S&P500月例レポート(20年6月配信)<4>
企業業績
○今回の決算シーズンではほとんどの企業が、将来の見通しが立たないという見解でほぼ一致しました。各社とも新型コロナウイルスの影響の度合いと、この状況がいつまで続くのかについて確信が持てずにいます。そのため、今後のガイダンスを具体的に示した企業はほとんどありませんでした。2020年第1四半期の利益予想は全体で50.5%下方修正され、結果は予想に対してまちまちとなりました。
→時価総額で97.1%に相当する489社が第1四半期の決算発表を終え、このうち323社(66.1%、過去平均は3分の2)で利益が下方修正後の予想を上回りました。最終的に、2020年第1四半期の利益は前期比で49.8%、前年同期比で48.2%減少する見通しです。売上高では484社中290社(60.0%)で予想を上回りましたが、過去最高を記録した2019年第4四半期からは10.0%、2019年第1四半期からは1.9%の減少が予想されます。
→19.5%の企業で発行済株式数が前年同期比で4%以上減少し、EPSが4%以上押し上げられました。企業が自社株買いを縮小(または保留)しているため、今後は前年同期比での影響は弱まる見通しです。自社株買いの縮小は、四半期ベースで発行済み株式数が減少した企業数を見ると明らかです。
個別銘柄
○S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは医療機器メーカーのDexCom(DXCM)と、S&P中型株400指数構成銘柄の宅配ピザチェーンDomino’s Pizza(DPZ)および医薬品関連ソリューションを手掛けるWest Pharmaceutical Services(WST)をS&P 500指数に追加しました。また、同業のAbbVie(ABBV)に買収された製薬会社のAllergen(AGN)、アパレルメーカーのCapri Holdings(CPRI)、油田掘削業者のHelmerich & Payne(HP)はS&P 500指数から除外され、Capri HoldingsとHelmerich & PayneはS&P小型株600指数に追加されました。
注目点
○小売企業に破綻の波が押し寄せており、J.C. Penney(JCP)、J. Crew、Neiman Marcusが相次いで経営破綻を発表した他、Lord & Taylor(1826年にニューヨークで開業した老舗百貨店)は、営業を再開でき次第、在庫の清算に動くことを明らかにしました。
○破綻する企業がある一方で、同じ小売業のWal-Mart(WMT)は第1四半期の米国のeコマース売上高が前年同期比で74%増加し、米国売上高は同10%増となりました。同社はまた、2016年に33億ドルで買収したネット通販のJet.com部門を閉鎖すると発表しました。ホームセンター大手のHome Depot(HD)とLowe’s(LOW)も店舗の営業継続が認められたため(食料品や生活必需品を販売している店舗が対象)、売上高が増加しました(同時に経費も増加しましたが)。百貨店のKohl’s(KSS)の第1四半期決算は、大半の店舗が閉鎖された影響で41%の減収となりました。
○配車サービスのUBER(UBER)は従業員の14%を削減し、同業のLyft(LYFT)も17%削減しました。一方で、自宅でできるエクササイズマシンを販売するPeloton(PTON)は受注が急増し、植物由来の代替肉を製造するBeyond Meat(BYND)も肉の値上がり(食肉工場の閉鎖による)から恩恵を受けました。
○ソーシャルメディアのFacebook(FB)は、7月6日にオフィスを再開する予定ですが、大半の従業員が在宅勤務が可能であるため、希望者は2020年末まで在宅勤務を継続することを認める方針を明らかにしました。他の企業も同様の方針を打ち出すとみられます。
利回り、金利、コモディティ
○米国10年債利回りは4月末の0.62%から0.66%に上昇して月を終えました(2019年末は1.92%、2018年末は2.69%、2017年末は2.41%)。30年国債利回りは4月末の1.27%から1.41%に上昇して月末を迎えました(同2.30%、同3.02%、同3.05%)。
○英ポンドは4月末の1ポンド=1.2555ドルから1.2347ドルに下落し(2019年末は1.3253ドル、2018年末は1.2754ドル、2017年末は1.3498ドル)、ユーロは4月末の1ユーロ=1.0940ドルから1.1104ドルに上昇しました(同1.1172ドル、同1.1461ドル、同1.2000ドル)。円は4月末の1ドル=107.16円から107.82円に下落し(同108.76円、同109.58円、同112.68円)、人民元は4月末の1ドル=7.0623元から7.1373元に下落して月を終えました(同6.9633元、同6.8785元、同6.5030元)。
○原油価格は反発し(4月のマイナス価格から)、4月末の1バレル=19.83ドルから35.32ドルに上昇して月を終えました(同61.21ドル、同45.81ドル、同60.09ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は、4月末の1ガロン=1.870ドルから2.049ドルに上昇して月末を迎えました(同2.658ドル、同2.358ドル、同2.589ドル)。
○金価格は4月末の1トロイオンス=1,692.80ドルから1,743.00ドルに上昇して月を終えました(同1,520.00ドル、同1,284.70ドル、同1,305.00ドル)。
○VIX恐怖指数は4月末の34.15から27.31に低下して月末を迎えました。月中の最高は40.32、最低は25.92でした(同13.78、同16.12、同11.05)。
世界の株式市場
○世界の株式市場は4月に3月の下落(14.61%下落)から反発(10.79%上昇)した後、世界が(地域ごとに徐々に)経済活動の再開に動き始める中で、5月も勢いを保ってさらに上昇しました。感染者数が増加している地域もあります(一部地域では経済再開とともに再び感染者数が拡大)。5月は49市場中41市場が上昇し、49市場が揃って上昇した4月(49市場全てが下落した3月と正反対の結果)から減少しました。国内の経済再開を受けて米国市場が大半の市場を上回るパフォーマンスを上げ、S&Pグローバル総合指数は4.46%の上昇、米国の5.13%上昇を除くと3.63%上昇となりました。
○世界の株式市場は3月の14.61%の大幅安(米国の13.95%下落を除くと15.40%の下落)から4月に10.79%(米国の13.13%上昇を除くと8.00%の上昇)と大きく反発してかなり値を戻した後、5月に全体で4.46%上昇しました(米国を除くと3.63%の上昇)。年初来では10.65%下落(米国の6.45%下落を除くと15.49%の下落)しています。過去1年間では2.33%上昇し、米国の9.21%上昇を除くと、5.32%の下落です。より長期でも米国のパフォーマンスが突出しています。過去2年間では、グローバル市場は2.12%の下落でしたが、米国の9.78%上昇を除くと4.30%の下落でした。過去3年間ではグローバル市場は8.09%上昇しましたが、米国の23.99%上昇を除くと7.55%の下落でした。
→2016年11月16日の米大統領選以降では、グローバル市場は22.15%上昇しましたが、米国の40.08%上昇を除くと4.46%の上昇でした。
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