[資源・新興国通貨1/11~15の展望] カナダドルは一段高の可能性も!?

著者:八代和也
投稿:2021/01/08 14:44

豪ドル

豪ドルは今週(1/4- )、対米ドルで18年3月以来、対円で19年4月以来の高値をつけました。足もとの豪ドル高の背景として、米国の追加経済対策への期待や米株高によってリスクオンが強まったことが挙げられます。原油価格の上昇も資源国通貨である豪ドルのプラス材料です。リスクオンの流れが継続すれば、豪ドル/米ドルや豪ドル/円は堅調に推移しそうです。

米国の長期金利(10年債利回り)の動向も豪ドル相場に影響を与えるかもしれません。長期金利が上昇すれば、米ドルが全般的に強含む可能性があります。その場合、豪ドル/米ドルは上値が重い展開になる一方、豪ドル/円は比較的落ち着いた値動きになるかもしれません(豪ドル/米ドルと米ドル/円の綱引きとなるため)。

NZドル

NZドルは今週(1/4- )、対米ドルで18年4月以来、対円で19年4月以来の高値を記録。豪ドルと同様、米国の追加経済対策への期待などからリスクオンが強まったことが、足元のNZドル高の要因として挙げられます。

来週(1/11- )はNZの昨年11月住宅建設許可件数が発表されるものの、材料としては力不足の感があります。NZドルは引き続き、投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)に影響を受けやすいとみられます。リスクオンが強まる場合、NZドル/米ドルやNZドル/円は堅調に推移しそうです。

米国の長期金利(10年債利回り)が上昇した場合、米ドルが全般的に強含む可能性もあります。そうなれば、NZドル/米ドルは上値が重い展開になる一方、NZドル/円は比較的落ち着いた値動きになりそうです。

カナダドル

1月5日、「OPECプラス(*)」は2月の協調減産の規模を1月から小幅に縮小することで合意。2月の減産規模を日量712.5万バレルとし、現行の720万バレルから7.5万バレル縮小します。ロシアとカザフスタンが減産の規模を合わせて7.5万バレル縮小(=増産)する一方、他の国は現行水準を維持します。

*OPECプラス:OPEC(石油輸出国機構)加盟国と非加盟主要産油国で構成

ただ、サウジアラビアは「2月と3月に自主的に追加で日量100万バレルの減産を行う」と表明。サウジアラビアの自主減産幅はロシアとカザフスタンの増産分を上回り、サウジアラビアの自主減産分を含めれば、OPECプラスの2月の減産規模は812.5万バレルと、現行の720万バレルよりも拡大することになります。

サウジアラビアの自主減産を好感し、また米国の追加景気対策への期待から米WTI原油先物(原油価格の代表的な指標)の2月物は一時51.28ドルへと上昇。期近物として昨年2月以来の高値を記録しました。

カナダは原油を主力輸出品とするため、原油価格の上昇はカナダドルにとってプラス材料です。需給が引き締まるとの見方からWTI原油先物は引き続き堅調に推移するとみられ、その場合にはカナダドルは上値を試す展開が想定されます。カナダドル/円については、米ドル/円の影響も受けるものの、82円台に定着する可能性があります。

トルコリラ

1月4日、トルコの昨年12月CPI(消費者物価指数)が発表されました。結果は前年比14.60%と、市場予想(14.20%)以上に11月の14.03%から上昇率が加速し、2019年8月以来の強い伸びを記録。また、変動の大きい食品やエネルギーなどを除いたコアCPIは前年比14.30%と、2019年7月以来の高い伸びでした。

TCMB(トルコ中銀)は昨年11月と12月の2会合連続で利上げを実施。先行きの金融政策については必要なら一段と引き締めるとの姿勢です。

CPIやコアCPIによってインフレ圧力の高まりが確認されたことで、市場ではTCMBの追加利上げ観測(次回会合は1/21)が高まるとみられ、トルコリラは底堅く推移する可能性があります。リラ/円の目先の上値メドとして、200日移動平均線(7日時点で14.498円)が挙げられます。

南アフリカランド

南アフリカランドは今週(1/4- )、対米ドルで約1カ月ぶり、対円で1カ月半ぶりの安値をつけました。

南アフリカで新型コロナウイルスの感染者が急増しており、それがランドに対する下押し圧力となっています。南アフリカで7日に確認されたコロナの新規感染者数は21832人。政府は昨年12月28日にロックダウン(都市封鎖)を強化しましたが、市場では一段と強化されるとの見方があります。また、SARB(南アフリカ中銀)の利下げ観測もランドの重石です。SARBは1月19-21日に政策会合を開きます(金融政策発表は21日)。

米国の追加景気対策への期待や主要国中銀の緩和的な金融政策は、ランドにとってプラス材料と考えられます。ただ、市場はコロナの感染者急増やSARBが利下げする可能性の方に注目し始めているようです。ランドは引き続き軟調に推移する可能性があります。

メキシコペソ

メキシコの昨年12月CPI(消費者物価指数)は前年比3.15%と、上昇率は11月の3.33%から鈍化。BOM(メキシコ中銀)のインフレ目標である3%に近づきました。

コロナの感染拡大によってメキシコの景気回復は緩慢なものになるとみられる一方、インフレへの警戒感からBOMは昨年11月と12月の2会合連続で政策金利を4.25%に据え置きました。

12月の前回会合では3対2の僅差で政策金利の据え置きが決定されたうえ(据え置きに反対した2名は0.25%の利下げを主張)、CPIの結果によってインフレ圧力の鈍化が確認されました。BOMは2月11日の次回政策会合で利下げに踏み切るかもしれません。利下げする可能性があることはメキシコペソにとってマイナス材料です。

一方で原油価格(米WTI原油先物など)が堅調に推移しており、それは産油国の通貨であるメキシコペソにとってプラス材料です。原油価格が引き続き堅調に推移すれば、ペソは下値も堅い展開になりそうです。

八代和也
マネ―スクエア シニアアナリスト
配信元: 達人の予想