明日の株式相場に向けて=トランプ政策の危うさが浮き彫りに
週明け10日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比141円高の3万7028円と反発。朝方はマイナス圏で推移する場面もあったが、その後は押し目買いが優勢となり、後場も右往左往しながらも頑強な値動きを続けた。しかし、前週末に800円超の下落をみせた割に反発力は弱いともいえる。きょうの株価を牽引したのは半導体関連株だったが、悲鳴も歓声も聞こえてこない。レーザーテック<6920.T>が久々に売買代金首位となり10%高と気を吐いたが、それでも現状は自律反発の領域から抜け出ていない。プライム市場全体では値を下げた銘柄の方が多く、TOPIXは小幅ながら続落して引けている。日経平均3万8000~4万円のレンジ相場は昨年9月下旬から2月末まで約5カ月間続いたが、案の定というべきか遂に下放れる形となった。このまま行くとこれまでボックス下限であった3万8000円大台ラインが、ボックス上限に切り替わってしまう可能性は否めない。実際に累積売買代金が最も積み上がっているのは3万8500~3万9000円の水準だが、3万8000円近辺もこれまで何度も下方ブレークのピンチを切り抜けてきただけに、ここを再び上に抜けるのは相当なエネルギーが必要となる。国内の金利上昇スイッチが入ってしまったことを考慮すると、株式市場はボックス圏が切り下がったことを念頭に置いて個別株戦略を練り直すよりないところだ。
問題は米国株の動向である。トランプ政権下でリスクアセットが沈下することは考えにくいという不文律が揺らぎ始めた。「アメリカ・ファースト」の政策スタンスは第1次トランプ政権と一緒だが、関税を武器にした“ゴリ押し外交”にとどまらず、ロシアに対する融和的姿勢に世界は緊張を高めている。対中国の観点からもロシアを取り込んだ方が手っ取り早いとする思考プロセスは稚拙であっても、有効性が高く現実的だ。世界的な防衛関連株の物色人気は、防衛関連株への資金逃避という見方もできる。ウクライナ・ロシアの戦争が終結したとして、地政学リスクはむしろ高まるという皮肉な結果が待っている。とりわけロシアの侵略戦争が事実上成功を収めたとなれば、中国による台湾有事の引き金が引かれる可能性を高めることにもなり、日本にとってはかなりのプレッシャーとなり得る。
そうしたなか、防衛関連株は物色の裾野が広がってきたようにも見える。防衛省との取引額で群を抜く三菱重工業<7011.T>を筆頭に川崎重工業<7012.T>、IHI<7013.T>が“防衛三羽烏”に位置付けられるが、実際高値圏をどんどん突き進むような勢いは今の相場環境では難しい。事実きょうは、いずれの銘柄も大陰線を引いている。このほかリアル防衛関連の一角である東京計器<7721.T>や新明和工業<7224.T>といった銘柄も同様の値動き。更に防衛関連の指揮統制・通信インフラで本命格に位置するNEC<6701.T>なども目先調整局面に移行している。
ただ、主力どころが一休みしている傍らで、出遅れ中小型株に循環物色の矛先が向くのが常であり、これは半導体関連が投資テーマとして全盛を極めた時にも見られた。直近は大阪チタニウムテクノロジーズ<5726.T>や東邦チタニウム<5727.T>などのチタン関連が防衛用航空機向けの需要増大を見込み急動意をみせた。これは3月期末を控えた需給事情も絡む。両銘柄とも外資系証券名義の貸株市場を通じて積み上がった空売りの手仕舞い、買い戻しによって株価に浮揚力が働きやすい時間軸にあることも影響している。
他方、あまりマーケットの視線が向いていなかったシェルターや電磁波シールド関連などの一角も注目される兆しがある。放射線防護工事で実績が高い技研ホールディングス<1443.T>は200円未満の株価で値ごろ感があるが、PER7倍前後と割安であり、年1円とはいえ長く配当を続けている企業がPBR0.2倍台という超低空飛行を続けているのは修正余地がある。また、住宅向けシェルターで実績を有するサンヨーホームズ<1420.T>や電磁波シールド材を手掛ける藤倉化成<4620.T>などもバリュー株素地が際立つ。
あすのスケジュールでは、1月の家計調査、2月のマネーストック、24年10~12月期の国内総生産(GDP)改定値がいずれも朝方取引開始前に開示される。また、午後3時以降に開示予定の2月の工作機械受注額速報値も注目される。海外ではポーランドの金融政策委員会が12日までの日程で行われるほか、米国では2月の全米自営業者連盟(NFIB)中小企業楽観度指数が発表される。また、1月の米雇用動態調査(JOLTS)にマーケットの関心が高い。(銀)
出所:MINKABU PRESS
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