し、今後も少しずつ伸ばしていこうと考えています。
保育の質の向上
現在、国の方針として、保育の量から保育の質へとシフトしている状況です。その中で当社グループは、従前から質の向上に非常に力を入れて取り組んでいます。
新たな乳幼児教育プログラム「CLiP」では、アカデミックな研究をしながら最善のプログラムを提供します。スライド左側に記載のとおり、認知能力の発達につながる乳幼児教育として、現在「ことば・もじ」分野と「かず・かたち」分野でさまざまな取り組みをしています。
また、我々は先ほどお話しした研修センターを活用し、おそらく日本でもトップクラスの数の研修をこなしています。このような取り組みにより、保育の質、すなわち保育士の質の向上に力を入れています。
スライド右側に、東京大学大学院との保育・教育の実践に関する協力研究について記載しています。「一番良いかたちで職員が動けるにはどうすればよいか」「どうすれば経験の少ない職員が力を出せるのか」といった研究を行いながら、より質の高い保育を行えるよう取り組んでいます。
子育て支援サービスの拡張①
進学塾の拡張についてご説明します。「VAMOS」は中学受験の進学塾ですが、昨今の傾向として、学びの機会の低年齢化への対応や学童を兼ねた機能などが求められています。そこで、月島エリアを中心に、保育所から進学塾へとつながりを深めた展開をしていきたいと考えています。
また、親子で楽しめるベーカリーカフェ「みらいのテーブル」を展開しながら、食べることについてもより関係性を深めていきたいと考えています。
子育て支援サービスの拡張②
システム開発についてご説明します。2023年7月期にシステムやアプリケーションの開発・運営を担うみらいパレットとBIPROGYが業務提携し、現在共同で開発・連携を行っています。BIPROGYの「mierun」というコミュニケーションツールを通じて情報を整理し、我々が得意とする分野と紐づけ、情報をやり取りしながら新サービスを提供している状況です。
子育て支援サービスの拡張③
我々の得意分野である、子育て支援サービスの拡張についてです。先ほどご案内したとおり、大きなプロジェクトとして「東京都港区西麻布プロジェクト」「東京都台東区浅草プロジェクト」をスタートし、現在着工・開発を行っています。
今年4月より「東京こどもすくすく住宅認定制度」という新制度が創設され、当プロジェクトも認定を受けています。子どもに優しい施設や住宅の企画・計画といったハードの部分だけではなく、子育て支援サービスや園長による無料相談などのソフトの部分も取り入れながら住宅の開発を進めています。
2024年7月期業績予想
2024年7月期業績予想についてご説明します。1点目のポイントは、現在開設している88ヶ所の施設について、安定的な売上をしっかりと作っていくことです。利用者に選ばれる保育所になるために、立地の良さはもちろん、一律的に良い保育や質の高い保育の提供・運用を軸にしながら、さらに集客していくことが必要です。
2点目として、今期販売予定の「子育て支援住宅 西麻布プロジェクト」をしっかりと売り切りたいと考えています。
3点目として、現在、保育所の新規開発のフェーズから入所率の向上や子ども子育て支援サービスの多角化へと、大きく転換が図られています。そこで、共働きの方々をしっかり応援できるように事業を組み立てています。
スライドの表にある太字部分が2024年7月期の着地予想です。売上高は167億7,300万円、営業利益は4億4,500万円、経常利益は5億5,200万円、当期純利益は4億2,900万円としています。売上高については「子育て支援住宅 西麻布プロジェクト」の販売等も入っているため、少し伸び率が高くなっています。
剰余金の配当(期末配当)
株主さまへの配当については、中長期的に配当性向20パーセントを目指しています。2023年7月期は1株あたり12円となりましたが、今期から16円へ増配していこうと計画しています。配当については、今後も着実に増やしていける環境を整えていきたいと考えています。
中期経営計画
中期経営計画について見直しがあったため、あらためてご説明します。2025年7月期の売上高は171億1,000万円、営業利益は7億3,000万円、2026年7月期の売上高は180億円、営業利益は8億5,000万円を計画しています。売上の向上とともに営業利益の向上を目指して数字を作っていきたい考えです。
この数字を作っていく根拠としては、まず保育所の安定的な運営があります。現状で80パーセント程度の稼働で、まだ3歳・4歳・5歳の層の空きがあるため、年々利用が増えていくだろうと考えています。また、子育て支援の不動産とそれに付随する事業をしっかりと作っていきたいと思っています。
特に、今年4月にM&Aした保育のデザイン研究所のオンラインコンテンツの販売に力を入れていきます。全国に保育所は3万5,000ヶ所、幼稚園などは1万5,000ヶ所、計5万ヶ所以上の保育施設があります。そのようなところに対して販売活動を行って研修を実施し、全国的に保育の質を底上げしていきたい考えです。
そのようなところを組み立てていきながら事業を拡張し、中期経営計画を達成していきたいと考えています。
質疑応答:コスト上昇への対応について
司会者:「引き続き食材や電気代等、さまざまな運営コストが上昇していると思いますが、コスト上昇にどのように対応していますか?」というご質問です。
西尾:コストに関しては、さまざまな削減計画を立てて実行しています。電気・ガス・水道の光熱費は上昇しており、やはり88園の保育所があるとかなり積み上がっていきます。しかし、少しずつ軽減することで圧縮できている状況です。
また、我々の中で一番かかってくるのは人件費です。人件費自体を下げることはできないのですが、リファラル採用を行うなど工夫をして単価を下げ、引き続き採用経費などの圧縮に努めています。
質疑応答:キャッシュフロー配分について
司会者:「今期も増配とのことですが、一方で新規事業も積極的に展開しています。中期的には、株主還元と新規事業への成長投資について、どのぐらいのキャッシュフロー配分を考えていますか?」というご質問です。
西尾:まだ細かい数値までは落とし込んでいませんが、当社グループは現在グロース市場です。要件的にはスタンダード市場を目指せる状態ですが、まだ成長フェーズにあると思っており、引き続き投資を行っていきたいと考えています。
今、自己資本比率が34パーセントぐらいの推移ですが、さらにそこを固めていくことも大事になってくると思います。事業の区分を含めてバランスを取りながら配分を行っていきたいと考えているところです。
質疑応答:新規事業について
司会者:「近年、御社は新規事業を増やしていますが、今後もさらに増やすのでしょうか?」というご質問です。
西尾:今取り組んでいる事業を固めていくことを、第一義的に考えていかねばならないため、各事業でしっかりと利益が積み上がっていく計画を作っていきたいと思っています。
ただし、私どもの事業の根幹として、目指す方向については、先ほど「子育DEGs」のところでもお伝えしたとおり、子ども・子育て支援だけではなく、共働きをされている方々を支援することで、子どもを生みやすく育てやすい社会環境ができると考えています。
必然的にそれに付随する事業の組み立ては出てくるのではないかと思っているため、そのあたりの投資をしっかりと検討していきたい考えです。
質疑応答:保育の良さについて
司会者:「保育の良さについて、計測事項や方法があれば、定量的に解説をお願いします」というご質問です。
西尾:保育は人の性質・性格という部分もあるため、その良さを定量的にお話ししていくことは非常に難しいです。日本でも、保育や幼児教育を受けた子どもたちの将来の収入が増えていくかどうかという調査などを始めた段階で、まだ個別の数字は出しにくいと思います。
指標としてあげるならば、入所率や、我々は地域にある程度特化して事業を展開しているため、そこでの認知度、口コミなどになると思います。定量的な解説としては入所率が一番適していると考えます。
質疑応答:保育所の今後の需要について
司会者:「『今後、就業準備中の母親などの保育所の受け入れ範囲を増やす』との新聞報道があります。今後、保育所の需要がこれまでの想定以上に増える可能性はあるのでしょうか?」というご質問です。
西尾:全体的な子どもの数は減っている状況ですが、保育所の利用率は年々上がってきています。東京都では、我々が事業を開始した2009年・2010年頃は、0歳から5歳の子どもがいる家庭の32パーセントぐらいが保育所を利用していたのですが、今は50パーセントを超えています。
加えて、今、こども家庭庁で検討中の「こども誰でも通園制度」が来年から始まる予定です。今までは両親が就労していることを前提に子どもをお預かりしてきましたが、少子化対策の一環として、働いていなくても子どもを預けられるルールが全国的に図られようとしています。
我々が中心となって事業を広めているエリアでは、核家族化が進んでいる状況です。誰の助けもなしに子育てをせざるを得ない環境から、保育所という、子育てに知見のあるところに相談しながら子どもを預けていけるようにルール化されようとしています。そのため、我々としては分母が増えてくると考えています。
質疑応答:新規事業について
司会者:先ほどの新規事業について追加のご質問です。「買収や提携を決定する時の指標はあるのでしょうか?」というご質問です。
西尾:さまざまなデューデリジェンスを多く行っています。事業によって多少の変更はありますが、自分たちの数字の指標があり、のれん倒れをしないことなどもあわせて、今後の成長率も含めた金額を設定しています。
今まで検討も含めて件数をこなしてきて、駄目になるケースやうまくいくケースがありました。やはり高買いは望ましくないと思っていますので、自分たちの指標をしっかり持って取得している状況です。細かい数字については、ここでは控えさせていただければと思います。
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