*14:29JST ジェイ・エス・ビー Research Memo(9):中期経営計画の最終年度は上方修正した目標数値の達成を目指す(3)
■ジェイ・エス・ビー<3480>の中長期の成長戦略
(2) 高齢者住宅事業
高齢者住宅事業のコンセプトは「高齢者住宅をコアに多世代共生型のまちづくりを目指す」である。具体的には高齢者住宅入居者の不動産利活用によって空き家問題を解決し、高齢者住宅の地域公民館化(オンライン含む)、在宅生活支援などを通じて地域課題を解決する事業展開を図る。こうした高齢者住宅事業のコンセプトに基づいて、中期経営計画では以下の施策を計画する。
第1に、高齢者住宅の地域公民館化の推進を図る。実現に向けた施策として、1) リアルとオンラインのハイブリッド型による公民館化の推進、2) 地域イベントの開催サポート、3)高齢者住宅間の相互訪問による交流などを計画する。地域住民向けの古着・おもちゃの再利用イベントなど、各住宅において小規模ではあるがリアル開催を実施し、今後は地域住民参加型も徐々に実施する予定だ。また、地域との交流促進に向け、地域包括支援センターとボッチャ競技体験会を継続開催している。進捗評価はBで予定どおりに進捗している。
第2に、高齢者所有不動産の利活用促進を目指す。そのための施策として、1) 高齢者住宅への入居時等に所有不動産の利活用・売却支援、2) 世代間ホームシェア、3) 生前整理サポートなどを計画している。高齢者住宅入居時における所有不動産の売却支援は地域の空き家対策にもつながるため継続的に取り組んでいるが、利活用の一案であるホームシェアはコロナ禍のため提案を見合わせている。また、不用品処理等の自宅整理も支援している。進捗評価はBで予定どおりに進捗している。
同社では、2021年3月にハウスドゥグループ(現 And Doホールディングス<3457>)と業務提携を行い、高齢者住宅への入居者に対し自宅などの不動産の査定・売却、不動産に関する情報提供、不動産有効活用等に関する提案を開始している。高齢者住宅周辺に極力空き家を発生させずに地域の活力維持につなげる方針だ。
第3に、在宅生活支援の拡充を図る。実現のための施策として、1) 福祉用具貸与及び介護リフォームの提供エリア拡大、2) 見守り事業の開始、3) 看護体制強化、ヘルステックの利活用などを計画する。現在、提供中のエリアについては深掘りが進んでおり、今後は福祉用具貸与の提供エリアの拡大により、件数を増加する計画である。また、一部の高齢者住宅では、DXによる生産性向上や、VRを活用した認知機能トレーニングの実証実験にも取り組んでいる。進捗評価はBで予定どおりに進捗している。
高齢者住宅事業の具体的取り組み事例としては、DXによる生産性向上では、一部住宅に導入した掃除ロボット「Whiz i(ウィズ アイ)」が自動運転で清掃を行うことで、職員は介護業務に専念できる。24時間見守り機器「Tellus(テラス)」は、健康確認だけでなく、入居者のくらしを見える化することで、職員の負担軽減を実現している。また、2022年8月には資金を「社会的課題を解決する事業」に充当することを目的としたソーシャルローン契約を京都銀行<8369>と締結し、調達した資金をサービス付き高齢者向け住宅「グランメゾン迎賓館 京都桂川」の取得に活用した。食堂施設の一般開放や健康運動の教室等のイベントなどの開催を通じて“地域の公民館”として地域課題を解決するプラットホームとすることを目指している。同じく「グランメゾン迎賓館 京都桂川」では、2022年12月より高齢者住宅でVRゲームを活用した認知機能維持向上の実証事業への取り組みを開始した。
(3) 新規事業
中期経営計画では、従来からの事業の柱である不動産賃貸管理事業と高齢者住宅事業に加えて、新規事業の強化も計画する。グループシナジーの発揮を目指した施策として、1) 新たな若者成長支援サービス開始、2) HR(人材)事業プラットフォームの提供開始、3) 留学生や外国人材の活躍促進などを推進する。「学生会館NCRe京都深草」では、2022年4月より新築物件で「若者成長支援」として月1回の講座をマンション食堂で実施し、2023年には他2棟でも実施予定であるほか、「HR事業プラットフォーム」では、就職支援から有料職業紹介へと情報のマネタイズ化に着手し、「外国⼈材活躍」では、日本語学校定員を増員し、受⼊数及び輩出数増加に取り組むなどの成果があり、進捗評価はBで予定どおりに進捗している。
学生マンション事業を展開するUniLifeの入居者に対して、学生に対する就職活動、キャリアアップ、学生生活支援を行うOVO、大学生を対象にしたキャリア教育・支援を行うスタイルガーデン、AI人材のプラットフォーム事業を行うMewcket、幼児教室を運営するUniOVOこどもの森、日本語学校の日本国際語学アカデミーなど、同社グループの各社が協力・連携することでグループシナジーを発揮する計画である。その中から将来の事業の柱となる新たな事業を発掘し、育成を図る戦略である。実績として、スタイルガーデンでは、入居学生を中心に「第0新卒プログラム」としてビジネススクール、インターンシップ、キャリア支援を行い、また自己分析、面接対策、企業紹介など就活支援サービスも提供している。2021年6月に名古屋拠点を開設したことにより大阪・広島と合わせて3拠点体制へ拡大し、現在4拠点目を計画中である。また、日本国際語学アカデミーでは、京都、函館、福岡の3校とも出入国在留管理庁から「在籍管理優良校」または「適正校」に認定されたことで、留学生の在留許可申請の提出書類の一部が簡素化されるなど、留学生へのサポート機能を強化している。入国規制の緩和に伴い、留学生は今春からは増加に転じる見通しだ。同社グループでは、このように住居や生活面でのサポートをすることで、賃貸管理事業とのシナジーを図る考えだ。
3. ESGへの取り組み
同社では、「豊かな生活空間の創造」を経営理念として掲げており、ESG(環境・社会・ガバナンス)にも積極的に取り組んでいる。環境(Environment)では、低炭素型社会実現へ向けてDXにより生産性を向上するとともに、新たに学生マンション・高齢者住宅等で古着の回収・販売を開始した。社会(Social)では、学生支援への取り組みとして、「Little You 2022 ~Unite for Challenge~ Supported by UniLife」の公式冠スポンサーに2021年に引き続き就任し、叶えたい夢のある学生に対して自由に使える資金を支給した。また、「学生下宿年鑑2023 表紙デザインコンペ」を実施し、表紙採用者には旅行券10万円分を賞品とし、学生が知見を広める一助としている。ガバナンス(Governance)では、企業価値の最大化に向けて、任意の委員会として報酬委員会・指名委員会を設置するとともに取締役への業績連動報酬制度や株式報酬制度を導入した。このように、同社グループは業績拡大を目指すだけでなく、ESGにも積極的に取り組んでいると評価できる。「Global Sustainable Investment Review:Trends Report 2020」によれば、世界的に企業の環境・社会・ガバナンスへの姿勢を重視して企業を選別する「ESG投資」が拡大しており、わが国でも2014年の70億米ドルから2020年には2兆8,740億米ドルへと急拡大し今後もこの潮流は続くと見られる。その意味でも、同社グループの前向きな取り組みが注目される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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(2) 高齢者住宅事業
高齢者住宅事業のコンセプトは「高齢者住宅をコアに多世代共生型のまちづくりを目指す」である。具体的には高齢者住宅入居者の不動産利活用によって空き家問題を解決し、高齢者住宅の地域公民館化(オンライン含む)、在宅生活支援などを通じて地域課題を解決する事業展開を図る。こうした高齢者住宅事業のコンセプトに基づいて、中期経営計画では以下の施策を計画する。
第1に、高齢者住宅の地域公民館化の推進を図る。実現に向けた施策として、1) リアルとオンラインのハイブリッド型による公民館化の推進、2) 地域イベントの開催サポート、3)高齢者住宅間の相互訪問による交流などを計画する。地域住民向けの古着・おもちゃの再利用イベントなど、各住宅において小規模ではあるがリアル開催を実施し、今後は地域住民参加型も徐々に実施する予定だ。また、地域との交流促進に向け、地域包括支援センターとボッチャ競技体験会を継続開催している。進捗評価はBで予定どおりに進捗している。
第2に、高齢者所有不動産の利活用促進を目指す。そのための施策として、1) 高齢者住宅への入居時等に所有不動産の利活用・売却支援、2) 世代間ホームシェア、3) 生前整理サポートなどを計画している。高齢者住宅入居時における所有不動産の売却支援は地域の空き家対策にもつながるため継続的に取り組んでいるが、利活用の一案であるホームシェアはコロナ禍のため提案を見合わせている。また、不用品処理等の自宅整理も支援している。進捗評価はBで予定どおりに進捗している。
同社では、2021年3月にハウスドゥグループ(現 And Doホールディングス<3457>)と業務提携を行い、高齢者住宅への入居者に対し自宅などの不動産の査定・売却、不動産に関する情報提供、不動産有効活用等に関する提案を開始している。高齢者住宅周辺に極力空き家を発生させずに地域の活力維持につなげる方針だ。
第3に、在宅生活支援の拡充を図る。実現のための施策として、1) 福祉用具貸与及び介護リフォームの提供エリア拡大、2) 見守り事業の開始、3) 看護体制強化、ヘルステックの利活用などを計画する。現在、提供中のエリアについては深掘りが進んでおり、今後は福祉用具貸与の提供エリアの拡大により、件数を増加する計画である。また、一部の高齢者住宅では、DXによる生産性向上や、VRを活用した認知機能トレーニングの実証実験にも取り組んでいる。進捗評価はBで予定どおりに進捗している。
高齢者住宅事業の具体的取り組み事例としては、DXによる生産性向上では、一部住宅に導入した掃除ロボット「Whiz i(ウィズ アイ)」が自動運転で清掃を行うことで、職員は介護業務に専念できる。24時間見守り機器「Tellus(テラス)」は、健康確認だけでなく、入居者のくらしを見える化することで、職員の負担軽減を実現している。また、2022年8月には資金を「社会的課題を解決する事業」に充当することを目的としたソーシャルローン契約を京都銀行<8369>と締結し、調達した資金をサービス付き高齢者向け住宅「グランメゾン迎賓館 京都桂川」の取得に活用した。食堂施設の一般開放や健康運動の教室等のイベントなどの開催を通じて“地域の公民館”として地域課題を解決するプラットホームとすることを目指している。同じく「グランメゾン迎賓館 京都桂川」では、2022年12月より高齢者住宅でVRゲームを活用した認知機能維持向上の実証事業への取り組みを開始した。
(3) 新規事業
中期経営計画では、従来からの事業の柱である不動産賃貸管理事業と高齢者住宅事業に加えて、新規事業の強化も計画する。グループシナジーの発揮を目指した施策として、1) 新たな若者成長支援サービス開始、2) HR(人材)事業プラットフォームの提供開始、3) 留学生や外国人材の活躍促進などを推進する。「学生会館NCRe京都深草」では、2022年4月より新築物件で「若者成長支援」として月1回の講座をマンション食堂で実施し、2023年には他2棟でも実施予定であるほか、「HR事業プラットフォーム」では、就職支援から有料職業紹介へと情報のマネタイズ化に着手し、「外国⼈材活躍」では、日本語学校定員を増員し、受⼊数及び輩出数増加に取り組むなどの成果があり、進捗評価はBで予定どおりに進捗している。
学生マンション事業を展開するUniLifeの入居者に対して、学生に対する就職活動、キャリアアップ、学生生活支援を行うOVO、大学生を対象にしたキャリア教育・支援を行うスタイルガーデン、AI人材のプラットフォーム事業を行うMewcket、幼児教室を運営するUniOVOこどもの森、日本語学校の日本国際語学アカデミーなど、同社グループの各社が協力・連携することでグループシナジーを発揮する計画である。その中から将来の事業の柱となる新たな事業を発掘し、育成を図る戦略である。実績として、スタイルガーデンでは、入居学生を中心に「第0新卒プログラム」としてビジネススクール、インターンシップ、キャリア支援を行い、また自己分析、面接対策、企業紹介など就活支援サービスも提供している。2021年6月に名古屋拠点を開設したことにより大阪・広島と合わせて3拠点体制へ拡大し、現在4拠点目を計画中である。また、日本国際語学アカデミーでは、京都、函館、福岡の3校とも出入国在留管理庁から「在籍管理優良校」または「適正校」に認定されたことで、留学生の在留許可申請の提出書類の一部が簡素化されるなど、留学生へのサポート機能を強化している。入国規制の緩和に伴い、留学生は今春からは増加に転じる見通しだ。同社グループでは、このように住居や生活面でのサポートをすることで、賃貸管理事業とのシナジーを図る考えだ。
3. ESGへの取り組み
同社では、「豊かな生活空間の創造」を経営理念として掲げており、ESG(環境・社会・ガバナンス)にも積極的に取り組んでいる。環境(Environment)では、低炭素型社会実現へ向けてDXにより生産性を向上するとともに、新たに学生マンション・高齢者住宅等で古着の回収・販売を開始した。社会(Social)では、学生支援への取り組みとして、「Little You 2022 ~Unite for Challenge~ Supported by UniLife」の公式冠スポンサーに2021年に引き続き就任し、叶えたい夢のある学生に対して自由に使える資金を支給した。また、「学生下宿年鑑2023 表紙デザインコンペ」を実施し、表紙採用者には旅行券10万円分を賞品とし、学生が知見を広める一助としている。ガバナンス(Governance)では、企業価値の最大化に向けて、任意の委員会として報酬委員会・指名委員会を設置するとともに取締役への業績連動報酬制度や株式報酬制度を導入した。このように、同社グループは業績拡大を目指すだけでなく、ESGにも積極的に取り組んでいると評価できる。「Global Sustainable Investment Review:Trends Report 2020」によれば、世界的に企業の環境・社会・ガバナンスへの姿勢を重視して企業を選別する「ESG投資」が拡大しており、わが国でも2014年の70億米ドルから2020年には2兆8,740億米ドルへと急拡大し今後もこの潮流は続くと見られる。その意味でも、同社グループの前向きな取り組みが注目される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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