[資源・新興国通貨2/15~19の展望] 豪ドルは18日の雇用統計に注目!!

著者:八代和也
投稿:2021/02/12 16:51

豪ドル

18日、豪州の1月雇用統計が発表されます。RBA(豪中銀)は金融政策運営において雇用情勢を重視しているため、雇用統計の結果に豪ドルが反応しそうです。

雇用統計の市場予想は本稿執筆時点で失業率が6.5%、雇用者数が前月比3.00万人増。RBAは「少なくとも2024年まで利上げはない」との見通しを示しているものの、雇用統計が堅調な結果になれば、「利上げの時期はRBAの想定よりも早くなる」との観測が市場で浮上するかもしれません。そうなれば、豪ドルは上値を試す展開になるとみられます。

原油や鉄鉱石などの資源価格、主要国株価の動向も材料になる可能性があります。それらが堅調に推移すれば、豪ドルのサポート要因になりそうです。

豪ドル/米ドルは0.78149米ドル(1/6高値)、豪ドル/円は83.830円(2018/12高値)が目先の上値メドになりそうです。

NZドル

RBNZ(NZ中銀)は9日、四半期に1度のインフレ予想調査の結果を発表。今後1年間のインフレ予想は1.77%、今後2年間のインフレ予想は1.89%となり、いずれも前回の1.23%、1.59%から上方へシフトしました。

インフレ予想の上方シフトは、RBNZが利下げする可能性の低下を示します。市場ではマイナス金利導入観測が一段と後退するだけでなく、来年にも利上げを行うとの観測も一部で浮上しています。

一方で、NZドルは投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすいという特徴があります。主要国株価の下落などによるリスクオフに注意は必要なものの、RBNZの金融政策見通しの変化を背景に、NZドルは堅調に推移しそうです。

目先の上値メドとして、NZドル/米ドルは0.73099米ドル(1/6高値)、NZドル/円は76.730円(2019/3高値)が挙げられます。

カナダドル

5日にカナダの1月雇用統計が発表されました。結果は失業率が9.4%、雇用者数が前月比マイナス21.28万人。オンタリオ州やケベック州でのロックダウン(都市封鎖)措置の影響により、いずれも市場予想(8.9%、マイナス4.75万人)を大きく下振れました。

雇用統計の軟調な結果に対し、カナダドルは反応薄でした。原油価格が上昇しており、市場はその方を材料視したようです。カナダは産油国であるため、原油価格の上昇はカナダドルにとってプラスです。

原油価格の代表的な指標である米WTI原油先物の3月物は10日、一時1バレル=58.91ドルへと上昇。期近物としては、昨年1月以来の高値を記録しました。足もとのWTI原油先物上昇の背景として、「OPEC(石油輸出国機構)プラス」が3日の会合で現行の生産枠を据え置いたことや、米国の追加経済対策への期待が挙げられます。

WTI原油先物が引き続き堅調に推移すれば、カナダは上値を試す展開になりそう。カナダドル/円については、米ドル/円の動向にも影響を受けるものの、83.000円に接近するかもしれません。

トルコリラ

18日、TCMB(トルコ中銀)が政策会合を開きます。その結果がトルコリラの動向に影響を与えそうです。

TCMBは昨年11月と12月に合計6.75%の利上げを実施。今年1月の前回会合では政策金利を17.00%に据え置きました。

トルコではインフレ圧力が高まっています。1月CPI(消費者物価指数)は前年比14.97%と、2019年8月以来の高い伸びを記録。また、PPI(生産者物価指数)は同26.16%と、上昇率は2019年5月以来の高さとなりました。

CPIやPPI上昇率をみれば、TCMBが18日の次回会合で追加利上げに踏み切る可能性はあります。ただ、これまでの利上げの効果が今後も出てくるとみられることや、足もとでトルコリラが対米ドルで上昇していることを考えると、政策金利は今回据え置かれそうです。

声明では、これまでと同様に「長期にわたって金融政策の引き締めスタンスを維持し、必要なら追加利上げを行う」との方針が示されそうです。TCMBが政策金利を据え置いたとしても、この方針が改めて示されれば、トルコリラは堅調に推移する可能性があります。リラ/円の目先のメドとして、上値が心理的節目である15.000円、下値は200日移動平均線(14.334円)が挙げられます。

南アフリカランド

南アフリカランドは11日、対米ドルで約1カ月ぶり、対円で約1年ぶりの高値をつけました。足もとのランド上昇の主な要因として、米国の追加経済対策への期待や堅調な主要国株価を背景にリスクオンの流れになっていることが挙げられます。リスクオンが継続すればランドは引き続き堅調に推移しそうです。

昨年12月の南アフリカの鉱業生産や製造業生産(11日発表)は、いずれも市場予想よりも良好な結果でした。

( )は市場予想
・鉱業生産(前年比):0.1%(マイナス8.0%)
・製造業生産(前月比):マイナス0.1%(マイナス0.6%)
・同(前年比):1.8%(マイナス1.3%)

17日に1月の小売売上高が発表されます。鉱業生産などに続いて、小売売上高も強い結果になれば、南アフリカ景気にも市場の関心が向かってランドは底堅さを増す可能性があります。ランド/円は、7.450円(昨年2月高値)に向けて上昇するかもしれません。

メキシコペソ

BOM(メキシコ中銀)は11日、全会一致で0.25%の利下げを決定。政策金利を4.25%から4.00%へ引き下げました。利下げは昨年9月以来、3会合ぶりです。

インフレが足もとで落ち着いたことで、BOMは景気の下支えに向けて利下げに踏み切ったとみられます。

BOMは声明でインフレについて、「CPI(消費者物価指数)上昇率は昨年10月の前年比4.09%から今年1月には3.54%へと低下し、コアインフレは(同じく)3.98%から3.84%へと低下した」と指摘。「CPIは第2四半期(4-6月期)にやや加速するものの、中長期的には3%の目標を上回る水準で推移する」との見方を示し、コアインフレについては「今年第3四半期(7-9月期)の上昇率は3%程度になると予想される」としました。

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BOMが今後、追加利下げを行う可能性はありそうです。
・今回の利下げは5人の政策メンバー全員一致で決定された
・コアインフレは第3四半期には3%程度へと低下するとの見通しが示された
・メキシコ景気の低迷は長期化する可能性がある

ただ、政策金利は当面据え置くとみられます。CPI上昇率は短期的に加速する可能性があるからです。とりわけ比較対象となる前年同期の水準が低い、第2四半期(4-6月期)に加速しそうです。BOMはインフレの状況を見極めようとすると考えられます。昨年4月のCPI上昇率は前年比2.15%、5月は2.84%、6月は3.33%でした。

BOMが追加利下げする可能性があることは、メキシコペソの上値を抑える要因となり得ます。ただし、政策金利は当面据え置かれるとみられ、またBOMの政策金利は主要国の中銀と比べて依然として高い水準です。そう考えると、ペソは下値も堅そうです。ペソ/円の目先メドとして、上値が5.287円(1/19高値)、下値は90日移動平均線(5.131円)が挙げられます。

八代和也
マネ―スクエア シニアアナリスト
配信元: 達人の予想