■事業戦略
1. “グローバルニッチトップ”のブルーオーシャン戦略
アドバネクス<5998>は、これまで多くのオンリーワン製品によりトップシェア製品を輩出してきた。それらの中には、国内にとどまらず、世界でもトップシェアを築いたものがある。1971年から海外に進出しており、米国、欧州、アジアに数多くの生産・販売拠点を展開している。自動車や医療機器などの市場で、グローバル展開をし、タイムリーな供給を求める世界的な規模のメーカーをターゲットとし、グローバルニッチトップを獲得できる分野に特化する戦略を採っている。「エリア」「顧客」「領域」「加工技術、製品」の4つの軸から事業戦略を策定し、自社の競争力が強く、市場の成長性が高い、自動車、医療機器、インフラ/住設機器を注力市場としている。
同社は、競合が少なく、自社の強みが発揮される市場を重点的に開拓するブルーオーシャン戦略を取っている。自動車用ばねの市場では、国内の大手ばねメーカーはシャシばねなど大型製品を得意としており、精密ばね分野で同社との直接的な競合は少ない。同社の競合先は、500社以上ある中小零細メーカーになる。これらの企業は、おおむね海外に進出する体力に乏しい。
メガサプライヤーに対応するグローバルTier2部品メーカー
2. 自動車産業の構造的変化と同社の施策
(1) メガサプライヤーとグローバルTier2部品メーカー
電子機器の生産は、アナログ時代の「すり合わせ型」からパソコンやデジタル家電になってインターフェースの標準化により「組み合わせ型」にシフトした。これにより、技術的蓄積の少なかった新興国でも電子機器の生産が容易になった。エレクトロ二クス化の進む自動車でも、標準化されたモジュール部品の組み合わせが進み、電気自動車(EV)では主流になるとみられる。車種ごとの個別の部品を開発・製造は、開発期間や設備投資、製造コストが課題となる。車種の多様化と低コストを同時に実現するため、プラットフォーム(車台)の標準化・共通化、コンポーネント(部品)の共通化、設計の標準化と共有可能モジュールの大幅な採用が進む。コンポーネントの共有化では、モジュール部品が車体の大きさ・タイプを超えて利用される。
自動走行技術やコネクテッドカーでは、技術の業界標準化が話し合われている。自動車は約3万点の部品で成り立っていると言われるが、コストの半分は汎用部品が占める。汎用部品は生産数量が大きいため価格が低く、その採用はコストダウンに寄与する。生産数量は、自動車メーカーの自社固有の部品では数十万個単位だが、汎用品では数百万個とケタが違ってくる。部品の標準化・モジュール化により、部品の生む付加価値は自動車メーカーから部品会社にシフトする。世界的なTier1の部品会社は、特定の自動車メーカーの下請け的存在から複数のカーメーカーを顧客とするメガサプライヤーとなる。欧米は、日本に比べメガサプライヤー化が進んでいる。世界1、2位のドイツのRobert BoschやContinentalの売上規模は日系トップのデンソー<6902>のそれぞれ2.1倍、1.7倍に相当する。
同社は、メガサプライヤーとなるTier1と取引するグローバルTier2を目指す。海外に10拠点以上持つ企業は、同社の推定では数百社のTier1のうちある程度存在するが、数千社以上もいるTier2ではわずかしか存在しない。
(2) 同社のグローバル生産体制
同社のグローバルな生産体制は、国内の6拠点、海外の17拠点で形成される。中長期計画に沿って、国内外の生産能力の拡大と販売網の拡充のための拠点展開をしている。
2016年3月期から2020年3月期にかけて工場の総面積を倍増の13万平米とするべく、積極的に新工場の開設とM&Aを推進している。日本はもとより、北米では米国及びメキシコで、アジアではインドネシア、インド、ベトナムにおいて、欧州ではチェコで生産拠点を設ける。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
<SF>
1. “グローバルニッチトップ”のブルーオーシャン戦略
アドバネクス<5998>は、これまで多くのオンリーワン製品によりトップシェア製品を輩出してきた。それらの中には、国内にとどまらず、世界でもトップシェアを築いたものがある。1971年から海外に進出しており、米国、欧州、アジアに数多くの生産・販売拠点を展開している。自動車や医療機器などの市場で、グローバル展開をし、タイムリーな供給を求める世界的な規模のメーカーをターゲットとし、グローバルニッチトップを獲得できる分野に特化する戦略を採っている。「エリア」「顧客」「領域」「加工技術、製品」の4つの軸から事業戦略を策定し、自社の競争力が強く、市場の成長性が高い、自動車、医療機器、インフラ/住設機器を注力市場としている。
同社は、競合が少なく、自社の強みが発揮される市場を重点的に開拓するブルーオーシャン戦略を取っている。自動車用ばねの市場では、国内の大手ばねメーカーはシャシばねなど大型製品を得意としており、精密ばね分野で同社との直接的な競合は少ない。同社の競合先は、500社以上ある中小零細メーカーになる。これらの企業は、おおむね海外に進出する体力に乏しい。
メガサプライヤーに対応するグローバルTier2部品メーカー
2. 自動車産業の構造的変化と同社の施策
(1) メガサプライヤーとグローバルTier2部品メーカー
電子機器の生産は、アナログ時代の「すり合わせ型」からパソコンやデジタル家電になってインターフェースの標準化により「組み合わせ型」にシフトした。これにより、技術的蓄積の少なかった新興国でも電子機器の生産が容易になった。エレクトロ二クス化の進む自動車でも、標準化されたモジュール部品の組み合わせが進み、電気自動車(EV)では主流になるとみられる。車種ごとの個別の部品を開発・製造は、開発期間や設備投資、製造コストが課題となる。車種の多様化と低コストを同時に実現するため、プラットフォーム(車台)の標準化・共通化、コンポーネント(部品)の共通化、設計の標準化と共有可能モジュールの大幅な採用が進む。コンポーネントの共有化では、モジュール部品が車体の大きさ・タイプを超えて利用される。
自動走行技術やコネクテッドカーでは、技術の業界標準化が話し合われている。自動車は約3万点の部品で成り立っていると言われるが、コストの半分は汎用部品が占める。汎用部品は生産数量が大きいため価格が低く、その採用はコストダウンに寄与する。生産数量は、自動車メーカーの自社固有の部品では数十万個単位だが、汎用品では数百万個とケタが違ってくる。部品の標準化・モジュール化により、部品の生む付加価値は自動車メーカーから部品会社にシフトする。世界的なTier1の部品会社は、特定の自動車メーカーの下請け的存在から複数のカーメーカーを顧客とするメガサプライヤーとなる。欧米は、日本に比べメガサプライヤー化が進んでいる。世界1、2位のドイツのRobert BoschやContinentalの売上規模は日系トップのデンソー<6902>のそれぞれ2.1倍、1.7倍に相当する。
同社は、メガサプライヤーとなるTier1と取引するグローバルTier2を目指す。海外に10拠点以上持つ企業は、同社の推定では数百社のTier1のうちある程度存在するが、数千社以上もいるTier2ではわずかしか存在しない。
(2) 同社のグローバル生産体制
同社のグローバルな生産体制は、国内の6拠点、海外の17拠点で形成される。中長期計画に沿って、国内外の生産能力の拡大と販売網の拡充のための拠点展開をしている。
2016年3月期から2020年3月期にかけて工場の総面積を倍増の13万平米とするべく、積極的に新工場の開設とM&Aを推進している。日本はもとより、北米では米国及びメキシコで、アジアではインドネシア、インド、ベトナムにおいて、欧州ではチェコで生産拠点を設ける。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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