■要約
ディア・ライフ<3245>は、都市型マンションの開発事業・収益不動産の投資事業などのリアルエステート事業を中核に、人材派遣事業などを展開する企業グループである。2004年の会社設立以来、東京圏に特化した主に単身者・DINKS向けマンションの開発(リアルエステート事業)を主軸として急成長を遂げた。代表取締役社長の阿部幸広(あべゆきひろ)氏をはじめとした専門性の高い人材の不動産目利き力が強みである。2007年8月、会社設立から3年弱で東証マザーズに上場。2015年8月には東証1部に昇格、その後も著しい成長を見せている。
1. 市場動向と同社の強み
同社は創業以来、東京圏の単身者・DINKS向け都市型マンションを中心に不動産開発事業を展開している。人口減少期に入った日本においても、東京圏への人口流入の傾向は続いており、さらには働き方やライフスタイルの変遷もあり、好立地にある都心マンションの需要は衰えていない。結果として、都心での用地の確保の難易度は上昇し、新築マンション供給戸数は頭打ち傾向が続き、マンション価格は上昇を続けている。首都圏の投資用マンションに限ると、供給戸数は2013年以降、年により上下はあるものの堅調に推移しており、平均価格も緩やかな上昇基調である。新型コロナウイルス感染症の拡大(以下、コロナ禍)においても、商業やホテルのアセットタイプの不動産市況に影響が大きかったが、住居において影響が軽微だった(後述)。
このような環境下、需要の堅調な東京圏、特に神楽坂・飯田橋・市ヶ谷をはじめとする「職・食・住」の利便性が良好なエリアに事業エリアを特化することで、販売面だけでなく、用地取得や建築発注においても優位性を確立している。情報の非対称性が依然大きい不動産業界では、有益な用地・物件情報であればあるほど、フェイス・トゥ・フェイスの商談が重要になってくる。同社はエリアを限定することにより、より効率的で密度の濃い仲介業者などとの業界人脈を構築できており、その情報取得力は高い。またエリアを限定することで継続的に工事発注できることから、ゼネコンなど建築業者とも良好な関係性を構築できており、品質の高い建築請負工事を実現している。また、社内に一級建築士をはじめ専門性の高い人材を抱えていることも大きなアドバンテージとなっている。用地取得に関しては、素早く情報をキャッチすると同時にその開発ポテンシャルを素早く的確に算定し、競争力ある価格提示を迅速に行える能力が不可欠である。また建築技術等のわかる人材がいればコスト抑制策での創意工夫が進みやすく、ゼネコンなどとの折衝力が高まる。
2. 業績動向
2021年9月期第2四半期は、売上高が前期比32.2%減の4,873百万円、営業利益が同72.2%減の142百万円、経常利益が同58.9%減の202百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同65.7%減の103百万円と減収減益となった。前年同期は大型物件の引渡しがあったために前期比では低下したものの、第3四半期以降の売却契約がすでに11件完了しており、通期計画に向けて進捗は順調である。主力のリアルエステート事業では、開発プロジェクトや収益不動産をデベロッパーや一般事業法人等に売却した。売上高で前年同期から30%以上減少したものの、前年は大型物件の引き渡しが上期にあった点では特別な期であり、今期は前々期に近い水準である。第3四半期以降に引き渡しの契約も順調に進捗しており、池袋プロジェクト(都市型マンション)や市谷柳町プロジェクト(都市型マンション)、八幡山プロジェクト(アセットデザイン&リセール:以下、ADR)などをはじめ11物件の売却が確定した。上期はADRの売上構成が高かったこともあり売上総利益率は11.7%(前年同期は14.8%)と低下した。ADRを多めにしているのは、不透明感のある市場の中で回転重視の戦略を継続しているからである。販管費が同22.4%減少したのは仲介手数料支払いの減少などが要因である。営業利益142百万円は低水準ではあるが、上期は年間の目標達成のための準備期間と位置付けており、上期の数字はあくまでも途中経過と捉えている。むしろ契約(引き渡し前)、仕入れともに順調に推移している点に注目したい。
2021年9月期通期の業績は、経常利益で3,000百万円(前期比10.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益で2,000百万円(同8.0%増)と増益を目標としており、期初からこの値は変わっていない。売上高と営業利益に関しては、例年同様に業績目標を公開していない。売上高の目標を開示していない理由は、リアルエステート事業において物件売却手法が多彩であることにより不確定要素が多いため、目標指標が売上高ではなく、経常利益としているためである。当面の販売戦略としては、1)建築期間の必要なマンション開発事業と回転の早いADR事業を組み合わせ、収益時期を最適化、2)ワンルームマンション販売会社・ファンドを中心に積極的な売却活動を推進、などである。コロナ禍で不動産市場の不透明感が増した時期は、資産の回転を重視し、早めの段階で利益を確定すべく売却する方針(ADR重視)を採用してきたが、その後コロナ禍でも不動産市況に影響がないことが判明したために、建築期間の必要なマンション開発事業にも力を入れる方針に戻した。5月14日時点では、下期に引き渡しする11物件(1件5億円~10億円前後の事業規模)の契約が確定しており、足元順調に進捗している。コロナ禍の東京都心の不動産マーケットへの影響は、商業・宿泊施設などには大きかったが、住居(マンション)では軽微だった。不動産投資家にとっての資金調達環境も良好であり、弊社では今後の大きな波乱の可能性は低いと考えている。セールスプロモーション事業では、2021年9月期第3四半期から子会社化した(株)DLXホールディングス(以下、DLX-HD)の損益が計上される。(株)N-STAFFは、コロナ禍において求められる非対面の保険営業に強みがあり、売上規模で半期約10億円程度が推定され、初年度から利益貢献が期待できるだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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ディア・ライフ<3245>は、都市型マンションの開発事業・収益不動産の投資事業などのリアルエステート事業を中核に、人材派遣事業などを展開する企業グループである。2004年の会社設立以来、東京圏に特化した主に単身者・DINKS向けマンションの開発(リアルエステート事業)を主軸として急成長を遂げた。代表取締役社長の阿部幸広(あべゆきひろ)氏をはじめとした専門性の高い人材の不動産目利き力が強みである。2007年8月、会社設立から3年弱で東証マザーズに上場。2015年8月には東証1部に昇格、その後も著しい成長を見せている。
1. 市場動向と同社の強み
同社は創業以来、東京圏の単身者・DINKS向け都市型マンションを中心に不動産開発事業を展開している。人口減少期に入った日本においても、東京圏への人口流入の傾向は続いており、さらには働き方やライフスタイルの変遷もあり、好立地にある都心マンションの需要は衰えていない。結果として、都心での用地の確保の難易度は上昇し、新築マンション供給戸数は頭打ち傾向が続き、マンション価格は上昇を続けている。首都圏の投資用マンションに限ると、供給戸数は2013年以降、年により上下はあるものの堅調に推移しており、平均価格も緩やかな上昇基調である。新型コロナウイルス感染症の拡大(以下、コロナ禍)においても、商業やホテルのアセットタイプの不動産市況に影響が大きかったが、住居において影響が軽微だった(後述)。
このような環境下、需要の堅調な東京圏、特に神楽坂・飯田橋・市ヶ谷をはじめとする「職・食・住」の利便性が良好なエリアに事業エリアを特化することで、販売面だけでなく、用地取得や建築発注においても優位性を確立している。情報の非対称性が依然大きい不動産業界では、有益な用地・物件情報であればあるほど、フェイス・トゥ・フェイスの商談が重要になってくる。同社はエリアを限定することにより、より効率的で密度の濃い仲介業者などとの業界人脈を構築できており、その情報取得力は高い。またエリアを限定することで継続的に工事発注できることから、ゼネコンなど建築業者とも良好な関係性を構築できており、品質の高い建築請負工事を実現している。また、社内に一級建築士をはじめ専門性の高い人材を抱えていることも大きなアドバンテージとなっている。用地取得に関しては、素早く情報をキャッチすると同時にその開発ポテンシャルを素早く的確に算定し、競争力ある価格提示を迅速に行える能力が不可欠である。また建築技術等のわかる人材がいればコスト抑制策での創意工夫が進みやすく、ゼネコンなどとの折衝力が高まる。
2. 業績動向
2021年9月期第2四半期は、売上高が前期比32.2%減の4,873百万円、営業利益が同72.2%減の142百万円、経常利益が同58.9%減の202百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同65.7%減の103百万円と減収減益となった。前年同期は大型物件の引渡しがあったために前期比では低下したものの、第3四半期以降の売却契約がすでに11件完了しており、通期計画に向けて進捗は順調である。主力のリアルエステート事業では、開発プロジェクトや収益不動産をデベロッパーや一般事業法人等に売却した。売上高で前年同期から30%以上減少したものの、前年は大型物件の引き渡しが上期にあった点では特別な期であり、今期は前々期に近い水準である。第3四半期以降に引き渡しの契約も順調に進捗しており、池袋プロジェクト(都市型マンション)や市谷柳町プロジェクト(都市型マンション)、八幡山プロジェクト(アセットデザイン&リセール:以下、ADR)などをはじめ11物件の売却が確定した。上期はADRの売上構成が高かったこともあり売上総利益率は11.7%(前年同期は14.8%)と低下した。ADRを多めにしているのは、不透明感のある市場の中で回転重視の戦略を継続しているからである。販管費が同22.4%減少したのは仲介手数料支払いの減少などが要因である。営業利益142百万円は低水準ではあるが、上期は年間の目標達成のための準備期間と位置付けており、上期の数字はあくまでも途中経過と捉えている。むしろ契約(引き渡し前)、仕入れともに順調に推移している点に注目したい。
2021年9月期通期の業績は、経常利益で3,000百万円(前期比10.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益で2,000百万円(同8.0%増)と増益を目標としており、期初からこの値は変わっていない。売上高と営業利益に関しては、例年同様に業績目標を公開していない。売上高の目標を開示していない理由は、リアルエステート事業において物件売却手法が多彩であることにより不確定要素が多いため、目標指標が売上高ではなく、経常利益としているためである。当面の販売戦略としては、1)建築期間の必要なマンション開発事業と回転の早いADR事業を組み合わせ、収益時期を最適化、2)ワンルームマンション販売会社・ファンドを中心に積極的な売却活動を推進、などである。コロナ禍で不動産市場の不透明感が増した時期は、資産の回転を重視し、早めの段階で利益を確定すべく売却する方針(ADR重視)を採用してきたが、その後コロナ禍でも不動産市況に影響がないことが判明したために、建築期間の必要なマンション開発事業にも力を入れる方針に戻した。5月14日時点では、下期に引き渡しする11物件(1件5億円~10億円前後の事業規模)の契約が確定しており、足元順調に進捗している。コロナ禍の東京都心の不動産マーケットへの影響は、商業・宿泊施設などには大きかったが、住居(マンション)では軽微だった。不動産投資家にとっての資金調達環境も良好であり、弊社では今後の大きな波乱の可能性は低いと考えている。セールスプロモーション事業では、2021年9月期第3四半期から子会社化した(株)DLXホールディングス(以下、DLX-HD)の損益が計上される。(株)N-STAFFは、コロナ禍において求められる非対面の保険営業に強みがあり、売上規模で半期約10億円程度が推定され、初年度から利益貢献が期待できるだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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