ECBの追加緩和でユーロが反発した理由

著者:西田明弘
投稿:2019/09/13 15:41

「ドラギ・マジック」は不発!?

12日のECB理事会で決定された追加緩和は、市場の期待通リ、あるいはそれを上回る思い切った内容でした。発表直後にユーロは大きく下落したものの、すぐに反転して発表前の水準を上回りました。

いったん材料出尽くしとなったことに加えて、25人のメンバーのうち5人が債券を購入する量的緩和に反対したことが明らかになったからです。また、量的緩和は無期限とされましたが、従来のルールに従う限り、1年程度で限界がやってくることも材料視されたのかもしれません。

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ユーロが反発し、ユーロ圏主要国の国債利回りが上昇するなど、(一時的にせよ)市場の反応はECBが期待したであろうものと逆でした。その意味で、いわゆる「ドラギ・マジック」は今回不発に終わったのかもしれません。ドラギ総裁は10月31日(現時点のブレグジット期日!)に退任し、11月1日からラガルド前IMF専務理事が新しい総裁に就任します。

ラガルド氏はこれまでの発言から比較的ハト派とみられています。ECB内部をまとめてドラギ総裁が主導してきた金融緩和路線を継承していくのか、さらには「ラガルド・マジック」はあるのか。ラガルド新総裁の手腕が大いに注目されるところです。

ECBが発表した追加緩和策

・0.1%の利下げ(中銀への預金金利を-0.4%から-0.5%に)
・金利階層化(一部の預金をマイナス金利の対象外に)
・フォワードガイダンス強化(特定時期への言及をやめ、「インフレが目標にハッキリ到達するまで」との文言を加えた)
・量的緩和再開(11月1日より毎月200億ユーロの債券を購入。利上げ開始直前まで継続)
・TLTRO緩和(目的限定長期貸出の金利を引き下げ、期間を2年から3年に延長)

国債購入のルール

ECBが購入できる国債はそれぞれの発行残高の30%以内というルールがあり、それに従えば9-12か月で限界がくるとの分析もあるようです。

量的緩和への反対

未確認の報道によると、量的緩和に反対したのは、25名のメンバーのうち、ドイツ、フランス、オランダの各中銀総裁と本部の理事2名の計5名。ただし、投票は行われておらず、ドラギ総裁は会見で、「十分な賛成があったので、敢えて投票は行わなかった」と述べました。

国債市場の反応

追加緩和を受けて国債利回りが上昇した主な国は、ドイツ、フランス、オランダなど、いわゆる北部の財政が健全な国。ECBの国債購入がユーロ圏内の財政規律を弱めるとの懸念が反映されたのでしょう。逆に、国債利回りが低下した主な国は、スペイン、ポルトガル、イタリアなど、いわゆる南部の財政状況が悪い国。ECBの国債購入がそれらの国債の需給を改善させるとの期待につながったようです。
西田明弘
マネ―スクエア チーフエコノミスト
配信元: 達人の予想