【来週の注目材料】ブレグジットついに決着へ?<英総選挙>

著者:MINKABU PRESS
投稿:2019/12/07 17:10
 今週12日に英下院の総選挙が行われます。2016年の国民投票で決まった英国のEU離脱。メイ首相(当時)がEUと合意した離脱案は、英議会を通過できず、延長の末に廃案に。メイ首相の辞任を受けて誕生したジョンソン首相によるEUとの離脱合意案も、メイ前首相時代よりは支持を集めたとはいえ、連立を組んでいたDUP(アイルランド民主統一党)の反対もあって可決できず、今回の総選挙となりました。
 ジョンソン首相は自身の離脱案に反対する議員を排除したこともあり、保守党が単独で過半数を取れば、1月31日の離脱期限までに英議会を通過し、EUとの合意のもとに秩序だった離脱が可能になります。
 一方で、国民投票のやり直しを求めている最大野党の労働党、EU離脱反対を主張する自由民主党、スコットランド国民党、合意を無視した離脱強行を主張するブレグジット党など、諸勢力もそれぞれ支持を受けており、今回の選挙戦、世界中の注目を集めるものとなっています。
 メイ首相の下で、ブレグジット問題がまとまる様相を見せず、メイ首相の辞任に至った5月から6月にかけての時点では、保守党の支持率は20%を割り込むような動きを見せ、労働党や自由民主党、さらには欧州議会選挙で躍進したブレグジット党などが支持率で上回るような状況も見られました。
 しかし、ジョンソン首相の下で、EUと新たな合意を結び、党内の反対勢力を排除して党の姿勢をしっかりと固め、ブレグジットへ向かう姿勢がはっきりとする中で、急速に党勢が回復。40%を超える支持率を確保する状況となっています。前回2017年の選挙での全国得票率が42.3%なので、ほぼその時の勢いを取り戻した格好です。

 一方、保守党の支持率回復に押され、一時大きく支持率を落としていた野党第一党の労働党は、インフラの国有化、富裕層への課税強化などの主張が一定の支持を集め、支持率がかなり回復。直近で33%~35%前後と、2017年の総選挙で得た40.0%には届かないものの、他を引き離しての第2党という状況です。
 
 ブレグジットに対する反対姿勢を強く示し、9月ごろには支持率が20%を超えていた自由民主党は、労働党の支持率回復に押されて12%~15%前後の支持率に。欧州議会選挙でトップに立つなど、躍進が見られた強硬的なブレグジット推進派のブレグジット党は3%前後と勢いを完全に失っています。

 ただし、ここで気を付けたいのが、英国の下院は単純小選挙区制度で、全国的な支持率がそのまま議席に結び付かないことです。極端な話すべての選挙区で得票数2位だと、全体の得票数はかなり多いことになりますが、議席はゼロです。
 今回でみると、保守党は、単独過半数を確保できなかった前回2017年の選挙で得た得票率と、直近の保守党支持率が大きく変わるわけではありませんが、ライバルである労働党が党勢を少し落としていることで選挙戦ではかなり優位に立ち、結果は大きく変わりそうです。
 また、支持率自体は3%前後でブレグジット党とそれほど変わらないスコットランド国民党が、ブレグジット党どころか、自由民主党をも大きく上回る議席を獲得する見込みとなっていたり、支持率自体は1%にも満たないプライドカムリが4議席程度の議席を確保する見込みとなっていることなど、全国的な支持は低くても、その地域で強い政党が議席を確保する制度になっている点にも要注意です。

 これらの状況を踏まえて議席数予想ですが、前回選挙でハングパーラメント(どの政党も単独過半数を確保できていない状況)をしっかりと予測し、今回も市場が注目している英調査YouGovによるMRP方式での調査(11月27日時点)では、保守党は359議席(得票見込み43%)と単独過半数325議席を大きく上回る圧勝見込みに。労働党は211議席(得票見込み32%)、以下スコットランド国民党43議席、自由民主党13議席、プライドカムリ4議席、緑の党1議席、ブレグジット党は議席獲得できず、議長分1議席(英国では議長になる予定の議員に対しては対立候補を立てず、無風で当選させる不文律があります)となっています。これに北アイルランドの18議席が加わって650議席です。
 英議席予測サイトElectralCalculasによる12月3日までの最新調査を基にした数字では保守党は339議席(得票見込み42.7%)、労働党は229議席(得票見込み32.9%)、以下スコットランド国民党44議席、自由民主党15議席、プライドカムリ4議席、緑の党1議席、ブレグジット党は議席獲得できず、議長分1議席と、少し保守党の議席数が少なめですが、こちらも単独過半数をしっかりと上回っています。
 なお、英下院の総数は650ですが、議長は投票に加わらないため、単独過半数は理論上325議席。さらに北アイルランドで7議席前後を確保するシンフェイン党は議会登壇に必要な英女王への宣誓を拒否して議会に参加することはありませんので、その分を引くと事実上は322議席程度が単独過半数となります。そう考えると保守党の単独過半数確保のハードルはより低くなります。

 こうした状況から、英保守党が単独過半数を獲得する可能性はかなり高いと考えられます。
 ジョンソン首相は保守党候補者すべてに対して、自身のEU離脱法案への賛成を取り付けていますので、選挙後にEU離脱法案は下院を通過予定。その後上院(貴族院)での賛成を経て1月31日までに成立となります(事実上反対は出来ないことになっています、もし反対や修正を行っても時間がかかるだけで、下院で可決したままの形で成立)。

 ただ、小選挙区の議席予想は相当難しく(2017年も保守党単独過半数を確保と予想したメディアが多数ありました)。市場では結果が出るまで慎重姿勢を崩していません。既にある程度は保守党勝利を織り込んでいますが、予想通り勝利した場合でもある程度のポンド買いが入る可能性があります。保守党の第2党転落はさすがに考えにくいですが、期待ほど議席数が伸びず、ハングパーラメント状態になると、大きなポンド売りが見込まれます。

MINKABU PRESS 山岡和雅

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