ベネ・ワン Research Memo(9):東京オリンピックなどが「サービスの流通創造」を実現する誘発要因に(2)

配信元:フィスコ
投稿:2019/12/10 15:09
■中長期の成長戦略

2. 決済事業構想
ベネフィット・ワン<2412>が描く決済事業は、「給与」まで視野に入れ、これまで培った顧客基盤で競争優位性を発揮することを構想している。通信事業者や新興ネット企業は、スマートフォンとバーコード、QRコードなどを利用したキャッシュレス決済を軌道に乗せるため、大規模なポイント還元キャンペーンを打っている。同社は、既存の顧客ベースを活用したキャッシュレス決済を企図している。福利厚生サービスで築いた会員企業に対する運用実績をベースに、従業員のウォレットへのチャージや給与天引きの提案を行う。カフェテリアプランの運用実績が、給与天引きでのサービス提供提案に優位性を発揮するだろう。同社の収益源に、ポイント付きプランの販売だけでなく、パートナー企業からの決済手数料が加わる構想である。

同社が取り扱う流通総額の変数は、会員数、UU率とキャッシュレス決済比率により構成される。現在は、総会員数が781万人、今後、3つの変数はいずれも増加傾向をたどり、流通総額を加速的に拡大するため、次の成長分野となる決済事業の基盤づくりとなるだろう。

(1) ベネ・ウォレット構想
同社は、スマートフォンを利用したプリペイド式決済アプリ「ベネ・ウォレット」を、従業員のポイントや給与と紐付けることで、福利厚生サービスの利便性改善につなげる。巨額の販促費を使って新たに顧客を開拓する必要がなく、決済事業への参入を目指す他社と一線を画すビジネススキームと言えるだろう。利用者が「ベネ・ウォレット」により「ベネフィット・ステーション」のパートナー企業やベネ・ウォレット加盟店と決済した場合は、それらの企業から決済手数料をもらうこととする。

(2) 給与天引きプラットフォーム構想
厚生労働省は、日本のキャッシュレス化を後押しする狙いで、企業などが従業員にデジタルマネーで給与を支払えるよう規制を見直す方針でいる。現行の労働基準法は、労働者への給与の支払いを「通貨で直接、労働者に全額支払うこと」と規定し、例外として銀行振込を認める形となっている。現在、給与は銀行口座に振り込まれ、そこから出金や口座振替が行われる。デジタルマネー払いが追加されれば、従業員の選択の上、企業は銀行を介さずに指定されたペイロールカードや決済アプリに給料を入金することができる。デジタルマネーの給与送金は、1回当たり100万円が上限となる。決済サービスを提供する会社は、「資金移動業者」として金融庁に登録した上で、厚労相の指定を受ける必要がある。2019年6月時点で、64社が「資金移動業者」として登録済みである。政府は当初、2019年度以内の規制緩和を目指していたが、制度設計の具体化で手間取り難しくなった。ただし、「Society 5.0」の実現を目指していることから方向性に問題はない。

同社は、会員の従業員が毎月支払う電気、ガス、水道、定期購読などを給与天引きで決済するサービスを考えている。同制度を利用する会員企業の従業員には、割引価格を適用して価格面での優位性を訴求していくことを検討している。同社は、決済手数料を受け取る。

(3) 購買・精算代行サービス — 集中購買による業務効率化
BtoBでは、2019年3月期から企業の支店ごとにバラバラに届く電気、ガス、水道などの請求書を、同社がハブの役割を担い、一本に集約し、精算代行をする支店小口精算受託を開始している。2018年10月に、新組織「購買・精算代行事業部」を発足した。将来的には、同社が構想しているBtoBモールを利用することで、オンライン化・決済代行の一本化を実現させ、クライアントとサプライヤーともに管理にかかる時間と費用を削減することを目指す。それに伴い、同社では決済代行事業の収益化に着手している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)

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配信元: フィスコ

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