S&P500月例レポート(21年10月配信)<後編>

<前編>の続き

IPOおよび「空箱」SPAC

 ○眼鏡ブランドのウォービー・パーカーは、1株当たり40ドルでニューヨーク証券取引所に直接上場しました。初値は54.49ドル、一時54.74ドルまで上昇しましたが、53.05ドルで月末を迎えました。時価総額は40億ドルです。

 ○今後も活発なIPOが見込まれます:

  ⇒地域SNSを運営するネクストドアはコスラ・ベンチャーズが運用するSPAC(特別買収目的会社)との合併を通じて上場を計画しており、企業評価額を43億ドルと見込んでいます。

  ⇒デジタル貯蓄・投資アプリ「Acorns(エイコーンズ)」を運営するエイコーンズ・グロウ(Acorns Grow Inc.)はSPAC経由での上場を計画しており、企業評価額を22億ドルと見込んでいます。

  ⇒イスラエルのデジタル取引プラットフォームのイートロ(eToro Group Ltd)はSPAC(フィンテック・アクイジション・コープV:FinTech Acquisition Corp. V)経由で上場すると発表しました。時価総額100億ドルを見込んでいます。

  ⇒東南アジアでライドシェア、フードデリバリー、送金のアプリを運営しているグラブ・ホールディングス(Grab Holdings)はSPAC経由で上場することを発表し、企業評価額を400億ドルと予想しています。

  ⇒シェアオフィス大手のウィーワーク(WeWork)が再び上場を計画しており、上場時の企業評価額として90億ドルを見込んでいます。これに対して、パンデミックにより労働環境が変化するよりかなり前の2019年の評価額は470億ドルでした。

企業業績

 ○2021年第2四半期の決算シーズンが終わり、S&P 500指数構成銘柄のうち利益が予想を上回ったのは431銘柄(86.2%)、予想を下回ったのは53銘柄、予想通りだったのは16銘柄となりました。また、売上高に関しては、436銘柄(87.4%)で予想を上回りました。2021年第2四半期の営業利益は最高益を更新し、それまでの過去最高だった2021年第1四半期から9.7%の増益、2020年第2四半期からは94.2%の増益となりました。注意すべき点として、第2四半期の営業利益は2021年6月30日時点の予想を17.8%上回りました。

  ⇒2021年第3四半期については、過去最高益を記録した第2四半期から7.2%の減益が予想されていますが、S&P 500指数の歴史において、第2位となる見通しです。

  ⇒2021年通年については過去最高益を更新する見通しで、2020年比で62.0%の増益が見込まれており、2021年の予想PERは21.9倍となっています。

  ⇒2022年は2021年比でさらに9.7%の増益と、再度の最高益更新が見込まれており、2022年の予想PERは19.9倍となっています。

  ⇒2021年第2四半期の決算発表を終えた銘柄のうち、株式数の減少によってEPSが大きく押し上げられた銘柄の割合は5.4%となりました(2021年第1四半期は5.8%、2020年第2四半期は17.8%、2019年第2四半期は24.2%)。

個別銘柄

 ○アルファベットAのインターネット検索・広告部門のグーグル(Google)は、ニューヨーク市のオフィスビルを21億ドルで購入すると発表しました(米証券取引委員会に提出された2021年6月30日時点の報告書によれば、同社は560億ドル相当の土地と建物を保有しています)。

 ○自動車メーカーのフォード・モーターは電気自動車プログラムを加速し、電池工場を3ヵ所(ケンタッキー州とテネシー州)に新設し、1万1000人を新規雇用し、70億ドルを投資する計画を明らかにしました。

 ○S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは、IT・ソフトウェア持株会社のセリディアンHCMホールディング、保険会社のブラウン&ブラウン、婚活サイト運営企業のマッチ・グループをS&P 500指数に採用し、保険持株会社のユーナム・グループ、石油・ガスの掘削・生産機器メーカーのNOV Inc.、製薬大手のペリゴを同指数から除外しました。

注目点

 ○半導体メーカーのインテルは、950億ドルを投じて欧州に各種製品の生産拠点を新設する計画を発表しました。

 ○米国10年国債利回りは、8月末の1.32%から1.49%に上昇して月を終えました(2020年末は0.92%、2019年末は1.92%、2018年末は2.69%、2017年末は2.41%)。30年国債利回りは8月末の1.94%から2.04%に上昇して取引を終えました(同1.65%、同2.30%、同3.02%、同3.05%)。

 ○英ポンドは8月末の1ポンド=1.3744ドルから1.3472ドルに下落し(同1.3673ドル、同1.3253ドル、同1.2754ドル、同1.3498ドル)、ユーロは8月末の1ユーロ=1.1806ドルから1.1577ドルに下落しました(同1.2182ドル、同1.1172ドル、同1.1461ドル、同1.2000ドル)。円は8月末の1ドル=110.14円から111.44円に下落し(同103.24円、同108.76円、同109.58円、同112.68円)、人民元は8月末の1ドル=6.4607元から6.4465元に上昇しました(同6.5330元、同6.9633元、同6.8785元、同6.5030元)。

 ○原油価格は8月末の1バレル=68.60ドルから75.26ドルに上昇して月を終えました(同48.42ドル、同61.21ドル、同45.81ドル、同60.09ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は、8月末の1ガロン=3.237ドルから3.271ドルに上昇して月末を迎えました(同2.330ドル、同2.658ドル、同2.358ドル、同2.589ドル)。

 ○金価格は8月末の1トロイオンス=1815.80ドルから下落して1755.50ドルで月の取引を終えました(同1901.60ドル、同1520.00ドル、同1284.70ドル、同1305.00ドル)。

 ○VIX恐怖指数は8月末の16.48から23.14に上昇して月を終えました。月中の最高は28.79、最低は15.68でした(同22.75、同13.78、同16.12、同11.05)。

  ⇒同指数の2020年の最高は85.47、最低は11.75でした。

インデックス・レビュー

◇S&P 500指数

 S&P 500指数は9月に4.76%下落して4307.54で月を終えました(配当込みのトータルリターンはマイナス4.65%)。8月は4522.68で終え、2.90%の上昇(同プラス3.04%)となり、7月は4395.26で終え、2.27%の上昇でした(同プラス2.38%)。過去3ヵ月では0.23%上昇(同プラス0.58%)、年初来では14.68%上昇(同プラス15.92%)、過去1年間では28.09%上昇(同プラス30.00%)、コロナ危機前の2月19日の終値での高値からは27.21%上昇(同プラス30.62%)して月を終えました。

 ダウ平均は4.29%下落の3万3843.93ドルで月を終えました(配当込みのトータルリターンはマイナス4.20%)。なお、8月は3万5360.73ドルで終え、1.22%の上昇(同プラス1.50%)、過去3ヵ月では1.91%下落(同マイナス1.46%)、年初来では10.58%上昇(同プラス12.12%)、過去1年間では21.82%上昇(同プラス24.15%)しました。

 S&P 500指数の9月の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は8月の0.64%から0.99%に上昇し(7月は0.80%)、年初来では0.97%となりました(8月末時点は0.99%)。2020年は1.73%と2019年の0.85%から上昇し、2018年は1.21%、2017年は0.51%(1962年以来の最低)でした。出来高は前月比9%減少した8月から10%増加しましたが(営業日数調整後)、前年同月比では28%減少し、過去1年間でも11%減少しました。

 9月の前日比で1%以上変動した日数は21営業日中4日となりました(上昇が1日、下落が3日で、8月は21営業日中1日で、下落が1日)。年初来では前日比で1%以上変動した日数は38日(上昇が23日、下落が15日)、2%以上変動した日数は4日(上昇が1日、下落が3日)となりました。2020年は1%以上変動した日数が109日(上昇が64日、下落が45日)、2019年は37日(上昇が22日、下落が15日)でした。

 9月は21営業日中10日で日中の変動率が1%以上となり(8月は22営業日中4日)、3%以上変動した営業日はありませんでした(8月と7月も0日)。年初来では1%以上の変動が69日、3%以上の変動が2日となりました。2020年は1%以上の変動が158日(11月末時点は154日)、3%以上の変動が34日(同34日)、2019年はそれぞれ73日と1日、危機に見舞われた2008年はそれぞれ228日(253営業日中)と75日でした。

 9月は11セクター中1セクターのみが上昇し、8月の10セクター、7月の9セクターを下回りました。エネルギーが9.28%上昇し(8月は2.88%下落)、騰落率首位となりました。同セクターは第3四半期は2.82%下落しましたが、年初来では38.35%上昇と、S&P 500指数のセクターの中で騰落率首位となっています(ただし、2019年末からはなお13.27%下落)。

 次にパフォーマンスが「良かった」のは金融で、9月は1.99%下落し、第3四半期は2.29%上昇、年初来では27.36%上昇しました。一般消費財も下落率が大半のセクターよりも小幅となり、2.62%下落し、第3四半期は0.15%下落、年初来では9.76%上昇しました。生活必需品は9月に4.49%下落し(下落率はS&P 500指数を若干下回る)、第3四半期は0.98%下落、年初来では2.62%上昇しました。

 素材が7.43%の下落で騰落率最下位となり、第3四半期は3.94%下落、年初来では8.98%上昇しました。コミュニケーションサービスは6.59%下落し、第3四半期は1.40%上昇、年初来では20.78%上昇、情報技術も5.82%下落し、第3四半期は1.13%上昇、年初来では14.51%上昇しました。公益事業は6.42%下落し、第3四半期は0.93%上昇、年初来では1.73%上昇で、S&P 500指数のセクターの中で騰落率最下位となりました。

 9月は値上がり銘柄数が減少し、値下がり銘柄数が大幅に上回りました。9月の値上がり銘柄数は105銘柄(平均上昇率は5.93%)と、8月の325銘柄(同5.45%)と7月の290銘柄(同5.74%)を下回りました。10%以上上昇した銘柄数は18銘柄(同16.48%)と、8月の37銘柄(同13.74%)、7月の39銘柄(同14.19%)から減少しました。1銘柄が25%以上上昇しました(上昇率は36.94%。8月はゼロ、7月は1銘柄)。

 一方、値下がり銘柄数は400銘柄(平均下落率は6.50%)と、8月の179銘柄(同3.93%)、7月の215銘柄(同5.14%)から増加しました。9月の10%以上下落した銘柄数は70銘柄(同11.90%)と、8月の12銘柄(同13.64%)、7月の26銘柄(同13.93%)から増加しました。25%以上下落した銘柄は5月~8月と同様にありませんでした。

 年初来では、値上がり銘柄数は399銘柄(平均上昇率は24.25%)と、8月末時点の442銘柄(同26.29%)から減少した一方、値下がり銘柄数は105銘柄(平均下落率は8.69%)と8月末時点の62銘柄(同7.81%)から増加しました。10%以上上昇した銘柄数は306銘柄(平均上昇率は30.20%)と、8月末時点の355銘柄(同31.49%)から減少した一方、10%以上値下がりした銘柄数は30銘柄(平均下落率は18.78%)と、8月末時点の17銘柄(同17.55%)から増加しました。149銘柄が25%以上上昇し(8月末時点は205銘柄)、6銘柄が25%以上下落しました(同1銘柄)。

◇世界の株式市場

 低調ではあったものの結果的に上昇した7月、大幅に上昇した8月の後、世界の9月の株式市場は4.08%下落しました(9月は相場が下落する月として知られています)。これは2021年1月(0.21%下落)以来の下落であり、2020年3月(14.61%下落)以降で最も大きな下落となりました。米国市場はアンダーパフォームし、世界の株式市場は下落した市場数が上昇した市場数を大幅に上回りました。

 新型コロナウイルスのデルタ変異株による感染拡大が続いていますが、そのペースは緩やかになってきています。米国ではワクチン接種を忌避する人が多い中、特定の人々を対象としたワクチンのブースター接種が承認されました。米国以外の国でワクチン接種が進む一方で、米国のワクチン接種率は伸び悩みました。

 世界の株式市場全体では、9月は4.08%下落しました。米国市場は4.63%下落し、米国を除くグローバル市場は3.34%下落しました。8月は2.35%の上昇で、米国の2.73%上昇を除くと1.84%の上昇でした。9月は50市場中19市場が上昇し、8月の44市場から減少しました(7月は25市場、6月は20市場、5月は36市場が上昇)。

 S&Pグローバル総合指数は8月に2.35%上昇した後(米国の2.73%上昇を除くと1.84%上昇)、9月は4.08%下落しました(米国の4.63%下落を除くと3.34%下落)。7月は0.32%の上昇でした(米国の1.68%上昇を除くと1.46%下落)。過去3ヵ月間では、世界の株式市場は1.52%下落(米国の0.39%下落を除くと3.00%下落)しました。年初来では10.01%の上昇で、米国の14.12%上昇を除くと4.95%上昇しました。過去1年間では27.06%上昇し、米国の30.45%上昇を除くと22.80%の上昇となっています。

 より長期では、米国のパフォーマンスが突出していました。過去2年間では、グローバル市場は36.67%上昇しましたが、米国の46.96%上昇を除くと24.89%の上昇でした。過去3年間ではグローバル市場は34.46%上昇し、米国の48.24%上昇を除くと19.41%の上昇でした。2020年11月3日の米大統領選挙以降では、グローバル市場は25.99%上昇しましたが、米国の29.28%上昇を除くと21.83%の上昇でした。

 S&Pグローバル総合指数の時価総額は9月に1兆9680億ドル減少しました(8月は1兆8050億ドル増)。米国以外の市場の時価総額は3990億ドル減少(同6590億ドル増)、米国市場は1兆5690億ドル減少しました(同1兆2150億ドル増)。9月は11セクター中、上昇したのは1セクターだけで、セクター間のばらつきは拡大しました(8月は9セクターが上昇、7月は6セクターが上昇)。パフォーマンスが最高のセクター(エネルギー、9.43%上昇)と最低のセクター(素材、7.14%下落)の騰落率の差は16.57%となり、8月の4.15%、7月の9.23%から拡大しました。

 新興国市場は9月に3.42%下落しました。8月は2.69%の上昇(7月は6.40%の下落)でした。過去3ヵ月間では7.17%の下落、年初来では0.17%の上昇、過去1年間では17.74%の上昇となりました。過去2年間では25.01%上昇、過去3年間では23.23%上昇しています。

 9月は25市場中8市場が上昇しました(8月は22市場が上昇、7月は10市場が上昇)。パフォーマンスが最高となったのはロシアで9月は5.93%上昇し、過去3ヵ月間では7.98%上昇、年初来では27.32%上昇しました。2番目はチェコで9月は3.01%上昇し、過去3ヵ月間では9.92%上昇、年初来では29.93%上昇しました。3番目はカタールで9月は2.91%上昇し、過去3ヵ月間では6.88%上昇、年初来では9.88%上昇しました。パフォーマンスが最低だったのはブラジルで9月は13.95%下落し、過去3ヵ月間では21.73%下落、年初来では15.32%下落しました。これに続いたのがトルコで9月は10.47%下落し、過去3ヵ月間では2.26%上昇、年初来では19.56%下落しました。3番目がパキスタンで9月は8.64%下落し、過去3ヵ月間では13.23%下落、年初来では10.05%下落しました。

 先進国市場は7月の1.19%上昇、8月の2.31%上昇の後、9月は全体で4.17%下落しました。米国を除くと3.32%の下落(8月は1.55%上昇、7月は0.32%上昇)でした。過去3ヵ月間では0.79%下落、米国を除くと1.50%下落、年初来では11.33%上昇、米国を除くと6.68%上昇となりました。過去1年間では28.30%上昇、米国を除くと24.61%上昇、過去2年間では38.23%上昇、米国を除くと24.96%上昇、過去3年間では36.03%上昇、米国を除くと18.58%上昇となりました。

 9月は25市場中、上昇したのは2市場のみで、8月の22市場、7月の15市場を下回りました。パフォーマンスが最高となったのはノルウェーで、9月は1.85%上昇し、過去3ヵ月間では2.38%上昇、年初来では14.18%上昇しました。2番目は日本で9月は1.71%上昇し、過去3ヵ月間では3.60%上昇、年初来では4.09%上昇しました。3番目はイスラエルで9月は1.48%下落し、過去3ヵ月間では2.16%上昇、年初来では10.547%上昇しました。

 パフォーマンスが最低だったのはルクセンブルグで9月は9.20%下落し、過去3ヵ月間では3.68%上昇、年初来では15.83%上昇しました。これに続いたのがスイスで7.49%下落し、過去3ヵ月間では3.13%下落、年初来では4.11%上昇しました。3番目はスウェーデンで9月は7.40%下落し、過去3ヵ月間では3.09%下落、年初来では8.90%上昇しました。

 注目すべき点として、カナダは9月に2.61%下落し、過去3ヵ月間では2.88%下落、年初来では15.98%上昇しました。英国は9月に3.20%下落し、過去3ヵ月間では1.47%の下落、年初来では8.88%の上昇となりました。ドイツは9月に5.84%下落し、過去3ヵ月間では4.21%下落、年初来では2.81%上昇しました。
 

 

 

 

 

 

 
[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト

※このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはサイトをご参照ください。
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配信元: みんかぶ株式コラム