豪ドル
豪州では、新型コロナのデルタ株の感染拡大を受けてシドニーなど主要都市でロックダウン(都市封鎖)が実施されています。シドニーのロックダウンは9月30日までの予定です。
ロックダウンの影響によって豪経済は今年7-9月期にマイナス成長になるかもしれません。また、RBA(豪中銀)は9月上旬以降、債券購入額を週50億豪ドルから週40億豪ドル(少なくとも11月半ばまで)へと減額する方針を示しているものの、その方針を再考する可能性があります。豪ドル/円や豪ドル/米ドルは上値の重い展開が想定されます。
一方で、豪ドルは投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすいという特徴があります。主要国の株価が堅調に推移するなどしてリスクオンが強まる場合、豪ドル/米ドルや豪ドル/円の支援材料となりそうです。
豪ドル/NZドルは、軟調に推移する可能性があります。RBAの利上げはかなり先と考えられる一方、RBNZ(NZ中銀)は年内の利上げ開始を示唆しており、両者の金融政策の方向性の違いが市場で意識されそうです。
<注目点・イベントなど>
・RBA(豪中銀)の金融政策。
・投資家のリスク意識の変化。
・米FRBの金融政策。
・資源(主に鉄鉱石)の価格動向。
・米中関係、豪中関係(中国は豪州の主要輸出先)。
NZドル
RBNZ(NZ中銀)は8月18日の会合で、政策金利を0.25%に据え置きました。会合前日の17日にオークランドで新型コロナの感染者が確認されたことを受け、NZ全土でロックダウン(都市封鎖)が導入されたことが、政策金利を据え置いた理由とみられます。
RBNZは会合の結果と同時に公表した金融政策報告で、21年中の利上げ開始を示唆。政策金利は23年9月には2.0%に達するとの見通しを示しました。
市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)をみると、本稿執筆時点で政策金利は年内に0.75%へと上昇し、22年10月には1.50%へと上昇するとの見方が有力。RBNZの利上げ観測に支えられて、NZドル/円やNZドル/米ドルは堅調に推移しそうです
NZドルは豪ドルと同様に投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすいという特徴があります。主要国株価が上昇するなどしてリスクオンが強まる場合、NZドル/米ドルやNZドル/円は堅調さを増すとみられます。
<注目点・イベントなど>
・RBNZ(NZ中銀)の金融政策。
・投資家のリスク意識の変化。
・米FRBの金融政策。
・米中関係、(中国はNZの主要輸出先)。
・乳製品(NZ最大の輸出品)の価格動向。
カナダドル
BOC(カナダ中銀)は21年7月の会合で、量的緩和プログラムの縮小を決定。カナダ国債の買い入れ目標を週30億カナダドルから20億カナダドルへと減額しました。
量的緩和プログラムは年内にさらに減額されるとの観測が市場にはあります。BOCが実際に減額すれば、カナダドル/円の支援材料となりそうです。
BOCは22年下半期の利上げを示唆しているものの、利上げの時期はそれよりも早まるかもしれません。カナダの7月CPI(消費者物価指数)は前年比3.7%と、BOCのインフレ目標(1~3%)を4カ月連続で上回り、2011年5月以来の強い伸びを記録しました。CPI上昇率の高止まりが続く場合、BOCは利上げを検討し始める可能性があり、カナダドル/円の上昇要因となり得ます。
カナダドル/円については、原油価格(米WTI原油先物など)の動向にも目を向ける必要があります。世界経済の回復が進めば、原油価格は堅調に推移するとみられます。原油高はカナダドル/円の支援材料です。
カナダの下院選挙(定数338議席)が9月20日に行われます。下院選では、トルドー首相率いる自由党が単独過半数を獲得できるかどうかが焦点になりそうです。自由党が単独過半数を獲得できれば、政権運営が安定するとの見方ができるため、カナダドルにとってプラスと考えられます。
<注目点・イベントなど>
・BOC(カナダ中銀)の金融政策。
・資源(特に原油)価格の動向。
・カナダ下院選挙(9/20)。
・米国景気の動向。
トルコリラ
TCMB(トルコ中銀)は「インフレ率の大幅な低下が達成されるまで、現在の引き締め的な金融政策スタンスを断固維持する」、「政策金利は引き続きインフレ率を上回る水準に設定する」との方針を示しています。
TCMBは一方で「インフレ率(CPI上昇率)は21年10-12月期に著しく鈍化する」予測しており、市場では21年10-12月期に利下げを開始するとの見方が有力です。今後、CPI(消費者物価指数)上昇率が鈍化して利下げ観測が高まれば、トルコリラ/円は上値が重い展開になりそうです。
エルドアン大統領の言動には注意が必要です。エルドアン大統領は「金利が下がればインフレ率は下がる」が持論であり、TCMBが政策金利の据え置きを続ける(利下げしない)状況にいつまで我慢できるのか。エルドアン大統領はTCMB総裁を2019年7月以降3人解任しています。TCMBの独立性をめぐる懸念が強まる場合、トルコリラ/円には下押し圧力が加わるとみられます。
<注目点・イベントなど>
・TCMB(トルコ中銀)の金融政策。
・トルコと米国、EUとの関係。
・トルコの地政学リスク。
南アフリカランド
南アフリカの7月CPI(消費者物価指数)は前年比4.9%と、上昇率は6月の4.9%から鈍化したものの、SARB(南アフリカ中銀)のインフレ目標(3~6%)の中央値である4.5%を3カ月連続で上回りました。
市場では、「SARBは政策金利を当面据え置いて、22年に利上げを開始する」との見方が有力です。今後、CPI上昇率が4.5%を上回る状態が続く場合、SARBの利上げ観測が市場で高まって南アフリカランド/円を下支えする可能性があります。
一方で南アフリカの国内情勢には注意が必要かもしれません。南アフリカでは、7月にズマ前大統領が収監されたことで暴動が発生しました。また、発電設備の老朽化や国内電力の約9割を供給するエスコム(国営電量会社)の経営危機により、以前から計画停電がたびたび行われています。国内情勢をめぐる懸念が強まる場合、南アフリカランド/円は下押しする可能性があります。
<注目点・イベントなど>
・SARB(南アフリカ中銀)の金融政策。
・米FRBの金融政策。
・商品価格の動向。
・エスコム(南アフリカの国営電力会社)の経営危機問題。
メキシコペソ
BOM(メキシコ中銀)は8月12日の会合で利上げすることを決定。政策金利を4.25%から4.50%へと引き上げました。利上げは2会合連続です。
BOMは声明で「インフレのリスクバランスは上向きに傾いている」との見方を示し、インフレ見通しを以下のように6月時点から上方修正しました。BOMは今後追加利上げに踏み切る可能性があります。
[インフレ見通し]
いずれも前年比、( )は6月時点の見通し
・総合CPI(消費者物価指数)
2021年10-12月期:5.7%(4.8%)
2022年10-12月期:3.4%(3.1%)
・コアCPI
2021年10-12月期:5.0%(3.9%)
2022年10-12月期:3.3%(3.2%)
米FRBなど主要国の中銀は政策金利を当面据え置くとみられる一方、BOMは利上げを継続しそうです。こうした金融政策見通しの違いがメキシコペソ/円を下支えすると考えられます。
メキシコペソ/円は、原油価格(米WTI原油先物など)の影響を受けやすいという特徴があります。原油価格が堅調に推移すれば、メキシコペソ/円は上昇する可能性があります。
<注目点・イベントなど>
・BOM(メキシコ中銀)の金融政策。
・資源(主に原油)価格の動向。
・米FRBの金融政策。
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