■フジコー<2405>の決算動向
1. 過去の業績推移
過去の業績を振り返ると、2007年6月期から2009年6月期まで業績が下降線をたどっているのは、2005年10月の耐震偽装問題の発覚及び2006年6月の建築基準法の改正の影響(建築確認申請期間の延長等) により住宅着工件数の大幅な落ち込みやマンション建設の遅れがあったことに加え、2008年にはリーマン・ショックによる景気後退の影響を受けたものである。また、2007年11月にバイオマス発電施設を新設したことと時期が重なったことにより、減価償却費や支払利息の負担も重荷となった。
2010年6月期以降は、景気回復と取引先数の拡大に伴い売上高は回復基調にある。特に、「建設系リサイクル事業」におけるバイオマス発電の拡大に伴って収益性も高くなり、2014年6月期の営業利益率は過去最高となる14.0%に到達した。ただ、2016年6月期は、新たに「森林発電事業」が順調に立ち上がったことで増収となったものの、立ち上げ準備費用や「建設系リサイクル事業」における改修工事等により減益となった。また、2017年6月期から2018年6月期にかけては、「森林発電事業」の安定稼働や電力小売りへの参入等により増収基調が続いているものの、利益面では既存事業における事業停止処分※に加えて、中国における廃プラ輸入規制の影響(後述)など、マイナス要因が重なったことから低調に推移している。
※同社は、千葉県より「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」第14条の3第1号の規定に基づき、2017年2月8日から2017年4月8日まで(60日間)の事業停止処分を受けた。1)許可を受けたとみなされる破砕機を無許可で入れ替え、産業廃棄物の処理を行ったこと、2)焼却施設において、恒常的に許可処理能力を超過し産業廃棄物の処理を行ったことが処分の原因となっている。
一方、財務面では、有利子負債の増加により2009年6月期の自己資本比率は22.5%の水準にまで低下したものの、その後は、第三者割当増資(2012年8月)や公募増資(2014年3月)のほか、借入金の返済により改善を図ってきた。2014年6月期以降、有利子負債が再び増加しているのは、森林発電事業にかかる設備投資等によるものである。ただ、2016年9月に公募増資による財務基盤の強化を図ったことから2017年6月期末には33.4%に改善している。一方、資本効率を示すROEについても、利益率の上昇とともに改善を図ってきたが、2016年6月期以降は、先行費用や事業停止処分の影響等により低水準にて推移している。
フリーキャッシュ・フロー※については、基本的にプラスの状態が続いてきたが、2015年6月期及び2016年6月期は「森林発電事業」への先行投資によりマイナスとなった。ただ、2017年6月期からは、既存事業に加えて、新たな安定収益源(森林発電事業)が立ち上がったことから再びプラスに転じており、潤沢なキャッシュ・フローの有効活用は今後の課題と言えるだろう。
※営業キャッシュ・フローと投資キャッシュ・フローを足し合わせた簡便法にて計算。
2. 2018年6月期決算の概要
2018年6月期の業績は、売上高が前期比1.9%増の3,427百万円、営業利益が同16.2%減の191百万円、経常利益が同21.9%減の140百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同31.6%減の57百万円と売上高は増収(9 期連続の増収及び過去最高の売上高を更新)を確保したものの、利益面では減益となった。また、期初予想に対しても、売上高、利益ともに下回る着地となっている(ただし、2018年1月31日付けの修正予想は達成)。
売上高は、事業譲渡※1による影響が残った「食品系リサイクル事業」を除いて、「建設系リサイクル事業」、「白蟻解体工事」、「森林発電事業」の3つの事業がそれぞれ伸長した。特に、「建設系リサイクル事業」におけるバイオマス発電(及び売電)、及び「森林発電事業」における電力小売事業が着実に伸びている。一方、売上高が期初予想を下回ったのは、「建設系リサイクル事業」において焼却施設の長期補修工事を実施したことに加えて、中国の廃プラ輸入規制等の影響※2により、結果として受入数量を制限せざるを得ない状況となったことが理由である。すなわち、内部要因(長期補修工事)と外部要因(中国における廃プラ輸入規制)が重なったことが業績へのインパクトを大きくしたと言える。
※1 2017年2月に鉾田ファーム(自社保有の養豚施設)を事業譲渡。
※2 中国における廃プラスチック類の輸入規制の影響により、建設系廃棄物に含まれる高カロリーの廃プラスチック類の構成比が高まったことで処理効率が低下するとともに、連鎖的に他の処分業者への外注委託費(外注単価)も高騰したことから、結果として受入制限をせざるを得ない状況となった。
また、利益面でも、中国の廃プラ輸入規制等に伴う外注単価の高騰や「森林発電事業」における木材仕入費の増加等により減益となり、営業利益率も5.6%(前期は6.8%)に低下した。
財政状態については、有形固定資産の減価償却等に伴って総資産が前期末比4.4%減の6,125百万円に縮小したことから、自己資本比率は34.6%(前期末は33.4%)に若干上昇した。
キャッシュ・フローの状況についても、営業キャッシュ・フローは税金等調整前当期純利益や減価償却費により高いレベルでプラスを維持したことに加え、投資キャッシュ・フローを一定水準に抑えたことから、長期借入金の返済を賄いながらも、現金及び現金同等物はわずかに増加(前期末比41百万円増)している。
事業別の業績は以下のとおりである。
(1) 建設系リサイクル事業
売上高が前期比1.7%増の1,481百万円、売上総利益が同6.8%減の150百万円と増収ながら減益となった。売上高は、前期における事業停止処分の影響※1が残るなかで、前述のとおり、長期補修工事の実施※2や中国における廃プラ輸入規制の影響(前述)により、焼却施設における受入数量を制限したことがマイナス要因となったものの、発電施設(バイオマス発電)については受入数量(前期比24.3%増)及び売電数量(同5.5%増)がともに伸びたことから増収を確保した。また、利益面では、処理効率の低下や外注単価の高騰が利益水準を押し下げた。
※1 2品目を自主返上(新規許可取得にむけて準備中)したことによる影響等。
※2 2017年12月中旬から約3ヶ月に及ぶ長期補修工事を実施。
(2) 食品系リサイクル事業
売上高が前期比23.7%減の165百万円、売上総利益が同8.1%減の24百万円と減収減益となった。売上高は、前期の事業譲渡による影響(約36百万円の減収要因)に加えて、堆肥化へのリサイクル数量を一定範囲に抑えるために受入数量を絞った(前期比8.7%減)ことなどから減収となった。一方、注力する液状化飼料の販売数量は新規契約先の開拓等により前期比10.6%増と順調に伸びている。また、利益面では、減収に伴って減益となったものの、採算性の低かった養豚事業の譲渡によりセグメント利益率は14.5%(前期は12.0%)に改善している。
(3) 白蟻解体工事
売上高が前期比12.3%増の211百万円、売上総利益が同147.8%増の18百万円と想定以上に好調であった。白蟻工事が減少した一方、解体工事が施工体制及び営業強化により順調に拡大した。
(4) 森林発電事業
売上高が前期比4.5%増の1,569百万円、売上総利益が同17.4%減の217百万円と増収ながら減益となった。売上高は、発電事業の安定稼働に加えて、電力小売事業の拡大が増収に寄与した。特に、電力小売りについては、一般家庭向け低圧電力の契約には立ち上がりにやや苦戦しているものの、事業会社向け(地元の製材工場等)の高圧電力が順調に伸びている。一方、利益面で減益となったのは、発電燃料となる木材の含水率が上昇したことより払出し数量(木材仕入費)が増加したことが主因である。また、電力小売事業の拡大による電力仕入費の増加も原価率を押し上げる要因となっており、それらの結果、セグメント利益率は13.8%(前期は17.5%)に低下している。
以上から、2018年6月期業績を総括すると、事業停止処分の影響を受けた前期に引き続き、長期補修工事の実施や中国における廃プラ輸入制限の影響等により低調に推移したものの、「森林発電事業」における電力小売事業が着実に伸びてきたところは、今後に向けて明るい材料と言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
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1. 過去の業績推移
過去の業績を振り返ると、2007年6月期から2009年6月期まで業績が下降線をたどっているのは、2005年10月の耐震偽装問題の発覚及び2006年6月の建築基準法の改正の影響(建築確認申請期間の延長等) により住宅着工件数の大幅な落ち込みやマンション建設の遅れがあったことに加え、2008年にはリーマン・ショックによる景気後退の影響を受けたものである。また、2007年11月にバイオマス発電施設を新設したことと時期が重なったことにより、減価償却費や支払利息の負担も重荷となった。
2010年6月期以降は、景気回復と取引先数の拡大に伴い売上高は回復基調にある。特に、「建設系リサイクル事業」におけるバイオマス発電の拡大に伴って収益性も高くなり、2014年6月期の営業利益率は過去最高となる14.0%に到達した。ただ、2016年6月期は、新たに「森林発電事業」が順調に立ち上がったことで増収となったものの、立ち上げ準備費用や「建設系リサイクル事業」における改修工事等により減益となった。また、2017年6月期から2018年6月期にかけては、「森林発電事業」の安定稼働や電力小売りへの参入等により増収基調が続いているものの、利益面では既存事業における事業停止処分※に加えて、中国における廃プラ輸入規制の影響(後述)など、マイナス要因が重なったことから低調に推移している。
※同社は、千葉県より「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」第14条の3第1号の規定に基づき、2017年2月8日から2017年4月8日まで(60日間)の事業停止処分を受けた。1)許可を受けたとみなされる破砕機を無許可で入れ替え、産業廃棄物の処理を行ったこと、2)焼却施設において、恒常的に許可処理能力を超過し産業廃棄物の処理を行ったことが処分の原因となっている。
一方、財務面では、有利子負債の増加により2009年6月期の自己資本比率は22.5%の水準にまで低下したものの、その後は、第三者割当増資(2012年8月)や公募増資(2014年3月)のほか、借入金の返済により改善を図ってきた。2014年6月期以降、有利子負債が再び増加しているのは、森林発電事業にかかる設備投資等によるものである。ただ、2016年9月に公募増資による財務基盤の強化を図ったことから2017年6月期末には33.4%に改善している。一方、資本効率を示すROEについても、利益率の上昇とともに改善を図ってきたが、2016年6月期以降は、先行費用や事業停止処分の影響等により低水準にて推移している。
フリーキャッシュ・フロー※については、基本的にプラスの状態が続いてきたが、2015年6月期及び2016年6月期は「森林発電事業」への先行投資によりマイナスとなった。ただ、2017年6月期からは、既存事業に加えて、新たな安定収益源(森林発電事業)が立ち上がったことから再びプラスに転じており、潤沢なキャッシュ・フローの有効活用は今後の課題と言えるだろう。
※営業キャッシュ・フローと投資キャッシュ・フローを足し合わせた簡便法にて計算。
2. 2018年6月期決算の概要
2018年6月期の業績は、売上高が前期比1.9%増の3,427百万円、営業利益が同16.2%減の191百万円、経常利益が同21.9%減の140百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同31.6%減の57百万円と売上高は増収(9 期連続の増収及び過去最高の売上高を更新)を確保したものの、利益面では減益となった。また、期初予想に対しても、売上高、利益ともに下回る着地となっている(ただし、2018年1月31日付けの修正予想は達成)。
売上高は、事業譲渡※1による影響が残った「食品系リサイクル事業」を除いて、「建設系リサイクル事業」、「白蟻解体工事」、「森林発電事業」の3つの事業がそれぞれ伸長した。特に、「建設系リサイクル事業」におけるバイオマス発電(及び売電)、及び「森林発電事業」における電力小売事業が着実に伸びている。一方、売上高が期初予想を下回ったのは、「建設系リサイクル事業」において焼却施設の長期補修工事を実施したことに加えて、中国の廃プラ輸入規制等の影響※2により、結果として受入数量を制限せざるを得ない状況となったことが理由である。すなわち、内部要因(長期補修工事)と外部要因(中国における廃プラ輸入規制)が重なったことが業績へのインパクトを大きくしたと言える。
※1 2017年2月に鉾田ファーム(自社保有の養豚施設)を事業譲渡。
※2 中国における廃プラスチック類の輸入規制の影響により、建設系廃棄物に含まれる高カロリーの廃プラスチック類の構成比が高まったことで処理効率が低下するとともに、連鎖的に他の処分業者への外注委託費(外注単価)も高騰したことから、結果として受入制限をせざるを得ない状況となった。
また、利益面でも、中国の廃プラ輸入規制等に伴う外注単価の高騰や「森林発電事業」における木材仕入費の増加等により減益となり、営業利益率も5.6%(前期は6.8%)に低下した。
財政状態については、有形固定資産の減価償却等に伴って総資産が前期末比4.4%減の6,125百万円に縮小したことから、自己資本比率は34.6%(前期末は33.4%)に若干上昇した。
キャッシュ・フローの状況についても、営業キャッシュ・フローは税金等調整前当期純利益や減価償却費により高いレベルでプラスを維持したことに加え、投資キャッシュ・フローを一定水準に抑えたことから、長期借入金の返済を賄いながらも、現金及び現金同等物はわずかに増加(前期末比41百万円増)している。
事業別の業績は以下のとおりである。
(1) 建設系リサイクル事業
売上高が前期比1.7%増の1,481百万円、売上総利益が同6.8%減の150百万円と増収ながら減益となった。売上高は、前期における事業停止処分の影響※1が残るなかで、前述のとおり、長期補修工事の実施※2や中国における廃プラ輸入規制の影響(前述)により、焼却施設における受入数量を制限したことがマイナス要因となったものの、発電施設(バイオマス発電)については受入数量(前期比24.3%増)及び売電数量(同5.5%増)がともに伸びたことから増収を確保した。また、利益面では、処理効率の低下や外注単価の高騰が利益水準を押し下げた。
※1 2品目を自主返上(新規許可取得にむけて準備中)したことによる影響等。
※2 2017年12月中旬から約3ヶ月に及ぶ長期補修工事を実施。
(2) 食品系リサイクル事業
売上高が前期比23.7%減の165百万円、売上総利益が同8.1%減の24百万円と減収減益となった。売上高は、前期の事業譲渡による影響(約36百万円の減収要因)に加えて、堆肥化へのリサイクル数量を一定範囲に抑えるために受入数量を絞った(前期比8.7%減)ことなどから減収となった。一方、注力する液状化飼料の販売数量は新規契約先の開拓等により前期比10.6%増と順調に伸びている。また、利益面では、減収に伴って減益となったものの、採算性の低かった養豚事業の譲渡によりセグメント利益率は14.5%(前期は12.0%)に改善している。
(3) 白蟻解体工事
売上高が前期比12.3%増の211百万円、売上総利益が同147.8%増の18百万円と想定以上に好調であった。白蟻工事が減少した一方、解体工事が施工体制及び営業強化により順調に拡大した。
(4) 森林発電事業
売上高が前期比4.5%増の1,569百万円、売上総利益が同17.4%減の217百万円と増収ながら減益となった。売上高は、発電事業の安定稼働に加えて、電力小売事業の拡大が増収に寄与した。特に、電力小売りについては、一般家庭向け低圧電力の契約には立ち上がりにやや苦戦しているものの、事業会社向け(地元の製材工場等)の高圧電力が順調に伸びている。一方、利益面で減益となったのは、発電燃料となる木材の含水率が上昇したことより払出し数量(木材仕入費)が増加したことが主因である。また、電力小売事業の拡大による電力仕入費の増加も原価率を押し上げる要因となっており、それらの結果、セグメント利益率は13.8%(前期は17.5%)に低下している。
以上から、2018年6月期業績を総括すると、事業停止処分の影響を受けた前期に引き続き、長期補修工事の実施や中国における廃プラ輸入制限の影響等により低調に推移したものの、「森林発電事業」における電力小売事業が着実に伸びてきたところは、今後に向けて明るい材料と言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
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