■要約
1. 会社概要
日新<9066>は1938年に創業し、優れた海外ネットワークが強みの独立系総合物流企業である。国際総合物流のパイオニアとして海上輸送、航空輸送、鉄道輸送、トラック輸送、倉庫、引越、通関など物流全般にかかわる事業を幅広く展開している。強みである海外ネットワークと国際物流を生かし、海外事業展開及び顧客ニーズに合致した新たなビジネスモデルをグループ一体となって創出することで、顧客から信頼され評価される「グローバル・ロジスティクス・プロバイダー」を目指している。
2. 業績動向
2023年3月期第2四半期の連結業績は、売上高が前年同期比25.2%増の107,557百万円、営業利益が同113.0%増の7,675百万円となり、営業利益は第2四半期で過去最高を更新した。また、期初計画比では売上高で13.2%増、営業利益で78.5%増と計画を大きく上回って着地した。物流事業では、海上、航空貨物の輸送需要は総じて堅調に推移し、想定以上の好業績となり期初計画を大きく上回った。旅行事業では新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響で2期連続損失を計上していたが、業務渡航等の取り扱いが回復したことに加え、社内体制整備による合理化により損失幅が大幅に縮小し、第2四半期(2022年7~9月)では黒字転換した。
2023年3月期の連結業績は2022年10月31日に上方修正を発表し、売上高で210,000百万円(前期比9.0%増)、営業利益で13,000百万円(同42.9%増)と見込んでいる。同社では、物流事業でのスポット案件の取り扱いや、好市況については徐々に収束に向かうと予想している。一方、為替の円安進行に伴い売上・利益の増加が見込まれる。旅行事業では、主力の業務渡航の取り扱いで引き続き回復基調が見込まれることから、通期予想を上方修正した。期初計画では第2四半期に業績が落ち込むと予測されていたが、実際には好調を維持している。これは、物流の混乱(海上コンテナ不足と米国西海岸の湾岸混雑)が続いていることも一因と考えられる。弊社では、物流の混乱による特需は2022年末まで続く可能性が高いと見ている。
3. 中期経営計画
第7次中期経営計画(2023年3月期~2027年3月期)では、これまでの物流事業の「規模の経済」から脱却して、経営の効率化と安定的高収益体質の確立を目指している。フェーズ1(2023年3月期~2024年3月期)の2年間で次世代(Society5.0※1)に適応する強固な経営基盤を確実に構築し、フェーズ2(2025年3月期~2027年3月期)の3年間で大きな飛躍の実現とより高い企業価値の創造を目指す。数値目標としては、フェーズ1※2では、2024年3月期に売上高1,900億円、営業利益85億円、経常利益90億円、親会社株主に帰属する当期純利益65億円、自己資本利益率(ROE)8.0%程度、フェーズ2では、2027年3月期に売上高2,750億円、営業利益110億円、経常利益115億円、親会社株主に帰属する当期純利益86億円、ROE9.0%程度を目指す。2023年3月期第2四半期時点では、おおむね順調に進捗している。同社では、第7次中期経営計画の5年間で営業キャッシュイン500~600億円を見込み、そこからキャシュアウトを適正配分する方針だ。総額300億円(施設関連投資250億円、戦略投資枠50億円)の投資計画に加え、社内外の情勢を勘案しながら、財務体質強化(有利子負債の返済)や株主還元などにも配分していく。
※1 サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)。
※2 第7次中期経営計画策定時は、数値目標として2024年3月期に売上高2,140億円、営業利益75億円、経常利益80億円、親会社株主に帰属する当期純利益60億円、ROE7.8%程度としていたが、物流事業では旺盛な貨物需要が当面の間継続が見込まれること、旅行事業でも入国規制の緩和等により海外業務渡航の回復が予想されることから、2022年5月に修正した。
4. DXの推進と強化
同社は第7次中期経営計画の重点施策としてDXの推進を掲げ、全社的に取り組んでいる。「先端デジタル技術を活用して、フォワーディング※事業モデルや業務オペレーションを変革することで、企業価値向上を目指す」をミッションに、「汎用的な物流サービスのDX化」「高度な技術で個別商品化」「DXによる物流事務の効率化」を推進する。特に、物流業務の「見積もり」「発注」「作業進捗」を一元管理できるデジタルフォワーディングサービス「Forward ONE」への引き合いが好調で、同サービスで2027年度売上高70億円、営業利益10億円を目指している。同社が世界の競合他社に優位となるには、DX推進体制の強化が必須であると弊社では考えており、さらなる成長に期待したい。
※自らは輸送手段を持たず、船舶・航空機・トラック・鉄道などを利用し、荷主と直接契約して貨物輸送を行うビジネスのこと。
■Key Points
・2023年3月期第2四半期の営業利益は過去最高を更新。物流事業は国内外ともに大幅増益、旅行事業も収益改善
・2023年3月期業績予想を上方修正。物流事業は海外を中心に順調に推移、旅行事業の収益も改善
・第7次中期経営計画では、経営の効率化と安定的高収益体質の確立を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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1. 会社概要
日新<9066>は1938年に創業し、優れた海外ネットワークが強みの独立系総合物流企業である。国際総合物流のパイオニアとして海上輸送、航空輸送、鉄道輸送、トラック輸送、倉庫、引越、通関など物流全般にかかわる事業を幅広く展開している。強みである海外ネットワークと国際物流を生かし、海外事業展開及び顧客ニーズに合致した新たなビジネスモデルをグループ一体となって創出することで、顧客から信頼され評価される「グローバル・ロジスティクス・プロバイダー」を目指している。
2. 業績動向
2023年3月期第2四半期の連結業績は、売上高が前年同期比25.2%増の107,557百万円、営業利益が同113.0%増の7,675百万円となり、営業利益は第2四半期で過去最高を更新した。また、期初計画比では売上高で13.2%増、営業利益で78.5%増と計画を大きく上回って着地した。物流事業では、海上、航空貨物の輸送需要は総じて堅調に推移し、想定以上の好業績となり期初計画を大きく上回った。旅行事業では新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響で2期連続損失を計上していたが、業務渡航等の取り扱いが回復したことに加え、社内体制整備による合理化により損失幅が大幅に縮小し、第2四半期(2022年7~9月)では黒字転換した。
2023年3月期の連結業績は2022年10月31日に上方修正を発表し、売上高で210,000百万円(前期比9.0%増)、営業利益で13,000百万円(同42.9%増)と見込んでいる。同社では、物流事業でのスポット案件の取り扱いや、好市況については徐々に収束に向かうと予想している。一方、為替の円安進行に伴い売上・利益の増加が見込まれる。旅行事業では、主力の業務渡航の取り扱いで引き続き回復基調が見込まれることから、通期予想を上方修正した。期初計画では第2四半期に業績が落ち込むと予測されていたが、実際には好調を維持している。これは、物流の混乱(海上コンテナ不足と米国西海岸の湾岸混雑)が続いていることも一因と考えられる。弊社では、物流の混乱による特需は2022年末まで続く可能性が高いと見ている。
3. 中期経営計画
第7次中期経営計画(2023年3月期~2027年3月期)では、これまでの物流事業の「規模の経済」から脱却して、経営の効率化と安定的高収益体質の確立を目指している。フェーズ1(2023年3月期~2024年3月期)の2年間で次世代(Society5.0※1)に適応する強固な経営基盤を確実に構築し、フェーズ2(2025年3月期~2027年3月期)の3年間で大きな飛躍の実現とより高い企業価値の創造を目指す。数値目標としては、フェーズ1※2では、2024年3月期に売上高1,900億円、営業利益85億円、経常利益90億円、親会社株主に帰属する当期純利益65億円、自己資本利益率(ROE)8.0%程度、フェーズ2では、2027年3月期に売上高2,750億円、営業利益110億円、経常利益115億円、親会社株主に帰属する当期純利益86億円、ROE9.0%程度を目指す。2023年3月期第2四半期時点では、おおむね順調に進捗している。同社では、第7次中期経営計画の5年間で営業キャッシュイン500~600億円を見込み、そこからキャシュアウトを適正配分する方針だ。総額300億円(施設関連投資250億円、戦略投資枠50億円)の投資計画に加え、社内外の情勢を勘案しながら、財務体質強化(有利子負債の返済)や株主還元などにも配分していく。
※1 サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)。
※2 第7次中期経営計画策定時は、数値目標として2024年3月期に売上高2,140億円、営業利益75億円、経常利益80億円、親会社株主に帰属する当期純利益60億円、ROE7.8%程度としていたが、物流事業では旺盛な貨物需要が当面の間継続が見込まれること、旅行事業でも入国規制の緩和等により海外業務渡航の回復が予想されることから、2022年5月に修正した。
4. DXの推進と強化
同社は第7次中期経営計画の重点施策としてDXの推進を掲げ、全社的に取り組んでいる。「先端デジタル技術を活用して、フォワーディング※事業モデルや業務オペレーションを変革することで、企業価値向上を目指す」をミッションに、「汎用的な物流サービスのDX化」「高度な技術で個別商品化」「DXによる物流事務の効率化」を推進する。特に、物流業務の「見積もり」「発注」「作業進捗」を一元管理できるデジタルフォワーディングサービス「Forward ONE」への引き合いが好調で、同サービスで2027年度売上高70億円、営業利益10億円を目指している。同社が世界の競合他社に優位となるには、DX推進体制の強化が必須であると弊社では考えており、さらなる成長に期待したい。
※自らは輸送手段を持たず、船舶・航空機・トラック・鉄道などを利用し、荷主と直接契約して貨物輸送を行うビジネスのこと。
■Key Points
・2023年3月期第2四半期の営業利益は過去最高を更新。物流事業は国内外ともに大幅増益、旅行事業も収益改善
・2023年3月期業績予想を上方修正。物流事業は海外を中心に順調に推移、旅行事業の収益も改善
・第7次中期経営計画では、経営の効率化と安定的高収益体質の確立を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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