[資源・新興国通貨2/8~12の展望] 中銀会合がメキシコペソに影響!?

著者:八代和也
投稿:2021/02/05 13:55

豪ドル

RBA(豪中銀)は2日、政策金利と3年物豪国債利回りの目標をいずれも0.10%に据え置くことを決定。一方で、4月中旬に期限を迎える債券買い入れプログラムについては、期限を延長して追加で1000億豪ドル買い入れることを決めました。RBAは追加分について週50億豪ドルのペースで買い入れるとしているため、20週間の延長です。

声明は金融政策の先行きについて、「インフレ率が目標の2-3%の範囲内に持続的に収まるまで利上げしない」と改めて表明。「少なくとも2024年までは、政策金利を引き上げることはないと予想している」としました。

声明は一方で、豪経済について楽観的な見方を示しました。声明は「景気回復は順調に進んでおり、当初の予想よりも力強い」との見方を示し、「回復の勢いは今後も続くと予想され、GDPは2021年半ばまでに2019年末の水準に戻るとみられる」と指摘。GDPが2019年末の水準に戻る時期について、昨年12月会合時に示した2021年末から半年早めました。

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市場では、今回の会合で債券買い入れプログラムの延長はないとの見方もあったため、RBAの決定を受けて豪ドルが対米ドルや対円、対NZドルで下落しました。

ただ、豪経済が堅調さをみせれば、債券買い入れプログラムの延長を材料に豪ドルが下落を続けることはなさそうです。

来週(2/8- )、豪州の1月NAB企業景況感指数(9日)や2月ウエストパック消費者信頼感指数(10日)が発表されます。それらが、市場に豪経済を再評価させるきっかけになるかもしれません。豪ドル/米ドルは0.78149米ドル(1/6高値)、豪ドル/円は80.879円(1/8高値)が目先の上値メドになりそうです。

NZドル

NZの昨年10-12月期の失業率は4.9%と、RBNZ(NZ中銀)の昨年11月時点の見通し(5.6%)に反して7-9月期の5.3%から改善しました。

昨年10-12月期のCPI(消費者物価指数。1/22発表)に続いて失業率も強い結果だったため、RBNZが利下げする可能性は低下したとみられます。CPIは前年比1.4%。RBNZの昨年11月時点の見通しは1.1%でした。

主要国株価の下落などによるリスクオフには注意が必要なものの、NZドルは堅調に推移しそうです。目先の上値メドとして、NZドル/米ドルは0.73099米ドル(1/6高値)、NZドル/円は76.730円(2019/3高値)が挙げられます。

カナダドル

原油価格の代表的な指標である米WTI原油先物の3月物は4日、期近物として昨年1月下旬以来の高値を記録。ADP雇用統計など良好な米経済指標の結果や米国の追加経済対策への期待(原油需要が回復するとの見方)が、WTI原油先物の支援材料となりました。

カナダは産油国であるため、原油価格の上昇はカナダドルにとってプラス材料。WTI原油先物が引き続き堅調に推移すれば、カナダドルは底堅い展開になりそうです。

5日発表のカナダの1月雇用統計も材料になる可能性があります。本稿執筆時点で結果は判明していないものの、市場予想よりも良好な結果になれば、カナダドルのサポート要因になりそうです。カナダドル/円は82円台に定着する可能性があります。雇用統計の市場予想は失業率が8.9%、雇用者数が前月比マイナス4.75万人です。

トルコリラ

トルコの1月CPI(消費者物価指数)は前年比14.97%と、2019年8月以来の高い伸びを記録。また、PPI(生産者物価指数)は同26.16%と、上昇率は2019年5月以来の高さとなりました。

TCMB(トルコ中銀)は昨年11月と12月の大幅な利上げ(合計6.75%)を実施。今年1月の前回会合では政策金利を17.00%に据え置いたものの、「インフレ率が持続的に低下するまで、金融政策の引き締めスタンスを断固維持する」との方針。また、「必要なら追加利上げを行う」との姿勢を示しています。

これまでの利上げの効果が今後も出てくるとみられることや、足もとの対米ドルでのトルコリラ上昇を受け、市場ではTCMBはいずれ利下げへと転じるとの観測があります。ただ、TCMBは市場の信頼を取り戻しつつあり、CPIやPPIの強い結果を受けて、その観測が後退するだけでなく、追加利上げ観測さえも浮上するかもしれません。その場合、トルコリラは対米ドルや対円で堅調に推移し、リラ/円は心理的節目の15.000円超えを試す可能性があります。

南アフリカランド

ラマポーザ南アフリカ大統領は1日、コロナの新規感染者数は着実に減少しており第2波のピークは過ぎたとして、制限措置を一部緩和すると発表。1月初めに1日あたり2万人を超えていた同国のコロナの新規感染者数は、足もとで4000人程度へと減少しています。

制限措置の主な緩和内容は、以下の通りです。
・夜間外出禁止令の時間を午後11時~翌日午前4時に短縮(これまでは午後9時~翌日午前5時)
・店舗の閉店時間の変更(午後10時に。これまでは午後8時)
・酒類の店舗販売やレストランなどでの提供を許可(ただし、販売や提供可能な曜日や時間に制限あり)

制限措置が緩和されることにより、南アフリカ景気に対する下押し圧力は幾分弱まるとみられます。制限措置の緩和はランドにとってプラス材料です。

南アフリカランドには一方で、投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすいという特徴があります。主要国の株価動向(特に米国)や米国の追加経済対策の行方にも目を向ける必要がありそうです。リスクオンの流れが強まる場合、ランドは底堅さを増し、ランド/円は7.092円(2020/12/14高値)より上の水準に定着するかもしれません。

メキシコペソ

BOM(メキシコ中銀)の政策会合が11日に開かれます。その結果がペソの動向に影響を与えそうです。

BOMは昨年9月まで11会合連続で利下げを行った後、インフレの状況を見極めたいとして2会合連続で政策金利を4.25%に据え置きました。

今回、0.25%の利下げが行われる可能性があります。

メキシコのCPI(消費者物価指数)上昇率は、昨年8-10月の3カ月連続でBOMのインフレ目標(3%)の許容レンジ上限である4%を上回ったものの、その後は2カ月連続で伸びが鈍化。12月は前年比3.15%でした(今年1月分は2/9発表)。

また、BOMでは1月にグスマン氏からボルハ氏に副総裁が交代しました。グスマン氏は利下げに慎重なタカ派として知られたのに対し、ボルハ氏はハト派寄りとみられます。昨年12月の前回会合での据え置きの決定は3対2の僅差であり、2人は利下げを主張しました。ボルハ氏が利下げを支持すれば、利下げ票が半数を超える可能性があります。

利下げが決定された場合、ペソは軟調に推移するかもしれません。ただ、メキシコでは1月から最低賃金が15%引き上げられました。賃上げがインフレ圧力へとつながるおそれがあることから、BOMは声明でさらなる利下げについて慎重な姿勢を示す可能性があります。その通りになれば、利下げしたとしてもペソはそれほど下がらない可能性があります。ペソ/円の目先メドとして、上値が5.287円(1/19高値)、下値は5.025円(2020/12/21安値)が挙げられます。

八代和也
マネ―スクエア シニアアナリスト
配信元: 達人の予想