ティー・ワイ・オー 吉田博昭社長インタビュー

投稿:2012/02/10 14:33

櫻井英明のトップ放談 第11回

構造改革を完了し、
事業の再飛躍を目指す

株式会社ティー・ワイ・オー
代表取締役社長
吉田博昭(よしだ・ひろあき)

1949年 神奈川県生まれ。早稲田大学在学中よりCM制作に携わる。1982年 株式会社ティー・ワイ・オーを設立。ディレクターとして丸井、サントリー等のCMを手がけ、受賞作品は約60本。1995年以降、経営者に専念。
 
 

広告業界で映像物制作を得意とする同社は「グループ統合・選択と集中・コスト削減・増資・負債の圧縮」の5つの施策を実施し、再スタートを切った。今回は吉田博昭社長に今後の事業展開について伺った。

御社の業態は?

当社は広告制作会社として、広告主様の商品や技術などのイメージアップや販売促進を目的としたあらゆるメディアの映像物を制作する会社です。
TV-CM事業は「マス広告」の制作を手掛けるブランドで構成されます。各ブランドの特徴を活かした高品質な映像を制作することで、広告主様の企業イメージの向上、販売促進に貢献しています。
もう一つのマーケティング・コミュニケーション事業はWEBを中心とした「インタラクティブ広告」の制作を手掛けるブランドで構成されます。国内外におけるWEB広告やプロモーションメディア広告の企画・制作等、クロス・メディア広告を手掛けています。
言い換えればかなりクリエイティブな分野での役割を担っていることになります。TV-CMとしてはJR東海さんの「そうだ、京都行こう」やユニクロさん、西友さんなどはご記憶にあると思います。あるいはNHKのキャラクターの「どーもくん」なども当社の制作になります。TV-CMは年間500本以上制作しています。

社長はディレクターのご出身ですね

そうです。私はもともとTV-CMのディレクターでした。1969年にこの世界に足を踏み入れ、1982年にこの会社を仲間と立ち上げました。1969年の頃は既にTV-CMは市民権を得た時代で、寝食を忘れて、というか否応なく長時間労働を強いられました(笑)。それを是正するために今当社では、休みをきちんと取らせるようにということを推進していますので、クリエイターやディレクターの世界もずいぶんと変わりました。
広告制作業界は「研ぎ澄まされた知恵の勝負」の世界だと私は考えています。私自身もかつてはそうだったかもしれませんが、当社のクリエイターは皆自分自身を天才だと思っている筈です。そういうプライドがなければこの仕事は出来ません。当社の仕事である広告は人の知恵によって無から有を生み出す創造的なものです。この創造力こそが当社の原動力であると考えています。
ただ、最近では以前にも増して広告の世界は日進月歩。企業活動とともに成長しています。そして『価値感』と『クライアントの戦略』の両立という点で厳しくなってきています。費用対効果の追求に加えて、視聴者のプロ化が進んでいることも現実。「商品の知名度が高まり、売れて、儲かること」、「面白く、新しく、美しい」、この両立が可能な合理的提案が求められています。
一方で商品や企業は常に進化していてマンネリ化はありません。逆に言えば、商品の変化・進化を見つめれば広告の世界に限界はないということです。商品は常に新しいものが出ています。ということは、商品に忠実であれば常にフレッシュなものができる筈です。
最近考えていることは、新商品は大抵「理科系」の技術者が発想し創造して製造されるのに対し、その新商品の広告は大抵は「文科系」の頭脳で考えているというモチーフ。この組み合わせの妙味をとても新鮮に感じています。
今後の当社は「クリエイティブ・ブティック」のような存在を目指して行きたいと考えています。

「世界で最も優れた企業を広告主とし」とありますが

当社の企業理念は「次世代の広告制作会社TYO」です。そして「私たちTYOは、世界で最も優れた企業を広告主とし、世界で最も豊かな消費者のために広告を作れることに心から感謝し、企業と消費者が互いの価値を認め合い、利益を与え合うような良い関係を築くため、創意工夫に励みます」としています。
実際に弊社のクライアントは皆元気です。積極的な企業が広告主だからという理由も当然あるでしょう。従来からのトヨタさんやホンダさん、キリンさん、JRさんなどの広告主も元気ですが、ユニクロさんやグリーさんなど最近目に付く広告のクライアントも非常に元気という印象です。こういう積極的な姿勢のニューフェイスのクライアントが増加中ですから、日本企業の未来は暗いことばかりではないという印象も受けています。
当社は広告宣伝という意味では、「日本の企業の最大の応援団」ではないでしょうか。

株主さん投資家さんへ一言

当社は変革をそして危機すらも大きなチャンスとして捉え、時代の求めに応えていく所存です。前2011年7月期で全社的な大改革はほぼ完成し、再び成長への道が開けてきたと考えています。過去に大きな欠損を出し続けてきたエンタテイメント事業部門からの撤退は、前期における更なる子会社の整理によってほぼ完了いたしました。広告事業においても海外子会社であるGreat Works社の整理が進み、WEB事業は厳しい事業環境にも関わらず成長を維持し、収益に貢献してきました。
財務面では資本も健全なレベルまで回復しましたし、ちょうどこの時期は当社にとって「第2の創業」時代でもあったと考えています。
東日本大震災の影響で一時的に受注は落ち込みましたが、昨年5月以降は改善傾向にあります。本業の中核である広告制作事業を強化していく方向です。幸いテレビCM制作事業は堅調に売上高を拡大しており、「勝ち続けている事業」と言えます。
これまでに「グループ統合・選択と集中・コスト削減・増資・負債の圧縮」の5つの施策を実施したことで当社は2012年7月期から事業の発展に向け再スタートを切りました。
これまで、当社はスピード感に溢れる経営を行ってきました。変化の激しい会社でもあります。今後とも当社TYOにご注目いただければありがたいです。

取材メモ

40年近くに及ぶキャリアの中でTVCMの変遷進化を、身を持って経験されてきた吉田社長。
「今は経営が面白い」と言われました。「経営は受動的ではなく常に能動的。そして私の役割はクリエイターやディレクターたちがやりたいように気持ちよく仕事が出来る環境を整えることです。日夜、さまざまな経営事案を考え抜いています」とも。経営方針の「TYOは人を育てます。能力と情熱のある者が全力で自己達成を目指す時TYOはこれを助け、その成果を共有します。最大多数の最大幸福こそTYOの目標なのです」という言葉に経営思想を感じました。過去のリストラもほぼ完了し、本業回帰を中核とした今後の展開に期待が感じられました。
「実は作家になりたかったんです」という言葉も印象に残りました。「でも、後に芥川賞を取ったある先輩の部屋と仕事ぶりを見て、これは無理だと感じました」。おそらく「無から有」を生み出すという意味では文章も映像創造も共通点があります。TVCMディレクター、クリエイターとしての仕事で日本のCMの世界を開いていった吉田社長が、もし純文学の作家としてそのまま進まれたらきっとその世界でもトップクラスになったのではないでしょうか。
「広告を展開しようとする企業は、常に、その時代において勢いがあり意欲のある企業です。つまり、意欲のある企業が常にクライアントということです。基本的には常にその時代において元気があり意欲のある企業が入れ替わり登場するのがこの業界の特徴です」。
吉田社長もおっしゃっているように、同社は広告宣伝という意味では「日本の企業の最大の応援団」であるに違いありません。同社が輝くことで日本の企業が輝くことは間違いないと確信しました。そして第2の創業=発展期を迎えた同社の未来も輝いていると感じました。

[ 会社概要 ]

社名:株式会社ティー・ワイ・オー
証券コード:4358
公開市場:ジャスダック
上場年月日:2002年4月
設立:1982年4月

●連結決算予想(2012年7月期)
売上高:240億円(前年比6.0%増)
営業利益:12億円(前年比1.1%減)
経常利益:7億円(前年比22.8%減)
純利益:4億50百万円(前年比34.6%減)

●トピックス
売上高はTV-CM事業の好調により、前期比で12.9%増加。シンジケートローン契約締結に伴う手数料1億98百万円を計上したこと等により、経常損益、四半期純損益は減少。有利子負債を前期末比で25億円削減するなど大幅圧縮。

是非、アンケートにお答えください。アンケートにお答えいただいた方々から抽選でプレゼントが当ります。(2月号の応募期限:2012年2月29日)
※アンケートは終了しました。

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配信元: みんかぶ株式コラム