■アサヒ衛陶<5341>の事業概要
2. 業界動向
(1) 市場のトレンド
日本の新設住宅着工戸数は、1973年に190.5万戸のピークを付けた。その後、山谷があっても、後のピークが前のピークを上回れず、右肩下がりのトレンドを形成している。2008年のリーマンショックを受け、2009年に42年ぶりに新設住宅着工戸数が100万戸の水準を割り、78.8万戸まで落ち込んだ。それ以降、戻りはあっても100万戸の大台を回復したことがない。
同社の売上高は、2001年11月期の7,228百万円から2009年11月期には3,526百万円へ、翌2010年11月期は2,972百万円まで縮小した。直近期の2019年11月期は、リストラによる不採算品目や販売分野の縮小があり、2,426百万円となった。同社シェアは2~3%に低下しているため、今後は市場全体よりも売上高依存度の大きな得意先の動向に影響を受けることになるだろう。
(2) 競合先とそれらの業績動向
衛生設備機器市場のプレーヤーは、TOTO、LIXILグループ(INAX)、ジャニス工業<5342>、パナソニック<6752>ライフソリューションズ社と同社の5社に限定される。パナソニックグループでかつて衛生設備機器を扱っていたパナソニック電工は、親会社に吸収合併され、2011年に上場廃止となった。現在、パナソニックの社内カンパニー「ライフソリューションズ社」が衛生設備機器事業を引き継いでいる。ライフソリューションズ社に係るセグメントデータには、ハウジングシステムだけでなく、ライティング、エナジーシステム、パナソニックエコシステムズやパナソニックホームズまで含んでいるため、財務データの比較対象から除いた。
LIXILグループの2020年3月期の売上収益は前期比7.5%減の1,694,439百万円となった。連結子会社で損失計上が続いたイタリアの建材子会社Permasteelisa S.p.A.(ペルマスティリーザ)の株式譲渡を決定し、連結決算の対象から外した。前期の数値を同様に組み替えて比較すると、売上収益は前期比0.1%増となり、前期の営業利益は、15,029百万円の損失計上(組替え前)から49,011百万円の利益(組替え後)に転じる。2020年3月期の営業利益39,121百万円は、組替え後比較で前期比20.2%減少した。一部事業の収益性低下により減損損失が前期の5,367百万円から17,319百万円へ拡大した。また、新型コロナウイルス感染症への対応目的で、全世界の従業員への一時金を支給した。
TOTOの2020年3月期の売上高は前期比1.8%増の596,497百万円、営業利益は同8.5%減の36,760百万円となった。総売上高の95.9%を占めるグローバル住設事業の売上高は同3.0%増、営業利益は同5.1%減、営業利益率は同0.6ポイント減の7.1%であった。グローバル住設事業は、衛生設備機器、ウォシュレット、水栓機器、浴槽、キッチン・洗面などをカバーする。住設機器以外の新領域事業は、セラミック事業(売上高構成比2.8%)と環境建材事業(同1.3%)であるが、いずれもセグメント損失を計上した。グローバル住設事業の地域別動向については、日本の売上高が同2.6%増、営業利益が同3.7%増、営業利益率が5.8%、海外の売上高は同4.2%増、営業利益が同16.7%減となった。国・地域別利益については、中国が同17.7%減、アジア・オセアニアが同1.0%減、米州が同60.7%減、欧州が損失を計上した。また、米州のグローバル住設事業に占める売上高は5.7%、欧州が0.7%となったが、欧州は10年以上損失計上が続いている。ベトナムの連結調整と共通費の配賦などを含まない現地グループ企業の業績は、売上高が前期比16%増(現地通貨ベース)の約200億円、営業利益が同25%増の約30億円、売上高営業利益率が同1ポイント増の15%となった。
TOTOの2021年3月期第1四半期の業績は、売上高が前年同期比13.2%減の118,077百万円、営業利益が同60.0%減の2,159百万円となった。グローバル住設事業における日本の業績状況は、減収・損失計上となった。これは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で経済活動が制限され、ショールームの臨時閉鎖などを余儀なくされたことによる。海外グループ会社の決算期は、第1四半期が1月~3月となる(インドを除く)が、中国・アジアは減収減益、米州はウォシュレット需要急増などで増収増益となった。新領域事業は、セラミック事業が半導体市場の需要増により、増収黒字化を果たした。2021年3月期第2四半期(4月~9月)の業績予想は、売上高を前年同期比15.6%減の250,000百万円、営業利益を同65.6%減の6,000百万円としている。なお、通期予想は足元の事業環境が不透明なため未定としているものの、開示が可能となった段階で速やかに公表するとしている。
ジャニス工業は、同社と同様に単一事業となる。2020年3月期の売上高は前期比0.3%減の5,166百万円、営業損失が236百万円となった。筆頭株主であるタカラスタンダード<7981>への売上高は前期比2.8%減、売上高依存度は22.1%であった。2期連続して損失を計上したため、配当は前期の年10円配から2020年3月期は無配に転落した。
LIXILグループは会計基準にIFRS(国際会計基準)を採用している。他の3社は、連結決算に日本基準を用いているため、TOTO、ジャニス工業、同社とで収益性の比較を行った。高いブランド力と高シェアを誇るTOTOは、過去7期間の売上総利益率がおおむね36~38%程度、売上高営業利益率は6~9%の水準を保っている。ジャニス工業は、売上高の半分程度をOEM生産受託としており、売上総利益率が20~26%と3社の中で一番低い。ただし、販管費率も低くなる。2019年3月期は、OEM先に対する売上高が減少した上、採算性の低い商品の販売が増加するというセールスミックスの変化が災いして営業損失を計上した。2020年3月期は、焼成炉の燃費向上やコストダウンに努め、売上総利益率を改善したものの、製造メーカーとして将来の製品保証費用(123百万円)を引き当てたことから販管費が増加し、2期連続して営業損失を計上した。同社は売上総利益率こそ32~36%と高水準であるが、減収傾向が続き、運賃コストなどの上昇により販管費の削減が進まず、営業損失の計上が続いた。なお、2019年11月期の売上総利益率が30%を割ったのは事業構造改革による一時的な現象と弊社では見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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2. 業界動向
(1) 市場のトレンド
日本の新設住宅着工戸数は、1973年に190.5万戸のピークを付けた。その後、山谷があっても、後のピークが前のピークを上回れず、右肩下がりのトレンドを形成している。2008年のリーマンショックを受け、2009年に42年ぶりに新設住宅着工戸数が100万戸の水準を割り、78.8万戸まで落ち込んだ。それ以降、戻りはあっても100万戸の大台を回復したことがない。
同社の売上高は、2001年11月期の7,228百万円から2009年11月期には3,526百万円へ、翌2010年11月期は2,972百万円まで縮小した。直近期の2019年11月期は、リストラによる不採算品目や販売分野の縮小があり、2,426百万円となった。同社シェアは2~3%に低下しているため、今後は市場全体よりも売上高依存度の大きな得意先の動向に影響を受けることになるだろう。
(2) 競合先とそれらの業績動向
衛生設備機器市場のプレーヤーは、TOTO、LIXILグループ(INAX)、ジャニス工業<5342>、パナソニック<6752>ライフソリューションズ社と同社の5社に限定される。パナソニックグループでかつて衛生設備機器を扱っていたパナソニック電工は、親会社に吸収合併され、2011年に上場廃止となった。現在、パナソニックの社内カンパニー「ライフソリューションズ社」が衛生設備機器事業を引き継いでいる。ライフソリューションズ社に係るセグメントデータには、ハウジングシステムだけでなく、ライティング、エナジーシステム、パナソニックエコシステムズやパナソニックホームズまで含んでいるため、財務データの比較対象から除いた。
LIXILグループの2020年3月期の売上収益は前期比7.5%減の1,694,439百万円となった。連結子会社で損失計上が続いたイタリアの建材子会社Permasteelisa S.p.A.(ペルマスティリーザ)の株式譲渡を決定し、連結決算の対象から外した。前期の数値を同様に組み替えて比較すると、売上収益は前期比0.1%増となり、前期の営業利益は、15,029百万円の損失計上(組替え前)から49,011百万円の利益(組替え後)に転じる。2020年3月期の営業利益39,121百万円は、組替え後比較で前期比20.2%減少した。一部事業の収益性低下により減損損失が前期の5,367百万円から17,319百万円へ拡大した。また、新型コロナウイルス感染症への対応目的で、全世界の従業員への一時金を支給した。
TOTOの2020年3月期の売上高は前期比1.8%増の596,497百万円、営業利益は同8.5%減の36,760百万円となった。総売上高の95.9%を占めるグローバル住設事業の売上高は同3.0%増、営業利益は同5.1%減、営業利益率は同0.6ポイント減の7.1%であった。グローバル住設事業は、衛生設備機器、ウォシュレット、水栓機器、浴槽、キッチン・洗面などをカバーする。住設機器以外の新領域事業は、セラミック事業(売上高構成比2.8%)と環境建材事業(同1.3%)であるが、いずれもセグメント損失を計上した。グローバル住設事業の地域別動向については、日本の売上高が同2.6%増、営業利益が同3.7%増、営業利益率が5.8%、海外の売上高は同4.2%増、営業利益が同16.7%減となった。国・地域別利益については、中国が同17.7%減、アジア・オセアニアが同1.0%減、米州が同60.7%減、欧州が損失を計上した。また、米州のグローバル住設事業に占める売上高は5.7%、欧州が0.7%となったが、欧州は10年以上損失計上が続いている。ベトナムの連結調整と共通費の配賦などを含まない現地グループ企業の業績は、売上高が前期比16%増(現地通貨ベース)の約200億円、営業利益が同25%増の約30億円、売上高営業利益率が同1ポイント増の15%となった。
TOTOの2021年3月期第1四半期の業績は、売上高が前年同期比13.2%減の118,077百万円、営業利益が同60.0%減の2,159百万円となった。グローバル住設事業における日本の業績状況は、減収・損失計上となった。これは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で経済活動が制限され、ショールームの臨時閉鎖などを余儀なくされたことによる。海外グループ会社の決算期は、第1四半期が1月~3月となる(インドを除く)が、中国・アジアは減収減益、米州はウォシュレット需要急増などで増収増益となった。新領域事業は、セラミック事業が半導体市場の需要増により、増収黒字化を果たした。2021年3月期第2四半期(4月~9月)の業績予想は、売上高を前年同期比15.6%減の250,000百万円、営業利益を同65.6%減の6,000百万円としている。なお、通期予想は足元の事業環境が不透明なため未定としているものの、開示が可能となった段階で速やかに公表するとしている。
ジャニス工業は、同社と同様に単一事業となる。2020年3月期の売上高は前期比0.3%減の5,166百万円、営業損失が236百万円となった。筆頭株主であるタカラスタンダード<7981>への売上高は前期比2.8%減、売上高依存度は22.1%であった。2期連続して損失を計上したため、配当は前期の年10円配から2020年3月期は無配に転落した。
LIXILグループは会計基準にIFRS(国際会計基準)を採用している。他の3社は、連結決算に日本基準を用いているため、TOTO、ジャニス工業、同社とで収益性の比較を行った。高いブランド力と高シェアを誇るTOTOは、過去7期間の売上総利益率がおおむね36~38%程度、売上高営業利益率は6~9%の水準を保っている。ジャニス工業は、売上高の半分程度をOEM生産受託としており、売上総利益率が20~26%と3社の中で一番低い。ただし、販管費率も低くなる。2019年3月期は、OEM先に対する売上高が減少した上、採算性の低い商品の販売が増加するというセールスミックスの変化が災いして営業損失を計上した。2020年3月期は、焼成炉の燃費向上やコストダウンに努め、売上総利益率を改善したものの、製造メーカーとして将来の製品保証費用(123百万円)を引き当てたことから販管費が増加し、2期連続して営業損失を計上した。同社は売上総利益率こそ32~36%と高水準であるが、減収傾向が続き、運賃コストなどの上昇により販管費の削減が進まず、営業損失の計上が続いた。なお、2019年11月期の売上総利益率が30%を割ったのは事業構造改革による一時的な現象と弊社では見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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5342
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