今週も29000円前後のもみあいで、上か下への煮詰まりの動きへ

著者:出島 昇
投稿:2021/06/14 17:13

先週の日経平均は、先々週に引き続き25日移動平均線と75日移動平均線の間のもいあい

 先週の予測では、上昇するためには75日移動平均線を突破できるかどうかとしました。先週は、下値では、終値では25日移動平均線(28644円)を守り、上値では75日移動平均線(29225円)の間での動きとなっており、先週はここを上にぬけることができるか注目としました。そのためには、国内ではコロナワクチン接種が進行し、海外では外国の株式がもう一段上昇することが期待されました。

 結果的には、米株式は最高値に接近する動きが継続しましたが、もみあいが続き国内ではワクチン接種率は高まりましたが、これだけでは材料不足で29000円をはさんだ上下200円ほどの動きに終始し、週末は▲9円の28948円と29000円を割り込んで引けました。

 先週は、週半ばまでは日米ともに10日の米5月CPI(消費者物価指数)の発表を控えて様子見ムードが強く、方向感のないもみあいとなっていました。その注目の5月CPIが市場予想を上回る伸び(前年同月比+3.8%)となったにも関わらず、長期金利が低下しました。市場は、消費者物価指数→長期金利上昇→株価下落という懸念で様子見となっていましたが、そのようにはなりませんでした。

 11日(金)は、朝方は米国で長期金利の低下を背景に上昇した流れを受け、買い先行となりましたが、29000円を超えると売り物が出て下落し、28900円を切ると買いが入って上下動し方向感のない動きでもみあいました。週末ということで、手掛かり材料が乏しく様子見気分となって▲9円の28948円で引けました。

 日本市場の引け後の米国市場は、翌週にFOMCを控えていることもあり、上値の重い展開となりましたが、上述したように5月消費者物価指数が高い伸びを示し、市場予想を上回りましたが、インフレは一時的との見方から長期債利回りは低下し、10年債利回りは2月下旬以来となる、1.43%割れまで低下しました。株価は3指標そろって底堅い動きとなり、S&P500は△8Pの4247Pと2日連続の最高値更新となりました。NYダウは△13ドルの34479ドル、ナスダックは△49Pの14069Pでした。シカゴの日経先物は△120円の29000円となりました。

今週も29000円前後のもみあいで、上か下への煮詰まりの動きへ

 今週は、日米ともに米国の15~16日のFOMCが注目となります。現時点では当局者による発言を踏まえると早期に量的緩和の縮小の議論が始まる可能性は低いとみられていますが、経済見通しなどを通じて大規模緩和の出口を探る要因が出てくれば、市場は反応して長期金利上昇へと反応することになります。早期縮小の観測が高まれば相場の重荷となり、逆の場合は株価を押し上げる要因となります。

 目先のリスクとしては、テーパリング(大型金融緩和の縮小)が意識されますが、すぐに金融引き締めにつながるわけではありませんし、国内でのワクチン接種加速による経済正常化への期待が下値を支えることになります。

 先週も25日移動平均線(10日時点28621円)を下値に、上は75日移動平均線(10日時点29147円)の間でのもみあいとなりました。ただし、75日移動平均線は先週の6月7日にザラ場では29241円といったん抜きましたが、終値では29019円でした。この動きで言えることは、75日移動平均線をぬけて7日の29241円を終値でぬけると上放れの形になることです。この場合、柴田罫線では「ろく買」という買いの型となります。日足で見てみると、6月に入ってからの日経平均は29000円をはさんでのもみあいとなっており、下値は25日移動平均線が下値支持線となって、チャートは29000円前後で三角保ち合いが煮詰まる動きとなっています。

 ここで大雑把に三角保ち合いが上放れ、下放れした場合を想定すると上放れは、上述した7日の29241円をぬくことですが、この場合は5月13日の安値27385円からの上昇となって3万円台を目指すことになる可能性があります。逆に下放れした場合で、25日移動平均線(28621円)を割り込めば、5月13日の27385円の安値を目指す可能性もあります。三角保ち合いの上放れ、下放れの結果としての想定を1つのシナリオとして頭に入れておくのがよいでしょう。

 本日14日(月)は、前週末の欧米株高を受け、寄り付き直後に29208円まで上昇しましたが、その後は、戻り売りに上げ幅を縮小し、一時、29026円まで押し戻されました。しかし売り一巡後は切り返し、大引けにかけて戻り歩調となって、なかでも半導体関連をはじめ値がさハイテク株の一角などが買われ、指数を支えたこともあり、△213円の29161円で引けました。

(指標)日経平均

 先週の予測では、米国株式、特にナスダックの上昇が継続すればハイテク株が上昇し、日経平均もハイテク株中心に上昇し、75日移動平均を試すことになるとしました。

 しかし、先週の米国株式は最高値圏でもみあうものの、S&P500は6月10日(木)に最高値をつけるものの、NYダウとナスダックはもう1つという感じでした。

 国内におけるワクチンの進展がかなり進んでいるものの、経済正常化期待はかなり織り込んでおり反応が弱くなっています。

 注目されていた米5月消費者物価指数は予想を大きく上回りましたが、インフレ懸念には結びつかず、逆に長期金利が低下したことで株価は底堅い動きで終わりました。

 今週は、日米ともに15~16日のFOMCが注目となります。量的金融緩和策の縮小時期に関して、どのような発言がでるのかが焦点となります。早期縮小の観測が高まれば、上値は重くなり、逆の場合は株価のサポート要因となります。国内ではワクチン接種が加速しており、経済正常化への期待で株価のサポート要因となります。株価の動きは、基本的には29000円をはんさんだ±300円が想定されます。

 6月に入ってからの29000円をはさんだもみあいで、日足では三角保ち合いとなって煮詰まりつつあります。先週の6月7日のザラ場高値29241円を突破すれば75日移動平均線もぬけることになるので3万円台を目指す可能性も。柴田罫線では「ろく買」という買法則となります。
 

 

(指標)NYダウ

 先週は、10日(木)の5月消費者物価指数を前に様子見で上値の重い展開でした。注目の10日(木)の5月消費者物価指数は、市場予想の+4.7%を超える+5.0%となりました。しかし、それによってインフレ懸念は高まらず、逆に長期金利が低下したことで、S&P500は5月7日以来の史上最高値更新となり、NYダウも反発しました。さらに週末も長期金利の低下によって、S&P500は2日連続の史上最高値を更新し、NYダウは△151ドル高のあと▲137ドルまで下げましたが、終値では△13ドルの34479ドルとなりました。上値の重い展開となっており、あとは今週のFOMC待ちとなります。

 今週の15~16日のFOMCを前に動きづらい展開となりそうです。コロナワクチンによる経済正常化期待はあるものの、景気敏感株はコロナ前の水準をほぼ取り戻しているため、新しい材料がなければ高値圏で売りに押される状況となっています。但し、長期金利が安定していればハイテク株にとってはプラスでナスダックを支えることになります。今回のFOMCは、経済見通しと政策金利の見通しが発表されるため内容次第での動きとなりそうです。
 

 

(指標)ドル/円

●先週の動き…ドル下げ渋り

 先週は、6月8日の4月求人件数は過去最高を記録し、また10日の5月消費者物価指数は市場予想を上回りました。本来ならば、米長期金利上昇でインフレ率が上昇し、株価にとってはマイナスになるところですが、長期金利が低下し、リスク選好的なドル買い・円売りは縮小しました。前年比ベースでの物価上昇率は、6月以降鈍化するとの見方が強まり「FOMCの当局者はインフレ圧力が高まっても一時的なものとの見方を変えないだろう」という見方が広がっているようです。

●今週はドルは伸び悩みか。金融緩和長期化の思惑残る

 6月15~16日のFOMCでは、テーパリング(資産買い入れ規模の段階的縮小)が議論されるとの見方も出ています。ただ、金融政策の早期変更の可能性は低いとみられているようです。そうなると現行の金融緩和政策の長期化が意識されることになり、リスク選好的なドル買い・円売りは縮小することになります。但し、市場のインフレ期待は失われていないため、FOMCでは緩和縮小について議論される見通しです。
 

 

配信元: みんかぶ株式コラム