■会社概要
1. 会社概要
三菱総合研究所<3636>は、三菱創業100周年の記念事業として三菱グループ27社の出資により、1970年に設立された。民間シンクタンクの先駆けとも言える企業である。官公庁、金融・カード系企業から一般民間企業に至るまで多岐にわたる顧客に対して、シンクタンク・コンサルティングサービスとITサービスを提供している。
同社は、1980年代にシンクタンク4分野(経済・経営、社会・公共、科学・技術、システム・情報)を事業として確立し、1990年代には官公庁向け政策立案支援業務において確固たる地位を築いた。2000年代に入ると、DCSを連結子会社化し、ICTソリューション事業に本格的に参入した。近年は、研究・提言から社会実装までを担う価値創造プロセス「VCP経営」を推進している。
2020年には創業50周年という節目を迎えた。今までの社会とそのなかで同社が果たしてきた役割、さらには今後期待される役割を社員一人ひとりが考え、「三菱総合研究所は、豊かで持続可能な未来の共創を使命として、世界と共に、あるべき未来を問い続け、社会課題を解決し、社会の変革を先駆ける」という新経営理念を策定した。次なる50年に向け、より「社会課題解決企業」としての責任を自覚しながら日々業務を遂行していく構えだ。
2. 同社グループの特長と強み
(1) 強固な事業基盤としての官公庁業務
1990年代に官公庁向け政策立案支援業務における確固たる地位を確立した同社は、その後も政府の政策立案、制度設計、事業推進を積極的に支援し、主要な府省との強固な関係を構築してきた。実際、2021年9月期の連結売上高に占める官公庁の割合は27%を占めており、同社グループの主要顧客の1つである。政策立案の段階から長年にわたって蓄積してきた実績と信頼、さまざまな課題に分野横断的に対応できる総合力は、競合他社が一朝一夕に模倣できるものではない。
2020年度には官公庁からの受託業務として「COVID-19 AI・シュミレーションプロジェクト」(内閣官房)、「課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」(総務省)、「省エネルギー等に関する国際標準の獲得・普及促進事業」(経済産業省)などを受託している。2021年度には、「データ流通市場の活性化に係る調査研究」(内閣官房)から「エコチル調査に係る「地域の子育て世代との対話」業務」(環境省 大臣官房)など、幅広い省庁から多様な分野の案件を受託している。日本の政策立案の一翼を担っていることが窺える。
(2) 多様で専門性の高い人財プール
官公庁からの高い受注実績を可能にしている要因の1つが、多様なフィールドを網羅した専門性の高い研究員の存在だ。特に同社に所属する研究員の7割強が自然科学を専門としている。政府の政策立案にも自然科学関連の知見が必要とされており、親和性とニーズの高さが窺える。「中期経営計画2023」のもとで同社グループは、成長投資の1つとして国内外の研究機関・大学との共同研究や人財交流を挙げている。今後も同社グループにおける人財プールのさらなる質の向上が期待され、VCP経営に資するとともに競争優位の源泉であり続けるだろう。
(3) 金融・カード分野の強固な事業基盤
主要グループ企業であるDCSは、三菱銀行(現 三菱UFJ銀行)のコンピュータ受託計算部門を分離独立する形で設立された。この成り立ちから、DCSは三菱グループを中心とした金融・カード分野の基幹システム等の開発、保守、運用業務等を基盤事業としている。2021年9月期の連結売上高に占める金融・カード事業の割合は46%と、官公庁と同じく同社グループの主要事業分野となっている。
同社グループは成長事業として、「中期経営計画2023」においてDX事業、ストック型事業(サブスクリプション型事業)、海外事業を挙げている。基盤顧客である官公庁、金融・カード分野から生み出したキャッシュを成長領域に積極投資していくことにより、中・長期的には一般産業(民間)顧客の売上高の伸びも早まるものと弊社は推察する。
(4) 取締役会における質の高い議論
同社の取締役会は、三菱商事<8058>、三菱UFJ銀行、三菱重工業<7011>のトップ経験者が名を連ねている。これらの経験豊富な取締役によって、活発な議論が交わされていると言う。今後、VUCA※時代が本格的に幕を開けるなかで、取締役会が羅針盤となって同社グループを導いていくことが期待される。
※Volatility、Uncertainty、Complexity、Ambiguityの頭文字をとった言葉。現在の経営環境は不確実性が高く流動的であることなどから、その状況を表す言葉として使用される。
一方、ESG重視、企業のガバナンス強化の潮流から見れば、今後は三菱グループ以外からの取締役の選任、具体的にはDX関連に造詣の深い専門家等を取締役会に加えることも求められるだろう。多様性に加えて、専門性も担保した議論が交わされ、羅針盤としての役割はますます強化されるものと弊社は考える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
<EY>
1. 会社概要
三菱総合研究所<3636>は、三菱創業100周年の記念事業として三菱グループ27社の出資により、1970年に設立された。民間シンクタンクの先駆けとも言える企業である。官公庁、金融・カード系企業から一般民間企業に至るまで多岐にわたる顧客に対して、シンクタンク・コンサルティングサービスとITサービスを提供している。
同社は、1980年代にシンクタンク4分野(経済・経営、社会・公共、科学・技術、システム・情報)を事業として確立し、1990年代には官公庁向け政策立案支援業務において確固たる地位を築いた。2000年代に入ると、DCSを連結子会社化し、ICTソリューション事業に本格的に参入した。近年は、研究・提言から社会実装までを担う価値創造プロセス「VCP経営」を推進している。
2020年には創業50周年という節目を迎えた。今までの社会とそのなかで同社が果たしてきた役割、さらには今後期待される役割を社員一人ひとりが考え、「三菱総合研究所は、豊かで持続可能な未来の共創を使命として、世界と共に、あるべき未来を問い続け、社会課題を解決し、社会の変革を先駆ける」という新経営理念を策定した。次なる50年に向け、より「社会課題解決企業」としての責任を自覚しながら日々業務を遂行していく構えだ。
2. 同社グループの特長と強み
(1) 強固な事業基盤としての官公庁業務
1990年代に官公庁向け政策立案支援業務における確固たる地位を確立した同社は、その後も政府の政策立案、制度設計、事業推進を積極的に支援し、主要な府省との強固な関係を構築してきた。実際、2021年9月期の連結売上高に占める官公庁の割合は27%を占めており、同社グループの主要顧客の1つである。政策立案の段階から長年にわたって蓄積してきた実績と信頼、さまざまな課題に分野横断的に対応できる総合力は、競合他社が一朝一夕に模倣できるものではない。
2020年度には官公庁からの受託業務として「COVID-19 AI・シュミレーションプロジェクト」(内閣官房)、「課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」(総務省)、「省エネルギー等に関する国際標準の獲得・普及促進事業」(経済産業省)などを受託している。2021年度には、「データ流通市場の活性化に係る調査研究」(内閣官房)から「エコチル調査に係る「地域の子育て世代との対話」業務」(環境省 大臣官房)など、幅広い省庁から多様な分野の案件を受託している。日本の政策立案の一翼を担っていることが窺える。
(2) 多様で専門性の高い人財プール
官公庁からの高い受注実績を可能にしている要因の1つが、多様なフィールドを網羅した専門性の高い研究員の存在だ。特に同社に所属する研究員の7割強が自然科学を専門としている。政府の政策立案にも自然科学関連の知見が必要とされており、親和性とニーズの高さが窺える。「中期経営計画2023」のもとで同社グループは、成長投資の1つとして国内外の研究機関・大学との共同研究や人財交流を挙げている。今後も同社グループにおける人財プールのさらなる質の向上が期待され、VCP経営に資するとともに競争優位の源泉であり続けるだろう。
(3) 金融・カード分野の強固な事業基盤
主要グループ企業であるDCSは、三菱銀行(現 三菱UFJ銀行)のコンピュータ受託計算部門を分離独立する形で設立された。この成り立ちから、DCSは三菱グループを中心とした金融・カード分野の基幹システム等の開発、保守、運用業務等を基盤事業としている。2021年9月期の連結売上高に占める金融・カード事業の割合は46%と、官公庁と同じく同社グループの主要事業分野となっている。
同社グループは成長事業として、「中期経営計画2023」においてDX事業、ストック型事業(サブスクリプション型事業)、海外事業を挙げている。基盤顧客である官公庁、金融・カード分野から生み出したキャッシュを成長領域に積極投資していくことにより、中・長期的には一般産業(民間)顧客の売上高の伸びも早まるものと弊社は推察する。
(4) 取締役会における質の高い議論
同社の取締役会は、三菱商事<8058>、三菱UFJ銀行、三菱重工業<7011>のトップ経験者が名を連ねている。これらの経験豊富な取締役によって、活発な議論が交わされていると言う。今後、VUCA※時代が本格的に幕を開けるなかで、取締役会が羅針盤となって同社グループを導いていくことが期待される。
※Volatility、Uncertainty、Complexity、Ambiguityの頭文字をとった言葉。現在の経営環境は不確実性が高く流動的であることなどから、その状況を表す言葉として使用される。
一方、ESG重視、企業のガバナンス強化の潮流から見れば、今後は三菱グループ以外からの取締役の選任、具体的にはDX関連に造詣の深い専門家等を取締役会に加えることも求められるだろう。多様性に加えて、専門性も担保した議論が交わされ、羅針盤としての役割はますます強化されるものと弊社は考える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
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