S&P500月例レポート(2019年9月配信)<後編>

<中編>から続く

●利回り、金利、コモディティ

 ○米国30年国債利回りは史上初めて2%を割り込み、一時1.90%まで低下しましたが、1.97%で月を終えました(2018年末は3.02%)。

  ・2007年以来となる米国の10年国債利回りと2年国債利回りの逆転が見られたことで、株式の売りプログラムが発動されました。10年国債利回りは1.50%(同2.68%、月中の最低は1.48%)、2年国債利回りは1.51%(同2.50%)で月末を迎えました。

 ○英ポンドは7月末の1ポンド=1.2154ドルから1.2164ドルに上昇し(2018年末は1.2754ドル、2017年末は1.3498ドル、2016年末は1.2345ドル)、ユーロは7月末の1ユーロ=1.1072ドルから1.0995ドルに下落しました(同1.1461ドル、同1.2000ドル、同1.0520ドル)。円は7月末の1ドル=108.78円から106.24円に上昇し(同109.58円、同112.68円、同117.00円)、人民元は7月末の1ドル=6.8843元から一時は7.1704元まで下落し、最終的に7.1567元で8月を終えました(同6.8785元、同6.5030元、同6.9448元)。

 ○原油価格は7月末の1バレル=58.01ドルから下落して55.07ドルで月を終えました(同45.81ドル、同60.09ドル、同53.89ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は7月末の1ガロン=2.798ドルから2.661ドルに下落して月末を迎えました(同2.358ドル、同2.589ドル、同2.364ドル)。

 ○金価格は7月末の1トロイオンス=1,426.30ドルから1,532.60ドルに上昇して月を終えました(同1,284.70ドル、同1,305.00ドル、同1,152.00ドル)。

 ○VIX恐怖指数は7月末の16.12から18.98に上昇して月末を迎えました。月中の最高は24.81、最低は13.73でした(同25.42、同11.05、同14.04)。

●世界の株式市場

 ○世界の株式市場は8月に軒並み下落に転じ、48市場のうち上昇したのはわずか3市場でした。最大の原因は世界経済の減速にあり、各国中央銀行は緩和姿勢や刺激策を打ち出しています(またはそうした方針を示唆)。貿易・関税問題も景気減速の要因の一つとなっています。

 世界の株式市場は全体で、7月の0.10%上昇、6月の6.20%の大幅上昇に対し、8月は2.68%下落しました。米国市場の2.22%下落を除くと、グローバル市場は3.22%の下落でした。過去3ヵ月間では、グローバル市場は3.46%上昇しましたが、米国の5.90%上昇を除くと0.68%の上昇でした。年初来では、グローバル市場は11.70%の上昇となり、米国の16.52%の上昇を除外すると、6.41%の上昇でした。より長期的な指標でも米国のアウトパフォームが示され、過去1年間では、グローバル市場は3.43%の下落となり、米国の0.66%の下落を除くと、6.52%の下落でした。過去2年間のグローバル市場は米国(17.28%上昇)を含めると5.85%の上昇、米国を除くと5.46%の下落となっています。過去3年間では21.68%の上昇、米国(33.47%上昇)を除くと9.76%の上昇でした。

 ○8月にS&Pグローバル総合指数の時価総額は1兆5,130億ドル減少しました(7月は240億ドル増、6月は3兆1,480億ドル増)。米国以外の市場の時価総額は8月に8,150億ドル減少し(同3,500億ドル減、同1兆3,290億ドル増)、米国市場は6,990億ドル減少しました(同3,740億ドル増、同1兆8,190億ドル増)。

 ○8月のまとめ

  ・世界の株式市場は8月に2.68%下落しました。米国市場は2.22%下落し、米国を除くグローバル市場は3.22%下落しました。過去3ヵ月間では、グローバル市場は3.46%の上昇、米国の5.90%の上昇を除くと、0.68%の上昇でした。年初来では、グローバル市場は11.70%の上昇、米国の16.52%の上昇を除くと、6.41%の上昇でした。過去1年間でみると、グローバル市場は3.43%下落し、米国の0.66%の下落を除くと、6.52%の下落となっています。

  ・新興国市場は8月に4.77%下落し、過去3ヵ月間では1.24%下落、年初来では3.90%上昇、過去1年間では4.11%の下落となりました。

  ・先進国市場は8月に2.44%下落(米国を除くと2.77%下落)、過去3ヵ月間では4.02%上昇(同1.24%上昇)、年初来では12.63%上昇(同7.13%上昇)、過去1年間では3.33%の下落(同7.14%下落)となっています。

 ○値下がりしたセクターが値上がりしたセクターより多く、11セクター中3セクターが上昇しました(7月は5セクター、6月は全11セクターが上昇)。パフォーマンスが最高のセクター(公益事業、2.13%上昇)と最低のセクター(エネルギー、8.06%下落)の騰落率の差は10.20%と(過去1年間の平均は7.37%)、7月の5.65%から拡大し、年初来では26.34%(7月末時点は20.76%)となりました。

 ○新興国市場は7月の1.20%下落の後(6月は4.97%上昇)、4.77%安と2ヵ月連続で下落しました。過去3ヵ月間では1.24%の下落、年初来では3.90%の上昇、過去1年間では4.11%の下落となっています。過去2年間の騰落率は7.56%の下落、過去3年間では11.99%の上昇となりました。

  ・8月は23市場のうち上昇したのは1市場だけでした。7月は8市場でした。パフォーマンスが最も高かったのはエジプトで、8月は10.52%上昇、年初来では27.33%上昇しました。2番目はメキシコで、8月は1.24%の下落、年初来では0.87%の上昇となり、3番目はタイで、8月は2.35%の下落、年初来では14.43%の上昇となりました。パフォーマンスが最低だったのはトルコで、8月は9.65%の下落、年初来では1.70%の下落となっています。次いでパフォーマンスが振るわなかったのはブラジルで、8月は9.36%の下落、年初来では8.21%の上昇となりました。

 ○先進国市場は8月に全体で2.44%下落し、米国を除くと2.77%下落しました。過去3ヵ月間では4.02%の上昇(米国を除くと1.24%の上昇)、年初来では12.63%の上昇(同7.13%上昇)、過去1年間では3.33%の下落(同7.14%下落)となりました。過去2年間では7.51%上昇しましたが、米国を除くと4.87%下落しており、過去3年間では22.84%の上昇、米国を除くと9.23%の上昇となりました。

  ・8月は25市場のうち2市場が上昇しました。対して、7月は7市場が上昇していました。パフォーマンスが最高となったのはデンマークで、8月は1.06%の上昇、年初来では10.91%の上昇となっています。2番目はスイスで、8月は0.11%の上昇、年初来では18.79%の上昇となりました。パフォーマンスが最低だったのは香港で、8月は8.32%の下落、年初来では0.25%の下落となりました。次いで振るわなかったのがルクセンブルグで、8月は8.04%の下落、年初来では18.45%の下落となりました。

   ◇注意すべき点として、日本は1.44%の下落(年初来では5.05%上昇)、ドイツは2.99%の下落(同4.80%上昇)、英国は5.26%の下落(同2.64%上昇)となりました。

●S&P 500

 ○S&P 500は月末時点で2,926.46と、7月末の2,980.38から1.81%下落しました(配当込みのトータルリターンはマイナス1.58%)。7月は1.31%の上昇(同プラス1.44%)でした。同指数は年初来では16.74%(同プラス18.34%)、過去1年間では0.86%(同プラス2.92%)上昇しています。

 ダウ平均は7月末の2万6864.27ドルから1.72%下落し(同マイナス1.32%)、2万6406.28ドルで月を終えました。7月は0.99%の上昇(同プラス1.12%)でした。同指数は年初来では13.19%(同プラス15.14%)、過去1年間では1.69%(同プラス4.12%)上昇しています。

 S&P 500の日中ボラティリティ(日中の高値と安値の差)は7月の0.65%(6月は0.78%)から1.43%に上昇し、年初来では0.93%となりました(7月末時点は0.86%)。同指標は、2018年は1.21%、2017年は0.51%(1962年以降の最低、平均は1.43%)でした。出来高は7月の前月比10%減の後同9%増加し(営業日数調整後)、前年同月比16%増でした。前日比で1%以上の変動を記録した日数は再び拡大し、7月の22営業日中わずか1日(1.02%の下落)に対して、22営業中7日で1%以上上昇、4日で1%以上下落(そのうち3日は2%以上下落)となりました。年初来では168営業日中30日(上昇が18日、下落が12日、7月末時点は146営業日中19日)となっています。日中の変動率が1%以上となった日数は、7月のわずか2日に対して、22営業日中16日となりました(年初来では168営業日中62日、2018年は110日)。

●セクター間のリターンのばらつきは8月に拡大し、11セクター中3セクターが上昇しました(7月は7セクター、6月は全11セクターが上昇)。パフォーマンスが最高のセクター(公益事業、4.66%上昇)と最低のセクター(エネルギー、8.73%下落)の騰落率の差は13.39%(1年平均は10.26%)と、7月の5.13%から拡大しました。この騰落率の差は年初来では28.49%となっています(7月末時点は24.95%)。8月は明るい基調で月末を迎えたものの、リスクオフモードが大勢となり、安全性が重視される中、公益事業セクターが(市場全体が下落する中)4.66%上昇でパフォーマンストップとなりました。同セクターは年初来では17.63%上昇しています。これに僅差で続いたのが不動産で、同セクターは4.61%上昇し、年初来の上昇率を26.04%としました。消費関連セクターのパフォーマンスは大半のセクターを上回りました。生活必需品が1.64%上昇し、年初来の上昇率を19.04%とした一方、一般消費財は1.43%下落したものの、なお指数全体を上回り、年初来で20.34%上昇しています。7月に7.62%上昇でパフォーマンストップだった情報技術は1.70%下落しましたが、年初来ではなお28.02%上昇で騰落率トップの座を維持し、2016年11月の米大統領選以降でも74.25%上昇しています。

 8月もパフォーマンスが最下位となったのはエネルギーセクターで、同セクターは8.73%下落し、年初来でも0.47%下落と、騰落率はマイナスに落ち込み、S&P 500指数セクターの中で唯一下落しています。同セクターは2016年11月の米大統領選以降で17.32%下落しています(S&P 500指数セクターの中で唯一下落)。金融は金利が大きく低下する中、5.07%下落しました。同セクターは年初来では12.57%上昇しています。ヘルスケアは0.69%安と下落をわずかにとどめ、年初来で4.55%上昇しています。

●個別銘柄の騰落状況を見ると、8月は値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を上回りました。8月の値上がり銘柄数は193銘柄(平均上昇率は5.11%)と、7月の292銘柄(同4.40%)、6月の456銘柄を下回りました。10%以上上昇した銘柄は、7月の26銘柄、6月の156銘柄から15銘柄に減少し(同13.71%)、25%以上上昇した銘柄はありませんでした(7月もゼロ)。一方、値下がり銘柄数は312銘柄と(平均下落率は8.60%)、7月の213銘柄、6月の46銘柄から増加しました。10%以上下落した銘柄は102銘柄と(平均下落率は15.93%)、7月の18銘柄、6月の1銘柄から増加し、10銘柄が25%以上下落しました(7月はゼロ)。

 過去3ヵ月間では、345銘柄が上昇し、そのうち165銘柄が10%以上上昇した一方、159銘柄が下落し、そのうち61銘柄が10%以上下落しました。年初来では、値上がり銘柄数が381銘柄で(平均上昇率は25.02%、7月末時点は430銘柄)、310銘柄(同352銘柄)が10%以上、162銘柄(同173銘柄)が25%以上上昇した一方、値下がり銘柄数は119銘柄で(平均下落率は14.53%、7月末時点は70銘柄)、66銘柄(同31銘柄)が10%以上、23銘柄(同4銘柄)が25%以上下落しました。
 

 

 

 

 

 

 
[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト

※このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはサイトをご参照ください。
HTTP://WWW.SPINDICES.COM/RESOURCE-CENTER/THOUGHT-LEADERSHIP/MARKET-COMMENTARY/

[免責事項]
著作権(C) 2019年 S&Pグローバルの一部門であるS&Pダウ・ジョーンズ・インデックスLLC。不許複製、Standard & Poor’s、S&P、S&P 500、は、S&Pの一部門であるスタンダード・アンド・プアーズ・フィナンシャル・サービシーズLLC(以下「S&P」)の登録商標です。LATIXX、MEXIC ○TITANS及びSPCIは、S&Pグローバル一部門であるスタンダード・アンド・プアーズ・フィナンシャル・サービシーズLLC(以下「S&P」)の商標です。「ダウ・ジョーンズ」は、ダウ・ジョーンズ・トレードマーク・ホールディングズLLC(以下「ダウ・ジョーンズ」)の登録商標です。商標は、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスLLCにライセンス供与されています。本資料の全体または一部の再配布、複製、そして(または)複写を書面による承諾なしに行うことを禁じます。


みんなのETF
配信元: みんかぶ株式コラム