■テクマトリックス<3762>の会社概要
(2) アプリケーション・サービス事業
アプリケーション・サービス事業では、特定市場や特定業界向けにシステム開発、アプリケーション・パッケージ、テスト・ソリューション、クラウドサービス等の事業を展開している。対象分野としては医療、CRM、ソフトウェア品質保証、ビジネスソリューションの4領域で、売上構成比は各分野ともに20%~30%で拮抗している。また、新規事業として教育事業も開始している。
a) 医療分野
医療分野は、NOBORI、医知悟、A-Lineが提供する各種サービスで構成されているが、売上高の大半はNOBORIの事業で占められている。
同社の医療分野の事業は、1998年にDICOM規格に対応した医用画像システムを開発し、PACS(医用画像管理システム)市場に参入したのが始まりである。その後、医療情報の病院施設外の保存が認められるようになった機会を捉え、クラウド型PACSのサービスを2012年10月より開始し、その後の成長の原動力とした。同社のクラウドサービスは初期導入コストが不要なほか、データはクラウド上で安全に管理されるため、病院側でデータバックアップ等のメンテナンス業務が不要になるといったメリットもある。また患者本人の同意と医療施設間の公開設定があれば、他施設の患者の画像やレポートをシームレスに参照することも可能となる。
既存のオンプレミス(サーバを院内に設置する方式)ユーザの切り替えや、競合他社システムを利用する中規模・大規模病院のリプレイスのほか、従来は初期コストが高く導入に慎重だった小規模医療施設の新規開拓なども進んでおり、2021年9月末時点で契約施設数は1,000施設を超える水準となっている(2020年3月期より競争上の理由から施設数については非開示としている)。また、医療画像等の総検査件数は2.31億件、延べ患者数で3,849万人(複数の病院で画像診断を受ける患者はダブルカウントされている)のデータが「NOBORI」のクラウド上に保管されている。月額利用料は最低5万円からとなっているが、料金は導入後5年間に蓄積される画像データの予想量に基づく従量課金制となるため、大学病院等のヘビーユーザではその数十倍となるケースもある(サービス契約期間は5年間)。2012年のサービス開始から10年目を迎えるが、顧客事由による解約(閉院等)を除いてサービス内容を理由とした解約は発生しておらず、顧客からも高い評価を受けている。
国内のオンプレミス型のPACS市場では富士フイルムメディカル(株)やキヤノンメディカルシステムズ(株)、GEヘルスケア・ジャパン(株)など大手医療機器メーカーが強いが、クラウドサービス型では同社が約8割と圧倒的なシェアを握っている。医療分野のクラウドサービスでは個人情報保護の観点からセキュリティ対策が重要となるほか、外部保存しているファイルサイズが非常に大きい医用画像をストレスなく院内で参照することが求められるため、ミッションクリティカルなシステムを構築する高い技術力が必要とされる。同社はネットワーク及びセキュリティ分野において豊富な知見と高い技術力を持ち合わせていることが強みになっていると考えられ、契約施設数では業界で唯一伸ばし続けている。
「NOBORI」のプラットフォーム上では、オンラインでの検査予約サービスや夜間緊急時に院外にいる担当医師へ画像確認依頼ができるサービスのほか、AI画像診断支援、3D技術を用いた高度な画像解析、音声自動入力など他社の医療関連クラウドサービスなども提供している。2019年4月に子会社化したA-Lineが開発・提供するクラウド型の医療被ばく線量管理システム「MINCADI」もその1つである。「MINCADI」は、医療画像検査装置より得られる情報を自動的に取得し、患者ごとの医療被ばく線量や検査ごとの撮影条件をクラウド上で管理し、最適化するためのソリューションとなる。2020年4月よりX線CT診断装置等における医療被ばく線量の記録・管理が義務化されたことを受け、引き合いが増加している。NOBORIでは各種医療サービスを「NOBORI」のプラットフォーム上で提供していくことにより導入施設数や利用者数を拡大していく戦略で、2021年1月より有料サービスを開始した個人(患者)向けのPHR・医療情報共有アプリ「NOBORI」※も同プラットフォームを通じて提供している。
※現在、無料版と有料版(月額100円)を提供。無料版はデータ保存期間が1年、有料版は無期限となっている。共有できる医療情報(カルテ情報、検査画像、薬歴情報等)やサービス(予約申込やキャンセル等)の内容については医療施設によって異なる。
「医知悟」は遠隔画像診断(読影)を行う放射線科医等の専門医と、画像診断を必要とする医療施設等とをつなぐ情報インフラを提供するサービスとなる。「iCOMBOX」と呼ばれる専用通信装置を送り手側・受け手側の双方に設置し、「iCOMSERVER(センターサーバ)」を介して送受信するプラットフォームである。2021年9月末現在で650拠点以上の施設に導入され、利用専門医数は1,400名以上(実質的に稼働している放射線科医の約3分の1が利用)、月間の依頼検査数は約20万件、市場シェアは約34%でトップとなっており、月間の依頼検査数は直近で30万件を超える月も出ている。主な導入施設は、医療施設のほか大手健康診断事業者、衛生検査所、各種病院等である。また、2018年4月に「NOBORI」と連携し、「NOBORI」ユーザであれば専用通信装置を設置しなくても施設外の画像診断を行うことが可能となっている。
b) CRM分野
CRM分野では自社開発製品である「FastSeries」を中心に、企業の顧客サービス向上を支援するコンタクトセンターCRMシステムをオンプレミス及びクラウドサービスで提供している。電話、メール、SNS等による「顧客との接触履歴」と「顧客の声」を一元管理し、コンタクトセンター運営を効率化するCRMシステム「FastHelp」のほか、FAQナレッジシステム「FastAnswer」等を提供している。CRMシステム市場では、パッケージ製品で国内トップシェア、SaaS型ではセールスフォース・ドットコムが主な競合先となる。
主要パートナーは、(株)ベルシステム24(ベルシステム24ホールディングス<6183>子会社)のほか、NEC<6701>や伊藤忠テクノソリューションズ<4739>など大手システム・インテグレーターとなり、各企業のコンタクト(テレマーケティング)センターや顧客サポートセンターで導入されている。また、医薬品業界で「FastHelp」の導入実績が高いことも特徴となっている。製薬企業では、日本製薬工業協会(製薬協)において提唱されている「くすり相談窓口」を一般的に設置しており、国内の多くの製薬企業に同社のCRMシステムが導入されている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<EY>
(2) アプリケーション・サービス事業
アプリケーション・サービス事業では、特定市場や特定業界向けにシステム開発、アプリケーション・パッケージ、テスト・ソリューション、クラウドサービス等の事業を展開している。対象分野としては医療、CRM、ソフトウェア品質保証、ビジネスソリューションの4領域で、売上構成比は各分野ともに20%~30%で拮抗している。また、新規事業として教育事業も開始している。
a) 医療分野
医療分野は、NOBORI、医知悟、A-Lineが提供する各種サービスで構成されているが、売上高の大半はNOBORIの事業で占められている。
同社の医療分野の事業は、1998年にDICOM規格に対応した医用画像システムを開発し、PACS(医用画像管理システム)市場に参入したのが始まりである。その後、医療情報の病院施設外の保存が認められるようになった機会を捉え、クラウド型PACSのサービスを2012年10月より開始し、その後の成長の原動力とした。同社のクラウドサービスは初期導入コストが不要なほか、データはクラウド上で安全に管理されるため、病院側でデータバックアップ等のメンテナンス業務が不要になるといったメリットもある。また患者本人の同意と医療施設間の公開設定があれば、他施設の患者の画像やレポートをシームレスに参照することも可能となる。
既存のオンプレミス(サーバを院内に設置する方式)ユーザの切り替えや、競合他社システムを利用する中規模・大規模病院のリプレイスのほか、従来は初期コストが高く導入に慎重だった小規模医療施設の新規開拓なども進んでおり、2021年9月末時点で契約施設数は1,000施設を超える水準となっている(2020年3月期より競争上の理由から施設数については非開示としている)。また、医療画像等の総検査件数は2.31億件、延べ患者数で3,849万人(複数の病院で画像診断を受ける患者はダブルカウントされている)のデータが「NOBORI」のクラウド上に保管されている。月額利用料は最低5万円からとなっているが、料金は導入後5年間に蓄積される画像データの予想量に基づく従量課金制となるため、大学病院等のヘビーユーザではその数十倍となるケースもある(サービス契約期間は5年間)。2012年のサービス開始から10年目を迎えるが、顧客事由による解約(閉院等)を除いてサービス内容を理由とした解約は発生しておらず、顧客からも高い評価を受けている。
国内のオンプレミス型のPACS市場では富士フイルムメディカル(株)やキヤノンメディカルシステムズ(株)、GEヘルスケア・ジャパン(株)など大手医療機器メーカーが強いが、クラウドサービス型では同社が約8割と圧倒的なシェアを握っている。医療分野のクラウドサービスでは個人情報保護の観点からセキュリティ対策が重要となるほか、外部保存しているファイルサイズが非常に大きい医用画像をストレスなく院内で参照することが求められるため、ミッションクリティカルなシステムを構築する高い技術力が必要とされる。同社はネットワーク及びセキュリティ分野において豊富な知見と高い技術力を持ち合わせていることが強みになっていると考えられ、契約施設数では業界で唯一伸ばし続けている。
「NOBORI」のプラットフォーム上では、オンラインでの検査予約サービスや夜間緊急時に院外にいる担当医師へ画像確認依頼ができるサービスのほか、AI画像診断支援、3D技術を用いた高度な画像解析、音声自動入力など他社の医療関連クラウドサービスなども提供している。2019年4月に子会社化したA-Lineが開発・提供するクラウド型の医療被ばく線量管理システム「MINCADI」もその1つである。「MINCADI」は、医療画像検査装置より得られる情報を自動的に取得し、患者ごとの医療被ばく線量や検査ごとの撮影条件をクラウド上で管理し、最適化するためのソリューションとなる。2020年4月よりX線CT診断装置等における医療被ばく線量の記録・管理が義務化されたことを受け、引き合いが増加している。NOBORIでは各種医療サービスを「NOBORI」のプラットフォーム上で提供していくことにより導入施設数や利用者数を拡大していく戦略で、2021年1月より有料サービスを開始した個人(患者)向けのPHR・医療情報共有アプリ「NOBORI」※も同プラットフォームを通じて提供している。
※現在、無料版と有料版(月額100円)を提供。無料版はデータ保存期間が1年、有料版は無期限となっている。共有できる医療情報(カルテ情報、検査画像、薬歴情報等)やサービス(予約申込やキャンセル等)の内容については医療施設によって異なる。
「医知悟」は遠隔画像診断(読影)を行う放射線科医等の専門医と、画像診断を必要とする医療施設等とをつなぐ情報インフラを提供するサービスとなる。「iCOMBOX」と呼ばれる専用通信装置を送り手側・受け手側の双方に設置し、「iCOMSERVER(センターサーバ)」を介して送受信するプラットフォームである。2021年9月末現在で650拠点以上の施設に導入され、利用専門医数は1,400名以上(実質的に稼働している放射線科医の約3分の1が利用)、月間の依頼検査数は約20万件、市場シェアは約34%でトップとなっており、月間の依頼検査数は直近で30万件を超える月も出ている。主な導入施設は、医療施設のほか大手健康診断事業者、衛生検査所、各種病院等である。また、2018年4月に「NOBORI」と連携し、「NOBORI」ユーザであれば専用通信装置を設置しなくても施設外の画像診断を行うことが可能となっている。
b) CRM分野
CRM分野では自社開発製品である「FastSeries」を中心に、企業の顧客サービス向上を支援するコンタクトセンターCRMシステムをオンプレミス及びクラウドサービスで提供している。電話、メール、SNS等による「顧客との接触履歴」と「顧客の声」を一元管理し、コンタクトセンター運営を効率化するCRMシステム「FastHelp」のほか、FAQナレッジシステム「FastAnswer」等を提供している。CRMシステム市場では、パッケージ製品で国内トップシェア、SaaS型ではセールスフォース・ドットコム
主要パートナーは、(株)ベルシステム24(ベルシステム24ホールディングス<6183>子会社)のほか、NEC<6701>や伊藤忠テクノソリューションズ<4739>など大手システム・インテグレーターとなり、各企業のコンタクト(テレマーケティング)センターや顧客サポートセンターで導入されている。また、医薬品業界で「FastHelp」の導入実績が高いことも特徴となっている。製薬企業では、日本製薬工業協会(製薬協)において提唱されている「くすり相談窓口」を一般的に設置しており、国内の多くの製薬企業に同社のCRMシステムが導入されている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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