量子コンピュータを用いた処方自動生成システムの適用範囲をマスカラリムーバーに拡張 国際的な化粧品技術の研究発表会 IFSCCにて発表
株式会社コーセー(本社:東京都中央区、代表取締役社長:小林 一俊)は、開発した量子コンピュータを用いた化粧品の自動処方生成システム(※1)の適用範囲をマスカラリムーバーに拡張しました。わずか10秒程度で生成した処方に基づいたマスカラリムーバーは実際にマスカラを落とす効果が確認できており、処方自動生成に成功した剤型は前回のクレンジングオイルに加えて2つめとなります。
本研究成果の一部は、2023年9月4日~7日にスペイン・バルセロナで開催された国際的な化粧品技術の研究発表会「第33回 国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)学術大会」にて発表しました。
(※1)2023年1月31日発行リリース https://corp.kose.co.jp/ja/news/7839/
図1 自動生成したマスカラリムーバーの効果検証
発表の概要
タイトル:
量子コンピュータが化粧品の処方設計を変える
―HSP理論による組み合わせ最適化問題を用いた革新的な製造プロセス―
Quantum Computing Changes Formulation Design of Cosmetics
- Innovative manufacturing process employing a combinatorial optimization problem using HSP theory -
発表者:
コーセー研究所 先端技術研究室 兼 コーセー 情報統括部 帯金 駿
概要:
量子コンピュータ技術は多岐にわたる分野で応用が検討されていますが、当社では2019年から、この技術の化粧品開発への応用を模索してきました。特に着目したのが化粧品の処方開発であり、これは無数にある原料の種類や配合量の組合せから、目標品質に向けて最適な組み合わせ(処方)を設計するプロセスです。量子コンピュータはその高い演算能力から、このプロセスに適合できると考え、化粧品の処方設計に応用できるシステムの開発に着手しました。
当社が開発した化粧品処方を自動的に生成する処方自動生成システムは、量子コンピュータの高い演算能力を利用しつつ、正しい解を導き出しにくいという課題を従来型コンピュータで補ったハイブリッド型のアルゴリズムとなります。このシステムを用いて、角栓の溶解に特化したクレンジングオイル処方の生成を試みたところ、わずか10秒程度で高い角栓除去能を持つ処方を生成できることを確認しました。さらに、汗や涙で落ちにくいマスカラを簡単に落とすことが出来るマスカラリムーバー処方の生成を試みたところ、強固に付着したマスカラを十分に除去することができる処方を自動生成することができました(図1)。
今後の展望
今回、量子コンピュータによる処方自動生成システムの適用範囲を前回のクレンジングオイルからマスカラリムーバーまで拡張することができました。今後も化粧品開発における本システムの適用範囲を拡げ、化粧品開発者と協創することで、効率的かつ人間だけでは思いつかないような新たな化粧品開発を目指していきます。
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