S&P500月例レポート(20年4月配信)<2>

<1>の続き

トランプ大統領と政府高官

 ○予想通りに、トランプ大統領はホワイトハウスからの国民向けテレビ演説で、欧州からの米国への入国を30日間禁止すると発表しました。また、(議会と共に)新型コロナウイルスによって打撃を受けた労働者と企業に対する支援を約束しました。

 ○米証券取引委員会(SEC)は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、企業が有価証券報告書の提出期限を45日間延長申請できると発表しました。

 ○トランプ大統領は国防生産法に基づき、General Motorsに対して人工呼吸器の生産を命じる文書に署名しました。これに先立ち、政府とGMの間では協議が続けられていました。

 ○米議会で新型コロナウイルス対策法が可決し、大統領が署名しました。

  ⇒当初の法案では80億ドルの新型コロナ対策費が盛り込まれ、疾病休暇、失業給付の増額、医療補助などに充てられました。

  ⇒上院は過去最大となる2兆ドルの経済対策法を96対0の全会一致で可決し、法案は下院へ送られました。同法案によると、7万5000ドル未満の所得の米国民に1人当たり1200ドルが給付され、さらに上限1000億ドルが医療機関に、3500億ドルが中小企業に、5000億ドルが大企業向けに使われることになります。

  ⇒必要に応じて新たな法案を策定する作業も始まりました。

指名争いを継続するか、撤退するか(ここが思案のしどころ)

 ○バイデン前副大統領がサンダース上院議員に大差をつけてリードしていますが、今後の予備選については見通せない状況が続いています。民主党の指名争いは7月に決着し、大統領選は11月に行われることになっています。

  ⇒現時点で新型コロナの影響が党大会、投票率、予備選挙の日程にも及んでいます。

 ○民主党の候補者指名を争うバイデン氏とサンダース氏は聴衆のいないスタジオのカメラの前で論戦を行い、主に新型コロナウイルス感染への対応策を訴えました。バイデン氏は大差でリードしており、この論戦によっても同氏の優位に変化は見られなかったようです(なお、現時点ではサンダース氏は選挙戦の継続を明言しています)。また、賭けサイトでは(2020年11月に)バイデン氏がトランプ大統領に勝利する確率が上昇しています。

 ○州政府による外出制限措置や「社会的距離」の確保の観点から投票を実施すること自体が問題視されており、幾つかの予備選挙は延期もしくは中止になっています。

 ○民主党の予備選では候補者がほとんど活動できない状態となっており、新型コロナウイルスによって同党の指名争いの話題は隅に追いやられた格好となっています。

新型コロナウイルス関連

 ○国際国際通貨基金(IMF)は新型コロナウイルス感染症対策と加盟国支援のために、500億ドルの融資を用意すると発表しました。

 ○渡航制限措置の継続により、企業は出張やカンファランスを制限しています。また一部の国では公的機関を一部閉鎖し、(入国を含む)旅行を制限し、大半の学校が休校となっています。

 ○航空各社の損失額は当初600億~1200億ドルと推計されていました。しかしながら、こうした見通しは新型コロナウイルスの感染拡大状況と消費者の反応によって大きく変動すると思われます。

 ○世界保健機構(WHO)は新型コロナウイルスの感染拡大をパンデミックに相当すると宣言しました。

 ○感染が最初に確認された中国では新規感染者が減少しつつあります。中国政府は感染の第2波発生の可能性を警戒し、外国人の入国を拒否しました。

 ○米国内の動き

  ⇒トランプ大統領は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、国家非常事態宣言を出しました。

  ⇒米国はカナダとメキシコとの国境を閉鎖しましたが、貿易は継続しています。

  ⇒カリフォルニア州では4000万人の州民に対して外出禁止措置(自宅隔離)を導入し、生活必需品の購入以外の目的での外出を制限しました。ニューヨーク州(人口2000万人)とイリノイ州(同1300万人)も同様の措置に踏み切り、全米のほぼ半数(全人口3億2900万人のうちの1億5800万人)がロックダウン(都市封鎖)下に置かれています。

  ⇒ニューヨークは新型コロナウイルス感染拡大の中心地となりました。一部の市民は州外に脱出しましたが、彼らがウイルスに感染している可能性もあります。幾つかの州ではニューヨーク州からの移動者に対して自主隔離措置を要請しました。

各国中央銀行の動き

 ○米国10年国債と同30年国債の利回りは共に過去最低を更新し、それぞれ0.38%と0.69%を付けました。30年国債利回りの低下は住宅市場にはプラス材料となるかもしれません。人々が目下のウイルス感染状況を恐れて逃げ出さなければの話ですが。

 ○FRBが公表した地区連銀経済報告(ベージュブック、調査対象期間は2020年1月7日-2月24日)では新型コロナウイルスの問題が重点的に取り上げられ、その言及回数は貿易を上回りました。現時点ではウイルスの潜在的影響に関してその兆候が確認されるに過ぎないとしています。また、同報告書では米国の経済成長は総じて緩やかだと評価しています。

 ○イングランド銀行は政策金利を0.15%引き下げて0.10%とし、企業向け貸出を促す金融機関への資金供給策を強化することを決定しました。

 ○アイスランド中央銀行も政策金利を0.50%引き下げて2.25%としました。

 ○イタリアでも280億ドル規模の経済対策パッケージが承認されました。

 ○ECBは中銀預金金利を据え置いたものの(現在はマイナス0.50%)、量的緩和措置を拡大し、年末までの時限措置として月間購入額を約160億ドル増額しました(現在の月間購入額は250億ドル)。

 ○ノルウェーの中央銀行は政策金利を0.50%引き下げて1.00%としました。また、ノルウェーはほとんどの国を入国禁止措置の対象としています。

 ○中国人民銀行は一部の市中銀行に課している預金準備率を0.50%引き下げて1.00%とし、790億ドルの資金を中国経済に注入しました。

 ○その他の中央銀行による利下げも相次ぎました。オーストラリア(0.25%引き下げて0.25%)、ブラジル(2月に0.25%引き下げて4.25%、3月に0.50%引き下げて3.75%)、インドネシア(0.25%引き下げて4.50%)、ニュージーランド(0.75%引き下げて0.25%)、フィリピン(0.25%引き下げて3.75%)、韓国(0.50%引き下げて0.75%)、台湾(0.25%引き下げて1.125%)

 ○ECBは8180億ドルの資産購入プログラムの導入を発表しました。一方、FRBはコマーシャルペーパー(CP)や地方債も買い入れ対象とする措置に踏み切ることで流動性供給量を拡大しました。

 ○新型コロナウイルス対策として、手始めにニューヨーク連銀が2020年3月12日に追加のレポオペを実施しました(従来の1000億ドルから最低1500億ドルに増額)

  ⇒FRBは資産購入政策を通じて1.5兆ドルを米国経済に注入すると発表しました。

  ⇒米国では日曜日に緊急利下げが発表されました(3月15日に1.00%引き下げられて0%~0.25%となりました)。

  ⇒3月23日にFRBは無制限の量的緩和の実施を発表しました。「雇用と所得の喪失を抑制し、混乱収束後の速やかな景気回復を促すために、公的・民間の両セクターにおいて大胆な取り組みが行われなければならない」と説明しています。

<3>へ続く

 


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配信元: みんかぶ株式コラム