S&P500月例レポート(2019年7月配信)<中編>

<前編>から続く

●中央銀行関連の動き

 ○オーストラリア連邦準備銀行(RBA)は先進国中銀で最初に利下げに踏み切り、金利を0.25%引き下げて過去最低の1.25%としました。

 ○インド準備銀行は予想通り金利を0.25%引き下げて5.75%とし、レポ金利を5.5%に引き下げました。

 ○欧州中央銀行(ECB)の政策理事会は金融政策を据え置きましたが、ドラギ総裁がパウエルFRB 議長に倣った発言を行ったことで、利下げの可能性が浮上しました。

 ○ドラギ総裁は、早ければ2019年7月25日の理事会で金利を引き下げる可能性を示すシグナルを発信しました。世界的に金利が低下する中、スウェーデンとフランスの金利は、ドイツ国債利回りと同様にマイナス圏に低下しました。トランプ大統領はECBの利下げは米国に対して不公平であるとツイートし、この議論により米連邦公開市場委員会(FOMC)への利下げ圧力が高まりました。

 ○FRBの地区連銀経済報告(ベージュブック、2019年6月18-19日のFOMC会合で参照されました)は12の地域が緩やかに成長した一方で、貿易を巡る懸念が高まったものの、作成時点では影響がみられなかったことが示されました。

 ○FOMCは金利を据え置き(大方の予想通り)、将来の利下げを示唆しました(これも予想通り)。FOMCメンバーによるドット・プロット(金利予測分布図)が示唆する金利予想に変化はなく(2019年は2.1%)、17人中8人が2019年内の利下げを予想し、そのうち7人が2回の利下げを見込んでいます。一方、8人は年内の利下げを見込まず、1人が1回の利上げを予想しています。19日の会合当日は市場で大きな反応はなく(サプライズがなかったため)、国債利回りは低下しましたが、翌日にはS&P 500指数は過去最高値を更新しました(FOMCの利下げ示唆と、トランプ大統領と習近平国家主席の首脳会談への期待が背景となりました)。パウエル議長とトランプ大統領の論戦は続き、トランプ大統領がパウエル議長の罷免をちらつかせる一方で、パウエル議長は(個人的および法的に)任期を全うする強い決意を示しました。

 ○日銀も金融政策決定会合で利下げの可能性を示唆しました。イングランド銀行(英中銀)は金利を据え置き(0.75%)、英国の2019年第2四半期の成長率予想を0.2%からゼロに引き下げました。

 ○パウエル議長は講演でFRBの独立性を強調し、「短期的な政治圧力」に屈することに警戒感を示しました。その数日前、トランプ大統領は利下げに踏み切らないFRBを「頑固な子供」のようだと非難していました。

 ○FRBのストレステスト(健全性審査)では、米国の大手銀行18行が合格しました。このテストでは、株式市場での4,100億ドルの損失発生と米国の失業率を10%と想定したシナリオで、流動性を維持できるかが審査されました。次いで、18行は「包括的資本分析およびレビュー(CCAR)」審査で、配当と自社株買いを通じてどの程度を株主に還元(1,730億ドル)できるかの判定を受け、合格しました。その結果、この18行の配当と自社株買いは増加が予想されます。

●企業業績

 ○2019年第1四半期の業績発表が終わり、市場の注目は2019年第2四半期の業績と下半期の業績ガイダンスに移りました。下半期の業績が過去最高を更新するとの予想は、実現が危ぶまれています(景気減速に加えて、貿易摩擦の解決が見えないため)。これまでに20銘柄(決算期のずれる企業)が決算発表を終え、そのうち17銘柄で利益が予想を上回り、3銘柄で予想を下回りました。売上高は19銘柄中15銘柄が予想を上回りました。

 ○第2四半期の利益予想は2018年末から6.0%引き下げられ、現在は前期比で5.1%の増益、前年同期比で3.2%の増益、過去最高だった2018年第4四半期からは3.6%の減益が予想されています。

 ○これから試されることになる下半期については、2019年第3四半期に利益は過去最高を更新し、2019年第4四半期はそれを上回る見通しです(常に将来の期待は大きくなります)。2019年は2018年比で8.3%増が見込まれます。2020年は2019年を12.1%、2018年を21.4%上回ると予想されます。

 ○個別銘柄の業績(そして株価)に対する自社株買いによる大きな追い風が引き続き見込まれ、株式数の減少から押し上げ効果を受ける銘柄の割合は2019年第1四半期の24.8%(4銘柄につき1銘柄)に肩を並べる見通しです。

●個別銘柄

 ○米連邦航空局(FAA)とともに墜落事故の調査を進めている航空機大手Boeing(BA)は、同社の737シリーズの一部部品に不具合があることを明らかにしました。(British Airwaysを傘下に持つ)IAGは、パリ航空ショーでBoeing(BA)の新型機737Maxを200機発注したことを公表しました(240億ドル、値引き前)。これは墜落事故後初めての受注で、納入は2023年から2027年までに行われる見通しです。

 ○iPhoneメーカーApple(AAPL)は、「Apple Music」の登場により「iTunes」による楽曲提供方式が時代遅れになったとして、同サービスを終了すると発表しました。

 ○ソーシャルメディア大手Facebook(FB)は、デジタル通貨「リブラ」を(2020年を目標に)導入する計画を発表しました。この仮想通貨は非営利団体によって運営されることになっており、個人がグローバルかつ自由に資金を移動させることが可能になります。Facebookのマーケティング部門はまた、通貨「リブラ」のサービス提供を目的としたデジタルウォレット「カリブラ(Calibra)」の立ち上げを計画しています。こうした動きはサイバー空間における商品市場にとって重大な第一歩になる(当該市場への参加企業は今後さらに増えると予想されます)と見られていますが、従来の金融機関や規制当局との折衝を通じて、カリブラに対して今後は厳しい監視の目が注がれることになりそうです。米国下院の一部議員はFacebookの事業計画に関して公聴会の開催を要求、また計画の延期も求めています。

 ○インターネット通販会社eBay(EBAY)は、同業のAmazon(AMZN、1週間で株価は0.1%上昇)が2019年7月15日から48時間にわたり開催するPrime Dayセールに対抗するために、「crash sale」と題した大型セールを同日から1週間実施することを発表しました。

 ○報道によると、米連邦航空局(FAA)は、墜落事故を起こしたBoeing’s(BA)の新型機737MAXの修理計画で新たに対応すべき「潜在的リスク」を発見しました。Boeingはこの問題の解決には少なくとも2019年9月までかかると説明しています。

 ○S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは、農業関連製品会社Corteva(CTVA)をS&P 500指数に追加し、エンジニアリング会社Fluor(FLR)を除外しました。CortevaはDowDuPont(DWDP)からスピンオフで誕生した会社です。Dowは正式名称をDuPont de Nemours(DD)に変更し、さらに3対1の株式併合を実施しました。また、S&P中型株400指数構成銘柄であった包装メーカーのBemis(BMS)をS&P 500指数に追加し、玩具会社Mattel(MAT)をS&P 500指数から除外してS&P中型株400指数に追加しました。さらに、2019年7月1日の取引開始前に、S&P中型株400指数構成銘柄であった債券電子取引プラットフォームMarketAxess Holding(MKTX)をS&P 500指数に追加すると発表し、S&P 500指数構成銘柄であるHarris Corp(HRS)と合併するL3 Technologies(LLL)を同指数から除外しました。Harris CorpはL3Harris Technology(新ティッカーはLHX)に社名が変更されます。

●注目点

 ○米連邦取引委員会(FTC)と米司法省による新たな合意の結果、独占禁止法を巡る調査が強化される可能性があります。調査対象として取り沙汰されているのは、Amazon(AMZN)、Apple(AAPL)、Alphabet (GOOGL)、Facebook(FB)などの巨大IT企業です。また、別の報道では、米司法省が独占禁止法違反の疑いでGoogle(Alphabetの子会社)に対する調査を準備していると伝えられました。巨大IT企業の解体や少なくとも独禁法違反に基づく調査は、民主党の多くの大統領候補によって政治問題化されており、トランプ大統領自身もこれを視野に入れているようです。

 ○米国の正味家計資産は、2018年第4四半期の株式市場の下落を乗り越え、2019年第1四半期に過去最高の108.6兆ドルとなりました(S&P 500指数の時価総額は24.5兆ドル)。

 ○国際エネルギー機関(IEA)は2019年の原油需要の伸びが前月予想の日量130万バレルから120万バレルになるとの見通しを発表しました。なお、2020年の原油需要の伸びは同140万バレルと予想しています。

●利回り、金利、コモディティ

 ○米国10年国債の利回りは5月末の2.13%から低下して2.01%で月を終えました(2017年末は2.41%)。月中には2016年11月以来の低水準(1.97%)まで低下する場面もありました(2018年末は2.69%、同年12月中には3%を超えたこともありました)。

 ○英ポンドは5月末の1ポンド=1.2633ドルから1.2695ドルに上昇し(2018年末は1.2754ドル、2017年末は1.3498ドル、2016年末は1.2345ドル)、ユーロは5月末の1ユーロ=1.1170ドルから1.1372ドルに上昇しました(同1.1461ドル、同1.2000ドル、同1.0520ドル)。円は5月末の1ドル=108.23円から107.89円に上昇し(同109.58円、同112.68円、同117.00円)、人民元は5月末の1ドル=6.9065元から6.8668元に上昇しました(同6.8785元、同6.5030元、同6.9448元)。

 ○原油価格は5月末の1バレル=53.36ドルから上昇して58.20ドルで月を終えました(同45.81ドル、同60.09ドル、同53.89ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は5月末の1ガロン=2.909ドルから2.741ドルに下落して月末を迎えました(同2.358ドル、同2.589ドル、同2.364ドル)。

 ○金価格は5月末の1トロイオンス=1,310.20ドルから1,412.50ドルに上昇して月を終えました(同1,284.70ドル、同1,305.00ドル、同1,152.00ドル)。

 ○VIX恐怖指数は5月末の18.71から15.08に下落して月末を迎えました。月中の最高は19.75、最低は13.19でした(同25.42、同11.05、同14.04)。

<後編>に続く
 


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