テノックス Research Memo(2):国内トップクラスの技術力を誇る基礎工事専業企業

配信元:フィスコ
投稿:2021/01/18 15:12
■会社概要

1. 会社概要
テノックス<1905>は、基礎工事に特化した建設事業及び建設資材の販売を行っており、建設事業では、住宅やマンション、商業施設、教育施設、病院、工場、倉庫などの建築構造物、道路や鉄道の高架橋などの土木構造物を建設する際の、杭工事や地盤改良工事などを請け負っている。基礎工事は、構築物が主に地下にあるため一般の目に届かず地味な印象を受けるが、施工への信頼を大きな前提とする、文字どおり日本の土台を支える重要な工事である。そうした業界でパイオニアとして専業を貫く同社は、長年培ってきた経験やノウハウによって、中低層建築物向けに業界で広く浸透しているテノコラム工法や、高速道路や鉄道などの土木工事に用いられるガンテツパイル工法を開発するなど、国内トップクラスの技術力を誇っている。


2020年7月に創立50周年を迎えた業界のパイオニア
2. 沿革
同社は1970年に創業者の安田善次郎(やすだぜんじろう)氏によって設立され、旭化成工業(株)(現旭化成<3407>)の代理店としてコンクリートパイルの販売及び施工を開始した。1977年に既製杭の施工法(中掘工法)で特許を取得、1984年には現在もなお全国各地で使われているテノコラム工法の特許を取得した。こうした技術力をテコに1980年代後半から1990年にかけて、同社は営業拠点網を全国に拡大していった。1991年に日本証券業協会に株式を店頭登録した後は業容拡大期に入り、1995年にガンテツパイル工法を開発し技術審査証明を取得したほか、テノコラム工法、ATTコラム工法、TN-X工法、ピュアパイル工法など、開発してきた主力工法で各種認証を次々と取得した。また、1995年に(株)山本組を子会社化して(株)テノックス技研に改称、1997年には(株)複合技術研究所を設立している。さらに、2015年にベトナムのホーチミン市にTENOX ASIA CO.,LTDを設立、2018年にはテノコラム工法でベトナムの技術認証を取得するなど、海外での事業も本格展開を開始した。

2020年に入って、コロナの影響が世界的に広がり、リーマンショック以上に厳しい経済環境になるとも言われている。同社もコロナの影響から免れることは難しいと思われるが、複数の工法を有し国内トップクラスを誇る技術力で猛牛のごとく立ち向かうことを期待する。ちなみに同社の社名は、安田善次郎氏を慕って集まった設立当初の10名の青年が雄牛のように力強くまい進することを願い、10名の「TEN」と雄牛の「OX」を結び付けて「TENOX」と名付けられた。また、同社ロゴマークも雄牛の「OX」からデザインされたものである。それから50年、2020年7月に同社は創立50周年を迎えたが、現在では国内営業拠点として北海道から九州まで6営業所、3出張所を擁し、ほかに1機材センター・試験研究室、国内外に関連子会社5社を有する体制となった。また、後に詳述するが、事業領域の拡大を目指して広島組などの子会社化、日本ヒューム<5262>との業務及び資本提携など積極経営を続けている。


基礎工事は大きく直接基礎(地盤改良併用を含む)と杭基礎の2つに分けられる
3.基礎工事とは
基礎とは、建築構造物や土木構造物の荷重を地盤に伝え、安全に支える構造のことである。建築構造物などは安定した地盤に直接建設するのが良いとされるが、日本は地震が多い上、人口の大半が河川下流の土砂が堆積した平野に集中している。このため建築構造物などを建てる際、硬い地盤であればその上に建てればよいが、軟らかい地盤の場合はその下方にある硬い地盤(支持層)で支えねばならず、地盤と建物の条件に適した土台づくり=基礎工事が必要とされる。基礎工事は主に、支持層が浅い場合の直接基礎(地盤改良を併用した直接基礎を含む)と支持層が深い場合の杭基礎に分けられ、そのほか軟弱地盤上での浮き基礎や液状化対策を兼用した基礎 -- --など地盤条件によってさまざまな適用事例がある。

元来、直接基礎は、支持層が1メートル以内と非常に浅い場合(または建築物が非常に軽い場合)、基礎を直接地面に建てる工法である。なお、直接基礎には地盤改良を併用する場合も含まれ、支持層が1〜2メートルとやや浅い場合の浅層改良と、2〜10メートル程度のやや深い場合の深層改良があり、いずれも土壌に改良材などを混ぜ合わせながら硬い地盤に変えていく工法である。地盤改良は、基礎工事のみならず山留めや土壌汚染対策などにも採用される工法である。

杭基礎は、支持層がおおむね10メートルより深い場合に用いられる工法である。杭工事は杭の支え方で支持杭と摩擦杭に分けられる。支持杭は杭の先端を硬い支持層に到達させて支えるものであり、摩擦杭は杭周面の地盤の摩擦力で支える。杭は製造方法によって既製杭と場所打ち杭に分けられる。既製杭は工場で製造された杭を建設現場へ運んで設置するが、工場で製作されるため均一性など品質が高く、施工自体も容易である(長い杭が必要な場合は数本つなぎ合わせて使用する)。場所打ち杭は、工事現場で杭を造成するためその施工管理に時間と労力がかかるが、杭径の大きさをある程度自由に変えられるなどのメリットがあるため、建物重量が非常に大きい場合や既製杭の施工が難しい特殊な地盤の場合などに用いられる。

杭は材料によって鋼管杭とコンクリート杭に分けられる。鋼管杭は鋼鉄を材料とした杭なので、鋼板を円柱状に折り曲げるロール成形という工法で製造される(H形鋼の場合もある)。鋼管杭はあらかじめ腐食しろを見込んで製造され、支持層に到達することで大きな支持力が得られる。また、靱性(大地震にねばれるしなやかさ)が高く加工しやすいことから、鋼管の先端に羽根を取り付けて支持力を高めるなど工夫もしやすい。コンクリート杭はプレストレスをかけた超高強度コンクリートを使用するため、高い支持力が得られる。場所打ち杭もコンクリート杭の一種で、杭の径を大きくすることにより支持力を大きくすることができるため、超高層ビルなど大規模な構造物に用いられる。杭基礎は施工方法による分類などもあり、様々な構造物、種々雑多な地盤、施主などの要求もそれぞれである分、実際の工法は非常に細かく分けられる。

このように基礎工事自体が大小多岐にわたるため、基礎工事を行う企業も大手から中小企業まで数多い。また、基礎工事は文字どおり建築・土木構造物の土台であることから、地中が目視できない反面、品質が良くて当たり前という施工への信頼は非常に重要な前提条件となる。2015年に発覚した横浜市のマンション杭打ち工事のデータ不正問題は、かえってそうした重要性を再認識するきっかけにもなった。さらに近年、大地震への備えや、大型台風、集中豪雨の頻発による自然災害などに対する防災意識の高まりから、一般の人からの注目も増している。同社は安全・安心を提供する業界のパイオニアとして、その経験やノウハウ、技術力には大きな意義があり、社会的財産と言うこともできる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)


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配信元: フィスコ

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