■今後の見通し
2. 成長戦略
APAMAN<8889>は「不動産×Technology価値あるサービスを社会へ」をビジョンに掲げ、Platform事業、Technology事業を主軸に、テクノロジーを核としたサービスの提供を推進し、持続的な成長を目指していく戦略を打ち出している。各事業の取り組み方針は以下のとおり。
(1) Platform事業
Platform事業では、DXの推進による業務効率の向上、不動産オーナーとのコミュニケーションの促進、管理受託の強化等により管理戸数の増加を図るとともに、借上社宅事業の拡大に注力する方針だ。
a) 斡旋事業
斡旋事業の収益拡大施策としては、店舗におけるオンラインサービスの拡充を図ることで集客力を高め、斡旋件数を拡大していくと同時に、店舗スタッフの生産性向上によって収益性も高める戦略だ。接客に関しては物件の探索から内見、重要事項説明、契約、鍵の受け渡しに至るまですべて来店不要で完結する仕組みが構築されたことで、オンラインサービスの利用率も上昇傾向にある。オンライン化することで、店舗スタッフの接客時間も短縮する傾向にある。今後もオンラインサービスの利用率を高めることで、さらなる生産性向上が見込まれる。
同社は2020年3月より「来店不要」のテレビCMを放映し、オンラインで部屋探しができるサービスを開始するなど、業界に先駆けてオンラインサービスの普及に取り組んできた。また、日本最大級のポータルサイト「apamanshop.com」では利用者が口コミ投稿を閲覧できるようにしたほか、接客担当者を指名できるようになるなど、顧客の利便性・安心感を意識した取り組みも進め、こうした成果が収益力の回復につながったと見ることができる。同社では店舗スタッフの生産性については、オンラインサービスの利用拡大によってさらに向上できると見ている。特に、2022年5月に解禁となった電子契約については利用拡大が進むものと見込まれている。今後も業界に先駆けたオンラインサービスの取り組みにより顧客の支持を集めることができれば、斡旋事業のさらなる成長が期待できる。
b) 賃貸管理戸数の積み上げ
賃貸管理事業はストック型ビジネスモデルとなるため、同社の安定収益基盤となる。2018年9月期以降、管理戸数が伸び悩む状況が続いていたが、その原因の1つとして解約物件数が挙げられる。既述のとおり2022年9月期は重点方針として解約率の低減を掲げ、解約件数を前期比で大幅に減らすことに成功した。従来は顧客管理を本社で一括して行っていたためコミュニケーション不足が生じ、有効な対策を打てず解約につながっていたが、2022年9月期よりエリアごとに営業所を設けて専任スタッフを配置するなど組織体制を改め、地域密着体制を構築したことが解約件数の減少につながったと見ている。M&Aによる新規取得がなかったため全体の管理戸数は減少したものの、今後は既存オーナーとの関係構築をベースに紹介案件なども獲得しながら管理戸数を積み上げる方針だ。M&Aと比べて1回で増える管理戸数は少ないが、コストが掛からないため費用対効果という点では高くなる。人員体制についても現状維持する方針である。
弊社では、管理戸数1千戸当たりの営業利益は年間で20~30百万円程度になると試算している。年間1万戸ペースで積み上げることができれば、年間2~3億円程度の営業利益の増加要因となる。M&Aで獲得した場合はのれん費用によって営業利益も変動することになるが、営業キャッシュ・フローベースでは変わらない。また、今後は付加価値の高いサブリース契約の比率を高めていくほか、「アパマンショップ」の店舗でも閑散期に管理物件の受託に関する営業を推進していく。管理物件を持つことで店舗の収益力強化につなげる戦略だ。
c) 借上社宅事業の育成
2021年9月期より本格的に開始した借上社宅事業については、提携社数の規模拡大を図りながら転貸サービス契約件数を伸ばし、2023年9月期の売上高で前期比2倍増の8億円、利益面では収支均衡水準を見込んでおり、2024年9月期の収益化を目標としている。
借上社宅の業界最大手はリログループ<8876>の子会社(株)リロケーション・インターナショナルであり、2022年9月末のグループ管理戸数は約23.6万戸(前年同期比2.0万戸増)と増加基調が続いている。借上社宅管理事業の業績について見ても、2023年3月期第2四半期累計業績は売上収益で12,431百万円、営業利益で3,106百万円と安定収益基盤となっている。同社は後発ながらも既に社宅斡旋で顧客基盤を有しており、利益率は低いものの、規模を拡大することで安定収益基盤に育てる方針だ。
(2) Technology事業
Technology事業ではAPAMAN DXのさらなる推進拡大に取り組んでいく。DXが遅れている不動産業界のなかで、同社はITを活用した先進的なサービスを提供することで事業を拡大させてきた。具体的な事例を挙げると、物件掲載から接客まで1台の端末でこなすことができる賃貸斡旋システム「AOS」を15年前に開発し、仲介・斡旋業務の効率化を推進してきたほか、業界最大級のお部屋探しサイト「Apamanshop.com」を立ち上げ、Webからの集客に取り組んできた。
2020年以降はAI技術を活用して適正な賃料を算出する「査定クラウド」や、IoT技術を活用してキーレスを実現した「Selkeyクラウド」など顧客の利便性向上につながるサービスを相次いで開発し、また、賃貸斡旋会社や賃貸管理会社の生産性向上につながる各種サービスを統合したプラットフォーム「SKIPS」の提供を2021年より開始した。FC加盟店は「SKIPS」を活用することで業務効率の向上を実現しており、今後はアライアンス戦略により販路を拡大しながら契約件数を拡大し、「SKIPS」の収益化を図る戦略となっている。「SKIPS」については2024年9月期の収益化を目標としている。不動産業界は他の業界と比べてDXが遅れており、BtoB領域のDX市場規模は2020年度には1,257億円であったが2025年度は2倍増の2,445億円に拡大するとの予測もある。同社においては今後も革新的なサービスを開発することで市場をリードし、Technology事業の成長を目指す。
なお、2023年9月期のTechnology事業の業績については、「次世代AOS」の減価償却負担増により増収減益が見込まれる。「次世代AOS」については2023年9月期は段階的に稼働するため、2億円ほどの費用増要因となる。「次世代AOS」は従来システムと比べて業務処理スピードが格段に速くなるほか、入力ミスやコンプライアンス違反などの発生を防ぐ機能も実装しており、同システムの稼働によってFC店舗の収益力は一段と強化されるものと期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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2. 成長戦略
APAMAN<8889>は「不動産×Technology価値あるサービスを社会へ」をビジョンに掲げ、Platform事業、Technology事業を主軸に、テクノロジーを核としたサービスの提供を推進し、持続的な成長を目指していく戦略を打ち出している。各事業の取り組み方針は以下のとおり。
(1) Platform事業
Platform事業では、DXの推進による業務効率の向上、不動産オーナーとのコミュニケーションの促進、管理受託の強化等により管理戸数の増加を図るとともに、借上社宅事業の拡大に注力する方針だ。
a) 斡旋事業
斡旋事業の収益拡大施策としては、店舗におけるオンラインサービスの拡充を図ることで集客力を高め、斡旋件数を拡大していくと同時に、店舗スタッフの生産性向上によって収益性も高める戦略だ。接客に関しては物件の探索から内見、重要事項説明、契約、鍵の受け渡しに至るまですべて来店不要で完結する仕組みが構築されたことで、オンラインサービスの利用率も上昇傾向にある。オンライン化することで、店舗スタッフの接客時間も短縮する傾向にある。今後もオンラインサービスの利用率を高めることで、さらなる生産性向上が見込まれる。
同社は2020年3月より「来店不要」のテレビCMを放映し、オンラインで部屋探しができるサービスを開始するなど、業界に先駆けてオンラインサービスの普及に取り組んできた。また、日本最大級のポータルサイト「apamanshop.com」では利用者が口コミ投稿を閲覧できるようにしたほか、接客担当者を指名できるようになるなど、顧客の利便性・安心感を意識した取り組みも進め、こうした成果が収益力の回復につながったと見ることができる。同社では店舗スタッフの生産性については、オンラインサービスの利用拡大によってさらに向上できると見ている。特に、2022年5月に解禁となった電子契約については利用拡大が進むものと見込まれている。今後も業界に先駆けたオンラインサービスの取り組みにより顧客の支持を集めることができれば、斡旋事業のさらなる成長が期待できる。
b) 賃貸管理戸数の積み上げ
賃貸管理事業はストック型ビジネスモデルとなるため、同社の安定収益基盤となる。2018年9月期以降、管理戸数が伸び悩む状況が続いていたが、その原因の1つとして解約物件数が挙げられる。既述のとおり2022年9月期は重点方針として解約率の低減を掲げ、解約件数を前期比で大幅に減らすことに成功した。従来は顧客管理を本社で一括して行っていたためコミュニケーション不足が生じ、有効な対策を打てず解約につながっていたが、2022年9月期よりエリアごとに営業所を設けて専任スタッフを配置するなど組織体制を改め、地域密着体制を構築したことが解約件数の減少につながったと見ている。M&Aによる新規取得がなかったため全体の管理戸数は減少したものの、今後は既存オーナーとの関係構築をベースに紹介案件なども獲得しながら管理戸数を積み上げる方針だ。M&Aと比べて1回で増える管理戸数は少ないが、コストが掛からないため費用対効果という点では高くなる。人員体制についても現状維持する方針である。
弊社では、管理戸数1千戸当たりの営業利益は年間で20~30百万円程度になると試算している。年間1万戸ペースで積み上げることができれば、年間2~3億円程度の営業利益の増加要因となる。M&Aで獲得した場合はのれん費用によって営業利益も変動することになるが、営業キャッシュ・フローベースでは変わらない。また、今後は付加価値の高いサブリース契約の比率を高めていくほか、「アパマンショップ」の店舗でも閑散期に管理物件の受託に関する営業を推進していく。管理物件を持つことで店舗の収益力強化につなげる戦略だ。
c) 借上社宅事業の育成
2021年9月期より本格的に開始した借上社宅事業については、提携社数の規模拡大を図りながら転貸サービス契約件数を伸ばし、2023年9月期の売上高で前期比2倍増の8億円、利益面では収支均衡水準を見込んでおり、2024年9月期の収益化を目標としている。
借上社宅の業界最大手はリログループ<8876>の子会社(株)リロケーション・インターナショナルであり、2022年9月末のグループ管理戸数は約23.6万戸(前年同期比2.0万戸増)と増加基調が続いている。借上社宅管理事業の業績について見ても、2023年3月期第2四半期累計業績は売上収益で12,431百万円、営業利益で3,106百万円と安定収益基盤となっている。同社は後発ながらも既に社宅斡旋で顧客基盤を有しており、利益率は低いものの、規模を拡大することで安定収益基盤に育てる方針だ。
(2) Technology事業
Technology事業ではAPAMAN DXのさらなる推進拡大に取り組んでいく。DXが遅れている不動産業界のなかで、同社はITを活用した先進的なサービスを提供することで事業を拡大させてきた。具体的な事例を挙げると、物件掲載から接客まで1台の端末でこなすことができる賃貸斡旋システム「AOS」を15年前に開発し、仲介・斡旋業務の効率化を推進してきたほか、業界最大級のお部屋探しサイト「Apamanshop.com」を立ち上げ、Webからの集客に取り組んできた。
2020年以降はAI技術を活用して適正な賃料を算出する「査定クラウド」や、IoT技術を活用してキーレスを実現した「Selkeyクラウド」など顧客の利便性向上につながるサービスを相次いで開発し、また、賃貸斡旋会社や賃貸管理会社の生産性向上につながる各種サービスを統合したプラットフォーム「SKIPS」の提供を2021年より開始した。FC加盟店は「SKIPS」を活用することで業務効率の向上を実現しており、今後はアライアンス戦略により販路を拡大しながら契約件数を拡大し、「SKIPS」の収益化を図る戦略となっている。「SKIPS」については2024年9月期の収益化を目標としている。不動産業界は他の業界と比べてDXが遅れており、BtoB領域のDX市場規模は2020年度には1,257億円であったが2025年度は2倍増の2,445億円に拡大するとの予測もある。同社においては今後も革新的なサービスを開発することで市場をリードし、Technology事業の成長を目指す。
なお、2023年9月期のTechnology事業の業績については、「次世代AOS」の減価償却負担増により増収減益が見込まれる。「次世代AOS」については2023年9月期は段階的に稼働するため、2億円ほどの費用増要因となる。「次世代AOS」は従来システムと比べて業務処理スピードが格段に速くなるほか、入力ミスやコンプライアンス違反などの発生を防ぐ機能も実装しており、同システムの稼働によってFC店舗の収益力は一段と強化されるものと期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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