イチネンHD Research Memo(5):2023年3月期は不透明感強く11.2%営業減益予想

配信元:フィスコ
投稿:2022/07/13 16:05
■今後の見通し

イチネンホールディングス<9619>の2023年3月期の業績は、売上高が122,000百万円(前期比1.1%増)、営業利益が7,660百万円(同11.2%減)、経常利益が7,700百万円(同11.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益が4,880百万円(同13.6%減)を予想している。ケミカル、パーキング、機械工具は増益予想となっているが、自動車リース関連は中古車販売や燃料販売の販売単価が2022年3月期よりは利益が落ちる見込みであることから減益予想となっている。また合成樹脂も、遊技機の新基準移行に伴う特需の反動で減益の見込みとしている。しかし全体的には各種の前提をかなり保守的に見ており、今後の状況によっては計画を上振れする可能性もありそうだ。

(1) 自動車リース関連事業
自動車リース関連事業はセグメント売上高53,412百万円(前期比0.8%減)、セグメント利益4,462百万円(同14.8%減)を見込んでいる。リースにおいては、引き続き比較的競合の少ない地方市場及び中小口規模の企業をメインターゲットとして新規販売を積極的に行い、契約台数及び契約残高の増加を図っていく。そのほか、購買原価の低減、走行距離に応じた適切な料金設定、メンテナンスコストの抑制並びに車両処分方法の多様化を図り収益向上に努めるとしている。自動車メンテナンス受託においては、今後も独自の自動車整備工場ネットワークによる高品質なメンテナンスサービスを提供しつつ、EV等の次世代自動車に対応したメンテナンスサービスネットワークの構築にも取り組むとともに、契約台数及び契約残高の増加を図っていく。車体修理に関する総合管理業務については、法人顧客の新規開拓に注力し、収益の拡大を目指す。燃料販売は、主に自動車用燃料給油カードの需要が低燃費車の普及により減少傾向にあるが、既存顧客に対する満足度の追求並びに新規顧客の拡大を図り、販売数量の増加に努めるとしている。

(2) ケミカル事業
ケミカル事業においては、セグメント売上高12,094百万円(同4.5%増)、セグメント利益1,280百万円(同5.5%増)を見込んでいる。今後もセールスエンジニアの育成を行い、特定の専門業界への販売、新たなマーケットへの参入模索、新製品の開発及び既存製品・商品のリニューアルに取り組んでいく。また、汎用樹脂向けバイオマス添加剤等の脱炭素社会を見据えた製品開発を強化し、国内・海外を問わず販売先・販売数量の拡大を目指していく。

(3) パーキング事業
セグメント売上高6,848百万円(同22.9%増)、セグメント利益794百万円(同67.7%増)を見込んでいる。長期的に安定した収益基盤を築くため今後も営業力を強化し、駐車場数の拡大を図っていく。また、キャッシュレス決済の導入促進等により他社との差別化を図り、既存駐車場の売上拡大に注力していく。また病院や商業施設等に附帯した駐車場にも積極的に取り組み、安定的な収益を稼ぐ事業に育成していく方針だ。

(4) 機械工具販売事業
セグメント売上高36,402百万円(同3.2%増)、セグメント利益832百万円(同20.5%増)を見込んでいる。主に、取扱商品・オリジナル製品の拡充、ネット販売強化、海外展開強化、組織再編による収益力の強化に取り組んでいく方針だ。取扱商品・オリジナル製品の拡充については、併せて脱炭素社会に向けた商品等の取り扱い品目も拡大していく。また、2022年4月に実施した事業再編による経営の効率化や、商品調達コストの軽減、適正な在庫水準の実現、製造部門における原価低減、物流の内製化等の取り組みを進め、課題としている収益性の改善に注力するとしている。ネット販売については、自社サイトを中心に販売の強化を継続していく。なお同事業においては、中期的にはセグメント売上高500億超を目指す方針を掲げている。

(5) 合成樹脂事業
セグメント売上高12,022百万円(同15.4%減)、セグメント利益274百万円(同75.7%減)と、主に2022年3月期の遊技機の新基準機への移行に伴う販売増加の反動減を見込んだ格好である。同事業では、主にイチネン製作所において自社で保有する合成樹脂の再生技術を強みとし、高付加価値の樹脂材料等の開発・販売を強化することを目指すことになる。遊技機部品事業においては、一貫受注体制を構築し、多品種/小ロット/短リードタイムに対応できる開発・量産体制を構築し、既存顧客との取引拡大に注力する。ガス検知器・セラミックヒーターの販売については、シェアの拡大により業界の標準メーカーとなることを目指し、開発・製造・販売・メンテナンス部門の強化を推進する。また、新たな収益の柱を構築するため、これまでに培った合成樹脂のリサイクル技術をベースに、環境負荷の低い樹脂製品の開発・販売等、脱炭素社会に向けた新商材の採用、商品開発に注力する方針だ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)


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