*14:48JST アンジェス Research Memo(8):研究開発費の減少で2023年12月期第1四半期の営業損失は縮小
■業績動向
1. 2023年12月期第1四半期の業績概要
アンジェス<4563>の2023年12月期第1四半期の事業収益は前年同期比7.9%増の16百万円、営業損失は3,036百万円(前年同期は3,543百万円の損失)、経常損失は2,897百万円(同2,934百万円の損失)、親会社株主に帰属する四半期純損失は2,911百万円(同2,938百万円の損失)となった。
事業収益は、ACRLにおいて実施している希少遺伝性疾患のオプショナルスクリーニング検査による手数料収入が前年同期比1百万円増加の16百万円となった。「コラテジェン(R)」に関しては当面の治療に必要な数量の出荷を完了していることから、売上高は0百万円となっており、計画通りの進捗となっている。売上原価は同8百万円増加の25百万円となった。ACRLにおける新規検査機器導入に伴う減価償却相当額が同5百万円増加したほか、「コラテジェン(R)」の使用期限切れによる廃棄が見込まれる製品の評価損3百万円を計上した。
研究開発費は同688百万円減少の1,579百万円となった。前期に新型コロナウイルス感染症向けワクチンの国内での開発を中止したことにより、研究用材料費が200百万円、外注費が491百万円減少した。また、販管費は同173百万円増加の1,448百万円となった、為替の円安進行によりEmendoののれん償却額が同87百万円増加の725百万円となったほか、Emendoにおける弁護士等専門家及びコンサルタントへの報酬増加により、支払手数料が24百万円増加した。営業外収支は469百万円悪化した。外貨預金及びEmendoへの貸付金の期末評価替えに伴う為替差益が412百万円減少したほか、補助金収入が52百万円減少したことによる。この結果、経常損失は37百万円の縮小にとどまった。
2023年12月期の経常損失は補助金収入の計上により縮小見込み
2. 2023年12月期の業績見通し
2023年12月期の業績は事業収益で前期比123百万円増加の190百万円、営業損失で同816百万円縮小の15,500百万円、経常損失で同4,710百万円縮小の9,900百万円、親会社株主に帰属する当期純損失で同4,714百万円縮小の10,000百万円と期初計画を据え置いた。為替の前提レートは133円/米ドル(前期は131.64円/米ドル)としている。
事業収益は、「コラテジェン(R)」の製品売上高で約20百万円、オプショナルスクリーニング検査の手数料収入で約170百万円を見込んでおり、手数料収入が主な増収要因となる。スクリーニング検査件数の増加を見込んでいるほか、下期からは簡便なスクリーニング検査に加えて確定検査業務にも広げ、「ゾキンヴィ」の適応症となるHGPS及びPLも検査項目に加える予定としている。また、将来的には治療効果をモニタリングするためのバイオマーカーの検査にも展開し、希少遺伝性疾患に対する診断から治療までの包括的な検査体制を構築していく。同社ではこうした検査体制を構築することで、希少遺伝性疾患領域での新たな開発品候補を見出し、パイプラインの拡充を進めていく戦略となっている。
研究開発費については、新型コロナウイルスワクチン関連の開発費用がなくなることで同社単体では減少するものの、EmendoでELANE関連SCNの臨床試験を開始するなど開発費の増加を見込んでいることから、通期では100億円程度と前期の10,999百万円から若干の減少で計画に織り込んでいたが、第1四半期の進捗状況を見ると、70億円程度に収まる可能性もある。一方、販管費は若干の増加を見込み、人員については連結ペースで前期末比横ばい水準を予定している(前期末138名、うち単体39名)。
なお、経常損失が前期比で大幅に縮小する見込みとなっているが、前述のとおり国内における新型コロナウイルスワクチン開発に関連した補助金収入が計上される予定となっているためだ。前受金として5,764百万円を計上しているが、諸費用を除いて約54億円の計上を計画に織り込んでいる。一方で、前期に計上した為替差益1,322百万円がなくなることも前提としている(為替が前提レート133円/米ドルよりも円安に進めば発生する可能性がある)。
研究開発資金調達のため第三者割当による新株予約権を発行
3. 財務状況について
2023年12月期第1四半期末の財務状況を見ると、資産合計は前期末比1,627百万円減少の37,193百万円となった。流動資産では、「コラテジェン(R)」の第2四半期以降の出荷に備えるため、製品と原材料及び貯蔵品が合計で543百万円増加した一方で、現金及び預金が1,540百万円、未収消費税等が337百万円それぞれ減少した。固定資産ではのれんが584百万円減少し、Vasomuneへの出資により投資有価証券が282百万円増加した。
負債は前期末比102百万円増加の8,497百万円となった。未払金が175百万円、未払法人税等が79百万円それぞれ減少した一方で、「コラテジェン(R)」の原薬購入に伴い買掛金が412百万円増加した。純資産は前期末比1,729百万円減少の28,695百万円となった。新株予約権の行使に伴い資本金及び資本剰余金がそれぞれ538百万円増加したほか、のれんに係る為替変動の影響により為替換算調整勘定が83百万円増加した一方で、親会社株主に帰属する四半期純損失2,911百万円の計上により利益剰余金が減少した。
なお、同社は今後の研究開発費用等の資金調達を目的として、2023年7月に第三者割当による行使価額修正条項付き新株予約権の発行を予定している。当初行使価額は122円(下限行使価額74円)で潜在株式数は44,639千株、希薄化率は24.99%となる。想定調達金額は5,418百万円で、このうち3,218百万円を「コラテジェン(R)」の国内における正式承認に向けた製造販売費用並びにグローバルでの製品価値最大化に向けた製法・生産プロセスの効率化を企図した研究開発費用並びに米国での臨床試験費用に充当する。また、1,500百万円を「ゾキンヴィ」の原薬購入費用や販売に向けたマーケティング費用、アイガーに対するマイルストーンの支払い費用に充当し、残り700百万円を慢性椎間板性腰痛症NF-κBデコイオリゴDNAの国内における臨床試験費用やアカデミアとの共同研究費用等に充当する予定である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<SI>
1. 2023年12月期第1四半期の業績概要
アンジェス<4563>の2023年12月期第1四半期の事業収益は前年同期比7.9%増の16百万円、営業損失は3,036百万円(前年同期は3,543百万円の損失)、経常損失は2,897百万円(同2,934百万円の損失)、親会社株主に帰属する四半期純損失は2,911百万円(同2,938百万円の損失)となった。
事業収益は、ACRLにおいて実施している希少遺伝性疾患のオプショナルスクリーニング検査による手数料収入が前年同期比1百万円増加の16百万円となった。「コラテジェン(R)」に関しては当面の治療に必要な数量の出荷を完了していることから、売上高は0百万円となっており、計画通りの進捗となっている。売上原価は同8百万円増加の25百万円となった。ACRLにおける新規検査機器導入に伴う減価償却相当額が同5百万円増加したほか、「コラテジェン(R)」の使用期限切れによる廃棄が見込まれる製品の評価損3百万円を計上した。
研究開発費は同688百万円減少の1,579百万円となった。前期に新型コロナウイルス感染症向けワクチンの国内での開発を中止したことにより、研究用材料費が200百万円、外注費が491百万円減少した。また、販管費は同173百万円増加の1,448百万円となった、為替の円安進行によりEmendoののれん償却額が同87百万円増加の725百万円となったほか、Emendoにおける弁護士等専門家及びコンサルタントへの報酬増加により、支払手数料が24百万円増加した。営業外収支は469百万円悪化した。外貨預金及びEmendoへの貸付金の期末評価替えに伴う為替差益が412百万円減少したほか、補助金収入が52百万円減少したことによる。この結果、経常損失は37百万円の縮小にとどまった。
2023年12月期の経常損失は補助金収入の計上により縮小見込み
2. 2023年12月期の業績見通し
2023年12月期の業績は事業収益で前期比123百万円増加の190百万円、営業損失で同816百万円縮小の15,500百万円、経常損失で同4,710百万円縮小の9,900百万円、親会社株主に帰属する当期純損失で同4,714百万円縮小の10,000百万円と期初計画を据え置いた。為替の前提レートは133円/米ドル(前期は131.64円/米ドル)としている。
事業収益は、「コラテジェン(R)」の製品売上高で約20百万円、オプショナルスクリーニング検査の手数料収入で約170百万円を見込んでおり、手数料収入が主な増収要因となる。スクリーニング検査件数の増加を見込んでいるほか、下期からは簡便なスクリーニング検査に加えて確定検査業務にも広げ、「ゾキンヴィ」の適応症となるHGPS及びPLも検査項目に加える予定としている。また、将来的には治療効果をモニタリングするためのバイオマーカーの検査にも展開し、希少遺伝性疾患に対する診断から治療までの包括的な検査体制を構築していく。同社ではこうした検査体制を構築することで、希少遺伝性疾患領域での新たな開発品候補を見出し、パイプラインの拡充を進めていく戦略となっている。
研究開発費については、新型コロナウイルスワクチン関連の開発費用がなくなることで同社単体では減少するものの、EmendoでELANE関連SCNの臨床試験を開始するなど開発費の増加を見込んでいることから、通期では100億円程度と前期の10,999百万円から若干の減少で計画に織り込んでいたが、第1四半期の進捗状況を見ると、70億円程度に収まる可能性もある。一方、販管費は若干の増加を見込み、人員については連結ペースで前期末比横ばい水準を予定している(前期末138名、うち単体39名)。
なお、経常損失が前期比で大幅に縮小する見込みとなっているが、前述のとおり国内における新型コロナウイルスワクチン開発に関連した補助金収入が計上される予定となっているためだ。前受金として5,764百万円を計上しているが、諸費用を除いて約54億円の計上を計画に織り込んでいる。一方で、前期に計上した為替差益1,322百万円がなくなることも前提としている(為替が前提レート133円/米ドルよりも円安に進めば発生する可能性がある)。
研究開発資金調達のため第三者割当による新株予約権を発行
3. 財務状況について
2023年12月期第1四半期末の財務状況を見ると、資産合計は前期末比1,627百万円減少の37,193百万円となった。流動資産では、「コラテジェン(R)」の第2四半期以降の出荷に備えるため、製品と原材料及び貯蔵品が合計で543百万円増加した一方で、現金及び預金が1,540百万円、未収消費税等が337百万円それぞれ減少した。固定資産ではのれんが584百万円減少し、Vasomuneへの出資により投資有価証券が282百万円増加した。
負債は前期末比102百万円増加の8,497百万円となった。未払金が175百万円、未払法人税等が79百万円それぞれ減少した一方で、「コラテジェン(R)」の原薬購入に伴い買掛金が412百万円増加した。純資産は前期末比1,729百万円減少の28,695百万円となった。新株予約権の行使に伴い資本金及び資本剰余金がそれぞれ538百万円増加したほか、のれんに係る為替変動の影響により為替換算調整勘定が83百万円増加した一方で、親会社株主に帰属する四半期純損失2,911百万円の計上により利益剰余金が減少した。
なお、同社は今後の研究開発費用等の資金調達を目的として、2023年7月に第三者割当による行使価額修正条項付き新株予約権の発行を予定している。当初行使価額は122円(下限行使価額74円)で潜在株式数は44,639千株、希薄化率は24.99%となる。想定調達金額は5,418百万円で、このうち3,218百万円を「コラテジェン(R)」の国内における正式承認に向けた製造販売費用並びにグローバルでの製品価値最大化に向けた製法・生産プロセスの効率化を企図した研究開発費用並びに米国での臨床試験費用に充当する。また、1,500百万円を「ゾキンヴィ」の原薬購入費用や販売に向けたマーケティング費用、アイガーに対するマイルストーンの支払い費用に充当し、残り700百万円を慢性椎間板性腰痛症NF-κBデコイオリゴDNAの国内における臨床試験費用やアカデミアとの共同研究費用等に充当する予定である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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