■要約
アンジェス<4563>は、1999年に設立された大阪大学発の創薬ベンチャー。遺伝子医薬に特化した開発を進めており、将来的に「遺伝子医薬のグローバルリーダー」になることを目標にしている。ビジネスモデルは、新薬候補品を開発し、販売パートナーとの販売権許諾契約によって得られる契約一時金や、開発の進捗状況等によって得られるマイルストーン収益、上市後の製品売上高にかかるロイヤリティ収入を獲得するモデルとなる。
1. 主要開発パイプラインの進捗状況
2018年12月期第3四半期(2018年7月−9月)で、主要開発パイプラインの進捗状況に変化はなかった。2018年11月時点の状況で見ると、国内における重症虚血肢向けHGF遺伝子治療薬は2018年1月に製造販売承認申請を行い、現在は審査が進んでいるもよう。「条件及び期限付承認」を想定しており、承認が得られれば国内初の遺伝子治療薬として、提携先である田辺三菱製薬<4508>からマイルストーン収入が得られる見込みだ。一般的な審査期間で見ると2019年前半までには承認の可否が判明すると見られる。一方、米国では第3相臨床試験に向けて新たな臨床計画を策定中。治験デザインはおおむね国内で実施したものを基本とし、比較的小規模な治験を想定している。また、米国で開発を進めている椎間板性腰痛症治療薬については、2018年2月より第1b相臨床試験を開始しており、オーストラリアで開発を進めている高血圧DNAワクチンについても同年4月より第1/2相臨床試験を開始、11月時点で共に大きな支障なく進んでいるもようだ。いずれも2020年以降の治験終了を見込み、安全性と有効性が確認されればライセンスアウト交渉を開始する予定にしている。その他、米Vicalと共同開発を進めている慢性B型肝炎治療用ワクチンについては、現在実施している動物実験の結果を見て、今後の方針を決めていくことになる。
2. 直近のトピックス
同社は、2018年11月14日付でDNAワクチンに関する国内特許を取得したことを発表した。がんの治療または予防を目的とした用途特許となる。DNAワクチンによって抗VEGF※抗体の産生を誘導し腫瘍の血管新生を効果的に抑制、がんを治療または予防する効果が期待されている。現在の抗VEGF薬は薬効の半減期が20~30日であり、定期的に投与する必要があるが、DNAワクチンでは薬効が長期間持続するといったメリットが期待されている。
※VEGF(血管内皮細胞増殖因子)…血管内皮細胞を増殖させ、血管の形成を促す糖たんぱく質。がん、関節リウマチ、加齢黄斑変性症など異常な血管新生を伴う疾患に対して、このVEGFの働きを阻害する治療薬(抗VEGF薬)が使用されている。
3. 業績動向
2018年10月29日付で2018年12月期第3四半期累計業績を発表した。事業収益はムコ多糖症VI型治療薬「ナグラザイム®」の販売増により前年同期比8.2%増の276百万円となり、営業損失は研究開発費の減少で前年同期の2,743百万円から2,242百万円に縮小した。2018年12月期業績については、事業収益で前期比64.3%増の600百万円、営業損失で3,100百万円(前期は3,288百万円の損失)を見込む。2018年12月期第3四半期末の現金及び預金残高は新株予約権の行使が順調に進んだことから、前期末比2,345百万円増加の3,492百万円となった。10月以降も新株予約権の行使が順調に進んでいる。同社では今回の調達資金を、主に開発パイプライン拡充のための投資資金として使っていく予定で、今後4年間で4〜5件の開発品目を取り込んでいく。1件当たりの投下資金としては8〜10億円を目安としている。
■Key Points
・HGF遺伝子治療薬は国内で承認申請中、椎間板性腰痛症及び高血圧症治療薬の臨床試験を海外で2018年より開始
・資金調達により、開発パイプラインの拡充を進めていく方針
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<SF>
アンジェス<4563>は、1999年に設立された大阪大学発の創薬ベンチャー。遺伝子医薬に特化した開発を進めており、将来的に「遺伝子医薬のグローバルリーダー」になることを目標にしている。ビジネスモデルは、新薬候補品を開発し、販売パートナーとの販売権許諾契約によって得られる契約一時金や、開発の進捗状況等によって得られるマイルストーン収益、上市後の製品売上高にかかるロイヤリティ収入を獲得するモデルとなる。
1. 主要開発パイプラインの進捗状況
2018年12月期第3四半期(2018年7月−9月)で、主要開発パイプラインの進捗状況に変化はなかった。2018年11月時点の状況で見ると、国内における重症虚血肢向けHGF遺伝子治療薬は2018年1月に製造販売承認申請を行い、現在は審査が進んでいるもよう。「条件及び期限付承認」を想定しており、承認が得られれば国内初の遺伝子治療薬として、提携先である田辺三菱製薬<4508>からマイルストーン収入が得られる見込みだ。一般的な審査期間で見ると2019年前半までには承認の可否が判明すると見られる。一方、米国では第3相臨床試験に向けて新たな臨床計画を策定中。治験デザインはおおむね国内で実施したものを基本とし、比較的小規模な治験を想定している。また、米国で開発を進めている椎間板性腰痛症治療薬については、2018年2月より第1b相臨床試験を開始しており、オーストラリアで開発を進めている高血圧DNAワクチンについても同年4月より第1/2相臨床試験を開始、11月時点で共に大きな支障なく進んでいるもようだ。いずれも2020年以降の治験終了を見込み、安全性と有効性が確認されればライセンスアウト交渉を開始する予定にしている。その他、米Vicalと共同開発を進めている慢性B型肝炎治療用ワクチンについては、現在実施している動物実験の結果を見て、今後の方針を決めていくことになる。
2. 直近のトピックス
同社は、2018年11月14日付でDNAワクチンに関する国内特許を取得したことを発表した。がんの治療または予防を目的とした用途特許となる。DNAワクチンによって抗VEGF※抗体の産生を誘導し腫瘍の血管新生を効果的に抑制、がんを治療または予防する効果が期待されている。現在の抗VEGF薬は薬効の半減期が20~30日であり、定期的に投与する必要があるが、DNAワクチンでは薬効が長期間持続するといったメリットが期待されている。
※VEGF(血管内皮細胞増殖因子)…血管内皮細胞を増殖させ、血管の形成を促す糖たんぱく質。がん、関節リウマチ、加齢黄斑変性症など異常な血管新生を伴う疾患に対して、このVEGFの働きを阻害する治療薬(抗VEGF薬)が使用されている。
3. 業績動向
2018年10月29日付で2018年12月期第3四半期累計業績を発表した。事業収益はムコ多糖症VI型治療薬「ナグラザイム®」の販売増により前年同期比8.2%増の276百万円となり、営業損失は研究開発費の減少で前年同期の2,743百万円から2,242百万円に縮小した。2018年12月期業績については、事業収益で前期比64.3%増の600百万円、営業損失で3,100百万円(前期は3,288百万円の損失)を見込む。2018年12月期第3四半期末の現金及び預金残高は新株予約権の行使が順調に進んだことから、前期末比2,345百万円増加の3,492百万円となった。10月以降も新株予約権の行使が順調に進んでいる。同社では今回の調達資金を、主に開発パイプライン拡充のための投資資金として使っていく予定で、今後4年間で4〜5件の開発品目を取り込んでいく。1件当たりの投下資金としては8〜10億円を目安としている。
■Key Points
・HGF遺伝子治療薬は国内で承認申請中、椎間板性腰痛症及び高血圧症治療薬の臨床試験を海外で2018年より開始
・資金調達により、開発パイプラインの拡充を進めていく方針
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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