■中長期成長戦略
2. 新商材『STREAL』事業の確立
(1) 『STREAL』の特長
『STREAL』はグローセル<9995>が日立製作所から製造・販売権を取得した半導体ひずみセンサーの商品ブランドだ。『STREAL』は1)超小型、2)高精度、3)常時計測、という3つの特長を有し、加えて価格競争力も高い。
サイズは2.5mm角で、この中にセンサー素子、制御回路、アンプ回路、A/Dコンバーターが集積されている。現状、これと同様のものは大型辞書や百科事典並みのサイズがあり、差は歴然としている。性能的には、1kmの物体が1mm伸縮するひずみ量を計測できる超高精度を実現しており、物理変化に応じたモジュール形状を使うことで、加重、圧力、トルク、張力、せん断力、低周波振動など幅広い物理的変化を計測可能となっている。常時計測という特長は低消費電力という特性によって実現されている。常時計測はセンサーに期待される役割を考えれば極めて重要な要素だが、現実的には電源供給がネックとなるケースも多い。このセンサーはその課題を克服している。
こうした高機能が評価され、日本政府が主宰する第7回「ものづくり日本大賞」(2018年1月15日発表)において内閣総理大臣賞を受賞した。また、(株)産業タイムズ社主催の「半導体・オブ・ザ・イヤー2019」では半導体デバイス部門で優秀賞を受賞した。
(2) 『STREAL』の事業化の進捗状況
『STREAL』の事業化に当たって同社は、これまでと少し異なる戦略を採用している。ポイントは2つで、1つは同社がファブレスメーカーとして、メーカー機能を果たすということだ。もう1つは販売方法(あるいは製品形態)において、このセンサーを半導体チップとして販売するのではなく、モジュール化、コンポーネント化して販売する方針であることだ。最終的にはソリューション提案(一例としては、半導体センサーというモノを売るのではなく、それを利用した監視サービスの提供などが想定できる)を目指している。
同社は『STREAL』を2018年2月に発表し、同年4月にセンサーモジュールとして初出荷を果たした。最初の用途は廃棄物処理装置向けで、“材料投入⇒醗酵検知⇒たい肥排出⇒材料投入”のサイクルを自動化することに貢献している。この用途は同社自身による開発ではなく、ユーザーからの打診から生まれたものだ。『STREAL』のポテンシャルの高さを暗示する好例と言えるだろう。
前述のように、同社は『STREAL』の加工度を高めた(すなわち、同社の付加価値分を高めた)状態での販売を計画している。2019年3月期は半導体チップと基盤実装用のコネクタを一体化したセンサーモジュールとして販売したが、2020年3月期はさらに加工度を上げ、無線通信デバイスと組み合わせてネットワーク対応を可能にするなどしたコンポーネントとしての販売に乗り出す方針だ。同時に構造解析や設計技術等についても開発・蓄積を進め、利用範囲を広げ、市場性を高める方針だ。
(3) 収益見通し
同社は『STREAL』について、開発のみならずマーケティングの面でも綿密なプランに基づいて進めているおり、製品開発と用途開発及びそれに基づく売上高を網羅したロードマップができているもようだ。
それによれば、初年度の2019年3月期に1億円以下だった『STREAL』の売上高は、2年目の2020年3月期は5億円程度に拡大することを目標としている。2021年3月期以降も徐々に売上高を伸ばし、新中期経営計画『SSG 2021』の最終年度である2022年3月期には15億円~20億円の売上高を想定している。
しかし本格的に売上高が拡大するのは2023年3月期になる見通しだ。あくまでも計画値ではあるが、これらの数値は決して願望に留まる類のものではなく、販売先となる市場や顧客の裏付けがある、確度の高い想定に基づいているもようだ。
利益については、同社はかねてから『STREAL』では伝統的商社ビジネスの営業利益とは比較にならない高い利益率が期待できるとしていた。その実現時期がいつ頃になるのか、現時点では明らかにされていない。1つのポイントは同社がファブレスメーカーという点だ。生産設備を自前で持たず、減価償却費の負担などがないため、売上高が一定水準を超えてくれば、所期の利益率が比較的早い時期に実現される可能性があると弊社ではみている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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2. 新商材『STREAL』事業の確立
(1) 『STREAL』の特長
『STREAL』はグローセル<9995>が日立製作所から製造・販売権を取得した半導体ひずみセンサーの商品ブランドだ。『STREAL』は1)超小型、2)高精度、3)常時計測、という3つの特長を有し、加えて価格競争力も高い。
サイズは2.5mm角で、この中にセンサー素子、制御回路、アンプ回路、A/Dコンバーターが集積されている。現状、これと同様のものは大型辞書や百科事典並みのサイズがあり、差は歴然としている。性能的には、1kmの物体が1mm伸縮するひずみ量を計測できる超高精度を実現しており、物理変化に応じたモジュール形状を使うことで、加重、圧力、トルク、張力、せん断力、低周波振動など幅広い物理的変化を計測可能となっている。常時計測という特長は低消費電力という特性によって実現されている。常時計測はセンサーに期待される役割を考えれば極めて重要な要素だが、現実的には電源供給がネックとなるケースも多い。このセンサーはその課題を克服している。
こうした高機能が評価され、日本政府が主宰する第7回「ものづくり日本大賞」(2018年1月15日発表)において内閣総理大臣賞を受賞した。また、(株)産業タイムズ社主催の「半導体・オブ・ザ・イヤー2019」では半導体デバイス部門で優秀賞を受賞した。
(2) 『STREAL』の事業化の進捗状況
『STREAL』の事業化に当たって同社は、これまでと少し異なる戦略を採用している。ポイントは2つで、1つは同社がファブレスメーカーとして、メーカー機能を果たすということだ。もう1つは販売方法(あるいは製品形態)において、このセンサーを半導体チップとして販売するのではなく、モジュール化、コンポーネント化して販売する方針であることだ。最終的にはソリューション提案(一例としては、半導体センサーというモノを売るのではなく、それを利用した監視サービスの提供などが想定できる)を目指している。
同社は『STREAL』を2018年2月に発表し、同年4月にセンサーモジュールとして初出荷を果たした。最初の用途は廃棄物処理装置向けで、“材料投入⇒醗酵検知⇒たい肥排出⇒材料投入”のサイクルを自動化することに貢献している。この用途は同社自身による開発ではなく、ユーザーからの打診から生まれたものだ。『STREAL』のポテンシャルの高さを暗示する好例と言えるだろう。
前述のように、同社は『STREAL』の加工度を高めた(すなわち、同社の付加価値分を高めた)状態での販売を計画している。2019年3月期は半導体チップと基盤実装用のコネクタを一体化したセンサーモジュールとして販売したが、2020年3月期はさらに加工度を上げ、無線通信デバイスと組み合わせてネットワーク対応を可能にするなどしたコンポーネントとしての販売に乗り出す方針だ。同時に構造解析や設計技術等についても開発・蓄積を進め、利用範囲を広げ、市場性を高める方針だ。
(3) 収益見通し
同社は『STREAL』について、開発のみならずマーケティングの面でも綿密なプランに基づいて進めているおり、製品開発と用途開発及びそれに基づく売上高を網羅したロードマップができているもようだ。
それによれば、初年度の2019年3月期に1億円以下だった『STREAL』の売上高は、2年目の2020年3月期は5億円程度に拡大することを目標としている。2021年3月期以降も徐々に売上高を伸ばし、新中期経営計画『SSG 2021』の最終年度である2022年3月期には15億円~20億円の売上高を想定している。
しかし本格的に売上高が拡大するのは2023年3月期になる見通しだ。あくまでも計画値ではあるが、これらの数値は決して願望に留まる類のものではなく、販売先となる市場や顧客の裏付けがある、確度の高い想定に基づいているもようだ。
利益については、同社はかねてから『STREAL』では伝統的商社ビジネスの営業利益とは比較にならない高い利益率が期待できるとしていた。その実現時期がいつ頃になるのか、現時点では明らかにされていない。1つのポイントは同社がファブレスメーカーという点だ。生産設備を自前で持たず、減価償却費の負担などがないため、売上高が一定水準を超えてくれば、所期の利益率が比較的早い時期に実現される可能性があると弊社ではみている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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