乃村工藝社 渡辺勝代表取締役社長インタビュー

投稿:2012/09/18 15:10

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創業120年を迎えた空間プロデュース企業

乃村工藝社
代表取締役社長
渡辺勝(わたなべ・まさる)

1947年生まれ。70年3月、乃村工藝社入社。93年に取締役に就任。97年に常務取締役、2003年に専務取締役を経て、2007年5月より代表取締役社長となり、現在に至る。
 
 
展示施設や商業施設などのディスプレーを、企画から運営・管理までトータルに手掛ける乃村工藝社。長年の歴史と数多くの実績を有するこの分野の最大手企業だ。同社の渡辺勝社長に、事業への思いを語ってもらった。

──御社の沿革と業態についてご説明ください

 1892年(明治25年)、当社は芝居の大道具方として創業して以来、人々をワクワクさせ、感動させる集客空間をプロデュースし続けてきました。そのノウハウは世界でも高い評価を受け、クールジャパン戦略の一翼を担っていると自負しております。
 私たちの仕事は集客空間創造、つまり人々をワクワクさせたり感動させたりする空間をプロデュースすることです。創業者の乃村泰資はもともと香川県高松の足袋職人でした。「歓楽座」という芝居小屋を訪ねてみると、着ぐるみを作る職人がいなくなり困っていました。そこで泰資が『私が作ります』と手をあげて、翌日には馬の着ぐるみを作っていったそうです。馬と別れる馬主が馬に『人間の気持ちはわからないよな』と言う感動的なシーン。その時、馬の目から涙がこぼれる仕掛けが施されていました。それが大好評となり、大道具方の世界に入った時が当社の創業です。
 大正時代には両国国技館で菊人形の大規模な段返しを手掛けたり、戦時中には真夏に雪を降らせたり、戦後は百貨店にサンタクロースを登場させたり…。人々に歓びや感動を与えるために、当社は従来になかったアイディアをディスプレーという形で、 百貨店や博覧会などの多彩なジャンルに提供してきました。
 最近では東京スカイツリータウン、ダイバーシティ東京プラザ、渋谷ヒカリエ、新東名高速道路のサービスエリアやパーキングエリア、京王吉祥寺駅ビル、大阪梅田北ヤードなど、話題になる建築物等の大半に参加しています。「まだまだ、もっと。空間は活きてくる」と考えて活動しています。
 ディスプレー業界は商業施設や企業のショールーム・展示会、博物館などの内装・展示、設計・デザイン、制作・施工をおこなう業界です。しかし、この業界では商業施設を専業としている会社が多く、上位30社のなかでも「総合ディスプレー業」として、商業施設だけでなく展示会や博物館などの市場分野までカバーでき、総合力を発揮することができるのは当社だけです。もちろん、当社は常に業界ナンバーワンの位置におります。
 ディスプレー業界全体の市場規模は1兆1000億円前後と推定されています。業界のトップ企業である当社のシェアは約8%、上位30社のシェアで15.5%と、まだまだ市場拡大の余地があります。

──では次に、御社の強みについてご説明ください

 当社の強みのひとつは「クリエイティブ力」です。現在、感性豊かで、創意あふれるクリエイターが332名在籍しており、企画・デザインによる差別化ができる体制が整っています。ディスプレー業において、これだけのクリエイター集団を持つ企業は日本にはありません。
 また、当社には品質・安全管理のプロフェッショナルであるプロダクト・ディレクターが361名在籍しています。高品質への信頼は、長年蓄積されたモノづくりへの経験、ノウハウと最新の技術・知識によるものです。さらに、高い技術力をもつ専門子会社が11社あり、「ノムラグループ」として総合力を発揮することができます。
 当社が昨年1年間で手掛けたプロジェクトの総数は7125件。身近な飲食店や百貨店、ショールームや博物館、最近ではスポーツイベントや音楽イベントなど、私たちの市場は大きく広がっています。
 さらに当社が1年間でお取引をさせていただくお客様は、現在1767社を数えています。また、年間売上高の中で、毎年ご用命をいただくお客様の売上比率は81%と、この点をみても、当社はお客様から高い信頼をいただいているのではないかと考えています。
 アパレル関係では海外のスーパーブランドからファストファッションに至るまで。大型商業施設では大手デベロッパーや大手百貨店がお客様となります。メーカー系では自動車、家電、通信、エネルギー、住設関連、化粧品など。各業界のトップ企業が当社のお客様であり、優良企業様とのパートナーシップを構築していることが当社の強みだと思っています。

──「乃村」に対する思いとは?

 全社員に共有する「ノムラマインド」というものを定めているのですが、その根幹である「随所に主となる意欲」を、この創業120周年という節目に、いま一度思い起こしてください、という話をしています。自らが正面から取り組まなければ、仕事は動きません。物事に流されるのではなく、自らが流れを創らなければ何も変わりません。どのような局面でも真正面から取り組み、「選ばれるノムラ」を目指して邁進していきましょうと社員に話しています。
 私たちはノムラブランドステートメントとして、「Prosperity Creator NOMURA」(プロスペリティ・クリエイター・ノムラ)という言葉を掲げています。ノムラは集客創造のプロデューサー集団として、お客様の事業繁栄と、そこに集うエンドユーザーであるお客様に歓びと感動を提供する、という私たちの熱い思いを表現したものです。
 常に新しい歓びと感動に挑戦し続けてきたノムラですが、今後も時代に輝き、ときめくような空間創造、そして空間活性化まで、お客様から選ばれるよう、ノムラグループの総合力のすべてを持って提案し、実現していきたいと考えています。

【取材メモ】

 先日、六本木で同社のIRミーティングが120周年記念イベントの一環として開催されたが、それが実に乃村らしかった。「当社が作るのは常に企業にとっての『おもてなしの舞台』。この日も、足元にスギを使い、さらに『体験のデザイン』というキーワードを用いて、香りにも気を配りました。当社が追求するのは“人が集う”というコンセプト。だから当社の業務は、ある意味で『経済の潤滑油』なんです」。
 これには痺れた。加えて「ライバルは自社の過去の歴史」との強い言葉。同じ「のむら」でも「乃村」は「野村」よりもはるか先を行っている。
 いつの時代も世界に歓びと感動を送り続けてきた同社の歴史は未来へと繋がり、これからも「ワクワクドキドキ空間」を通じて日本経済への貢献を高めていくだろう。

[ 会社概要 ]
社名:乃村工藝社
市場:東証1部
コード:9716
上場年月日:1989年8月30日
設立:1942年12月9日
決算月:2月
☆連結業績(2012年2月期)
売上●874億6400万円
営業利益●12億1500万円
経常利益●13億2500万円
当期純利益●6億400万円
☆トピックス
7月に創業120周年記念イベント「乃村倶楽部」を開催。乃村工藝社120年の歩みを様々な空間演出で表現し、大好評を得る。

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配信元: みんかぶ株式コラム