*14:23JST ジェイ・エス・ビー Research Memo(3):不動産賃貸管理事業がグループの柱、高齢者住宅事業なども展開
■ジェイ・エス・ビー<3480>の事業概要
1. 不動産賃貸管理事業
同事業では、主に学生マンションの企画提案、竣工後の建物の賃貸運営及び管理業務を行っている。同事業は2022年10月期の売上高で全体の94.0%、営業利益では123.2%を占め、グループの柱となっている。前期と同様に、コロナ禍による大きな影響はなかった。物件管理戸数は80,611戸(前期比4,665戸増)に上り、内訳は借上物件(入居状況にかかわらず、オーナーに対して毎月一定額の家賃を支払う運営方式)45,455戸(同4,138戸増)、管理委託物件(オーナーにとって、入居実績がそのまま収入となる運営方式)31,040戸(同127戸減)、自社所有物件4,116戸(同654戸増)となっている。新規エリアへの進出や良い物件がある場合にスピード感を持って対応するために、この数年は自社所有物件を増やしている。一方、管理委託物件の減少は、営業努力によって、同社にとって利益率が高い借上物件に切り替えているためだ。また、契約決定件数は29,454件(同308件増)と微増に留まったが、これは「収益認識に関する会計基準」等の適用により契約計上時期に係る基準を見直したことによる。従来は2022年10月期に計上の案件が2021年10月期に計上されたことに伴い、同4,755件増と大幅増加したことによる一時的な状況であり、2023年10月期からはこの影響はなくなる。全体の増加基調に変化はない。
2022年10月期では、前期に引き続き99.9%の高い入居率を確保した。竣工後の建物管理や同社独自の入居者へのきめ細かなサービスへの評価が、年々物件管理戸数を増やしながらもほぼ満室状態を維持できている理由であろう。少子高齢化問題が懸念されているなかでも、大学・短期大学への進学率上昇に伴い学生数が増加傾向にあることや、女子学生数の増加によりセキュリティ設備が充実した学生マンションへの需要が高まっていることなど、市場環境も同社グループの事業展開を後押ししている。
コロナ禍を契機に自宅でのオンライン授業が一定数あるものの、実際に顔を合わせる授業の重要性は変わらない。また、大学生や留学生の増加傾向は長期的に続くと見られる。以上から、同社の不動産賃貸管理事業の持続的拡大基調は変わらないと予想される。
同社の学生マンションは入居者のほとんどが学生であり、セキュリティが厳重で設備が充実しているなどの特長がある。一般マンションでは提供できない「安心感」や「サービス」が同社の学生マンションの強みである。また、時代のニーズに即した物件を開発する「企画・開発・提案力」、全国ネットワークと多彩なメディアを駆使した「募集力」、迅速かつきめ細かなサポートができる「管理力」など、同社の強みを活用した一気通貫サポート体制によって、物件開発数の増加や高入居率が実現していると言えるだろう。
企画・開発・提案力では、プロの目でエリアを厳選し、独自のノウハウを活用したプランニングとサービスなどにより学生などの入居者に「安心、安全、快適」な住まいを提供する一方、不動産オーナーには安定的な収益を提供している。募集力では、北海道から沖縄まで全国33都道府県にまたがるネットワーク、全国の大学生協や大学との提携、インターネットサイトなど、自社による様々なリーシング(賃貸の不動産物件に対してテナント付けを行うこと)力を有していることが提携校・募集協力校の増加につながり、高入居率の達成と物件管理戸数及び契約決定件数の増加の好循環を実現している。さらに管理力では、管理の経験とノウハウが入居者と不動産オーナーの双方に対して高い顧客満足度を実現する結果となっている。
同社が開発・運営している最近の事例としては、学生・単身者マンションでは、「グランフェリシア日野南平」(東京都日野市、全51室)、「ELPIS二日町」(仙台市青葉区、全36室)、「Belwell表町」(京都市上京区、全16室)、「ルネサンスコート九大前」(福岡市西区、全52室)などがある。また、食事付き学生マンションでは、「学生会館Uni E’meal新潟大学前II【食事付き】」(新潟市西区、全188室)、「学生会館Uni E’mealナゴヤドーム前【食事付き】」(名古屋市東区、全77室)、「学生会館Uni E’meal京都高野【食事付き】」(京都市左京区、全117室)、「学生会館Uni E’meal山口大学前【食事付き】」(山口市平井、全97室)などがある。
2. 高齢者住宅事業
同社が将来の主力事業の1つとすべく注力している分野であり、関西地区を中心とするドミナント戦略推進によって、2017年10月期より黒字化した。同事業は、2022年10月期では売上高で全体の4.9%、営業利益は4.1%を占める。今後の高齢社会の進行を考えれば、事業拡大・収益貢献が期待される部門である。2022年10月期は物件管理戸数722戸(前期比56戸増)、管理棟数15棟(同1棟増)に増加した。なお、同事業では標準的には事業開始後から半年程度は赤字が先行するが、次第に単月黒字化に転じ、損益安定化に伴いおよそ18ヶ月後には累積損失を解消する。
高齢者向け不動産賃貸管理業務では、同社が不動産オーナーに対して主としてサービス付き高齢者向け住宅による不動産の活用を企画提案し、竣工後の運営業務を受託している。主に同社が一括借上を行い、借主に転貸する方式である。また介護サービス事業として、訪問介護、通所介護、居宅介護支援、定期巡回・随時対応型訪問介護看護などの事業を運営している。同社が受託・運営するサービス付き高齢者向け住宅の入居者のほか、一部の近隣住民なども対象にサービスを提供している。
開発・運用している事例としては、「メディカルグランヴィル 仙台若林」(仙台市若林区、全51室)、「グランメゾン迎賓館 京都嵐山II」(京都市右京区、全68室)、「グランメゾン迎賓館 豊中刀根山」(豊中市刀根山、全56室)、「グランヴィル鳳凰館 福岡周船寺」(福岡市西区、全59室)などがある。
3. その他の事業
その他の事業は、不動産販売事業や学生支援サービス及び日本語学校事業など様々な事業を含むが、2022年10月期では、売上高で全体の1.1%、営業利益ではマイナス0.9%を占めるに過ぎない。不動産販売事業では、販売用不動産として取得した土地、マンション、商業ビルなどの不動産を第三者に売却している。中期的な不動産市況の動向は不透明なことから、不動産売買の仲介業務に注力している。学生支援サービスでは、学生の採用を目的とした企業説明会の開催の企画やサポートなどを受託している。学生に対しては企業説明会や就職セミナー情報の提供や、アルバイト情報の提供、インターンシップの支援も行っている。日本語学校事業では、外国人留学生向けの日本語学校の運営のほか、生活サポートとして同社管理マンションを学生寮として活用している。その他の事業の売上高・利益のシェアは小さいが、主力事業に対する後方支援的な位置付けを担っており、主力事業とのシナジーを考えれば必要な事業と考えられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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1. 不動産賃貸管理事業
同事業では、主に学生マンションの企画提案、竣工後の建物の賃貸運営及び管理業務を行っている。同事業は2022年10月期の売上高で全体の94.0%、営業利益では123.2%を占め、グループの柱となっている。前期と同様に、コロナ禍による大きな影響はなかった。物件管理戸数は80,611戸(前期比4,665戸増)に上り、内訳は借上物件(入居状況にかかわらず、オーナーに対して毎月一定額の家賃を支払う運営方式)45,455戸(同4,138戸増)、管理委託物件(オーナーにとって、入居実績がそのまま収入となる運営方式)31,040戸(同127戸減)、自社所有物件4,116戸(同654戸増)となっている。新規エリアへの進出や良い物件がある場合にスピード感を持って対応するために、この数年は自社所有物件を増やしている。一方、管理委託物件の減少は、営業努力によって、同社にとって利益率が高い借上物件に切り替えているためだ。また、契約決定件数は29,454件(同308件増)と微増に留まったが、これは「収益認識に関する会計基準」等の適用により契約計上時期に係る基準を見直したことによる。従来は2022年10月期に計上の案件が2021年10月期に計上されたことに伴い、同4,755件増と大幅増加したことによる一時的な状況であり、2023年10月期からはこの影響はなくなる。全体の増加基調に変化はない。
2022年10月期では、前期に引き続き99.9%の高い入居率を確保した。竣工後の建物管理や同社独自の入居者へのきめ細かなサービスへの評価が、年々物件管理戸数を増やしながらもほぼ満室状態を維持できている理由であろう。少子高齢化問題が懸念されているなかでも、大学・短期大学への進学率上昇に伴い学生数が増加傾向にあることや、女子学生数の増加によりセキュリティ設備が充実した学生マンションへの需要が高まっていることなど、市場環境も同社グループの事業展開を後押ししている。
コロナ禍を契機に自宅でのオンライン授業が一定数あるものの、実際に顔を合わせる授業の重要性は変わらない。また、大学生や留学生の増加傾向は長期的に続くと見られる。以上から、同社の不動産賃貸管理事業の持続的拡大基調は変わらないと予想される。
同社の学生マンションは入居者のほとんどが学生であり、セキュリティが厳重で設備が充実しているなどの特長がある。一般マンションでは提供できない「安心感」や「サービス」が同社の学生マンションの強みである。また、時代のニーズに即した物件を開発する「企画・開発・提案力」、全国ネットワークと多彩なメディアを駆使した「募集力」、迅速かつきめ細かなサポートができる「管理力」など、同社の強みを活用した一気通貫サポート体制によって、物件開発数の増加や高入居率が実現していると言えるだろう。
企画・開発・提案力では、プロの目でエリアを厳選し、独自のノウハウを活用したプランニングとサービスなどにより学生などの入居者に「安心、安全、快適」な住まいを提供する一方、不動産オーナーには安定的な収益を提供している。募集力では、北海道から沖縄まで全国33都道府県にまたがるネットワーク、全国の大学生協や大学との提携、インターネットサイトなど、自社による様々なリーシング(賃貸の不動産物件に対してテナント付けを行うこと)力を有していることが提携校・募集協力校の増加につながり、高入居率の達成と物件管理戸数及び契約決定件数の増加の好循環を実現している。さらに管理力では、管理の経験とノウハウが入居者と不動産オーナーの双方に対して高い顧客満足度を実現する結果となっている。
同社が開発・運営している最近の事例としては、学生・単身者マンションでは、「グランフェリシア日野南平」(東京都日野市、全51室)、「ELPIS二日町」(仙台市青葉区、全36室)、「Belwell表町」(京都市上京区、全16室)、「ルネサンスコート九大前」(福岡市西区、全52室)などがある。また、食事付き学生マンションでは、「学生会館Uni E’meal新潟大学前II【食事付き】」(新潟市西区、全188室)、「学生会館Uni E’mealナゴヤドーム前【食事付き】」(名古屋市東区、全77室)、「学生会館Uni E’meal京都高野【食事付き】」(京都市左京区、全117室)、「学生会館Uni E’meal山口大学前【食事付き】」(山口市平井、全97室)などがある。
2. 高齢者住宅事業
同社が将来の主力事業の1つとすべく注力している分野であり、関西地区を中心とするドミナント戦略推進によって、2017年10月期より黒字化した。同事業は、2022年10月期では売上高で全体の4.9%、営業利益は4.1%を占める。今後の高齢社会の進行を考えれば、事業拡大・収益貢献が期待される部門である。2022年10月期は物件管理戸数722戸(前期比56戸増)、管理棟数15棟(同1棟増)に増加した。なお、同事業では標準的には事業開始後から半年程度は赤字が先行するが、次第に単月黒字化に転じ、損益安定化に伴いおよそ18ヶ月後には累積損失を解消する。
高齢者向け不動産賃貸管理業務では、同社が不動産オーナーに対して主としてサービス付き高齢者向け住宅による不動産の活用を企画提案し、竣工後の運営業務を受託している。主に同社が一括借上を行い、借主に転貸する方式である。また介護サービス事業として、訪問介護、通所介護、居宅介護支援、定期巡回・随時対応型訪問介護看護などの事業を運営している。同社が受託・運営するサービス付き高齢者向け住宅の入居者のほか、一部の近隣住民なども対象にサービスを提供している。
開発・運用している事例としては、「メディカルグランヴィル 仙台若林」(仙台市若林区、全51室)、「グランメゾン迎賓館 京都嵐山II」(京都市右京区、全68室)、「グランメゾン迎賓館 豊中刀根山」(豊中市刀根山、全56室)、「グランヴィル鳳凰館 福岡周船寺」(福岡市西区、全59室)などがある。
3. その他の事業
その他の事業は、不動産販売事業や学生支援サービス及び日本語学校事業など様々な事業を含むが、2022年10月期では、売上高で全体の1.1%、営業利益ではマイナス0.9%を占めるに過ぎない。不動産販売事業では、販売用不動産として取得した土地、マンション、商業ビルなどの不動産を第三者に売却している。中期的な不動産市況の動向は不透明なことから、不動産売買の仲介業務に注力している。学生支援サービスでは、学生の採用を目的とした企業説明会の開催の企画やサポートなどを受託している。学生に対しては企業説明会や就職セミナー情報の提供や、アルバイト情報の提供、インターンシップの支援も行っている。日本語学校事業では、外国人留学生向けの日本語学校の運営のほか、生活サポートとして同社管理マンションを学生寮として活用している。その他の事業の売上高・利益のシェアは小さいが、主力事業に対する後方支援的な位置付けを担っており、主力事業とのシナジーを考えれば必要な事業と考えられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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