アートネイチャ Research Memo(5):様々な課題のある内外環境

配信元:フィスコ
投稿:2022/01/07 15:25
■中期経営計画

1. 取り巻く環境
これまでも一部触れてきたが、アートネイチャー<7823>を取り巻く内外環境には様々な課題が生じている。マクロ的には、コロナ禍や米中摩擦などを背景に、国内外経済の先行き不透明感が増している。国内毛髪市場においては、高齢化社会の進展や定年延長、女性労働の活性化、アンチエイジング志向の高まりなどにより需要の拡大が見込める一方、毛髪業界の成熟化や他社・隣接業界との競争激化、代替商品・サービスの台頭など、厳しさを増している。ほかにも、労働市場の縮小や優秀な従業員確保、SDGsなど株式市場や社会への向き合い方、技術革新による急速な変化(DXの進展)などへの対応も課題といえる。


「次代を切り拓くアートネイチャー」の礎を築く
2. 中期経営計画
そこで同社は、こうした課題を解消し「次代を切り拓くアートネイチャー」の礎を築いて成長を持続するため、3ヶ年(2021年3月期~2023年3月期)の中期経営計画「アートネイチャーChallengeプラン」を策定した。また、プラン達成のため、(1)業績伸長、(2)新領域の開拓、(3)採用の強化、(4)人財の育成、(5)市場との対話、(6)業務の刷新——の6つを重点Challenge施策として実行することになった。具体的には、(1)業績伸長では、引き続き顧客ニーズに応えた高品質な製品とサービスを開発し、定期的に市場投入するとともに商品ラインナップを増やし、「反響営業」によって需要を掘り起こし、定着に向けた施策を実践することを目指す。また、ECサイトや海外市場など各媒体や地域にフィットした施策を講じてさらなる需要を掘り起こし、国内外の市場で顧客数の増加を図る。(2)新領域の開拓では、近年進出した比較的手ごろな価格帯のウィッグ事業や医薬品販売事業、医療機関サポート事業を着実に軌道に乗せる一方、国内外でのM&Aや新規事業の立ち上げなどにより一層の業容拡大を図る。

(3)採用の強化と(4)人財の育成では、まず、従業員の約8割に当たる1,856名(2021年3月31日現在)の理・美容師の資格取得者に対し、最大限のパフォーマンスを発揮できるよう様々な研修や施策を講じるほか、女性活躍推進法に基づく優良企業としてダイバーシティマネジメントや、ワークライフ・バランスを重視した「働き方改革」を積極的に推進する。これらにより、優秀な人財を安定的に確保、従業員の定着化を推進、現場力・接客力の向上を図る。営業部門以外の従業員についても、様々な企画立案やグループ会社の経営管理を担える人財を育成する教育研修や自己研鑽支援の制度を確立し、各分野のエキスパートを増やす仕組みを構築、本社における企画力や経営管理力の引き上げを図る。(5)市場との対話では、すでにSDGsに関わる様々な取り組みを実践しているが、新たに「プラスチックの削減」と「新しいサービス体制の構築」に挑むとともに、IR活動などを通じて市場との対話やコーポレートガバナンスを強化し、中長期的な企業価値の向上を図る。(6)業務の刷新では、ペーパーレス化やシステム化など各種制度の見直しや本社業務の刷新により、無駄を省き、固定費を圧縮し、損益分岐点を引き下げ、生産性を向上させ、より収益を生み出せる体制への転換を図る。


コロナ禍でも課題解消~持続的成長という中期経営計画の目的は変わらない
3. 重点項目と進捗
同社は、「アートネイチャーChallengeプラン」で年度ごとの目標を定めている。初年度「Challenge 2020」では、既存事業の事業基盤を再整備するとともに、スタンダードウィッグ、発毛剤、医療機関サポートなど新規事業の基盤の拡充に挑む。2年目の「Challenge 2021」では、既存事業の再拡大に挑むとともに、さらなる新領域の拡充に向けた体制を整える。最終年度「Challenge 2022」では、既存事業の安定的な拡大に挑むとともに、さらなる新領域に踏み出す。毎年着実にプランをこなすことで、同社は2023年3月期に売上高440億円、経常利益率8.5%(約38.5億円)、ROE9.1%を目指している。しかし、コロナ禍の影響が想定以上に大きかったため、課題解消~持続的成長という中期経営計画の目的は変わらないものの、目標達成には既存事業や新規事業でもうひと踏ん張りが必要な状況といえる。

そのコロナ禍の影響だが、中期経営計画の初年度となった2021年3月期第1四半期が、国内でのコロナ禍の第1波に当たり、1回目の緊急事態宣言(2020年4月~5月)が発出された。世界的規模でも感染が急速に広まった時期だったため、国内の販売拠点は時短営業や臨時休業となり、フィリピンの工場は臨時休業や部分操業となった。同社の組織体制の根幹をなす生産~販売が一時的に機能しなくなったため、中期経営計画の進捗に相応の影響を残したことは残念だが仕方のないことだろう。一方、同第2四半期以降は、一部のジュリア・オージェ店舗を除き全店で通常営業を再開、フィリピンの工場も一部規制は残ったがほぼ通常操業に戻った。このため、比較的早期にほぼ通常どおりの業務に戻れたことは、顧客への影響も最低限で済んだという点で好印象である。後に詳述するが、このため業績も堅調な推移へと戻ってきた。なお、3回目の緊急事態宣言(2021年4月~9月)が明けた後の業績についても、比較的堅調に推移している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

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配信元: フィスコ

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