■日本システムウエア<9739>の中長期の成長戦略
(2) サービスソリューションセグメント
サービスソリューションセグメントは、戦略分野のDX推進の中心となるセグメントである。2022年3月期はDX関連ビジネスをさらに加速するため、技術提供部門を再編している。特に急速に進展している企業内のデータ利活用の分野での市場開拓を目指しており、顧客のバリューチェーンを含む様々なデータを接続することで新しい価値の提供を図る。また、それを実現するためのプラットフォームをクラウド上に構築し、アプリ開発やインフラ構築などのサービスも強化することでビジネス全体を拡大する計画だ。
DXソリューションの新たな展開としては、2021年8月に広和システムを子会社化した。広和システムは、製鉄や電力、化学など各種プラント向けにPA(プロセスオートメーション)やFA(ファクトリーオートメーション)の監視・制御システムの設計・開発を手掛ける会社である。難易度の高い制御要件に応え、将来の改善や改良に耐えうる設計を行う技術者集団として、早くからISO認証を取得するなど技術力に定評がある。同社が顧客の製造現場におけるIoT化を推進する上で、IT領域だけでなくOT※領域の知見を身に付け、現場目線でIoT化を推進していくことが重要となるが、広和システムの子会社化によって製造現場のシステム化に求められる幅広い領域への対応が可能となる。
※Operational Technologyの略で制御技術のこと。
2021年6月には、建設業界に適したデジタルエンジニアリングの選定及び管理システムやオペレーションの高度化を図り、企業に特化したIoTプラットフォームの提供とそれを基盤とした新しいビジネスモデル構築の支援に向けて、PTCジャパン(株)と協業することを発表した。建設業界では、就業者の高齢化、高度な技術を備えた技能就労者の減少などによる深刻な労働力不足が課題となっているが、今回の協業で、AR(拡張現実)やPLMをつないだIoTプラットフォームを用いて企画、設計、施工、管理や保守などの業務を連携させ、それぞれの領域のデータの管理や可視化、分析などを行うデジタルツインの環境を整備し、国土交通省が推進する「i-Construction」の仕組みを支えていく。
また、(株)竹中工務店の建設現場において、同社の産業用スマートグラス「RealWear」を活用した業務デジタル化の効果検証を2020年11月から2021年6月まで実施した。検証では「RealWear」を装着した作業者が、遠隔にいる複数の担当者と「Microsoft Teams」経由で現場の映像を共有し、遠隔臨場を効率的に行う仕組みを構築した。操作に慣れている「Microsoft Teams」を活用したことでスムーズに操作できたことに加え、プロジェクトにおける生産性向上の効果が確認できた。また、安全確保の面でも、両手をフリーにしておきたいケースにおいて「RealWear」の優位性が高いことが実証された。
これらの取り組みによって、2022年3月期の売上高11,300百万円(前期比8.9%増)、営業利益650百万円(同15.2%増)、営業利益率5.8%(同0.4ポイント上昇)を目標としている。
(3) プロダクトソリューションセグメント
2022年3月期は、組込み開発及びデバイス開発の両分野での5G/ローカル5G技術の展開が注力ポイントとなる。特に、通信分野での5G/6Gへの対応や工場や農業分野の設備機器をターゲットとしたローカル5Gを推進する。オートモーティブ分野では自動運転などへの適用が可能なCASE領域への展開を、モバイル分野ではMaaS(Mobility as a Service)の推進を目指す。デバイス開発事業は、国内外のパートナーとの連携・協業を進め、最新技術へのキャッチアップを推進することにより事業領域の拡大を目指す。
このセグメントの事例としては、シンクライアント型電子マネー決済端末の開発において、レベニューシェアモデル(成功報酬スタイル)で開発に参画しており、交通/流通系、電子マネー決済処理、QRコード決済処理、自販機I/F(JVMA)通信処理などの分野でストック型ビジネスとしての成長が期待されている。また、今後の成長分野にも積極的に取り組んでいる。通信機器・設備系が伸長していることから、5G/ローカル5Gを用いたサービス領域への展開も構想している。
これらの施策を実行することで、2022年3月期の売上高16,500百万円(前期比5.1%増)、営業利益2,250百万円(同3.7%減)、営業利益率13.6%(同0.7ポイント低下)を目標としている。なお、2022年3月期では営業活動再開に伴う経費増を見込んでいることに加え、2021年3月期に利益率が高かったことを考慮し、慎重な計画を立てているようである。
(4) DX関連事業
同社では、中期経営計画の中核であるDX関連事業について、各企業で取り組みが進んでいるDXを「企業が新たなデジタル技術を活用してビジネスモデルを創出し、ビジネスプロセスを変えていく事業変革の取り組み」と捉えている。これまで培った業務ノウハウや技術力と様々な実現手段を組み合わせることによって、「IoT、AIなど新たなデジタル技術を基盤に、DX実現を支援するソリューション及びサービス事業の提供」並びに「エッジコンピューティングなどDX関連の製品開発や技術開発に携わる事業」を同社におけるDX関連事業と定義し、顧客のビジネスモデル変革と業務プロセス変革に貢献していく方針である。
DX関連の売上高としては、2020年3月期に約28億円、2021年3月期に約40億円、2022年3月期上期には約25億円と、順調に拡大している。2022年3月期上期はクラウドサービスやデータ連携サービス、5G関連を中心に拡大しており、下期についても業種に特化したIoT・AI関連サービスの拡充及びローカル5G関連の強化によって拡大加速を目指すことで、2022年3月期に100億円の目標達成を目指す。
DXの拡大と実現に向けた取り組みとして同社は、1) 顧客との共創型プロジェクトの創出、2) 製造業で蓄えたノウハウの他業種展開、3) ITベンダーとしての技術的優位性、を重要項目として掲げている。1) については、コンサルティングファームなどの各協力企業との連携強化を図る。具体的な事例としては、2021年9月、デロイトトーマツグループが京都先端科学大学内に開設した「The Smart Factory@ Kyoto」に協力企業として参画した。2) については、土木・建設分野へ多方面からの取り組みを進めている。具体的な事例としては、既述のPTCジャパンとのデジタル支援での協業開始、竹中工務店とのスマートグラス「RealWear」を用いた遠隔支援に加えて、2021年9月に、日本工営<1954>とひび割れ点検支援システム「VIS&TFC」を共同開発し、販売を開始している。また、国土交通省が推進する「i-Construction」に関しても、AIと長年強みとしてきた画像処理技術を連携した同社の取り組みが評価され、ゼネコン各社からの受託に繋がっている。3) については、デバイス・組込み開発、クラウド・インフラ技術、業種・業務ノウハウをコア技術としたワンストップソリューションといった同社の強みを生かすことで、ITベンダーとしての技術的優位性を確立する方針である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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(2) サービスソリューションセグメント
サービスソリューションセグメントは、戦略分野のDX推進の中心となるセグメントである。2022年3月期はDX関連ビジネスをさらに加速するため、技術提供部門を再編している。特に急速に進展している企業内のデータ利活用の分野での市場開拓を目指しており、顧客のバリューチェーンを含む様々なデータを接続することで新しい価値の提供を図る。また、それを実現するためのプラットフォームをクラウド上に構築し、アプリ開発やインフラ構築などのサービスも強化することでビジネス全体を拡大する計画だ。
DXソリューションの新たな展開としては、2021年8月に広和システムを子会社化した。広和システムは、製鉄や電力、化学など各種プラント向けにPA(プロセスオートメーション)やFA(ファクトリーオートメーション)の監視・制御システムの設計・開発を手掛ける会社である。難易度の高い制御要件に応え、将来の改善や改良に耐えうる設計を行う技術者集団として、早くからISO認証を取得するなど技術力に定評がある。同社が顧客の製造現場におけるIoT化を推進する上で、IT領域だけでなくOT※領域の知見を身に付け、現場目線でIoT化を推進していくことが重要となるが、広和システムの子会社化によって製造現場のシステム化に求められる幅広い領域への対応が可能となる。
※Operational Technologyの略で制御技術のこと。
2021年6月には、建設業界に適したデジタルエンジニアリングの選定及び管理システムやオペレーションの高度化を図り、企業に特化したIoTプラットフォームの提供とそれを基盤とした新しいビジネスモデル構築の支援に向けて、PTCジャパン(株)と協業することを発表した。建設業界では、就業者の高齢化、高度な技術を備えた技能就労者の減少などによる深刻な労働力不足が課題となっているが、今回の協業で、AR(拡張現実)やPLMをつないだIoTプラットフォームを用いて企画、設計、施工、管理や保守などの業務を連携させ、それぞれの領域のデータの管理や可視化、分析などを行うデジタルツインの環境を整備し、国土交通省が推進する「i-Construction」の仕組みを支えていく。
また、(株)竹中工務店の建設現場において、同社の産業用スマートグラス「RealWear」を活用した業務デジタル化の効果検証を2020年11月から2021年6月まで実施した。検証では「RealWear」を装着した作業者が、遠隔にいる複数の担当者と「Microsoft Teams」経由で現場の映像を共有し、遠隔臨場を効率的に行う仕組みを構築した。操作に慣れている「Microsoft Teams」を活用したことでスムーズに操作できたことに加え、プロジェクトにおける生産性向上の効果が確認できた。また、安全確保の面でも、両手をフリーにしておきたいケースにおいて「RealWear」の優位性が高いことが実証された。
これらの取り組みによって、2022年3月期の売上高11,300百万円(前期比8.9%増)、営業利益650百万円(同15.2%増)、営業利益率5.8%(同0.4ポイント上昇)を目標としている。
(3) プロダクトソリューションセグメント
2022年3月期は、組込み開発及びデバイス開発の両分野での5G/ローカル5G技術の展開が注力ポイントとなる。特に、通信分野での5G/6Gへの対応や工場や農業分野の設備機器をターゲットとしたローカル5Gを推進する。オートモーティブ分野では自動運転などへの適用が可能なCASE領域への展開を、モバイル分野ではMaaS(Mobility as a Service)の推進を目指す。デバイス開発事業は、国内外のパートナーとの連携・協業を進め、最新技術へのキャッチアップを推進することにより事業領域の拡大を目指す。
このセグメントの事例としては、シンクライアント型電子マネー決済端末の開発において、レベニューシェアモデル(成功報酬スタイル)で開発に参画しており、交通/流通系、電子マネー決済処理、QRコード決済処理、自販機I/F(JVMA)通信処理などの分野でストック型ビジネスとしての成長が期待されている。また、今後の成長分野にも積極的に取り組んでいる。通信機器・設備系が伸長していることから、5G/ローカル5Gを用いたサービス領域への展開も構想している。
これらの施策を実行することで、2022年3月期の売上高16,500百万円(前期比5.1%増)、営業利益2,250百万円(同3.7%減)、営業利益率13.6%(同0.7ポイント低下)を目標としている。なお、2022年3月期では営業活動再開に伴う経費増を見込んでいることに加え、2021年3月期に利益率が高かったことを考慮し、慎重な計画を立てているようである。
(4) DX関連事業
同社では、中期経営計画の中核であるDX関連事業について、各企業で取り組みが進んでいるDXを「企業が新たなデジタル技術を活用してビジネスモデルを創出し、ビジネスプロセスを変えていく事業変革の取り組み」と捉えている。これまで培った業務ノウハウや技術力と様々な実現手段を組み合わせることによって、「IoT、AIなど新たなデジタル技術を基盤に、DX実現を支援するソリューション及びサービス事業の提供」並びに「エッジコンピューティングなどDX関連の製品開発や技術開発に携わる事業」を同社におけるDX関連事業と定義し、顧客のビジネスモデル変革と業務プロセス変革に貢献していく方針である。
DX関連の売上高としては、2020年3月期に約28億円、2021年3月期に約40億円、2022年3月期上期には約25億円と、順調に拡大している。2022年3月期上期はクラウドサービスやデータ連携サービス、5G関連を中心に拡大しており、下期についても業種に特化したIoT・AI関連サービスの拡充及びローカル5G関連の強化によって拡大加速を目指すことで、2022年3月期に100億円の目標達成を目指す。
DXの拡大と実現に向けた取り組みとして同社は、1) 顧客との共創型プロジェクトの創出、2) 製造業で蓄えたノウハウの他業種展開、3) ITベンダーとしての技術的優位性、を重要項目として掲げている。1) については、コンサルティングファームなどの各協力企業との連携強化を図る。具体的な事例としては、2021年9月、デロイトトーマツグループが京都先端科学大学内に開設した「The Smart Factory@ Kyoto」に協力企業として参画した。2) については、土木・建設分野へ多方面からの取り組みを進めている。具体的な事例としては、既述のPTCジャパンとのデジタル支援での協業開始、竹中工務店とのスマートグラス「RealWear」を用いた遠隔支援に加えて、2021年9月に、日本工営<1954>とひび割れ点検支援システム「VIS&TFC」を共同開発し、販売を開始している。また、国土交通省が推進する「i-Construction」に関しても、AIと長年強みとしてきた画像処理技術を連携した同社の取り組みが評価され、ゼネコン各社からの受託に繋がっている。3) については、デバイス・組込み開発、クラウド・インフラ技術、業種・業務ノウハウをコア技術としたワンストップソリューションといった同社の強みを生かすことで、ITベンダーとしての技術的優位性を確立する方針である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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