S&P500月例レポート(2019年7月配信)<前編>

S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。

THE S&P 500 MARKET: 2019年6月
●第2四半期の株式市場は乱高下ながら過去最高値を更新

 第2四半期は、相場が目まぐるしく変化する中で首を痛める人が続出し、カイロプロクターは大忙しだったことでしょう。S&P 500指数は4月に3.93%上昇して最高値(2,945.83)で月を終え、5月には6.58%下落して2,752.06と、調整局面入りへの道のりを3分の2ほど進んだところで月末を迎え、6月には6.89%上昇して2,941.76で月を終えました(そして再び終値ベースで最高値の2,954.18を記録)。6月の上昇率としては、1955年の8.43%(当時S&P 500指数は41.03で取引終了)以来の高さとなりました。また、ダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)も、24.26%を付けた1938年以来となる7.19%の上昇率を記録しました。

 乱高下した2019年第2四半期は、最終的に3.79%の上昇でした。この結果、13.07%の上昇で祝福ムードが漂う第1四半期(2018年第4四半期は13.97%の下落でとても祝福された結果ではありませんでした)と合わせた2019年の上半期は、17.35%の上昇となりました。ちなみに、上半期としては1997年の19.49%以来の上昇率です。これで、7月4日の独立記念日を祝うために繰り出したくないと言うなら、単純に米国への愛国心がないのでしょう(空売りで大損したなら話は別ですが)。

 現在、市場でより重要なテーマになっているのは、「何をするか」です。上半期が17%を上回る上昇となったため、一部では冗談混じりに2019年はもうポジションを手仕舞うとの声も聞かれました。保険としてオプションを幾らか買っていたとしても、年間で2桁台という魅力的なリターンを残せるからです(そして、下落した場合は利益を得られます)。冗談であれ本音であれ、変化の方向性が不透明であることやそのスピードを考えると、たとえ9割方が現状を維持すると言っても、名案のように思われます。ポジションを若干削減するという声が増えたものの、やはり「いや、このままとどまる」という声ほどではありませんでした。景気の減速、利益予想の下方修正(過去の経験からすると、予想を上回ることができる水準まで下方修正されるでしょう)、貿易問題、関税問題、各地にみられる紛争や対立が続く中、こうしたこと全てが全速力での前進を後押ししています。

 一方、世界各国の中銀が競うように利下げに踏み切っており、米連邦準備制度理事会(FRB)も追加刺激策を打ち出す用意がある模様で、消費者は支出を続け、債務を巡る懸念の見直しが進んでいます。経済の観点から判断すると、長期的要因は後回しで、短期的要因が週ごとに評価されており、短期ではある程度まで刺激的にみえます。地政学の観点からみると、現時点では短期的に見通しやすいようで、不透明感が高まるとみられます。そして不透明感は企業の経営計画または投資には好ましいものではなく、そして好ましくない場合には…。

 過去の実績を見ると、6月は54.9%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は3.86%、下落した月の平均下落率は4.37%、全体の平均騰落率は0.69%の上昇となっています。来る7月は、58.2%の確率で上昇しており、上昇した月の平均上昇率は5.00%、下落した月の平均下落率は3.24%、全体の平均騰落率は1.56%の上昇となっています。今後のFOMCのスケジュールは、7月30日-31日、9月17日-18日、10月29日-30日、12月10日-11日、2020年の1月28日-29日となっています。

●主なポイント

 ○S&P 500指数は過去最高値を更新して4月を終えた後、翌月は「5月に相場から離れていなさい(sell in May and go away)」という格言通り下落しましたが、市場は「6月に戻ってくるように」という言葉を格言に付け加え、6月(6.89%)としては1955年(8.67%)以来の高い上昇率を付け、3.79%上昇で第2四半期を終え、第1四半期の13.07%上昇と合わせて、年初来では17.35%上昇と、1997年以来の上昇率となりました(2018年第4四半期は13.97%の下落)。5月の下落が広範囲に及んだ(上昇が107銘柄、下落が397銘柄)のと同様に、6月の上昇は裾野が広がりました(上昇が458銘柄、下落が46銘柄)。

  ・6月のS&P 500指数は6.89%上昇(配当込みのトータルリターンはプラス7.05%)と、6月としては1955年の8.23%以来の上昇率を付け、年初来では17.35%上昇(同プラス18.54%)と、上半期としては1997年(19.49%上昇)以来の上昇率となりました。

  ・2009年3月9日に始まった強気相場の上昇率は335%、配当込みのトータルリターンは440%となりました(年率換算ではそれぞれ15.33%、17.78%)。

 ○米国10年国債の利回りは、月中に2016年11月以来の低水準(1.97%)を付けた後、5月末の2.13%から低下して2.01%で6月を終えました(2018年は12月中に3%超を付け、2.69%で年を終えました。2017年末は2.41%)。

 ○英ポンドは5月末の1ポンド=1.2633ドルから1.2695ドルに上昇し(2018年末は1.2754ドル、2017年末は1.3498ドル、2016年末は1.2345ドル)、ユーロは5月末の1ユーロ=1.1170ドルから1.1372ドルに上昇しました(同1.1461ドル、同1.2000ドル、同1.0520ドル)。円は5月末の1ドル=108.23円から107.89円に上昇し(同109.58円、同112.68円、同117.00円)、人民元は5月末の1ドル=6.9065元から6.8668元に上昇しました(同6.8785元、同6.5030元、同6.9448元)。

 ○原油価格は5月末の1バレル=53.36ドルから上昇して58.20ドルで月を終えました(同45.81ドル、同60.09ドル、同53.89ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は5月末の1ガロン=2.909ドルから2.741ドルに下落して月末を迎えました(同2.358ドル、同2.589ドル、同2.364ドル)。

 ○金価格は5月末の1トロイオンス=1,310.20ドルから1,412.50ドルに上昇して月を終えました(同1,284.70ドル、同1,305.00ドル、同1,152.00ドル)。

 ○VIX恐怖指数は5月末の18.71から15.08に下落して月を終えました。月中の最高は19.75、最低は13.19でした(同25.42、同11.05、同14.04)。

 ○本稿執筆時点で、20銘柄(決算期がずれる企業)中17銘柄で利益が予想を上回り、19銘柄中15銘柄で売上高が予想を上回りました。第2四半期の予想は2018年末から6.0%引き下げられており、現在、前期比で5.1%の増益、前年同期比で3.2%の増益、過去最高だった2018年第4四半期からは3.6%の減益が予想されています。これから試されることになる下半期については、2019年第3四半期は過去最高を更新し、続く第4四半期にはそれを上回る結果となり(常に将来の期待は大きくなります)、2019年は前年比8.3%増が予想されています。さらに、2020年の予想は2019年から12.1%増、2018年から21.4%増となっています。

 ○大手米銀18行はFRBのストレステストとペイアウトテストに合格し、予想されていた配当と自社株買いの増額を行うとみられます。

 ○ビットコインは5月末の8,534ドルから上昇して11,678ドルで月を終えました。月中の最高は13,827ドル、最低は7,464ドルでした(2018年末は3,747ドル、2017年末は13,850ドル、2016年末は968ドル)。

 ○1年後の目標値は、S&P 500指数が3,198(現在値から8.7%上昇、5月末時点の目標値は3,158)、ダウ平均は28,685ドルとなっています(同7.8%上昇、同28,420ドル)。

●トランプ大統領と政府高官、そして大統領選候補者

 ○トランプ大統領はメキシコからの全輸入品に追加関税を賦課する意向を表明しました。当時、この関税は短期間で終わるとみられていました(2019年6月10日の開始時点の関税率が5%、その後は毎月5%ずつ引き上げられて7月10日から10%、8月10日から15%、9月10日から20%、10月10日から25%)。緊張感に満ちた1週間の交渉の末、米国とメキシコは合意に達し、トランプ大統領は「月曜日に発動される予定だったメキシコからの輸入品に対する追加関税を無期限で見送る」とツイートしました。詳細は発表されませんでしたが、両国はその後90日間協議を続けます。

 中国は米物流大手FedEx(FDX)の調査に乗り出したことを明らかにしました。米中の貿易協議が続く中、中国政府のこの措置は米国企業に対する警告と見る向きもあります。

 ○トランプ大統領と習近平国家主席の会談がG20大阪サミット(6月28-29日開催)で実施されることが正式に(ようやく)決定されました。この決定に対して、株式市場は引き続き好意的に反応しましたが、会談の成果に対する期待は低いままでした。現在では、貿易協議が継続(再開)される見通しで、2019年第4四半期か2020年の早期に合意が成立するとの見方が多数を占めます(数カ月前はG20での合意が見込まれていました)。米中首脳会談は6月29日午前11時30分(米東部時間で金曜日午後10時30分)開始予定のため、市場の反応が最初に現れるのは7月1日月曜日の立会時間前取引になるでしょう。

  ・2020年の米大統領予備選の民主党候補20人(実際は10人ずつの2グループ)が初のテレビ討論会に参加しました(対する共和党では、トランプ大統領の対抗馬は1名)。民主党の2日間にわたる討論会は大統領選の予備選挙での党の指名を巡って、どれだけ左派的になれるかが争われました(これは珍しいことではなく、本選ではいずれの党の候補者もより多くの支持を獲得するため中道寄りとなります)。本稿執筆時点で20人の候補者(それと討論会に参加しなかった4人)が夏の民主党全国大会に向けて選挙戦を繰り広げる予定ですが、議論が本格化し、市場の認識に影響を与え始める頃には、候補者の数は絞られることが予想されます(4人になる可能性があります)。

 ○トランプ大統領はイランの最高指導者のハメネイ師に対する新たな制裁を発表しました。この措置は制裁というよりは象徴的な意味合いが強いもので、イランは強く反論しました。

<中編>に続く
 


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