*14:46JST サイジニア Research Memo(6):ZETAの経営統合により収益体質が大きく向上
■サイジニア<6031>の取り組み
2021年7月のZETAの経営統合やデジタルマーケティング市場の変化など、近年、同社業績に影響を与える内外の環境変化が発生しているが、これに対して同社は構造改革を含め様々な取り組みを進めてきた。
1. ZETAの経営統合
内部環境における最もポジティブな変化は、2021年7月にZETAを子会社化したことである。同社とZETAはレコメンドを祖業とするが、同社はデクワスを買収してネット広告サービスへ、ZETAはECサイト内検索エンジンへと事業を拡大した。統合に際し、同社は研究開発やM&Aなどホールディングス事業、デクワスはフロー型収益のネット広告事業、ZETAは店頭接客DX(旧OMO推進サービス)やECサイト内検索などストック型収益のCX改善サービス事業へと、組織体制をバランスよく効率的に改編した。高採算のストック型収益であるCX改善サービスを強化することで全社の売上総利益率を向上させる方針に沿ったもので、統合シナジーの強化と機能補完の観点から経営統合の好例と評価できる。また、祖業が同じであることから、同社とZETAの統合はスムーズに進んでシナジーを発揮しやすい環境を創出し、ストック型収益の構成比が上がったことで収益力のバランスと財務体質の強化が図れたことや、両社の優秀なエンジニアの相互活用といったシナジーを享受している。
ネット広告サービスに逆風、CX改善サービスに追い風の環境変化
2. デジタルマーケティング市場の環境変化
デジタルマーケティング市場など外部環境における大きな変化としては、対話型AIの利用普及やクッキー規制などがあげられる。なかでも、個人情報保護の観点から、3PCを使った情報取得が制限されるクッキー規制の影響が大きく、ポストクッキー時代には3PCを前提としたリターゲティング広告などが難しくなると言われている。このため、早くも広告主が広告手法を見直しはじめており、インターネット広告における競争が激化、結果的に同社のネット広告サービスも苦戦を強いられることとなった。一方ポストクッキーでは、ユーザーが能動的に訪問したくなる仕組みや、訪問したユーザーのコンバージョンレートを引き上げる施策が重要になってくる。同社のCX改善サービスはこれらを網羅していることに加え、ネット広告サービスで蓄積したリスティングノウハウをCX改善サービスに横展開できることから、ポストクッキーはCX改善サービスにとって追い風になると考えられる。さらに、EC事業者のサイトがリテールメディアとしての付加価値を高めていくことが予想されるが、これらの動きもCX改善サービスにとって追い風になると見込まれる。
CX改善サービスに経営資源を集中する一方、ネット広告サービスの撤退を決断
3. 環境変化に対する取り組み
こうした内外環境変化のなかで、同社は成長を加速させるためこれまでに、1) CX改善サービスへの経営資源集中、2) ネット広告サービスの効率化、3) コスト効率の改善などの施策を推進した。1) CX改善サービスへの経営資源集中では、継続的な成長が見込まれるCX改善サービスに経営資源を集中させている。また、ポストクッキーやリテールメディアテックを見据えた新サービスを積極的に開発することで、サービス領域の拡大を図っている。例えば、2022年7月にリリースした「ZETA HASHTAG」(2023年1月に特許取得)は、「ZETA VOICE」などで収集した商品説明やクチコミを解析してキーワードを抽出し、商品詳細ページのハッシュタグを自動生成するサービスで、サイト内での回遊性を高めるほか、クッキー規制への対策としても有効である。このほかにも、新サービスとしてECサイト内検索連動広告「デクワス.LISTING」や、ECサイトでの商品購入までの導線を自動最適化する「ZETA Tracking」をリリースしている。また、「ZETA SEARCH CHAT EXTENSION」や「ZETA VOICEコンテンツチェック機能」など、既存サービスに対話型AIを活用したアップグレードも進めた。なお、AI技術を強化するため、サイジニアアドバンスド研究所(SARI)を立ち上げた。2)ネット広告サービスの効率化では、リターゲティング広告からリスティング広告にシフトし、ネット広告サービスの収益悪化に歯止めをかける方針であった。3) コスト効率の改善では、本社の統合や従業員の再配置など組織の見直しを進めた。結果的に、1) CX改善サービスへの経営資源集中と3) コスト効率の改善は順調に進んだが、2) ネット広告サービスの効率化については、クッキー規制の影響が想定より早く生じたこともあって、課題を残すこととなった。このため同社は、構造改革を仕上げ、成長をより確実なものにするため、2023年7月にネット広告に関わる事業を売却、ネット広告サービスからの撤退を決断した。低採算事業からの撤退を躊躇する企業が多いなか、同社の英断は評価に値する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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2021年7月のZETAの経営統合やデジタルマーケティング市場の変化など、近年、同社業績に影響を与える内外の環境変化が発生しているが、これに対して同社は構造改革を含め様々な取り組みを進めてきた。
1. ZETAの経営統合
内部環境における最もポジティブな変化は、2021年7月にZETAを子会社化したことである。同社とZETAはレコメンドを祖業とするが、同社はデクワスを買収してネット広告サービスへ、ZETAはECサイト内検索エンジンへと事業を拡大した。統合に際し、同社は研究開発やM&Aなどホールディングス事業、デクワスはフロー型収益のネット広告事業、ZETAは店頭接客DX(旧OMO推進サービス)やECサイト内検索などストック型収益のCX改善サービス事業へと、組織体制をバランスよく効率的に改編した。高採算のストック型収益であるCX改善サービスを強化することで全社の売上総利益率を向上させる方針に沿ったもので、統合シナジーの強化と機能補完の観点から経営統合の好例と評価できる。また、祖業が同じであることから、同社とZETAの統合はスムーズに進んでシナジーを発揮しやすい環境を創出し、ストック型収益の構成比が上がったことで収益力のバランスと財務体質の強化が図れたことや、両社の優秀なエンジニアの相互活用といったシナジーを享受している。
ネット広告サービスに逆風、CX改善サービスに追い風の環境変化
2. デジタルマーケティング市場の環境変化
デジタルマーケティング市場など外部環境における大きな変化としては、対話型AIの利用普及やクッキー規制などがあげられる。なかでも、個人情報保護の観点から、3PCを使った情報取得が制限されるクッキー規制の影響が大きく、ポストクッキー時代には3PCを前提としたリターゲティング広告などが難しくなると言われている。このため、早くも広告主が広告手法を見直しはじめており、インターネット広告における競争が激化、結果的に同社のネット広告サービスも苦戦を強いられることとなった。一方ポストクッキーでは、ユーザーが能動的に訪問したくなる仕組みや、訪問したユーザーのコンバージョンレートを引き上げる施策が重要になってくる。同社のCX改善サービスはこれらを網羅していることに加え、ネット広告サービスで蓄積したリスティングノウハウをCX改善サービスに横展開できることから、ポストクッキーはCX改善サービスにとって追い風になると考えられる。さらに、EC事業者のサイトがリテールメディアとしての付加価値を高めていくことが予想されるが、これらの動きもCX改善サービスにとって追い風になると見込まれる。
CX改善サービスに経営資源を集中する一方、ネット広告サービスの撤退を決断
3. 環境変化に対する取り組み
こうした内外環境変化のなかで、同社は成長を加速させるためこれまでに、1) CX改善サービスへの経営資源集中、2) ネット広告サービスの効率化、3) コスト効率の改善などの施策を推進した。1) CX改善サービスへの経営資源集中では、継続的な成長が見込まれるCX改善サービスに経営資源を集中させている。また、ポストクッキーやリテールメディアテックを見据えた新サービスを積極的に開発することで、サービス領域の拡大を図っている。例えば、2022年7月にリリースした「ZETA HASHTAG」(2023年1月に特許取得)は、「ZETA VOICE」などで収集した商品説明やクチコミを解析してキーワードを抽出し、商品詳細ページのハッシュタグを自動生成するサービスで、サイト内での回遊性を高めるほか、クッキー規制への対策としても有効である。このほかにも、新サービスとしてECサイト内検索連動広告「デクワス.LISTING」や、ECサイトでの商品購入までの導線を自動最適化する「ZETA Tracking」をリリースしている。また、「ZETA SEARCH CHAT EXTENSION」や「ZETA VOICEコンテンツチェック機能」など、既存サービスに対話型AIを活用したアップグレードも進めた。なお、AI技術を強化するため、サイジニアアドバンスド研究所(SARI)を立ち上げた。2)ネット広告サービスの効率化では、リターゲティング広告からリスティング広告にシフトし、ネット広告サービスの収益悪化に歯止めをかける方針であった。3) コスト効率の改善では、本社の統合や従業員の再配置など組織の見直しを進めた。結果的に、1) CX改善サービスへの経営資源集中と3) コスト効率の改善は順調に進んだが、2) ネット広告サービスの効率化については、クッキー規制の影響が想定より早く生じたこともあって、課題を残すこととなった。このため同社は、構造改革を仕上げ、成長をより確実なものにするため、2023年7月にネット広告に関わる事業を売却、ネット広告サービスからの撤退を決断した。低採算事業からの撤退を躊躇する企業が多いなか、同社の英断は評価に値する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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