■ポエック<9264>の事業戦略
b) 産学協同によるオゾン装置の開発
コロナ禍の影響により、同社グループの防災・安全事業は業績悪化要因となった。一方、環境改善機器事業にとっては新たな事業機会を生み出す契機となった。M&Aにより事業領域を拡大したことで、事業環境が悪化した事業が出ても、全体として持続性を維持できる経営基盤を築いている。オゾンによるウイルス不活性化効果はコロナ禍のなかで注目を浴び、同社は安全面及び機能面でさらに進化したウイルス対応のオゾン装置の開発と市場への早期投入を目指す。2020年7月に、国立大学法人東北大学と多様なウイルスに対して有効な不活化機能を発揮するオゾン装置を開発する共同研究契約を締結した。同大学の国際放射光イノベーション・スマート研究センターと同大学大学院農学研究科との共同研究テーマは「オゾンガスがウイルスに及ぼす影響と研究成果に基づく、ウイルス被害に有効なオゾン装置の開発」である。2023年中の製品化を計画しており、海外展開も視野に入れている。
同社は非加熱殺菌装置市場でシェアトップを目指している。非加熱殺菌装置には、紫外線殺菌装置、次亜塩素酸系水溶液、オゾン水製造装置、オゾンや過酸化水素ガス生成装置、高圧殺菌装置などが含まれる。なお、共同研究において利活用される技術は、オゾンガス発生及びオゾン水製造技術(2020年~)、次世代放射光技術によるメカニズム解明FS(2020年~)、次世代放射光施設(2023年~)とナノバブル技術(2021年~)がある。
c) 陸上養殖による水産物の生産に異業種の大企業が参入
日本の漁業は、沿岸から沖合へ、さらに遠洋へと漁場を拡大したが、200海里時代の到来で遠洋漁業から撤退した。日本の漁業・養殖業生産量は、1984年に1,282万トンでピークを打ち、2018年には442万トンと3分の1程度に減少した。金額では、1982年の生産額2兆9,772億円から1兆5,579億円へとほぼ半減した。海水温の変化なども漁獲量の減少に影響している。
陸上養殖を利用して水産物の生産を始める企業が増えている。総合商社、建築、電力、鉄道などの異業種から大企業が新規参入している。漁業は「獲る」から「育てる」という栽培漁業や養殖漁業の拡大が予想される。栽培漁業は、卵から稚魚になるまでの一番弱い期間を人間が守り育て、外敵から身を守ることができるまでになれば生息するのに適した海に放流し、自然の海で成長したものを漁獲する。養殖漁業では、出荷サイズになるまで水槽や生簀で育て、放流はしない。漁業・養殖業の生産量のうち、養殖業は約4分の1を占める。
2021年9月に全株式を取得し子会社化したマリンリバーは、養殖設備製造でニッチ市場でトップ企業である。主に水産試験場や活魚センターなどで使用される水産設備の設計・製造・施工を行っている。主要製品は、海水用ヒートポンプチラー、チタン熱交換器、シェル&コイル熱交換器、シェル&チューブ熱交換器などである。長年の業歴やマリンリバー独自の製品、特許を取得した技術力など業界内の評価は高い。同子会社の2020年9月期の業績は、売上高が198百万円、経常利益が41百万円、売上高経常利益率が20.7%であった。同社グループ入りしたことで、大型投資が可能となった。同社は、マリンリバーの売上高を長期的に現在の10倍の規模にするというレベルを想定している。マリンリバーと三和テスコが共同研究を行い、製造及び販売面での相乗効果を発揮して成長機会の獲得を図る方針だ。マリンリバーの主要製品については、ほかの同社グループ企業が一部製造できるものもあるほか、その製品納入先には同社グループの商品であるポンプやブロワなども付随して販売できる可能性がある。
d) 水素ステーションの付帯設備
同社の強みとなる革新的な環境・防災機器の開発品に、電気不要のスプリンクラー消火設備用加圧送水装置「ナイアス」がある。足元では政府の予算がコロナ禍の対策に振り向けられ、病院や介護施設に対するスプリンクラー設備の設置に関わる補助金が減少し、防災・安全事業の大幅な減収を引き起こした。消防法によりスプリンクラー設置義務のある病院や介護福祉施設などの既存市場で引き続き拡販を図る方針である。
新たな市場開拓として、原子力発電所と水素ステーションの付帯設備として拡大を進める。「ナイアス」は非常電源を設置する必要がなく、地震や津波などの自然災害時にも作動するという強みがある。CO2を排出しない次世代の燃料電池自動車(FCV)は、普及が約7,000台と未だ限定的だ。2022年5月末時点で設置されている水素ステーションは、156ヶ所にとどまる。JHyM(日本水素ステーションネットワーク(同))は、2027年度までに500基程度の水素ステーションの整備を目標としている。日本政府が2050年カーボンニュートラルを宣言したことで、今後の加速が見込まれる。2021年6月に改訂された2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略において、水素ステーションに関する新たな政府目標は2030年までに1,000基程度と設定された。同社は、水素ステーション向けでは業界トップの岩谷産業<8088>への納入実績がある。
e) IoTソリューションの総合プロバイダー企業と販売代理店契約締結
同社は、2022年1月にIoTソリューションの総合プロバイダー企業であるテクサーが実施した第三者割当増資に参画、出資した。同年9月には販売代理店契約を締結し、同社初となるIoT事業に参入した。そして、同社を含む3社協力によりテクサーが開発した非接触型展示会DXシステム「AiMeet サービス」が、「ツーリズム EXPO ジャパン2022」においてエイチ・アイ・エスの出展ブースに導入された。
これまでの旅行会社の展示会では、大量に印刷されたカタログなどを出展社が準備し、展示ブースで来場者に配布して来場者との名刺交換により、来場者情報を獲得する。そして展示会後の営業活動に活用する流れが一般的だ。従来方式では、展示会での資料の手渡しによる感染のリスクや、重たい資料の持ち運び、資料をデータ化して社内で共有や保管をする作業に手間がかかるといった問題があった。さらに会場で展示ブースごとにある資料の二次元コードをスマートフォンで読み取る手間もあった。非接触型の情報受け渡しツール「AiMeet」はこうした問題を解決するものである。「AiMeet」は、来場者が自分のAiTagを出展者のAiBoxにタッチするだけである。後からAiTagの二次元コードを読み込んで来場者向けWebページAiVisitorにアクセスすれば、どのブースでどの商品にタッチしたかの訪問履歴がわかり、欲しい資料をダウンロードするだけで共有も保管もできる。出展者の主なメリットは、資料を取った来場者の名刺情報がすべて取得可能、印刷費・輸送費のカット、紙媒体の準備と片付けが不要となることだ。
同社は、IoT技術の知見を積み、ゆくゆくは環境・エネルギー事業など同社グループの主要事業のメンテナンス作業などにIoTを活用するとしている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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b) 産学協同によるオゾン装置の開発
コロナ禍の影響により、同社グループの防災・安全事業は業績悪化要因となった。一方、環境改善機器事業にとっては新たな事業機会を生み出す契機となった。M&Aにより事業領域を拡大したことで、事業環境が悪化した事業が出ても、全体として持続性を維持できる経営基盤を築いている。オゾンによるウイルス不活性化効果はコロナ禍のなかで注目を浴び、同社は安全面及び機能面でさらに進化したウイルス対応のオゾン装置の開発と市場への早期投入を目指す。2020年7月に、国立大学法人東北大学と多様なウイルスに対して有効な不活化機能を発揮するオゾン装置を開発する共同研究契約を締結した。同大学の国際放射光イノベーション・スマート研究センターと同大学大学院農学研究科との共同研究テーマは「オゾンガスがウイルスに及ぼす影響と研究成果に基づく、ウイルス被害に有効なオゾン装置の開発」である。2023年中の製品化を計画しており、海外展開も視野に入れている。
同社は非加熱殺菌装置市場でシェアトップを目指している。非加熱殺菌装置には、紫外線殺菌装置、次亜塩素酸系水溶液、オゾン水製造装置、オゾンや過酸化水素ガス生成装置、高圧殺菌装置などが含まれる。なお、共同研究において利活用される技術は、オゾンガス発生及びオゾン水製造技術(2020年~)、次世代放射光技術によるメカニズム解明FS(2020年~)、次世代放射光施設(2023年~)とナノバブル技術(2021年~)がある。
c) 陸上養殖による水産物の生産に異業種の大企業が参入
日本の漁業は、沿岸から沖合へ、さらに遠洋へと漁場を拡大したが、200海里時代の到来で遠洋漁業から撤退した。日本の漁業・養殖業生産量は、1984年に1,282万トンでピークを打ち、2018年には442万トンと3分の1程度に減少した。金額では、1982年の生産額2兆9,772億円から1兆5,579億円へとほぼ半減した。海水温の変化なども漁獲量の減少に影響している。
陸上養殖を利用して水産物の生産を始める企業が増えている。総合商社、建築、電力、鉄道などの異業種から大企業が新規参入している。漁業は「獲る」から「育てる」という栽培漁業や養殖漁業の拡大が予想される。栽培漁業は、卵から稚魚になるまでの一番弱い期間を人間が守り育て、外敵から身を守ることができるまでになれば生息するのに適した海に放流し、自然の海で成長したものを漁獲する。養殖漁業では、出荷サイズになるまで水槽や生簀で育て、放流はしない。漁業・養殖業の生産量のうち、養殖業は約4分の1を占める。
2021年9月に全株式を取得し子会社化したマリンリバーは、養殖設備製造でニッチ市場でトップ企業である。主に水産試験場や活魚センターなどで使用される水産設備の設計・製造・施工を行っている。主要製品は、海水用ヒートポンプチラー、チタン熱交換器、シェル&コイル熱交換器、シェル&チューブ熱交換器などである。長年の業歴やマリンリバー独自の製品、特許を取得した技術力など業界内の評価は高い。同子会社の2020年9月期の業績は、売上高が198百万円、経常利益が41百万円、売上高経常利益率が20.7%であった。同社グループ入りしたことで、大型投資が可能となった。同社は、マリンリバーの売上高を長期的に現在の10倍の規模にするというレベルを想定している。マリンリバーと三和テスコが共同研究を行い、製造及び販売面での相乗効果を発揮して成長機会の獲得を図る方針だ。マリンリバーの主要製品については、ほかの同社グループ企業が一部製造できるものもあるほか、その製品納入先には同社グループの商品であるポンプやブロワなども付随して販売できる可能性がある。
d) 水素ステーションの付帯設備
同社の強みとなる革新的な環境・防災機器の開発品に、電気不要のスプリンクラー消火設備用加圧送水装置「ナイアス」がある。足元では政府の予算がコロナ禍の対策に振り向けられ、病院や介護施設に対するスプリンクラー設備の設置に関わる補助金が減少し、防災・安全事業の大幅な減収を引き起こした。消防法によりスプリンクラー設置義務のある病院や介護福祉施設などの既存市場で引き続き拡販を図る方針である。
新たな市場開拓として、原子力発電所と水素ステーションの付帯設備として拡大を進める。「ナイアス」は非常電源を設置する必要がなく、地震や津波などの自然災害時にも作動するという強みがある。CO2を排出しない次世代の燃料電池自動車(FCV)は、普及が約7,000台と未だ限定的だ。2022年5月末時点で設置されている水素ステーションは、156ヶ所にとどまる。JHyM(日本水素ステーションネットワーク(同))は、2027年度までに500基程度の水素ステーションの整備を目標としている。日本政府が2050年カーボンニュートラルを宣言したことで、今後の加速が見込まれる。2021年6月に改訂された2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略において、水素ステーションに関する新たな政府目標は2030年までに1,000基程度と設定された。同社は、水素ステーション向けでは業界トップの岩谷産業<8088>への納入実績がある。
e) IoTソリューションの総合プロバイダー企業と販売代理店契約締結
同社は、2022年1月にIoTソリューションの総合プロバイダー企業であるテクサーが実施した第三者割当増資に参画、出資した。同年9月には販売代理店契約を締結し、同社初となるIoT事業に参入した。そして、同社を含む3社協力によりテクサーが開発した非接触型展示会DXシステム「AiMeet サービス」が、「ツーリズム EXPO ジャパン2022」においてエイチ・アイ・エスの出展ブースに導入された。
これまでの旅行会社の展示会では、大量に印刷されたカタログなどを出展社が準備し、展示ブースで来場者に配布して来場者との名刺交換により、来場者情報を獲得する。そして展示会後の営業活動に活用する流れが一般的だ。従来方式では、展示会での資料の手渡しによる感染のリスクや、重たい資料の持ち運び、資料をデータ化して社内で共有や保管をする作業に手間がかかるといった問題があった。さらに会場で展示ブースごとにある資料の二次元コードをスマートフォンで読み取る手間もあった。非接触型の情報受け渡しツール「AiMeet」はこうした問題を解決するものである。「AiMeet」は、来場者が自分のAiTagを出展者のAiBoxにタッチするだけである。後からAiTagの二次元コードを読み込んで来場者向けWebページAiVisitorにアクセスすれば、どのブースでどの商品にタッチしたかの訪問履歴がわかり、欲しい資料をダウンロードするだけで共有も保管もできる。出展者の主なメリットは、資料を取った来場者の名刺情報がすべて取得可能、印刷費・輸送費のカット、紙媒体の準備と片付けが不要となることだ。
同社は、IoT技術の知見を積み、ゆくゆくは環境・エネルギー事業など同社グループの主要事業のメンテナンス作業などにIoTを活用するとしている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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