■要約
パイプドHD<3919>は純粋持株会社であるが、主要な連結子会社である(株)パイプドビッツは、自社製品である「SPIRAL(R)」というプラットフォーム(ミドルウェア)をクラウド型で提供するユニークなIT企業である。ナショナルクライアントをはじめとする大企業や中堅企業、中小SIer(システムインテグレーター)向けにプラットフォームの提供をするだけでなく、グループ会社では特定の業界(美容業界や建築業界など)向けに自社開発したアプリケーションの販売やそれを使った事業展開も行っている。2022年4月からの東京証券取引所(以下、東証)の市場区分変更に伴い、「スタンダード市場」へ移行した。
1. 2022年2月期の業績概要
2022年2月期の連結業績は、売上高7,806百万円(前期比19.7%増)、営業利益1,660百万円(同16.4%増)、経常利益1,695百万円(同16.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,103百万円(同10.0%減)となった。親会社株主に帰属する当期純利益が減益となった要因は、2021年2月期に米国株式の売却益293百万円を特別利益として計上したことによる。新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響により、同ウイルス感染症対策に関連する急を要するシステム案件の受注(「有期契約」※1)が増加したこともあり、主力のホリゾンタルDX(主にクラウド)が大幅な増収増益となり、全体の業績をけん引した。バーティカルDX(xTech及び社会イノベーション)は、依然として売上高は小規模であり、営業損失を計上したものの全体への影響は軽微であった。カスタマーエンゲージメントは、広告が順調に案件を獲得し、増収増益となった。なお、「SPIRAL(R)」のARR※2は堅調に増加し、2022年2月期末には3,074百万円(前期は2,968百万円)となった。上期は新型コロナウイルス感染症対策に関連する「有期契約」が一定割合あったが、下期は本来の同社のビジネスモデルである「自動更新付契約」が増加した。
※1 「有期契約」とは、本来の同社のクラウド契約の基本である「継続契約」(ほぼ毎年自動更新)とは異なり、自治体等からの「期限を限った契約」を指す。
※2 ARR(Annual Recurring Revenue)=年間を通して期待できる売上高。翌日を起算日として計算。
2. 2023年2月期の業績見通し
2023年2月期の連結業績予想については、売上高8,000百万円(前期比2.5%増)、営業利益1,500百万円(同9.7%減)、経常利益1,500百万円(同11.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益900百万円(同18.4%減)を見込んでいる。売上高については、2022年2月期の業績に大きく寄与した新型コロナウイルス感染症のワクチン接種予約フォームなど一過性の案件需要が収束すると予想されているものの、新規連結子会社の業績が上乗せされることなどから増収を見込んでいる。一方、損益面では、新規連結子会社ののれん償却が発生すること、引き続き新規採用や人材育成・教育等の先行投資を進めることなどから、営業減益を予想している。ただし、「SPIRAL(R)」有効アカウント数が順調に伸びれば利益率は改善することなどから、今後の動向によっては上方修正の可能性が高いと弊社では見ている。
3. 今後の見通し
同社は、2021年9月30日に(株)ミライサイテキグループによる普通株式及び新株予約権の公開買付け(MBO:Management Buy Out)を発表したが、買付株数が予定に達しなかったことから同年11月に不成立となった。「中期経営計画2023」については、目標値(2023年2月期に売上高7,500百万円、営業利益1,700百万円)を2022年2月期にほぼ達成した。なお営業利益については、中長期的な成長に向けた投資を進めていることから未達の予想となっているものの、前向きな先行投資によるものであり懸念される内容ではない。
■Key Points
・自社開発した「SPIRAL(R)」というプラットフォームを軸に事業展開
・2022年2月期はクラウドの伸長により前期比16.4%の営業増益で着地、「中期経営計画2023」の目標値を前倒しでほぼ達成
・2023年2月期は人材等への先行投資により営業減益の見込み
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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パイプドHD<3919>は純粋持株会社であるが、主要な連結子会社である(株)パイプドビッツは、自社製品である「SPIRAL(R)」というプラットフォーム(ミドルウェア)をクラウド型で提供するユニークなIT企業である。ナショナルクライアントをはじめとする大企業や中堅企業、中小SIer(システムインテグレーター)向けにプラットフォームの提供をするだけでなく、グループ会社では特定の業界(美容業界や建築業界など)向けに自社開発したアプリケーションの販売やそれを使った事業展開も行っている。2022年4月からの東京証券取引所(以下、東証)の市場区分変更に伴い、「スタンダード市場」へ移行した。
1. 2022年2月期の業績概要
2022年2月期の連結業績は、売上高7,806百万円(前期比19.7%増)、営業利益1,660百万円(同16.4%増)、経常利益1,695百万円(同16.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,103百万円(同10.0%減)となった。親会社株主に帰属する当期純利益が減益となった要因は、2021年2月期に米国株式の売却益293百万円を特別利益として計上したことによる。新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響により、同ウイルス感染症対策に関連する急を要するシステム案件の受注(「有期契約」※1)が増加したこともあり、主力のホリゾンタルDX(主にクラウド)が大幅な増収増益となり、全体の業績をけん引した。バーティカルDX(xTech及び社会イノベーション)は、依然として売上高は小規模であり、営業損失を計上したものの全体への影響は軽微であった。カスタマーエンゲージメントは、広告が順調に案件を獲得し、増収増益となった。なお、「SPIRAL(R)」のARR※2は堅調に増加し、2022年2月期末には3,074百万円(前期は2,968百万円)となった。上期は新型コロナウイルス感染症対策に関連する「有期契約」が一定割合あったが、下期は本来の同社のビジネスモデルである「自動更新付契約」が増加した。
※1 「有期契約」とは、本来の同社のクラウド契約の基本である「継続契約」(ほぼ毎年自動更新)とは異なり、自治体等からの「期限を限った契約」を指す。
※2 ARR(Annual Recurring Revenue)=年間を通して期待できる売上高。翌日を起算日として計算。
2. 2023年2月期の業績見通し
2023年2月期の連結業績予想については、売上高8,000百万円(前期比2.5%増)、営業利益1,500百万円(同9.7%減)、経常利益1,500百万円(同11.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益900百万円(同18.4%減)を見込んでいる。売上高については、2022年2月期の業績に大きく寄与した新型コロナウイルス感染症のワクチン接種予約フォームなど一過性の案件需要が収束すると予想されているものの、新規連結子会社の業績が上乗せされることなどから増収を見込んでいる。一方、損益面では、新規連結子会社ののれん償却が発生すること、引き続き新規採用や人材育成・教育等の先行投資を進めることなどから、営業減益を予想している。ただし、「SPIRAL(R)」有効アカウント数が順調に伸びれば利益率は改善することなどから、今後の動向によっては上方修正の可能性が高いと弊社では見ている。
3. 今後の見通し
同社は、2021年9月30日に(株)ミライサイテキグループによる普通株式及び新株予約権の公開買付け(MBO:Management Buy Out)を発表したが、買付株数が予定に達しなかったことから同年11月に不成立となった。「中期経営計画2023」については、目標値(2023年2月期に売上高7,500百万円、営業利益1,700百万円)を2022年2月期にほぼ達成した。なお営業利益については、中長期的な成長に向けた投資を進めていることから未達の予想となっているものの、前向きな先行投資によるものであり懸念される内容ではない。
■Key Points
・自社開発した「SPIRAL(R)」というプラットフォームを軸に事業展開
・2022年2月期はクラウドの伸長により前期比16.4%の営業増益で着地、「中期経営計画2023」の目標値を前倒しでほぼ達成
・2023年2月期は人材等への先行投資により営業減益の見込み
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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