日米株価はV字回復した。4週間で4割弱の史上最速の暴落の後、10週間で5割と史上最速急騰を遂げ、コロナショック前のピーク比95%の水準に迫っている。ハイテク中心のナスダック指数は既に史上最高値を更新した。
世界的にはコロナパンデミックが依然猛威を振るっており、先進国では戦後最悪の失業増加が止まったばかりである。米国では史上最長の景気拡大が終わり、128カ月ぶりでリセッションが記録された。
その時点での株価跳躍は、尋常ではない。二番底が来るとショートを積み上げていた投資家が大きく踏み上げられ狼狽している。だが、異常な金融緩和によるバブルだと市場を批判する自己正当化は危険である。
冷徹な市場は既に次に来る経済ブームを織り込み始めている。コロナパンデミックはイノベーションの3要素、技術、資本、市場(ニーズ)を見事に揃えてくれた。
パンデミックはリモートワークなどネットデジタル化を一気に促進し、ビジネスモデルとライフスタイルを根底的に変革しつつある。この市場ニーズに対して、5Gをはじめ新技術が解を提供する競争が始まっている。そして、超金融緩和と空前の財政出動、同時に進行する株高が、巨額のリスクキャピタルを提供している。緩慢に進行していた情報ネット革命が、コロナにより一気に堰を切ったような奔流に変わった。アフターコロナの経済風景が一変することは明らかである。
とすれば、株価がコロナ前の水準に戻るどころではない、壮大な長期上昇が今アクセルを伴って始まったというべきである。悲観論者は富を失う前に方針転換を図るべきであろう。
(2020年6月10日記 武者リサーチ「ストラテジーブレティン254号」を転載)
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