企業を通してマーケットを知る~長期投資の活用

著者:鈴木 行生
投稿:2022/09/20 11:37

・株式投資は多様であってよい。短期も長期も儲かるなら、それに越したことはないが、そんなにうまくはいかない。いい会社に投資しておけば、いずれ儲かるというのも妥当なようだが、その会社がずっといい会社でいられるかは分からない。中長期投資といっても、経営内容を絶えずチェックしていく必要がある。

・株主になってみると、おもしろいことが分かる。経営者のセンスが企業経営に現れてくる。10社くらいの企業に投資していると、ポートフォリオとしてのリターンとは別に、経営者のものの見方や打つ手が、マーケットのトレンドや新しい動きを知る上で、役に立つことが多い。

・SBIホールディングス(HD)<8473>の北尾社長、マネックスグループ<8698>の松本社長、三菱商事<8058>の中西社長を取り上げて、マーケットのトレンドと企業評価のポイントを検討してみたい。

・SBIHDは、新生銀行<8303>を買収した。持株比率は47%となった。その価格は高かったのか、安かったのか。買収後の決算(2022年3月期)では、負ののれん益が2702億円ほど発生した。つまり、かなり安く買収できた。

・SBIは創業23年、顧客価値、人材価値、株主価値を好循環で回してきた。安価なサービス、比較できるサービスを、安全・安心に提供することをモットーとしてきた。これを新生銀行でも展開し、グループ4200万人の顧客基盤でさらなる発展を目指す。

・そのわりに、株価が安い。北尾社長は、自らの徳が足らないのかと話しながらも、1)現在は、コロナ禍、米金利上昇、ウクライナ紛争の三重苦にある。2)その中で海外の大株主が同社株を売ってきた。SBIを問題にしたのではなく、ポートフォリオの中で日本株を処分してきた、3)今回の円安は、明らかに悪い円安で、物価高が国内経済に打撃を与える、と説明した。

・個々の事業の価値を積み上げるSOTP(サム・オブ・ザ・パーツ)の手法で、価値を積み上げると、40%も割安であると外部のアナリストが指摘している。株式の所有比率をみると、機関投資家76%(外人48.5%)で、個人投資家は20%を切っている。この個人投資家をもっと増やしたいと言う。

・主要グループ会社を上場させて、事業の独立性と価値の顕在化に力を入れていく方針である。また、グループ会社では、SBI e-Sportの社長は入社5年目、SBIアフリカではまず中古車から入って、いずれは金融事業を拡大するが、ここの社長は新卒9年目である。

・金融サービス、資産運用、投資事業、暗号資産、非金融事業で、税前利益3000億円を目指す。M&Aにはこれからも意欲的に取り組んでいく。「金融を核に金融を超える」ことが重点戦略の目標であると語った。

・マネックスグループの社外取締役として、ソニー元社長の出井氏が長く務めた。松本社長のベンチャー精神を常に応援してくれた。日本のネット証券から米国に進出し、資産運用の次に仮想通貨分野にもコインチェックの買収でいち早く参入した。

・仮想通貨(クリプトアセット)は本物なのか。松本社長は金融の歴史をみると、新しい金融取引は画期的であるとともに、常に如何わしさを伴っていた。新しい取引に意義や価値があるものの、ルールメーカーの匙加減で信用が崩れることも多々ある。

・しかし、BC(ブロックチェーン)技術を活かして、NFT(ノン ファンジブル トークン)に組み込まれるデジタル資産の新しい取引が大発展するとみている。メタバースが、そのプラットフォームとして利用されるようになろう。

・まだ黎明期にあるので、投機的動きでマーケットは乱高下しているが、そこでリーダーシップをとろうとしている。SBI HDの北尾社長も同じようにリーダーを目指している。

・メタバースとは何か。リアルな世界でいえば、戦後東急が田園都市線を作って、一大都市開発を行って大きく発展したように、メタバースで新しい空間を作り、その中のディベロッパーになることを狙っている。これは、金融だけの話ではない。不動産でも、Eコマースでも、あらゆる産業や生活が関わってくる。

・MONEX(マネックス)のXは、未来のお金との付き合い方をデザインしていくという意味が込められていた。そして昨年4月には、「未来の個人の“生きがいバランスシート”を最良化してく」と定めた。

・つまり、お金だけでなく、時間、健康、思考などをよくしていく。マネックスグループは、その自己実現をサポートしていく。松本氏の第2の創業の思いを、出井氏は果敢に背中を押してくれたと語った。

・三菱商事の中西社長は、今年4月に社長に就任した。なぜ自分が社長に選任されたのか。6年前ならたぶん選ばれなかったと、自ら語る。カーボンニュートラル(CN)、エネルギー革命の時代に入ってきた。中西氏は、三菱商事の10営業グループの中で、エネルギー電力事業を長く担当し、推進してきた。その見識、経営力が今最も必要になったということである。

・中期計画では、MCSV(三菱商事のシェアードバリュー)を共創価値として創出していく。成長、経営、メカニズム、人事、サステナビリティの重要5項目を“つなげ、つながる”ようにしていく。

・商社はエネルギー開発との結びつきが強い。従来型の石炭、石油、LNGに関して、どのようにCNに持っていくのか。そのトランジション(移行)計画が問われている。外部の一部の投資家からは、環境対応に向けた定款の変更が株主提案として株主総会に出されたが、それは否決された。

・会社としては、脱CO2のロードマップはすでに公表しており、2030年に半減、2050年にネットゼロを目指す。TCFDにもしっかり対応していく。よって、定款の変更というのは主旨が異なるので、妥当でないと反対した。

・これからは、①EX、②DX、③未来創業(新産業、地域再生)の3つの領域で、成長戦略とサステナビリティを追求していく。サステナビリティでは、マテリアリティを再定義し、CNに向けた4つの施策を進めていく。1)1.5℃シナリオへの移行リスク、2)トランスフォームの進め方、3)今後の投資計画、4)カーボンプライシングも含めた新規投資のあり方を重視する。

・中西社長は、“空気振動型”で、つながりを広め深めていくという。そして、日本発の商社モデルが世界に通用することをみせていくと語った。

・3社長の話を視聴いていると、1)今後の金融界の再編はどのように進むのか、2)新しい金融マーケットはどのように生まれてくるのか、3)ロシア・ウクライナ紛争の余波が米国金融市場を経て、通貨にどのように響くか、4)エネルギー、資源価格の高騰の中で、ESG投資はどのように見直されるのか、5)マーケットは既に織り込み済みなのか、まだこれから大きく変動するのか、についてヒントが得られる。

・ユニークな社長の話は面白い。ニュースなどの二次情報で知るよりも、株主となって生の声を聞いていると、大いに参考になる。ポートフォリオの銘柄は増やせばいいというものでもない。面白い経営者を選んで投資してみると、新たな価値が発見できよう。

日本ベル投資研究所の過去レポートはこちらから

配信元: みんかぶ株式コラム

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