第2創業期突入と今後の経営戦略
アセアン中心に海外開拓、世界一のM&A総合企業目指す
2127:日本M&Aセンター
代表取締役社長 三宅 卓氏
- コロナ禍での環境変化捉え業績は絶好調状態
- 日本の生き残りに向けM&Aが必要な時代に
- 今後10年間は年平均15%成長を目標へ
日本M&Aセンター <2127> が新たな成長ステージを迎えている。中堅・中小企業を中心にM&A(仲介・買収)事業を手掛ける同社は、今年4月に創業30周年を迎えた。後継者不足による事業承継に絡む旺盛なM&Aニーズに応える同社は、コロナ禍の中も最高益基調を続け、その成長は加速しつつある。今年度を「第2創業元年」に位置づけ、「世界一のM&A総合企業を目指す」という三宅卓社長に、その経営戦略を聞いた。(聞き手・岡里英幸)
オンライン化推進で逆境をチャンスへ転化させる
――日本M&Aセンターは、前期に11期連続増収増益を達成したのに続き、22年3月期の第1四半期(4-6月)も過去最高益を計上するなど業績は絶好調です。新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、いま何が起こっているのでしょうか。
「まず確認したいことは、新型コロナ感染拡大という状況のなかでも、当社を取り巻くファンダメンタルズは変わっていないということです。日本の380万社の中小企業のうち245万社の社長の年齢が65歳を超えています。そのうち127万社は後継者がおらず廃業予備軍なのです。ここに大きな事業承継ニーズが生まれています」
「当社はこれまで全国でセミナーを開き、後継者不足に悩む経営者に対して直接話してM&Aで会社を残せることを理解してもらい事業を進めてきました。対面によるリアルな世界での展開を当然のことと考えてきたのです。しかし、昨年4月に新型コロナ感染拡大で緊急事態宣言が発出された時は、絶望を感じざるを得ませんでした。コロナ禍の影響でリアルのセミナーをすることは難しくなり、県をまたぐ移動もできなくなったのです。そこで考えたのが、イノベーションを起こさなければいけないということでした。具体的には、徹底してウェブセミナーを行い、ウェブミーティングも取り入れました。更に、全国のサテライト事務所を22拠点に増やしました。この3つの取り組みを進めたことは大成功で、現在の業績拡大へとつながっています」
M&Aに前倒しの動き発生、買い手も積極姿勢に
――絶望を感じながらも、イノベーションを巻き起こしたことが、足もとの業績好調につながったわけですね。
「更に、コロナ禍でM&Aのマーケットに大きな変化が起こりました。M&Aの世界では、後継者不足に悩む中小企業の経営者と話を進めても、『あと4~5年待ってくれ』と言われ、先送りされることはとても多いのです。しかし、コロナ禍の現在は『気持ちが折れた』『早くリタイアしたい』という経営者の声が多く聞かれます。また、中小企業経営者は資金繰りが苦しいなか、銀行から追加融資を受けるか、あるいは廃業かM&Aかの選択を迫られる状況が生まれています。このなか事業承継のM&Aに前倒しの動きが起こっているのです」
「この第1四半期は大幅な増益を達成しました。この要因には、コロナ禍でM&Aを取り巻く環境が変わったこと、続いてウェブセミナーの充実などウィズ・コロナの環境下での戦い方が出来上がったことがあります。加えて、当社は今年30周年を迎えました。第2創業期の元年となるため、社内は非常に盛り上がっていることも無視できない要因となっているのだと思います」
――コロナ禍でのM&Aで売り手は積極姿勢となったのに対して、買い手の状況はいかがなのでしょうか。
「経営戦略を持っている企業は、こういう時こそ積極的に買収をしてM&Aを進めようとしています。候補となる企業の選択肢は多いうえに、多くの企業の業績が悪化しているため良い企業を安く買えるからです。いまM&Aを進めることで競合他社より3年分は前を走ることができるとみているのです」
「また、コロナ禍で単品経営の一本足打法では危ないことに気がついた企業がM&Aの買い手となっています。例えば、小売りなら対面だけではなくインターネット販売も、高級品を扱うだけではなく日用品もということです。これは、当社も同様で対面によるリアルの事業展開だけでなく、ウェブとの二本足経営に移すことができたからこそ、今後も更に成長できる体制が構築できたのだと思います」
――そんななか、7月に第4期中期経営目標を発表し、24年3月期の最終年度の連結経常利益を230億円(今期予想は172億円)に設定しました。
「当社の経営目標は、フォーキャスト(予測)ではなくコミットメントです。絶対に達成するという意識で取り組んでいます。今期の第1四半期は好調なスタートを切ることができました。第4期の経営目標も前倒しで達成できるように頑張りたいと考えています」
8つの分野で世界一を達成へ、総合企業化を推進
――足もとの業績は絶好調のなか、今年は創業30周年を迎え、第2の創業期に突入しています。その経営目標には「世界Nо.1のM&A総合企業を目指す」ことを宣言しました。具体的には、どんな将来の姿をイメージしているのでしょうか。
「M&Aの総合企業を目指すことが重要だと考えています。M&Aを手掛ける多くの企業は、仲介かファイナンシャルアドバイザー(FA)しか手掛けていないことが少なくありません。しかし、買収する企業にとってM&Aは成長戦略のプロセスの一環でしかないのです。成長のために、どういうマーケットを攻めるのか、そのためのマーケット分析や攻略のための戦略が必要です。M&Aを実行する際には、フェアバリューで企業を買う必要があるし、最高の相手を見つけるためのマッチングが求められます。M&A後のPMI(統合作業)も重要で、売り手と買い手が同じ志をもってビジネスチームとして機能していく体制を作る必要があります。当社は最高のM&Aを実現するためのサービスをワンストップで提供できる総合企業を目指したいと考えています」
「M&Aに絡み、案件数、顧客満足、業務品質、カバー力、総合力、イノベーション力、株式時価総額、従業員満足という8つの分野で世界一を目指したいと考えています。投資銀行やリーグテーブルの上位を目指すのではありません。この10年間でこれらの目標を達成したいと思います」
アセアン市場を開拓し、米国や欧州とも連携進める
――M&A業界の長期的な環境変化も大きいのでしょうか。
「M&A業界を取り巻く環境は、第1の波として後継者不足による事業承継があります。また、第2の波としての『業界再編』、更に第3の波として『東南アジア諸国連合(アセアン)でのM&A』が押し寄せることが見込まれます。第2の創業期では、第1の波に加えて第2、第3の波をつかまえていきたいと考えています」
――日本に限らず世界に視野を広げた意味は?
「これから日本は大変な時代を迎えると考えています。企業の数が3分の1に減って、働く人も3分の1になる時代を想定する必要があります。英国の経済誌であるエコノミストは世界のGDPに占める日本経済の比率は、現在の5~6%が2050年には1.9%を切ると予想しています。この状況では、日本の豊かさを維持することはできません。これを食い止めるためには、企業の生産性を上げるしかありません。そのためにも、M&Aを力強く進めていくことが必要なのです」
「とりわけ、日本はアセアンと協力して発展していくべきだと思います。米国と中国は今後も衝突する状況が続くことが予想されます。今後は、中国に置いていた拠点を保険としてアセアンにも置くことが予想されます。日本企業も生産・販売拠点をアセアンに移していくことが見込まれます。いまアセアンの中堅・中小企業向けM&Aを専門でやっているのは、我々しかいません。発展していくアセアンをベースに、米国や欧州市場とも連携していくことを計画しています」
――第2創業期で、目標としているような企業や経営面での数字はありますか。
「当社は独自のビジネスモデルで事業展開を行っており、特に目指す企業はありません。しかし、参考にするべき企業は、海外に数多くあります。PMIを取り入れたのも、米国のファンドを参考にしたからです。当社の現在のコア顧客層は、年商3億~10億円で従業員15~50人前後の企業です。この顧客層を上下に広げていきたいと考えています。インターネットマッチングを活用して、年商1億円未満の町のラーメン屋や工場、フラワーショップなども対象にしていきたいと思います。地方創生にも絡み、地方の地場企業を含む従業員100~500人の中堅企業に絡むM&Aも積み上げていく計画です」
「今後10年は年平均で15%成長を続けたいと考えています。イノベーションを進めることでPERも上がり、業績も拡大していけば株価も上がり時価総額も増えていくでしょう。株主にきちんと利益還元できるように、株価や配当もしっかり上げていきたいと考えています」
関連銘柄
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