■ダイキアクシス<4245>の中長期の成長戦略
1. 中期経営計画
中期経営計画「Make FOUNDATION Plan」がコロナ禍の影響により途中で中断したため、新たに2021年12月期から2023年12月期の3ヶ年をカバーする中期経営計画「PROTECT×CHANGE」を策定した。コロナ禍により中長期的な業績に与える影響に未確定な要因が多くなったため、現時点では単年度の業績予想を開示するにとどめている。成長戦略は、従来からの「海外展開の加速」「再生可能エネルギー」「ストックビジネスの拡大」「M&Aの推進」「技術力・製品開発力」「安定から成長への転化」に加え、「IT推進」を生産性向上の手段から成長戦略の1つに格上げした。
成長戦略の筆頭にあげられている「海外展開の加速」は、国連サミットで採択された17のSDGs項目のうち、同社は環境機器関連事業で6番目の「安全な水とトイレを世界中に」に深く関わっている。アジアやアフリカの新興国では、水質汚濁による環境汚染が看過できない状態となっていることから、新しい排水処理基準が導入されている。同社が手掛ける中小規模の排水処理関連分野では、現地の企業が厳格化された基準をクリアできる技術水準にない。また、高い技術力を有する海外企業も、未開拓の市場においては現地の水事情に適合したコスト競争力のある製品を供給できていない。同社は、それぞれの国や地域の水事業に適合する製品開発、厳格化された規制水準をクリアしていることを証明する実証実験と認証の取得、現地で受け入れられるコストを実現するための主要な市場における独資、合弁もしくは生産委託など、地域と市場の発展に適した生産形態による現地生産を行っている。
インドに自社工場を立ち上げ大躍進へ
2. インドにおける事業の動向と海外展開
同社の企業特性が発揮されている、インドにおける市場開拓、販売網の拡充及び生産計画を詳述する。
(1) インド市場の状況
経済産業省によると、インドの総人口は約13.8億人と中国に次ぐ世界第2位。2020年代後半には中国を抜いて世界一になると予想されている。さらにインドの人口ボーナス期は2011年から2040年までの約30年間と予測されており(経済産業省「通商白書2010」)、社会的インフラ形成が進む。
インドは下水道普及率が30%前後にとどまっており、中央排水処理設備が十分でない。生活排水処理のキャパシティ不足が都市化のスピードを妨げないようにするための手段として、浄化槽の導入がコスト・スピード面で最適と評価されている。2019年5月に、ナレンドラ・モディ首相の主導により水資源省、河川開発省、水公衆衛生省を合併して水環境省が生まれた。この大型省は、「ガンジス川浄化計画」やトイレの普及を進める「屋外排泄ゼロ運動」などを主導している。ガンジス川浄化計画は、インド政府の水環境改善計画の目玉政策となる。ガンジス川に合流する100の支流の多くは排水が未処理である。一般的に、河川や湖及び海の汚染の原因は、生活排水によるところが大きい。ガンジス川浄化計画には、過去3年間で4,500億円以上の予算が付けられた。予算の消化は25%程度にとどまる。浄化槽が、有効な手段として見なされている。
インドは、2014年10月に「クリーン・インディア」プロジェクトをスタートさせ、家庭、小中学校、公園などにトイレを整備する目標を掲げた。2017年4月に、インド全土において18,000m2超の産業施設及び延床面積が2,000m2以上の居住施設に対して、水質の汚濁状況を表すBOD(生物化学的酸素要求量)が従来のBOD30からBOD10へ強化された。既設のセプティックタンク(腐敗槽)では、強化された規制をクリアできない。
代理店数が急ピッチで増加
(2) 販売網の増強
同社は、段階を追って事業を拡大してきた。2016年7月にインド政府に浄化槽を寄贈し、製品品質をアピールした。浄化槽(処理能力10m3/日)の設置場所は、公園内のトイレ、村の公衆トイレ、テストマーケティングとしてプラスチック工場の排水処理用の3件であった。2018年7月に、100%出資のDAIKI AXIS INDIA Pvt. Ltd. (以下、DA-India)を設立した。インドネシアにある自社工場から輸入していた浄化槽を、生産委託方式による現地生産に切り替えた。
インドにおける事業体制が整うにつれ、販売網を急ピッチで増強した。代理店数は、2018年12月期末時点で5社であったが、2019年12月期末に11社、2020年12月期末に16社、2021年12月期第2四半期(以下、当四半期)末では20社に増加した。インドの国土の面積は、世界第7位の328万km2と日本の37万km2(第62位)の約9倍の大きさになる。代理店数は、今後も生産能力の増強と市場の発展とともに増加すると弊社は見ている。
生産能力は当初の年100台から960台へ拡大する計画
(3) 生産能力
インドにおける事業展開のフェーズ1として、人員の面と時間短縮を考慮してローカルのプラスチック製品製造会社Jyoti Plastic Works Pvt. Ltd.に生産委託をした。委託先は、同社グループの代理店でもある。同社から金型等の製造設備を提供し、技術指導を行った。生産品目は、20~50世帯に対応するカプセル型浄化槽となる。生産能力が当初の年間100台から200台に倍増されたが、需要に供給が追いつかず、インドネシアから一部輸入して補っている。2021年9月に月産能力を月20台から30台に拡大した。
2021年6月にはインドに独資の子会社を設立し、新たに自社工場を建設して、生産能力の拡大とコストダウンを高める計画を発表した。同社シンガポールの子会社が、製造子会社としてDAIKI AXIS ENVIRONMENT PVT.LTD.(DAE-India)を設立した。先に設立されたDAIKI AXIS INDIAと生産委託先は、インド西部のムンバイに所在する。新しい自社工場は、北部にある首都デリーに近い場所に建設し2022年6月に操業開始を目指している。当初は年産350台の能力を見込むが、最終的には、現インドネシア工場と同等の年600台を計画している。生産委託と合わせると、年産能力は960台に拡大する。生産品目は、カプセル型浄化槽だけでなく中型の円筒型浄化槽も加える。円筒型浄化槽は、現在、インドネシア工場からの輸入に依存しているが、輸送費が嵩むことから、分散型生産体制を構築するために、さらなる生産拠点の増設を視野に入れている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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1. 中期経営計画
中期経営計画「Make FOUNDATION Plan」がコロナ禍の影響により途中で中断したため、新たに2021年12月期から2023年12月期の3ヶ年をカバーする中期経営計画「PROTECT×CHANGE」を策定した。コロナ禍により中長期的な業績に与える影響に未確定な要因が多くなったため、現時点では単年度の業績予想を開示するにとどめている。成長戦略は、従来からの「海外展開の加速」「再生可能エネルギー」「ストックビジネスの拡大」「M&Aの推進」「技術力・製品開発力」「安定から成長への転化」に加え、「IT推進」を生産性向上の手段から成長戦略の1つに格上げした。
成長戦略の筆頭にあげられている「海外展開の加速」は、国連サミットで採択された17のSDGs項目のうち、同社は環境機器関連事業で6番目の「安全な水とトイレを世界中に」に深く関わっている。アジアやアフリカの新興国では、水質汚濁による環境汚染が看過できない状態となっていることから、新しい排水処理基準が導入されている。同社が手掛ける中小規模の排水処理関連分野では、現地の企業が厳格化された基準をクリアできる技術水準にない。また、高い技術力を有する海外企業も、未開拓の市場においては現地の水事情に適合したコスト競争力のある製品を供給できていない。同社は、それぞれの国や地域の水事業に適合する製品開発、厳格化された規制水準をクリアしていることを証明する実証実験と認証の取得、現地で受け入れられるコストを実現するための主要な市場における独資、合弁もしくは生産委託など、地域と市場の発展に適した生産形態による現地生産を行っている。
インドに自社工場を立ち上げ大躍進へ
2. インドにおける事業の動向と海外展開
同社の企業特性が発揮されている、インドにおける市場開拓、販売網の拡充及び生産計画を詳述する。
(1) インド市場の状況
経済産業省によると、インドの総人口は約13.8億人と中国に次ぐ世界第2位。2020年代後半には中国を抜いて世界一になると予想されている。さらにインドの人口ボーナス期は2011年から2040年までの約30年間と予測されており(経済産業省「通商白書2010」)、社会的インフラ形成が進む。
インドは下水道普及率が30%前後にとどまっており、中央排水処理設備が十分でない。生活排水処理のキャパシティ不足が都市化のスピードを妨げないようにするための手段として、浄化槽の導入がコスト・スピード面で最適と評価されている。2019年5月に、ナレンドラ・モディ首相の主導により水資源省、河川開発省、水公衆衛生省を合併して水環境省が生まれた。この大型省は、「ガンジス川浄化計画」やトイレの普及を進める「屋外排泄ゼロ運動」などを主導している。ガンジス川浄化計画は、インド政府の水環境改善計画の目玉政策となる。ガンジス川に合流する100の支流の多くは排水が未処理である。一般的に、河川や湖及び海の汚染の原因は、生活排水によるところが大きい。ガンジス川浄化計画には、過去3年間で4,500億円以上の予算が付けられた。予算の消化は25%程度にとどまる。浄化槽が、有効な手段として見なされている。
インドは、2014年10月に「クリーン・インディア」プロジェクトをスタートさせ、家庭、小中学校、公園などにトイレを整備する目標を掲げた。2017年4月に、インド全土において18,000m2超の産業施設及び延床面積が2,000m2以上の居住施設に対して、水質の汚濁状況を表すBOD(生物化学的酸素要求量)が従来のBOD30からBOD10へ強化された。既設のセプティックタンク(腐敗槽)では、強化された規制をクリアできない。
代理店数が急ピッチで増加
(2) 販売網の増強
同社は、段階を追って事業を拡大してきた。2016年7月にインド政府に浄化槽を寄贈し、製品品質をアピールした。浄化槽(処理能力10m3/日)の設置場所は、公園内のトイレ、村の公衆トイレ、テストマーケティングとしてプラスチック工場の排水処理用の3件であった。2018年7月に、100%出資のDAIKI AXIS INDIA Pvt. Ltd. (以下、DA-India)を設立した。インドネシアにある自社工場から輸入していた浄化槽を、生産委託方式による現地生産に切り替えた。
インドにおける事業体制が整うにつれ、販売網を急ピッチで増強した。代理店数は、2018年12月期末時点で5社であったが、2019年12月期末に11社、2020年12月期末に16社、2021年12月期第2四半期(以下、当四半期)末では20社に増加した。インドの国土の面積は、世界第7位の328万km2と日本の37万km2(第62位)の約9倍の大きさになる。代理店数は、今後も生産能力の増強と市場の発展とともに増加すると弊社は見ている。
生産能力は当初の年100台から960台へ拡大する計画
(3) 生産能力
インドにおける事業展開のフェーズ1として、人員の面と時間短縮を考慮してローカルのプラスチック製品製造会社Jyoti Plastic Works Pvt. Ltd.に生産委託をした。委託先は、同社グループの代理店でもある。同社から金型等の製造設備を提供し、技術指導を行った。生産品目は、20~50世帯に対応するカプセル型浄化槽となる。生産能力が当初の年間100台から200台に倍増されたが、需要に供給が追いつかず、インドネシアから一部輸入して補っている。2021年9月に月産能力を月20台から30台に拡大した。
2021年6月にはインドに独資の子会社を設立し、新たに自社工場を建設して、生産能力の拡大とコストダウンを高める計画を発表した。同社シンガポールの子会社が、製造子会社としてDAIKI AXIS ENVIRONMENT PVT.LTD.(DAE-India)を設立した。先に設立されたDAIKI AXIS INDIAと生産委託先は、インド西部のムンバイに所在する。新しい自社工場は、北部にある首都デリーに近い場所に建設し2022年6月に操業開始を目指している。当初は年産350台の能力を見込むが、最終的には、現インドネシア工場と同等の年600台を計画している。生産委託と合わせると、年産能力は960台に拡大する。生産品目は、カプセル型浄化槽だけでなく中型の円筒型浄化槽も加える。円筒型浄化槽は、現在、インドネシア工場からの輸入に依存しているが、輸送費が嵩むことから、分散型生産体制を構築するために、さらなる生産拠点の増設を視野に入れている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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