■会社概要
3. 市場規模
イー・ギャランティ<8771>の主力サービスの対象となる売上債権(受取手形、売掛金)の市場規模は、200兆円を超えている。こうした売上債権がすべて信用リスク保証のサービスを必要とするわけではないが、欧米では一般的に普及しているサービスであり、潜在的な成長力は高いと弊社では見ている。
なお、保証料率に影響を与える企業の倒産件数の推移を見ると、2008年度の13,234件をピークに減少傾向が続き、2019年度に一旦、増加に転じたものの、2020年度は前年度比13.8%減の7,314件と、20年ぶりに8千件を下回る低水準となった。負債総額についても同0.1%減との1兆2,174億円と3年連続で減少し、2000年度以降では最低水準となった。コロナ禍での資金繰り支援を目的とした実質無利子・無担保融資政策を2020年3月以降導入するなど、資金繰りに関する各種支援を実施したことが倒産件数の減少につながっている。
一方、同社の売上高を期首期末平均保証残高で割った平均保証料率で見ると、2019年度の1.44%から2020年度は1.56%と11年ぶりに上昇に転じた。コロナ禍で信用リスクが上昇したことに伴い保証料率を引き上げたことが要因となっている。実際の倒産件数と保証料率の動きが連動しないレアケースとなっている。ただ、直近では倒産件数の減少傾向を反映し、保証料率も2020年11月をピークに低下に転じている※。
※新規の保証料率は2019年12月の1.62%から2020年11月は2.77%まで上昇したが、2021年6月時点では2.1%台まで低下している。
4. リスク要因
同社の業績を見る上でのリスク要因の主なものとしては以下の3点が挙げられるが、現時点ではいずれも懸念する状況にはなっていないものと判断される。
(1) 収益構造リスク
同社の収益構造は、顧客から得られる保証料を売上高として計上する一方、リスク移転先である金融機関等に支払う費用を売上原価として計上しており、これらの差額が同社の利益となっている。リスク移転先に支払う費用は複数年にわたる保証履行実績により決定されるため、一時的に多額の保証履行が発生しても短期的な原価上昇要因とはならないものの、継続的に保証履行が多発するような景気悪化時には、リスク移転コストが上昇する。このリスク移転コスト分を保証料へ価格転嫁できない場合には、利益率の悪化要因となる。また、景気悪化時には倒産リスク上昇により同社サービスへの需要が増加する可能性がある一方で、保証料率が上昇しすぎると逆にサービスを利用するメリットも低くなるため、契約件数の減少や契約更新率の低下によって保証残高が減少する可能性も考えられる。また、未曽有の不況によりリスク移転先である金融機関等が経営破たんした場合には、保証履行ができなくなるリスクがある。
(2) 競合リスク
同社のように事業会社の売上債権保証サービスを専業で手掛けている企業はほとんどなく、類似したサービスとして大手金融機関系列のファクタリング会社が提供している保証ファクタリング、損害保険会社が提供している取引信用保険等のサービスがある。ただ、引き受ける保証対象企業の範囲や保証限度額、対象債権等において、同社は多様なニーズにフレキシブルに対応できることが強みとなっており、現時点での競合リスクはほとんどないものと考えられる。しかしながら、今後これらの金融機関等が同社と同様のサービスを開発して事業展開した場合には、競争激化により利益率が低下する可能性がある。なお、小規模事業者等の小口の売上債権保証サービスでは、ラクーンホールディングス<3031>の子会社である(株)ラクーンフィナンシャルと競合するが、同社全体に占める小口債権保証の比率は小さいため影響はほとんどない。
(3) 法的規制リスク
売掛債権保証サービスに関しては、「保険業法」や「金融商品取引法」などの法的規制の対象となっておらず、今後、同サービスに関する法的規制が新たに制定された場合には、ビジネスモデルの変更や競争環境の変化等により業績に影響を与える可能性がある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<NB>
3. 市場規模
イー・ギャランティ<8771>の主力サービスの対象となる売上債権(受取手形、売掛金)の市場規模は、200兆円を超えている。こうした売上債権がすべて信用リスク保証のサービスを必要とするわけではないが、欧米では一般的に普及しているサービスであり、潜在的な成長力は高いと弊社では見ている。
なお、保証料率に影響を与える企業の倒産件数の推移を見ると、2008年度の13,234件をピークに減少傾向が続き、2019年度に一旦、増加に転じたものの、2020年度は前年度比13.8%減の7,314件と、20年ぶりに8千件を下回る低水準となった。負債総額についても同0.1%減との1兆2,174億円と3年連続で減少し、2000年度以降では最低水準となった。コロナ禍での資金繰り支援を目的とした実質無利子・無担保融資政策を2020年3月以降導入するなど、資金繰りに関する各種支援を実施したことが倒産件数の減少につながっている。
一方、同社の売上高を期首期末平均保証残高で割った平均保証料率で見ると、2019年度の1.44%から2020年度は1.56%と11年ぶりに上昇に転じた。コロナ禍で信用リスクが上昇したことに伴い保証料率を引き上げたことが要因となっている。実際の倒産件数と保証料率の動きが連動しないレアケースとなっている。ただ、直近では倒産件数の減少傾向を反映し、保証料率も2020年11月をピークに低下に転じている※。
※新規の保証料率は2019年12月の1.62%から2020年11月は2.77%まで上昇したが、2021年6月時点では2.1%台まで低下している。
4. リスク要因
同社の業績を見る上でのリスク要因の主なものとしては以下の3点が挙げられるが、現時点ではいずれも懸念する状況にはなっていないものと判断される。
(1) 収益構造リスク
同社の収益構造は、顧客から得られる保証料を売上高として計上する一方、リスク移転先である金融機関等に支払う費用を売上原価として計上しており、これらの差額が同社の利益となっている。リスク移転先に支払う費用は複数年にわたる保証履行実績により決定されるため、一時的に多額の保証履行が発生しても短期的な原価上昇要因とはならないものの、継続的に保証履行が多発するような景気悪化時には、リスク移転コストが上昇する。このリスク移転コスト分を保証料へ価格転嫁できない場合には、利益率の悪化要因となる。また、景気悪化時には倒産リスク上昇により同社サービスへの需要が増加する可能性がある一方で、保証料率が上昇しすぎると逆にサービスを利用するメリットも低くなるため、契約件数の減少や契約更新率の低下によって保証残高が減少する可能性も考えられる。また、未曽有の不況によりリスク移転先である金融機関等が経営破たんした場合には、保証履行ができなくなるリスクがある。
(2) 競合リスク
同社のように事業会社の売上債権保証サービスを専業で手掛けている企業はほとんどなく、類似したサービスとして大手金融機関系列のファクタリング会社が提供している保証ファクタリング、損害保険会社が提供している取引信用保険等のサービスがある。ただ、引き受ける保証対象企業の範囲や保証限度額、対象債権等において、同社は多様なニーズにフレキシブルに対応できることが強みとなっており、現時点での競合リスクはほとんどないものと考えられる。しかしながら、今後これらの金融機関等が同社と同様のサービスを開発して事業展開した場合には、競争激化により利益率が低下する可能性がある。なお、小規模事業者等の小口の売上債権保証サービスでは、ラクーンホールディングス<3031>の子会社である(株)ラクーンフィナンシャルと競合するが、同社全体に占める小口債権保証の比率は小さいため影響はほとんどない。
(3) 法的規制リスク
売掛債権保証サービスに関しては、「保険業法」や「金融商品取引法」などの法的規制の対象となっておらず、今後、同サービスに関する法的規制が新たに制定された場合には、ビジネスモデルの変更や競争環境の変化等により業績に影響を与える可能性がある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<NB>
関連銘柄
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8771
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