■中長期の展望と成長戦略
1. 3つの基本戦略:「市場選択」「安定化」「全員経営」
サイバーリンクス<3683>は基本的な経営戦略として以下の3つを掲げている。
(1) 市場選択戦略:No.1戦略
同社は、市場選択戦略としてNo.1戦略を採用している。No.1戦略とは、業種や地域をセグメントし、そこでNo.1になれることに経営資本を集中投下することを指す。同社の場合、ITクラウド事業に参入するにあたり、これまでの業務で得た知見が生かせる食品流通に特化、成功を収めている。また、官公庁クラウド分野などは和歌山県下の受注を注力、基盤を築いてから全国展開するとしている。ただし、これらの領域で安定した収益基盤が築けたと判断すれば、他の領域(市場)へ事業を広げていく戦略だ。
(2) 安定化戦略:定常収入重視
第2に安定化戦略として、定常収入を重視していることが特徴である。情報処理料や保守等、継続的に得られる収入を獲得することを経営の中心に置いている。この戦略の推進により、定常収入比率は、2016年12月期には40.4%(定常収入額は37.5億円)だったものが、2017年12月期に44.2%(同42.4億円)まで上昇しており、これが同社の収益安定化に貢献している。
(3) 全員経営戦略:サイバーセル経営
同社は経営陣だけでなく、従業員についても経営を意識した活動を行うように、サイバーセル経営としてセル時間当たり収益=(売上高-経費)/時間を導入している。この指標は、従業員全員が売上げを上げること、経費を下げること、時間効率を上げることを意識して行動させるためである。
2. 事業環境とIT業界の時流
同社では、現在の事業環境は以下のような過去の変化から「新産業革命」の時代へ移りつつあると認識している。
(1) 「農業革命」(狩猟・採集経済から穀類の栽培や家畜の飼育へ)
(2) 「産業革命」(工作機械、工業製品、鉄道、蒸気船等)
(3) 「情報革命」(エレクトロニクス、コンピューター等)
(4) 「新産業革命」(技術的限界点の突破、情報処理機能の高度化による産業構造の変化)
(例:スマートフォン、AI、クラウド、認証基盤等)
このような「新産業革命」の時代には、
(1) 顧客の潜在ニーズが技術の進歩によりスピーディーに実用化される
(2) 企業内・企業間のシステム連携・ID連携がさらに高度化する
(3) 「判断は人からAIへ」が進み、システムの良し悪しは搭載するAIの性能で決まる
と同社では考えている。特にAIの性能向上がこれからの産業構造を大きく変えると予想されるが、AIの性能向上のためには、できるだけ多くのデータ(ビッグデータ)を保有している、あるいは得られることが重要な要素になってくる。この点で同社は、食品流通業界に特化しており多くの顧客を抱えている。さらにこれらの顧客に対して、「シェアクラウド」でサービスを提供していることから、食品流通業界においてはかなりのビッグデータを得ることが可能であり、この分野に限れば今後のAI開発で優位にあると言える。
そのため、同社では「新産業革命」に向けた取り組みとして、以下のような技術や開発を進めていく方針だ。
(1) シェアクラウド構築により培った基盤技術の強化
(2) 企業間連携の高度化(サービス開発)
a)クラウドEDI-Platform、b)コード変換基盤、c)C2Platform、d)統合住民サービス
(3) 新技術の応用
a)高速開発ツール・4GL、b)顔認証(2017年テスト稼働)、c)業界認証基盤(2018年)、d)ビッグデータ処理、e)タイムスタンプ(TSA認定取得)、f)公的個人認証基盤(2017年認証取得)、g)AI
このような事業環境の認識のもと、同社では2020年12月期を最終年度とする中期経営計画を発表している。その重要施策と数値目標は以下のようになっている。
3. ITクラウド事業(流通クラウド分野):3方向への事業展開
ITクラウド事業の流通クラウド分野では、中・大規模小売企業を対象とする「@rms基幹」サービスの次期バージョン(完全版)のリリースを予定しており、周辺サービスの先行提案も推進する。これまで対象としてきた小規模小売企業だけでなく、中・大規模小売企業も適用範囲となる。また、クラウドEDIサービスの「クラウドEDI-Platform」は、中・大規模の卸売企業だけが顧客であったものが、新サービスの「C2Platform」の開始によりメーカーとの商談機能も有することになるほか、コード変換基盤の導入により中・小規模卸売業への展開も可能となるなど売上高の拡大余地は大きい。「C2Platform」は、現在個々の企業間で通信により行っている情報交換を、情報を必要とする関連企業すべてに伝達できるプラットフォームで、流通業界の企業間連携の効率化が可能となる。コード変換基盤は、業務改善が進んでいない小規模卸・メーカーがEDIに対応できる基盤で、既存顧客(大手卸)の付加価値向上と中小・小規模卸までターゲット層の拡大を図る。なお、資本提携や業務提携も視野に入れ、サービス拡充のスピードアップを図る計画だ。
4. ITクラウド事業(官公庁クラウド分野)
官公庁クラウド分野においては、新たに「統合住民サービス」「教育情報セキュリティクラウド」を構築し、現在は和歌山県が中心となっている事業を全国展開する。自治体向けサービスでは、2017年に奈良県に事業所を開設したのを皮切りに、まず近畿圏で実績を積み、その後全国にサービス展開を図る計画だ。さらに、既述のように南大阪電子計算センターを子会社化することで、地方自治体向け基幹系サービス分野の強化を図る。ワンストップでのサービス提供を行うことで、更なるシェアアップを目指す。
5. モバイルネットワーク事業
モバイルネットワーク事業では、ドコモショップ店舗の大型化による顧客利便性と集客力の向上、スマートライフ関連商材の取扱いを拡大するとしている。2017年に岩出店の売場面積を拡張しており、今後、取扱商材も拡大する。新たに加える商材には、体重計や血圧計などのメディカル・ヘルスケア、生命保険、電気・ガス小売、周辺機器、各コンテンツ、アクセサリ、ウェアラブル機器などを想定している。
現在では、家電をスマートフォンと連携して使用すると利便性が高いと思われる機能が付加されていることが多いが、家電量販店では機能の存在すら他の商品に埋もれてしまう場合が多く、せっかくの商材及びスマートフォンの保有によって得られるはずである利便性を謳歌しているとは決して言えない。同社ショップでこれらの機能を積極的に提案することで、モバイルでより快適な生活を提案できるようになる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
<NB>
1. 3つの基本戦略:「市場選択」「安定化」「全員経営」
サイバーリンクス<3683>は基本的な経営戦略として以下の3つを掲げている。
(1) 市場選択戦略:No.1戦略
同社は、市場選択戦略としてNo.1戦略を採用している。No.1戦略とは、業種や地域をセグメントし、そこでNo.1になれることに経営資本を集中投下することを指す。同社の場合、ITクラウド事業に参入するにあたり、これまでの業務で得た知見が生かせる食品流通に特化、成功を収めている。また、官公庁クラウド分野などは和歌山県下の受注を注力、基盤を築いてから全国展開するとしている。ただし、これらの領域で安定した収益基盤が築けたと判断すれば、他の領域(市場)へ事業を広げていく戦略だ。
(2) 安定化戦略:定常収入重視
第2に安定化戦略として、定常収入を重視していることが特徴である。情報処理料や保守等、継続的に得られる収入を獲得することを経営の中心に置いている。この戦略の推進により、定常収入比率は、2016年12月期には40.4%(定常収入額は37.5億円)だったものが、2017年12月期に44.2%(同42.4億円)まで上昇しており、これが同社の収益安定化に貢献している。
(3) 全員経営戦略:サイバーセル経営
同社は経営陣だけでなく、従業員についても経営を意識した活動を行うように、サイバーセル経営としてセル時間当たり収益=(売上高-経費)/時間を導入している。この指標は、従業員全員が売上げを上げること、経費を下げること、時間効率を上げることを意識して行動させるためである。
2. 事業環境とIT業界の時流
同社では、現在の事業環境は以下のような過去の変化から「新産業革命」の時代へ移りつつあると認識している。
(1) 「農業革命」(狩猟・採集経済から穀類の栽培や家畜の飼育へ)
(2) 「産業革命」(工作機械、工業製品、鉄道、蒸気船等)
(3) 「情報革命」(エレクトロニクス、コンピューター等)
(4) 「新産業革命」(技術的限界点の突破、情報処理機能の高度化による産業構造の変化)
(例:スマートフォン、AI、クラウド、認証基盤等)
このような「新産業革命」の時代には、
(1) 顧客の潜在ニーズが技術の進歩によりスピーディーに実用化される
(2) 企業内・企業間のシステム連携・ID連携がさらに高度化する
(3) 「判断は人からAIへ」が進み、システムの良し悪しは搭載するAIの性能で決まる
と同社では考えている。特にAIの性能向上がこれからの産業構造を大きく変えると予想されるが、AIの性能向上のためには、できるだけ多くのデータ(ビッグデータ)を保有している、あるいは得られることが重要な要素になってくる。この点で同社は、食品流通業界に特化しており多くの顧客を抱えている。さらにこれらの顧客に対して、「シェアクラウド」でサービスを提供していることから、食品流通業界においてはかなりのビッグデータを得ることが可能であり、この分野に限れば今後のAI開発で優位にあると言える。
そのため、同社では「新産業革命」に向けた取り組みとして、以下のような技術や開発を進めていく方針だ。
(1) シェアクラウド構築により培った基盤技術の強化
(2) 企業間連携の高度化(サービス開発)
a)クラウドEDI-Platform、b)コード変換基盤、c)C2Platform、d)統合住民サービス
(3) 新技術の応用
a)高速開発ツール・4GL、b)顔認証(2017年テスト稼働)、c)業界認証基盤(2018年)、d)ビッグデータ処理、e)タイムスタンプ(TSA認定取得)、f)公的個人認証基盤(2017年認証取得)、g)AI
このような事業環境の認識のもと、同社では2020年12月期を最終年度とする中期経営計画を発表している。その重要施策と数値目標は以下のようになっている。
3. ITクラウド事業(流通クラウド分野):3方向への事業展開
ITクラウド事業の流通クラウド分野では、中・大規模小売企業を対象とする「@rms基幹」サービスの次期バージョン(完全版)のリリースを予定しており、周辺サービスの先行提案も推進する。これまで対象としてきた小規模小売企業だけでなく、中・大規模小売企業も適用範囲となる。また、クラウドEDIサービスの「クラウドEDI-Platform」は、中・大規模の卸売企業だけが顧客であったものが、新サービスの「C2Platform」の開始によりメーカーとの商談機能も有することになるほか、コード変換基盤の導入により中・小規模卸売業への展開も可能となるなど売上高の拡大余地は大きい。「C2Platform」は、現在個々の企業間で通信により行っている情報交換を、情報を必要とする関連企業すべてに伝達できるプラットフォームで、流通業界の企業間連携の効率化が可能となる。コード変換基盤は、業務改善が進んでいない小規模卸・メーカーがEDIに対応できる基盤で、既存顧客(大手卸)の付加価値向上と中小・小規模卸までターゲット層の拡大を図る。なお、資本提携や業務提携も視野に入れ、サービス拡充のスピードアップを図る計画だ。
4. ITクラウド事業(官公庁クラウド分野)
官公庁クラウド分野においては、新たに「統合住民サービス」「教育情報セキュリティクラウド」を構築し、現在は和歌山県が中心となっている事業を全国展開する。自治体向けサービスでは、2017年に奈良県に事業所を開設したのを皮切りに、まず近畿圏で実績を積み、その後全国にサービス展開を図る計画だ。さらに、既述のように南大阪電子計算センターを子会社化することで、地方自治体向け基幹系サービス分野の強化を図る。ワンストップでのサービス提供を行うことで、更なるシェアアップを目指す。
5. モバイルネットワーク事業
モバイルネットワーク事業では、ドコモショップ店舗の大型化による顧客利便性と集客力の向上、スマートライフ関連商材の取扱いを拡大するとしている。2017年に岩出店の売場面積を拡張しており、今後、取扱商材も拡大する。新たに加える商材には、体重計や血圧計などのメディカル・ヘルスケア、生命保険、電気・ガス小売、周辺機器、各コンテンツ、アクセサリ、ウェアラブル機器などを想定している。
現在では、家電をスマートフォンと連携して使用すると利便性が高いと思われる機能が付加されていることが多いが、家電量販店では機能の存在すら他の商品に埋もれてしまう場合が多く、せっかくの商材及びスマートフォンの保有によって得られるはずである利便性を謳歌しているとは決して言えない。同社ショップでこれらの機能を積極的に提案することで、モバイルでより快適な生活を提案できるようになる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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