■要約
1. 会社概要
サムティ<3244>は、関西圏及び首都圏を中心として全国に展開している総合不動産会社である。不動産事業(不動産ファンド向け大型賃貸マンションやホテルの開発及び販売等)と不動産賃貸事業(賃貸マンションの保有等)のほか、ホテル事業なども手掛けており、成長と安定のバランスの取れた事業構成や一気通貫型のビジネスモデルに特長がある。また、2015年にはJ-REIT事業※へ進出し、さらなる事業拡大に向けて体制を整えると、ここ数年は展開エリアの拡大と積極投資により高い成長を続けてきた。2022年4月からは東京証券取引所(以下、東証)の新市場区分において、「プライム市場」への移行が決定している。
※2015年3月に設立したサムティ・レジデンシャル投資法人<3459>(以下、SRR)を東証J-REITに上場させた。また、2021年11月にはホテル特化型REITであるサムティ・ジャパンホテル投資法人を設立し、2022年11月期中の上場を目指している。
新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響により、ホテル事業の稼働率は厳しい状況が続いているものの、景気変動の影響を受けにくい賃貸マンションは堅調に推移しているうえ、今後に向けた戦略的投資(用地仕入れや収益不動産の取得)もハイペースで進捗している。また、2021年1月に公表した中期経営計画「サムティ強靭化計画(アフターコロナ版)」(以下、中期経営計画(アフターコロナ版))では、今後の環境変化を勘案し、「資産保有型」ビジネスへの転換や海外事業の強化、長期的視野でのホテル事業の取り組みにより持続的な成長を目指しており、その達成に向けた進捗を明確に示すため、セグメント区分の変更を実施した。
2. 2021年11月期の業績
2021年11月期の業績は、売上高が前期比10.5%減の90,460百万円、営業利益が同45.5%減の9,461百万円、経常利益が同46.8%減の8,105百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同5.7%減の10,012百万円と、「資産保有型」ビジネスへの転換にあたり減収減益となったが、その点は想定内である。売上高は、物件売却を意図的に抑えた「不動産開発事業」が減収となった一方、それ以外の事業はすべて増収を確保した。特に重視する「インカムゲイン」(売上高ベース)は、「ホテル賃貸・運営事業」の稼働率が低調に推移したものの、それを補って同14.4%増の14,578百万円と着実に伸びている。損益面では、減収による収益の下押しに加えて、「ホテル賃貸・運営事業」がコロナ禍の影響により減益となった。一方、グループ資産拡大に向けた戦略的投資はハイペースで進んでおり、開発パイプラインも順調に拡大している。
3. 2022年11月期の業績予想
2022年11月期の業績予想について同社は、売上高を前期比54.8%増の140,000百万円、営業利益を同90.2%増の18,000百万円、経常利益を同85.1%増の15,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益を同1.9%増の10,200百万円と大幅な増収増益を見込んでいる。売上高はすべての事業が伸長するが、特にベトナムでの分譲事業が本格化する「海外事業」の大幅な伸びと、コロナ禍収束を前提とした「ホテル賃貸・運営事業」の一定の回復が、売上高全体の伸び率に寄与する想定である。また、重視するインカムゲイン(売上高ベース)についても、同54.3%増の22,500百万円と大きく拡大する見通しとなっている。損益面でも、増収による収益の底上げや、「ホテル賃貸・運営事業」の黒字化により大幅な営業増益を見込んでいる。
4. 中期経営計画(アフターコロナ版)の概要
2021年1月に公表した5ヶ年の中期経営計画(アフターコロナ版)では、(1) 「資産保有型」ビジネスへの転換(インカムゲインの拡大)、(2) ホテルREIT上場に向けた取り組み、(3) 地方大都市圏における戦略的投資、(4) 海外事業での収益基盤の構築を基本方針に掲げており、5年間の投資計画は約7,500億円、最終年度(2025年11月期)の業績目標として売上高2,200億円水準、営業利益350億円以上、ROE15.0%水準、ROA7.0%水準、自己資本比率30.0%以上を目指している。特に、グループ資産(REITを含む)を1兆円規模にまで拡大するとともに、営業利益の50%をインカムゲイン(賃貸収入等)、15%を海外事業で構成する収益構造への転換を図る方針である。
■Key Points
・2021年11月期の業績は「資産保有型」ビジネスへの転換にあたり減収減益となったものの、その点は想定内
・一方、グループ資産拡大に向けた戦略的投資はハイペースで進んでおり、開発パイプラインも順調に拡大
・2022年11月期は「海外事業」の大幅な伸びと、コロナ禍収束を前提とした「ホテル賃貸・運営事業」の一定の回復等により大幅な増収増益を見込む
・中期経営計画(アフターコロナ版)では、「資産保有型」ビジネスへの転換(インカムゲインの拡大)や海外事業の強化、長期的視野でのホテル事業の取り組みにより持続的な成長を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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1. 会社概要
サムティ<3244>は、関西圏及び首都圏を中心として全国に展開している総合不動産会社である。不動産事業(不動産ファンド向け大型賃貸マンションやホテルの開発及び販売等)と不動産賃貸事業(賃貸マンションの保有等)のほか、ホテル事業なども手掛けており、成長と安定のバランスの取れた事業構成や一気通貫型のビジネスモデルに特長がある。また、2015年にはJ-REIT事業※へ進出し、さらなる事業拡大に向けて体制を整えると、ここ数年は展開エリアの拡大と積極投資により高い成長を続けてきた。2022年4月からは東京証券取引所(以下、東証)の新市場区分において、「プライム市場」への移行が決定している。
※2015年3月に設立したサムティ・レジデンシャル投資法人<3459>(以下、SRR)を東証J-REITに上場させた。また、2021年11月にはホテル特化型REITであるサムティ・ジャパンホテル投資法人を設立し、2022年11月期中の上場を目指している。
新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響により、ホテル事業の稼働率は厳しい状況が続いているものの、景気変動の影響を受けにくい賃貸マンションは堅調に推移しているうえ、今後に向けた戦略的投資(用地仕入れや収益不動産の取得)もハイペースで進捗している。また、2021年1月に公表した中期経営計画「サムティ強靭化計画(アフターコロナ版)」(以下、中期経営計画(アフターコロナ版))では、今後の環境変化を勘案し、「資産保有型」ビジネスへの転換や海外事業の強化、長期的視野でのホテル事業の取り組みにより持続的な成長を目指しており、その達成に向けた進捗を明確に示すため、セグメント区分の変更を実施した。
2. 2021年11月期の業績
2021年11月期の業績は、売上高が前期比10.5%減の90,460百万円、営業利益が同45.5%減の9,461百万円、経常利益が同46.8%減の8,105百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同5.7%減の10,012百万円と、「資産保有型」ビジネスへの転換にあたり減収減益となったが、その点は想定内である。売上高は、物件売却を意図的に抑えた「不動産開発事業」が減収となった一方、それ以外の事業はすべて増収を確保した。特に重視する「インカムゲイン」(売上高ベース)は、「ホテル賃貸・運営事業」の稼働率が低調に推移したものの、それを補って同14.4%増の14,578百万円と着実に伸びている。損益面では、減収による収益の下押しに加えて、「ホテル賃貸・運営事業」がコロナ禍の影響により減益となった。一方、グループ資産拡大に向けた戦略的投資はハイペースで進んでおり、開発パイプラインも順調に拡大している。
3. 2022年11月期の業績予想
2022年11月期の業績予想について同社は、売上高を前期比54.8%増の140,000百万円、営業利益を同90.2%増の18,000百万円、経常利益を同85.1%増の15,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益を同1.9%増の10,200百万円と大幅な増収増益を見込んでいる。売上高はすべての事業が伸長するが、特にベトナムでの分譲事業が本格化する「海外事業」の大幅な伸びと、コロナ禍収束を前提とした「ホテル賃貸・運営事業」の一定の回復が、売上高全体の伸び率に寄与する想定である。また、重視するインカムゲイン(売上高ベース)についても、同54.3%増の22,500百万円と大きく拡大する見通しとなっている。損益面でも、増収による収益の底上げや、「ホテル賃貸・運営事業」の黒字化により大幅な営業増益を見込んでいる。
4. 中期経営計画(アフターコロナ版)の概要
2021年1月に公表した5ヶ年の中期経営計画(アフターコロナ版)では、(1) 「資産保有型」ビジネスへの転換(インカムゲインの拡大)、(2) ホテルREIT上場に向けた取り組み、(3) 地方大都市圏における戦略的投資、(4) 海外事業での収益基盤の構築を基本方針に掲げており、5年間の投資計画は約7,500億円、最終年度(2025年11月期)の業績目標として売上高2,200億円水準、営業利益350億円以上、ROE15.0%水準、ROA7.0%水準、自己資本比率30.0%以上を目指している。特に、グループ資産(REITを含む)を1兆円規模にまで拡大するとともに、営業利益の50%をインカムゲイン(賃貸収入等)、15%を海外事業で構成する収益構造への転換を図る方針である。
■Key Points
・2021年11月期の業績は「資産保有型」ビジネスへの転換にあたり減収減益となったものの、その点は想定内
・一方、グループ資産拡大に向けた戦略的投資はハイペースで進んでおり、開発パイプラインも順調に拡大
・2022年11月期は「海外事業」の大幅な伸びと、コロナ禍収束を前提とした「ホテル賃貸・運営事業」の一定の回復等により大幅な増収増益を見込む
・中期経営計画(アフターコロナ版)では、「資産保有型」ビジネスへの転換(インカムゲインの拡大)や海外事業の強化、長期的視野でのホテル事業の取り組みにより持続的な成長を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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