トレードワークス 浅見勝弘社長インタビュー

証券会社向け取引システムで高実績、フィンテック関連でも市場開拓

浅見勝弘氏
トレードワークス 代表取締役社長

 
 昨年11月末にジャスダック市場に株式上場(IPO)を果たしたトレードワークス <3997> [JQ]。同社の株価は、公開時から急騰を演じ今年4月には1対3の株式分割を実施。いまも公開価格から4倍近い水準にある。証券会社向けシステム開発などを手掛ける同社は急速な成長を遂げている。有力オンライン証券会社などのシステム開発で高実績を誇る同社の浅見勝弘社長に、事業内容と今後の経営戦略を聞いた。

――まず、簡単な会社紹介をお願いします

 当社は「エンドユーザーの視点に立って、高い信頼性と安全性を備えたシステム構築を目指し、金融資本市場の発展と豊かな社会の実現に貢献する」ことを指針とし、証券システム開発事業とこれらに付帯するFX(外国為替証拠金取引)システム事業及びセキュリティ診断事業を展開しております。

――会社設立までの経緯を教えてください

 当社の設立は1999年1月で、来年1月で設立20周年を迎えます。私は90年代前半に外資系のコンピュータ会社に勤めておりましたが、その会社は日本に進出している欧米の有力証券会社にシステムを納入しておりました。バブル崩壊後の日本の金融取引システムは、欧米から20年遅れていると言われており、金融システムの遅れで国内の投資が海外に流失されることに忸怩(じくじ)たる思いもありました。そんな中、海外のトレーダーと同等あるいは、それ以上のシステムを日本の証券会社に利用していただくことを目的に設立したのがトレードワークスです。

――90年代から2000年代にかけてはネット証券の登場など事業環境も激変しました

 会社を設立した頃はインターネットが普及し始めてまだ間もない時期でしたが、私の興味もプロのトレーダーやディーラー向けからオンライントレードの仕組みへと移行していきました。カブドットコム証券は当社の事業立ち上げ当初から、システム構築に携わっており、同証券のプロ仕様のトレーディングシステム「kabuステーション」も弊社の製品として提供しています。また、日産証券、エイチ・エス証券など多くのオンライン証券会社と取引をさせていただいております。

 当社は蓄積した業務知識と開発ノウハウで製品の全てを自社開発いたしております。自社開発とすることで、システム運用に際してのメンテナンス性を向上させることができます。また、BtoB(企業間取引)を主力としており、テクノロジーでは競合他社に負けない自負があります。

――大手オンライン証券などを含め、取引状況は一段と拡大が期待できそうですか

 大手オンライン証券は、システム子会社を傘下に持っています。また、大手のオンライン証券のバックオフィスなど金融システムを担当する企業は、これまでは一定の企業に限定されておりました。しかし、これからの状況は顧客ニーズの多様化及びサービスの向上によって大きく変わると思います。当社は身軽で独立志向も強い会社です。今後は大手オンライン証券との取引拡大もより一層進めてまいりたいと考えております。
 

 
――第2四半期では18年12月期業績予想の増額修正を発表しました。証券業界を取り巻く金融システムの受注環境は好調とみていいのでしょうか

 今回の業績上方修正は、新規顧客及び既存顧客からの新規受注が好調であり、また、利益面では利益率の高い案件が寄与したことに加えて、システム開発及びクラウドサービス(SaaS型サービス)を中心に、各プロジェクトに適した開発手法及び最適なスケジュールを組むなど採算性の向上が見込まれることから上期業績と下期の受注状況を勘案し通期業績を上方修正いたしました。

 国内証券業界のIT投資は、今後も継続的に成長すると推察されており、証券業界全体で2兆円近い比較的大きな規模のシステム投資需要があると言われております。このような状況下において、当社の売り上げはまだまだ弱小ではありますが、この証券業界向けシステム投資の一部を新たに取り入れるチャンスでもあると考えております。将来的には、銀行向けなどでも市場開拓を予定しておりますが、いまはエンジニアの需給がどこもひっ迫しておりますので、当社は国内雇用に限らず、海外からの優秀な人材確保を目的として本年度よりキリロム工科大とスポンサー契約を締結しており、本年度11月より数名の入社が確定いたしております。また、当社は業務に関する専門知識を持ったエンジニアが、さまざまな業種のシステム開発の経験と柔軟な対応力を活かし、お客様のニーズにあった、ハイクオリティーなシステム構築に取り組むことでお客様の「信頼と安全」をより強固にし、業績拡大へと繋げてまいりたいと思っております。

――仮想通貨やAI(人工知能)などフィンテック絡みの展開はいかがでしょうか

 仮想通貨に関しては、ベースとなる取引のシステムは既に持っています。大手や一部中堅証券からは話が来ておりますが、金融当局による仮想通貨法の法規制が整備され次第着手していく予定となっております。取引システムそのものはFXやCFDとほぼ変わらないため、スムーズに開発が進むものと予想いたしております。仮想通貨に関しては不公正取引に対する防止策なども未整備な事業者が多かったこともあり、インターネット取引だけではなく、不公正取引監視システム等の需要も同時に期待されるものと思っております。また、AIやビッグデータなどのフィンテックに関しては、これまでの実績を含めれば、基本的に全て対応していると思います。

――いま進めているビジネスモデルの改革について教えてください

 現在は最初のシステム導入時に売り上げが立つカスタマイズフィーと月々のデータセンターの利用料でもらう仕組みの2つがあります。これをセンターの利用に応じた料金にシフトさせる計画です。この改革を進めることで、売り上げはその時々で波が出るかもしれませんが、利益はより安定する方向になるとみています。

◇浅見勝弘(あさみ・かつひろ)
1957年生まれ。80年4月ビジネスコンサルタント入社。85年アイネス入社。87年日本ストラタスコンピュータ(現、日本ストラタステクノロジー)入社。93年ヴァーチャルウェア設立。1999年トレードワークス設立。取締役に就任。2004年、同社代表取締役に就任。

◇トレードワークス
http://www.tworks.co.jp/
 

配信元: みんかぶ株式コラム

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