■決算概要
1. 2022年10月期上期決算の概要
CAICA DIGITAL<2315>の2022年10月期上期の連結業績は、売上高が前年同期比36.9%増の3,661百万円、営業利益が64百万円(前年同期は243百万円の損失)、経常利益が59百万円(同237百万円の損失)、親会社株主に帰属する四半期純利益が前年同期比151.1%増の515百万円と増収増益となり、営業(及び経常)黒字化を実現した。また、期初予想に対しても総じて計画線で推移している。
売上高は、好調な受注環境を背景として「ITサービス事業」が堅調に推移するとともに、「金融サービス事業」についても、2021年10月期第3四半期から連結化したカイカエクスチェンジホールディングスが期初から寄与したことや、カイカキャピタルによる暗号資産の投融資・運用が好調であったことから大きく拡大した。一方、暗号資産市場全体が低調に推移するなか、「Zaif」における受入手数料が想定を下回ったほか、カイカ証券においてもこれまでの主力商品であったeワラントの販売減を暗号資産関連商品でカバーするには至らなかった。
利益面では、のれん償却費が増加したことに加え、「Zaif」の次世代システム導入やブランド強化に向けた広告投資など先行費用を積極投入したものの、「ITサービス事業」の収益性改善や、「金融サービス事業」における収益の底上げ(セグメント損失の縮小)により営業黒字化を実現した。また、過去の訴訟に係る受取和解金(550百万円)や、償却債権取立益(150百万円)を特別利益に計上したことにより、親会社株主に帰属する四半期純利益は大幅な増益となった。
財政状態については、「Zaif」の業容拡大に伴う利用者暗号資産の増加等により総資産は前期末比5.2%増の112,837百万円に拡大した。一方、自己資本も内部留保の積み増しにより同5.4%増の11,667百万円に拡大したことから、自己資本比率は前期比ほぼ横ばいの10.3%で推移した。また、短期の支払い能力を示す流動比率は106.0%と100%を超え、ネット有利子負債比率もマイナス(実質無借金)の状態が継続されていることから、財務の安全性に懸念はない。
各事業別の業績及び活動実績は以下のとおりである。
(1) ITサービス事業
売上高(内部取引を含む)は前年同期比0.3%減の2,479百万円、セグメント利益は同46.2%増の278百万円と、売上高はほぼ横ばいながら大幅な増益となった。主力となる金融機関向けのシステム開発は、大型案件が少なかったものの、好調な受注環境を背景として堅調に推移した。とりわけ一次請けである保険会社向け案件が拡大し、収益性の向上にも大きく寄与した。非金融向けシステム開発分野においても顧客のIT投資意欲は強く、大手SIer等の既存顧客からの受注の継続及び拡大に加え、新規案件の引き合いも常に確保できている状況にあるようだ。また、暗号資産を含むFinTech関連システムでは、内部取引となる「Zaif」向け案件(次世代システムの導入等)に注力するとともに、自社プロダクト(NFTプラットフォーム、セキュリティソリューション)の販売強化にも取り組んだ。
(2) 金融サービス事業
売上高(内部取引を含む)は前年同期比571.7%増の1,283百万円、セグメント損失は27百万円(前期は210百万円の損失)と大幅な増収となり、損失幅が縮小した。2021年10月期第3四半期より連結化したカイカエクスチェンジホールディングスが期初から寄与したほか、商品ラインナップの拡充にも取り組んだ。ただ、暗号資産市場全体が低調に推移するなか、取引顧客の出来高や新規顧客のペースが鈍化し、想定を下回る進捗となっている。また、カイカ証券についても、暗号資産を対象とした独自の商品・サービスの開発・提供に注力したものの、これまでの主力商品であったeワラントの販売については、(株)SBI証券が新規eワラントの銘柄追加を中止したことにより低調に推移しており、その減少分を暗号資産関連商品の伸びでカバーするには至らなかった。一方、カイカキャピタルにおける暗号資産の投融資・運用が好調であり、セグメント損失の縮小に大きく貢献した。
2. 2022年10月期上期の総括
以上から、2022年10月期上期を総括すると、暗号資産市場全体が低調に推移するなかでも、「ITサービス事業」における収益の伸びや、暗号資産のトレーディング収益の確保により大幅な損益改善(営業黒字化)を実現したところは、これまで厳しい業績が継続してきただけに、潮目の変化となる可能性も含めて前向きに評価したい。また、活動面においても、「Zaif」における次世代システム導入をはじめ、暗号資産関連ビジネスの拡大に向けて、様々な先行投資や取り組みが本格化してきた点でも大きな成果を残すことができた。一方、「Zaif」の活性化に向けて、暗号資産を対象とする独自の商品・サービスをいかに軌道に乗せていくのかは引き続き課題となっており、本格的な成長加速に向けた今後の展開とブレークスルーのタイミングに注目していきたい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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1. 2022年10月期上期決算の概要
CAICA DIGITAL<2315>の2022年10月期上期の連結業績は、売上高が前年同期比36.9%増の3,661百万円、営業利益が64百万円(前年同期は243百万円の損失)、経常利益が59百万円(同237百万円の損失)、親会社株主に帰属する四半期純利益が前年同期比151.1%増の515百万円と増収増益となり、営業(及び経常)黒字化を実現した。また、期初予想に対しても総じて計画線で推移している。
売上高は、好調な受注環境を背景として「ITサービス事業」が堅調に推移するとともに、「金融サービス事業」についても、2021年10月期第3四半期から連結化したカイカエクスチェンジホールディングスが期初から寄与したことや、カイカキャピタルによる暗号資産の投融資・運用が好調であったことから大きく拡大した。一方、暗号資産市場全体が低調に推移するなか、「Zaif」における受入手数料が想定を下回ったほか、カイカ証券においてもこれまでの主力商品であったeワラントの販売減を暗号資産関連商品でカバーするには至らなかった。
利益面では、のれん償却費が増加したことに加え、「Zaif」の次世代システム導入やブランド強化に向けた広告投資など先行費用を積極投入したものの、「ITサービス事業」の収益性改善や、「金融サービス事業」における収益の底上げ(セグメント損失の縮小)により営業黒字化を実現した。また、過去の訴訟に係る受取和解金(550百万円)や、償却債権取立益(150百万円)を特別利益に計上したことにより、親会社株主に帰属する四半期純利益は大幅な増益となった。
財政状態については、「Zaif」の業容拡大に伴う利用者暗号資産の増加等により総資産は前期末比5.2%増の112,837百万円に拡大した。一方、自己資本も内部留保の積み増しにより同5.4%増の11,667百万円に拡大したことから、自己資本比率は前期比ほぼ横ばいの10.3%で推移した。また、短期の支払い能力を示す流動比率は106.0%と100%を超え、ネット有利子負債比率もマイナス(実質無借金)の状態が継続されていることから、財務の安全性に懸念はない。
各事業別の業績及び活動実績は以下のとおりである。
(1) ITサービス事業
売上高(内部取引を含む)は前年同期比0.3%減の2,479百万円、セグメント利益は同46.2%増の278百万円と、売上高はほぼ横ばいながら大幅な増益となった。主力となる金融機関向けのシステム開発は、大型案件が少なかったものの、好調な受注環境を背景として堅調に推移した。とりわけ一次請けである保険会社向け案件が拡大し、収益性の向上にも大きく寄与した。非金融向けシステム開発分野においても顧客のIT投資意欲は強く、大手SIer等の既存顧客からの受注の継続及び拡大に加え、新規案件の引き合いも常に確保できている状況にあるようだ。また、暗号資産を含むFinTech関連システムでは、内部取引となる「Zaif」向け案件(次世代システムの導入等)に注力するとともに、自社プロダクト(NFTプラットフォーム、セキュリティソリューション)の販売強化にも取り組んだ。
(2) 金融サービス事業
売上高(内部取引を含む)は前年同期比571.7%増の1,283百万円、セグメント損失は27百万円(前期は210百万円の損失)と大幅な増収となり、損失幅が縮小した。2021年10月期第3四半期より連結化したカイカエクスチェンジホールディングスが期初から寄与したほか、商品ラインナップの拡充にも取り組んだ。ただ、暗号資産市場全体が低調に推移するなか、取引顧客の出来高や新規顧客のペースが鈍化し、想定を下回る進捗となっている。また、カイカ証券についても、暗号資産を対象とした独自の商品・サービスの開発・提供に注力したものの、これまでの主力商品であったeワラントの販売については、(株)SBI証券が新規eワラントの銘柄追加を中止したことにより低調に推移しており、その減少分を暗号資産関連商品の伸びでカバーするには至らなかった。一方、カイカキャピタルにおける暗号資産の投融資・運用が好調であり、セグメント損失の縮小に大きく貢献した。
2. 2022年10月期上期の総括
以上から、2022年10月期上期を総括すると、暗号資産市場全体が低調に推移するなかでも、「ITサービス事業」における収益の伸びや、暗号資産のトレーディング収益の確保により大幅な損益改善(営業黒字化)を実現したところは、これまで厳しい業績が継続してきただけに、潮目の変化となる可能性も含めて前向きに評価したい。また、活動面においても、「Zaif」における次世代システム導入をはじめ、暗号資産関連ビジネスの拡大に向けて、様々な先行投資や取り組みが本格化してきた点でも大きな成果を残すことができた。一方、「Zaif」の活性化に向けて、暗号資産を対象とする独自の商品・サービスをいかに軌道に乗せていくのかは引き続き課題となっており、本格的な成長加速に向けた今後の展開とブレークスルーのタイミングに注目していきたい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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